金融審議会金融分科会第二部会(第2回)議事要旨

1. 日時:

平成13年4月13日(金)15時00分~16時40分

2. 場所:

中央合同庁舎第4号館9階 特別会議室

3. 議題:

  • 事務局説明

  • 自由討議

4. 議事内容

  • 部会長より、新たに就任した委員の紹介が行われた。

  • 事務局より、「金融機能向上に関する諸問題」及び「国際的な観点も踏まえた金融機関監督」について説明の後、自由討議が行われた。主な意見は以下の通り。

  • 第二部会に「金融機能の向上に関するワーキング・グループ」(座長:岩原委員)及び「自己資本比率規制見直しワーキンググループ」(座長:池尾委員)を設置することが了承された。

(自由討議での主な意見)

【株式市場、株式持ち合いについて】

  • 株式の持ち合いというのは、企業の期待収益以外の、政策投資と呼ばれるような非貨幣的なメリットを見出して株式を保有するということであり、結果として証券市場における価格形成を歪めるものである。銀行による株式の保有(持ち合い)が株式市場の発展を妨げてきたという点を十分に認識し、日本の株式市場の健全化に何が必要かを考えることが必要である。

  • 銀行による株式保有の制限について考えるに当たっては、銀行が吐き出した持ち合い株式を、一般投資家が持ち続けられるようにする仕組みを整備できるかどうかが、重要な要素となろう。

  • 株式持ち合いには、株式を持ち合っている一般事業法人及び銀行の双方の自己資本を見かけ上増やすという効果がある。株式持ち合いをやめると、こうした見かけ上の自己資本が減少するため、我が国の一般事業法人及び銀行が過小資本であり、レバレッジが高いという問題が顕在化することとなる。

  • 株式の持ち合いは、自然に解消する方向で進んでいる。ただ、銀行については、一般事業法人よりも持ち合い解消の動きが鈍いと言わざるを得ないように思う。こうした状況を踏まえると、一定のルールを設けることにより、銀行が進めようとしている持ち合い解消を後押しすべきではないかと考えている。

  • 銀行は株価下落局面では株式を売り越しておらず、「銀行が株式を売るから株価が下がる」というのは、アナリストの誤解である。個々の株価と市場全体の株価の動向は全く連動していない。

【銀行のリスク管理について】

  • 「銀行」が「銀行」であるのは、貨幣、すなわち流動性預金を発行しているからである。であれば、システミックリスクを避けなければならないから、株式は保有禁止とすべきである。一方、定期預金を提供している側面を見ると、これを投資信託と考えたならば株式を持っても構わないことになる。

  • 株式保有リスクの程度を考えると、預金受入金融機関が株式を保有することは、本来困難なはず。銀行によっては、ベンチャー企業等への投資を行っているところもあるとのことだが、むしろ、ベンチャー企業への株式投資が預金によってファイナンスされているという現状を見直すべきではないのだろうか。

  • 銀行は預金を集め過ぎているとも考えられる。預金で集めた資金の運用を前提として自己資本を充実させるという発想もできれば、銀行の調達した自己資本を前提として預金をどのくらい縮ませるかという発想もできる。

【規制の在り方について】

  • 銀行による株式保有を一律に規制するのではなく、株式保有リスクに応じた自己資本を割り当てることのできる銀行は株式を持てばよい。自己責任をとる体制があるならば、株式保有を認めてよい。

  • 銀行によっては、ベンチャー企業等のスタートアップ段階から株式保有による投資を行っているところもあること等を考えると、銀行による株式保有を一律に制限するのは適当でない。

  • 銀行の株式保有リスクによりシステミック・リスクが惹起される可能性があることへの対応策としては、既に、自己資本比率に基づく早期是正措置が設けられている他、時価会計の導入による含み損益の開示も進められている。こうした既存の制度と並んで、銀行による株式保有を制限することが本当に必要なのか、よく考える必要がある。

  • 現在見られる銀行による株式売却の傾向は、特に規制を設けるかどうかにかかわらず、今後も変わることはないであろう。また、銀行による持ち合い株式の売却は、その規模から考えて、株価にそれほど大きな影響を及ぼすものではない。こうした状況においては、銀行による株式保有の在り方については、各銀行の自主的な経営判断に委ねてよいのではないだろうか。

  • 銀行による株式保有については、「現に銀行は持ち合いを解消しようとしているからよい」とか「自己資本比率規制等、リスク管理のための他の手段があるからよい」というのでは割り切れない問題が含まれていると考えている。実際のところ、最近の株価低迷もあり、銀行の持ち合い解消は必ずしも順調に進んでいるわけではない。法律により銀行の株式保有について一定のルールを設けることにより、銀行が進めようとしている持ち合い解消を後押しするということも、考えてよいのではないだろうか。

  • 近年における銀行規制の国際的な潮流は、ビジネス・モデルの多様化を認める一方で、銀行自身の自己管理という面を重視すべきというものである。こうした潮流からすると、銀行による株式保有について一律の規制を設けることは、適当でないと考えるべきではないか。株式保有については、そのリスクに応じて銀行自身が適切なリスク管理を行っていくことが重要である。

  • 仮に、株式に投資する投資信託で元本保証を実現しようとすれば、受益権に優先部分と劣後部分を設けることが必要になる。そして、株価変動リスクを考えると、優先部分について元本保証を実現するためには、劣後部分の割合を相当大きくする必要があるはずである。しかし、現在の銀行では、劣後部分に相当する自己資本は8%に過ぎず、残りは元本保証性のある債務(優先部分に相当)となっている。私も、一律の規制は必ずしも望ましいものではないと考えているが、本来、銀行が経済的に意味のあるリスク管理を行っていれば、現状のように大量の株式を保有することは不可能なはずであるとも考えている。

【規制の各論について】

  • 株式はリスクを伴う金融商品であるという側面の他に、支配証券で企業経営に関わるという側面もあり、BISの二次協議案で2つの軸を考えているのはその両側面を考えているからであると思う。

  • 実際の株式保有のバリューアットリスクのようなものを考えると、現在のバーゼル合意でのリスクウェイト(100%)では収まらないのではないか。したがって、例えば「株式保有のリスクに応じた自己資本を割り当てる」との考え方を徹底する方が、一律「自己資本の範囲内とする」とする規制よりも厳しい規制になるのではないかと考えている。

  • 銀行による株式保有規制を導入した場合、銀行は売りやすい株式から先に処分し、売りにくい株式は最後に投げ売りせざるを得なくなるといった状況に陥ることも予想されるため、規制の施行までの経過期間については、十分な配慮が必要である。

  • そもそも、銀行による株式保有制限の問題は、銀行の資金調達・資産運用全体の中で捉えるべき問題である。「株式」とか「国債」といった形で、資産運用の一部だけを取り出して規制を設けることは疑問である。

  • 銀行が株式を保有することにより、銀行の与信機能が景気変動の影響を受けやすくなるのではないか。この点では、株式の含み益の45%を自己資本に算入するという現在の制度も、見直す必要があると考えている。

問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)

総務企画局信用課(内線3562、3566)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。


(資料)

サイトマップ

ページの先頭に戻る