金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」(第10回)議事録

1.日時:

平成25年2月14日(木曜日)9時30分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○洲崎座長

ただいまより、保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ第10回会合を開催いたします。皆様、ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

本日は、川島委員、山下委員がご欠席となっております。また参考人といたしまして、第4回、第7回、第9回ワーキング・グループにご出席いただいた、保険代理店協議会の堀井様に、本日も参考人としてご出席いただいております。

それでは、議事に移らせていただきます。本日は、前回会合において議論が行われなかった「保険仲立人・乗合代理店に係る規制のあり方」に関する課題について議論を行った後、再び「保険募集に関する行為規制・募集文書のあり方」に関する課題について、論点の整理を含めた議論をしていきたいと思います。

それでは、「保険仲立人・乗合代理店に係る規制のあり方」に係る課題について、簡単にご説明をお願いします。

○伊野保険企画室長

それでは、「保険仲立人・乗合代理店に係る規制のあり方」について、簡単にご説明をしたいと思います。右肩に資料2と書いてあります、第9回、前回の資料1-1という事務局説明資料に基づいて、簡単にご説明したいと思います。

前回、既に一度、簡単に触れさせていただきましたので、13ページをお開きいただければと存じます。「募集規制一般の見直しとの関係」でございます。乗合代理店を巡る課題につきましては、別途、募集人一般に対しまして、情報提供義務や、顧客の意向を把握した上で顧客の意向を踏まえた商品を勧奨する義務、またこれらを確実に実行するための体制整備義務について、導入を検討しております。その中で、複数商品の中から特定の商品を選択して顧客に推奨する場合の、推奨理由の説明を情報提供義務として求めることや、フランチャイザーによるフランチャイジーの管理を体制整備義務で求めることによって、対応可能な部分もあると考えられますので、これらの義務に加えてどのような対応が必要か考えていく必要があるのではないかと考えております。

適切な保険募集の観点からは、こうした募集規制一般の見直しにより、おおよそ対応できるとしますと、残される課題としましては、次の括弧にございますが、乗合代理店が「公平・中立」を標榜して活動することについてどう考えていくのかという点ではないかと、考えております。乗合代理店による保険募集の場面における「公平・中立」という表示は、あえて整理いたしますと、顧客からは、マル1保険会社と顧客の間で「公平・中立」であることという部分と、マル2乗り合っている保険会社間において「公平・中立」であるという2つの捉え方が可能であると考えられます。このうちマル1につきましては、保険会社側の継続的な代理人であるという乗合代理店の法的立場との両立が困難であると考えられますが、マル2につきましては、概念上は、各保険会社の代理人という立場と両立させることも可能であると考えられます。

このことを踏まえて、以下の論点について検討する必要があるのではないかと考えております。まず乗合代理店は、法律上は保険会社側の代理人であることから、顧客が誤解しないよう、その立場について説明をしていただく必要があると考えるが、どうかということでございます。顧客の誤解を防ぐ観点からは、単に「保険会社から委託を受けて募集を行っている」ということではなく、「保険会社のために保険募集を行っている」など、わかりやすい説明が求められると考えられます。

次に、所属保険会社と顧客の間で「公平・中立」であることを標榜するなど、保険会社の代理店としての立場を誤解させるような表示を行うことについては、禁止すべきと考えるが、どうかという論点があろうかと存じます。

次のページに移っていただきまして、乗り合っている保険会社間における「公平・中立」を標榜して活動することについて、どう考えるかという点でございます。A案、B案の2つを書いております。A案でございますが、顧客が「公平・中立」を『所属保険会社と顧客の間で「公平・中立」である』と誤解するおそれがあることから、併せて禁止するという考え方でございます。これについては、「公平・中立」の言葉を用いない他の表示を網羅的に禁止することは困難ではないか、どこまでの表現なら可能と考えるのかという論点があろうと思います。また、必ずしも禁止する必要がない『乗り合っている保険会社間における「公平・中立」を標榜して活動すること』まで禁止してしまうおそれがあるのではないか、ということが考えられます。

次にB案でございますが、『乗り合っている保険会社間における「公平・中立」であること』等を標榜すること自体は禁止しないものの、それぞれ乗合代理店の特性に応じ、適切な保険募集を担保するため、体制整備義務等に基づき、追加的な措置を求めるというものでございます。追加的な措置の具体的内容としては、乗合代理店の特性、具体的には規模、形態、乗合会社数、取扱商品の違い等があろうかと思いますが、その特性に応じ、例えば、以下のものが考えられるのではないかと考えております。1つは、把握した顧客の意向を踏まえ、複数の保険会社の商品から特定の商品を勧める場合に、推奨理由を説明するための体制を整備することでございます。顧客の意向に合致している商品のうち、一部しか推奨しない場合に、当該商品が顧客の意向に合致している理由に加えて、当該絞り込みの理由を併せて説明していただくことが、考えられようかと思います。また、顧客から求めがあった場合に、所属保険会社から受領する手数料等を適切に開示するための体制を整備することも考えられるのではないか。

このB案は、自社の募集のやり方を宣伝する以上は、それに見合ったサービスをしっかりと提供していただくということで、その義務を課すという発想に立ったものと言えるのではないかと考えております。

私からの説明は、以上でございます。

○洲崎座長

ありがとうございました。

それでは、ただいま事務局より説明のあった「保険仲立人・乗合代理店に係る規制のあり方」について、ご質問、ご意見をお願いできればと思います。

水口委員、どうぞ。

○水口委員

ありがとうございます。

乗合代理店が「公平・中立」を標榜して活動することについては、基本的にご提示いただきましたA案に賛成です。乗合代理店が乗り合っている保険会社間における「公平・中立」を標榜して活動することについては、概念上問題ないとしても、乗合代理店が比較販売などを行う場合などには、顧客が「公平・中立」を、所属保険会社と顧客との間での「公平・中立」であると誤認するおそれが大いにあると思っておりまして、「公平・中立」を標榜すること、及びこれに類する行為は禁止すべきだと考えております。

また「公平・中立」を標榜する立場をとる募集人については、仲立人の類型で対応することが妥当だろうと考えております。なお従来、「公平・中立」をうたう代理店について言及があったわけですが、A案に加えまして、多数の保険会社の商品の中から比較販売をする、事業モデルを標榜する乗合代理店については、どの保険会社の代理店であるかの身分開示に加えて、代理店が見込客に提示する、あらかじめ絞り込んだ商品、例えば3商品とか限定するのではなく、全商品、取扱商品にかかわる透明性のある選定基準に基づいた、推奨理由の開示を含めた情報提供義務などを課すことが妥当だと考えます。こうした募集人の特性に応じた行為規制を明確化することが、消費者の視点を含め、健全な保険業界の展開に資するものになるのではないかと考えております。

以上です。

○洲崎座長

葛石様。

○葛石オブザーバー

「公平・中立」につきましての意見を、協会として述べさせていただきたいと思います。

14ページにありますA案、B案を、当局からご提示をいただいておりますけれども、協会といたしましては、A案に賛成、B案は反対という立場でございます。

理由について、少し述べさせていただきます。「公平・中立」は、その表現については、歴史的に平成4年に保険審議会で議論されておりまして、答申の中の「新しい保険事業の在り方」でうたっておりますように、中立的な立場から利用者の最もふさわしい商品をアドバイスすることが期待されるブローカーには、損保代理店、生保募集人と異なる存在意義があります。また仲立人制度の導入に当たっては、利用者保護の中立性・的確性の確保から、賠償資力の確保、手数料の開示などがあるとされております。このことから、保険審議会の認識では、「公平・中立」な立場は仲立人に存在するものである、そのために利用者保護の観点から、複数保険会社の商品選択には必要な行為規制が課せられていると理解しております。

我々といたしましては、保険審議会の答申は重いと思っておりますし、我々はこれを遵守、遵奉しております。乗合代理店に保険仲立人と同様な規制をかけたらというご意見もあるようでございますが、そもそも乗合代理店は保険会社の代理店、代理人でありまして、セラーズエージェントであります。つまり代理契約のある保険会社のために保険募集を行っているものであります。それに対して保険仲立人は、バイヤーズエージェントであります。顧客の代理人としての複数の保険会社の選択の中から、顧客ニーズにかなう保険契約の媒介を行うものであります。保険仲立人と乗合代理店では、基本的には立場が違います。すなわち製販分離とか利益相反面において、全く立場が異なるものでございます。同様な規制をかけることは、論理矛盾があるのではないかと考えております。

私たちは、仲立人協会といたしまして、乗合代理店の立場やその存在意義は十分理解しております。が、乗合代理店がその業務の中で複数保険会社の商品比較とか、アドバイスや比較販売を行う場合は、乗合代理店は保険会社の代理人であって、比較する保険会社の管理・指導を受けて、その行為を行うことになるのではないでしょうか。そうすると、具体的に申し上げると、もし10社乗り合いがあるとすれば、10社の商品を顧客に提示すべきものなのです。そのような手続を行っているのは、現実的には疑問に感じております。

一方、保険仲立人は顧客の代理人でありますので、すなわち顧客の立場であることから、顧客の利益を守ることは当然のことでございます。ですから顧客に対して誠実義務、それから手数料の開示、あるいは保証金の供託等の多くの規制を遵守しているということでございます。この立場の違いが、比較販売における保険仲立人と乗合代理店の決定的な違いだと思っております。

このことから、消費者保護の観点から、「公平・中立」の立場を担保されている保険仲立人への移行を主張するものなのですが、ただ全ての乗合代理店に対して、保険仲立人への移行を求めているのではございません。複数保険会社の商品比較、アドバイスなどを行うのであれば、その部門について移行を求めておるわけでございます。

当局お示しの資料にございますが、11ページだったと思うのですが、1-1の11ページあたりに、「公平・中立」を標榜して募集する場合には、すべからく保険仲立人となることを求めるのは、実際には困難ではないかというご意見がございました。私どもといたしましては、何が困難かを、もう少しご教示いただければありがたいと思っております。

もし、受け皿としての体制整備に懸念があるとおっしゃるのであれば、仲立人は既に16年の実績に基づいておりまして、損保、生保、資格試験は、年2回ずつ、4回実施しております。また資格保有者につきましては、eラーニングを使用いたしまして、更新制度も導入して順調に進展していることを、申し述べたいと思います。

これまでの意見を整理させていただきますと、複数保険会社の商品比較、アドバイスや、比較販売を行うためには、「公平・中立」の立場で行うことが求められておるわけで、顧客保護を前提としなければならないと思います。そのための制度が既に保険仲立人としてでき上がっておるわけでございますから、どうか仲立人ライセンスをご活用いただきまして、ご検討いただきたいというのが、意見でございます。

以上です。

○洲崎座長

加藤委員。

○加藤委員

ありがとうございます。

今ご発言されたお二方に続きまして、私もA案に賛成です。このペーパーを読み、「公平・中立」に2つの意味があることを理解しましたが、読む前は2つの意味の違いの理解を私自身もできておりませんでした。相当に難しい概念整理だと思います。その意味で、消費者に誤解を与えないためにはA案のほうがよろしいのではないかと思います。

また、ここで懸念点として挙げられています「公平・中立」の言葉を用いない他の表示を網羅的に禁止することは困難ではないかというポイントは、ほかの規制と同様に、プリンシプルベースで、顧客に「公平・中立」といった誤解を与えないことをきちんと規定すればいいのだと思います。つけ加えれば、そういった誤解を与えるような行動や表示をしていないかを、業界団体、それは生保協会、損保協会並びに代理店推進協議会等かと思いますが、一種の自主モニタリングによる自浄作用を図っていく取り組み等は、検討の余地があると思います。そういった実効策により、このような懸念は十分に解消できるのではないかと考えます。

最後に、水口委員のお話にあった「比較販売をするときに推奨理由を説明するための体制は、それはそれで必要だ」という点に触れさせて下さい。この論点はB案の中に入っている話ですので、積極的な情報提供義務という別段の議論の中で、いろいろな角度から議論をするポイントだと思っています。A案の中には、いわゆるこれまでベストアドバイス義務と言われたものは、入っていないという理解でおり、その意味でA案に賛成ですが、そういった理解でよろしいでしょうか。

○伊野保険企画室長

ご指摘のように、A案、B案とは書いておりますけれども、B案の中に書いていることが、「公平・中立」を禁止しない場合だけに限られるという話ではないと思っておりまして、そういう意味では、A案をとるが、他の部分で、B案の米印で書いている内容の部分が、別途の形で体制整備義務としてあることは、当然あり得ることだと考えております。

○加藤委員

私の意図は、米印の箇所、特に推奨理由説明、もともとベストアドバイス義務と呼ばれていたポイントについては、別段で、積極的な情報提供義務という文脈で議論すること自体は賛成ですが、今回私がA案に賛成だというのは、ベストアドバイス義務はA案には入らないという前提で、賛成だということでございます。

○洲崎座長

阿部委員。

○阿部委員

A案、B案どちらかではなくて、その複合もあるという前提で、B案の中で具体的に書かれておりましたもので、例えば最初のポツでありますが、「推奨理由を説明するための体制の整備」の中の括弧で、「一部しか推奨しない場合に」は、ほんとうに必要かどうか。それから「手数料等を適切に開示」というのは、どういう意味なのか。一つの保険商品を売ったら、出来高払いで幾らという手数料体系になっている場合もあるでしょうし、もっと相対的なその場的手数料という場合も、1件1件適切に開示するのは、どこまでやればいいのか、あるいはほんとうに可能なのか、事務当局にお伺いしたいのですが。

○伊野保険企画室長

論点ですが、委員の皆様方からいただいたご意見を書いておるものですので、必ずしも事務局としてこうしたいという意図を明確にしておるという趣旨ではないのですけれども、今までいただいていたご意見でいきますと、手数料開示をする時に、単にそれを保険契約に結びつけたら幾らということだけでは、必ずしもなくて、それ以外で何件売ったら更にプラスアルファがあるとか、別の名目で支払われるようなものもあるので、その辺かなり開示するのは難しいのではないかというご意見もいただいております。

そういう意味では、もちろん手数料開示をするのであれば、その1件1件のことを開示することもあるでしょうし、トータルで保険会社からどういう契約に基づいてどれだけの手数料が支払われる、というトータルでどうなっているのかを開示することもあると思います。そこはいろいろなお考えがあったかと思います。

○阿部委員

要は原価を開示するに等しいような話ですよね。規制料金ならともかく、そうでないものについて、そこまでやる、やらせるという権限がほんとうにあるのかどうか、非常に疑問だと思います。

○洲崎座長

後藤委員。

○後藤委員

ありがとうございます。

私は今までの水口委員と葛石オブザーバーと加藤委員とは違いまして、A案には反対で、B案のほうがよいのではないかと思っております。なぜかと申しますと、まず、そもそもこの話が出てきたのは、いわゆる来店型の保険ショップですとか、比較サイトもこれに入ってくるのかとは思いますけれども、今現在、銀行窓販については一定のトラブルがあることはご紹介があったかと思いますが、来店型保険ショップや比較サイトについては、何かはっきりとしたトラブルがたくさん起きているわけではないのだが、何となく怪しいという観点から始まったお話であるかのように、私としては理解しております。怪しさは確かに否めないところはもちろんあるかとは思いますけれども、他方で、それはそれで消費者には受け入れられて、全ての消費者ではないかもしれませんが、そういうところで選ぶことを好む人はいるわけでして、そういうチャンネルを、何か明確な問題が起きているわけではない段階で、強い規制をすることには、消費者利便をむしろ害することになるおそれがあるのではないかという懸念を持っております。

また、こういうことをやりたければ仲立人になればよいのではないかというご指摘も、確かにそうかもしれないのですが、今現在の乗合代理店として、もしそれができるのであれば、それでもよいのではないか。何回か前に申し上げたことですけれども、一定の法的形態を無理にとらせようとする規制は、失敗に終わることが多いのではないかと考えておりまして、現在トラブルがまだそれほど起きていないことからすると、まずはB案のほうで、予防的に体制整備義務などを導入した上で、推移を見るのが穏当ではないかと思っております。

そうすると、B案でどういうことをするかが重要になってくるのかとは思いますけれども、まずここで一番重要なのは、「公平・中立」であるという外観と期待をお客様に対して与えている訳ですから、その期待に応えることが一番重要なわけでありまして、それは米印のついたところでいいますと、何であなたにはこの保険商品が一番いいと思って勧めているのかということを、はっきり説明できるようにさせておくことが、一番重要なのかと思っております。

また、何回か手数料のことを私から申し上げたことがあったかと思いますけれども、何が何でも全ての場合に見せなければならないわけではなくて、お客さんが、何でこっちの商品ではなく、こっちを勧められたのだろう、あっちのほうがよかったのではないかという不満を持ったとき、ひょっとしたら自分の、つまりお客さんの利益ではなくて、代理店の利益を優先したのではないかという懸念を持ったときに、手数料を見せてみろと。そこで、販売したのが手数料の高い方だったというような、外観的にはやましいような状況があるとすると、やはり自分のことを優先したのではないかというクレームをつけやすくなり、そうではないのであれば説明をするようい要求できるという効果が期待できると思われます。他方で、そもそもお客様に不満を持たれないような募集をしていれば、そういう手数料を見せろという請求も少なかろうかと思われるわけでございます。なので、顧客から求めがあった場合にという要件は、基本的には残すべきかと思います。先ほど阿部委員のご指摘がありましたように、具体的にどうするのかというと、いろいろ難しいこともあることは何回か実務の方からもご指摘がありましたが、この手数料の開示は、理念的にはやはり重要なものではないかと考えております。

ただ、ここに書いていないお話で非常に重要だと思われることが、もう1点ございまして、トラブルは起きないほうがいいわけですが、トラブルが起きた場合の賠償責任をどうするかという問題です。これは体制整備という観点に少しなじみにくいから書いていないのかもしれませんけれども、もしB案で行くのであれば、そこまで含めて考えておくべきではないかと思っております。

乗合代理店は、あくまで代理店であるということからいきますと、保険業法の283条に基づきまして、所属保険会社が責任を負うことになる。複数の保険会社が乗り合っている場合に、どれが所属保険会社なのかという難しい問題はもちろんあるわけですが、それは少し置いておくとしますと、乗合代理店で特に比較して売るような形をとっている場合は、どこか特定の保険会社に主に従属しているという形はとりにくいわけでございまして、そうすると伝統的な代理店とは異なって、保険会社のコントロールが及びにくい部分はやはり一部出てくるだろうと思います。比較をするところは、むしろ独立してやっているところが売りであるとすると、そこは特定の保険会社のコントロールは及びにくいかもしれないわけでございます。

そうすると、283条が所属保険会社に責任を課しているのは、コントロールできる権限を持っているところに責任を負わせることによって、しっかり監督させるという抑止効果を期待している面があるかと思いますが、こういった「公平・中立」を標榜するタイプの乗合代理店に対して、これをそのまま適用すると、資力があるのは保険会社のほうですから、保険会社にだけ賠償請求がされて、保険会社だけが責任を負うとすると、抑止効果が果たせないことになるおそれがあるのではないかと思っております。抑止効果という面から重要なのは、来店型の保険ショップや、もしくは銀行窓販の場合は銀行も入るのかもしれませんが、実際に問題行為をしたところが、まず自腹を切って払うことが一番重要であり、その後で、そこがもし払い切れなかった場合には、賠償資力の確保をどうするのか、損害の填補という観点からどうするかということが問題になってくるのかと思っております。

それを実現するための仕組みはいろいろ考えつくわけではありますが、また先ほど申し上げましたように、所属保険会社のコントロールが完全に及びにくいところがあるとすると、283条の選任・監督のところの免責の解釈論にも影響が及ぶことがあるかもしれませんが、そうすると所属保険会社が責任を負わない場合があって、賠償資力の確保をどうするかという問題が重要になってくるかと思われます。

そのときに賠償資力の確保といいますと、仲立人のように供託金もしくは責任保険契約を締結させるという形もあり得るわけですが、逆に言うと、そこで上限が決まっているわけでございまして、大きな保険会社が後ろに控えている場合と比べると、ひょっとしたら契約者としては、後ろに保険会社が控えているほうが安心できるという面もあるかもしれません。それを無理やり、1,000万、4,000万の限度に押しとどめることは、それはそれで果たして消費者利便にかなったことなのかという疑問もあるわけでございます。

それではどうするかというと、いろいろ頭の体操はできるわけですが、一つは、283条をそのまま適用すると保険会社に行ってしまいますから、そうではなくて、283条の適用を除外して、第一に代理店が責任を負うこととし、その上で、保険会社に連帯保証ではなくて単純保証をさせれば、検索の抗弁、催告の抗弁があるので、請求は先に代理店に行くことになるかと思います。そういう保証契約の締結を義務づけることは考えられるかと思いますが、そこまでやると、やや大がかりな話になりますから、今現在の規律をベースとすると、所属保険会社が損害賠償責任を一度払った場合には、今でも求償はできることになっているわけですが、求償がどれだけ行われているかはよくわからない。そうであるとすると、体制整備義務の中身として、こういうタイプという定義が非常に難しいという問題はあるかもしれませんが、こういうタイプの代理店に対しては保険会社としては原則として求償しなさいということを保険会社の体制整備の中身として要求していく、その辺まで考えておく必要があるのではないかと思っております。

長々としゃべってしまいましたけれども、そういった形で、まずは現状の乗合代理店という形のままでできることをやった上で、それでもしほんとうにトラブルが起きるようであれば、そのA案のようなことを考えてもよいとは思っておりますが、現状ではまだA案にいくのは時期尚早ではないかなと考えております。

以上でございます。

○洲崎座長

錦野委員。

○錦野委員

ありがとうございます。ピュアに考えまして、例えば自分が10社の商品を取り扱っている乗合代理店から、1社の1商品を勧められたとした場合、自分・顧客側としましては、10社の備える商品群の中から一番いいものを勧めてくれたんじゃないのかなと誤解してしまうおそれ、というのは否定できないような気がします。それは全ての人が当然そう思うわけではなくて、そう思わない人もいるわけですけれども、そういう誤解が生じてしまうおそれは否定できない。特にコンサルティング販売を標榜している乗合代理店の場合というのは、なおさらではないかと思います。

当然、乗合代理店の側からすれば、そんなことなんてそもそも、100も200もの商品の中から選ぶなんていうことは、そもそもできないし、そんなことは約束したわけではないし、やっていないことは常識ではないかと。だから、そんなに悪いことをやっているとか、アンフェアなことをやっているというつもりはないのだとは思いますけれども、そういう認識のギャップが生じる余地というのはあるのではないか。それがやはりお互い望まぬ不幸な結果をもたらしているのではないのかなと、私はそういう推測をするところであります。

顧客の側からすれば、10社、と多くの保険会社の商品を取り扱うことを標榜しておきながら、後になって、例えば4社しか検討していませんだとか、4つの商品だけしか検討していませんというのは、もしかしたらアンフェアに映るのかもしれません。

いずれにしましても、これは両者の認識のギャップですから、それを取り除けばクリアできる、そんなに難しい問題ではないのではないか、と考えております。

ですから、このB案に書いていただいている米印の1つ目のところ、複数の保険会社の商品から特定の商品群を勧める場合に、推奨理由を説明するですとか、一部しか推奨しない場合に、絞り込みの理由を併せて説明、こういうところは私は賛成です。

ただ、例えば10社の100商品を取り扱っている中から、最後1つに絞り込んだ理由を説明するのは大変なので、例えば、10社を取り扱っています、そのうちに私は4社の4商品を検討しました、私はこれだけしか検討していないのですけれど、検討した中から、あなたに提案する1商品というのは、こういう理由で絞り込みました。その検討した商品の数ですとか、あるいは内容と、そこからの絞り込みの理由を説明するということにすれば、先ほど申し上げたような、10社の100商品を検討してくれた上でのベストなアドバイスではないかとか、そういう疑念、誤解というのはクリアできる問題かなと思います。

ですからそういう意味では、方向性としては、この事務局の提案に賛成なのですけれども、検討した商品がこれこれですというのを明確に顧客に伝えて、そこからの絞り込みの理由、これは非常に顧客にとっても、先ほど加藤委員からベストアドバイス義務とかいう言葉もございましたけれども、確かにこれまでの議論の中では、商品説明を超えるプラスアルファの説明というのはアドバイス義務と言われてきたわけですけれども、当然私は売り手側がアドバイスをするという世界もあるのだと思っておりまして、それは顧客の利便性にも合致するものだと思っております。確かにベストアドバイス義務みたいな強い、ほんとうにこの商品群の中で一番ふさわしいのはこれですみたいな強いものではないのですけれども、別に顧客の代理人ではなくても、実際売り手と買い手との間で、売り手が事実上アドバイス的なことを行っているということは、この社会の中でたくさんあるわけです。この保険業という、いわば免許業者であり、あるいはそれを売る人は登録業者であるという、いわば限られた人、能力がある人しかできない世界のことですから、一定のこういう推奨義務を課すということはあり得る話、これまでのベストアドバイス義務とかいう話とは別のところで、あり得る話だと思いますし、またそれが結局は、この審議会の一番の目的である、現状よりも、より顧客が求めているような販売勧誘のあり方というのは一体何なのかというところに資することになるのではないかと思っております。

あと、手数料開示のところは、私は現状では、それをやったからといって、どれほどの効果があるか見込めないというところと、全てのお金の流れは透明であるほうがいいという考え方もあるのは承知はしておるのですけれど、やはり身内の中のお金の流れを開示したくないという気持ちもわからないでもないですし、そういうところからすれば、手数料開示のところは賛成はいたしません。

以上でございます。

○洲崎座長

沖野委員。

○沖野委員

今、錦野委員が示されました認識に賛成をしたいと思います。また、後藤委員のご指摘に対しても賛成をしたいと思います。考えるところを少し述べさせていただきたいと思います。

乗合代理店について、公平・中立を標榜しなければそれで足りるのかということなのですけれども、錦野委員がご指摘になりましたように、このような形でコンサルティングを標榜したり、あるいは比較販売を標榜するようなビジネスというものが、それなりに需要があって、そこを適正に伸ばしていく。いわば仲立ちというものが完全オーダーメードでつくってもらえるというものだとすると、既製品を多数の中から選択して、一種簡易オーダーと言いますか、そういうタイプの選択も可能にしていくというような位置づけだとしますと、そういうビジネスというのは、およそやめてしまうべきなのかと言われると、そうではないと考えるならば、一種中間的なあり方として適正に伸ばしていくということが必要ではないか。

その際に、公平・中立であるということさえ標榜しなければ、それで足りるのかと言えば、それはやはり比較してお選びになれますとか、あるいはコンサルティングをある程度いたしますということだとすると、それに伴って、期待が生じます。その期待自体が正当なものだと思われますので、だとすると、それに合わせた実を伴うような形にするということが必要ではないかと思います。その実を伴うような形にするという具体的な中身として、このB案で提示されているような、一種追加的な情報提供というものが考えられるのだろうと思います。

一方、手数料開示というのは、私自身もまだ十分にイメージが湧かず、事後的に開示が担保されることによって事前の予防になるというようなこともイメージできるのかとは思いますし、1つの方法かもしれないのですけれども、どのような形で働くのかと具体的に問われますと、まだちょっとよくわからないという感じは確かにいたします。

もう一つ、B案という考え方に立ったときに、そういう形で実を伴うようにするということと、さらにはセットで、もし、そうではないのであれば、その期待を打ち消すような行動を明確にするということが必要ではないかと思っておりまして、その意味でも、公平・中立を標榜しないというだけではなくて、そのような何社もそろえているような代理店であれば、それなりに適切なものを選び出してくれるのだろうという期待が醸成される、またそれに乗ってビジネスをしているということもあるのだとすると、うちは、そうではないのですということを明確にする。そうであれば、それはこういう形で、こういう方針でやっておりますからということを明示してもらえばいいのではないか。

その意味では、例えば選択に当たって、いろいろ選び出すときの基本的な方針はこういう形でやっておりますとか、そういう開示があればよろしいのではないかとも思います。

ですから、錦野委員がおっしゃった認識のギャップが醸成されるようなビジネス形態になっていると思いますので、それに合わせた規律というのを考えるべきではないか。その意味ではA案か、B案かということであれば、内実としましてはB案でいくべきではないかと思いますけれども、もちろん公平・中立ということになりますと、これは仲立ちと同じであるという誤解を生ずるのであれば、それはさせてはいけないという考え方もあり得るとは思います。

ですので、A案と組み合わせるということもできるかと思うのですが、申し上げたいことは、A案だけでは十分ではないということです。

もう一つ、後藤委員がおっしゃった賠償責任の問題というのは、これはおそらく非常に重要なことだろうと思いますけれども、私の理解では、現行法のもとでも、業法では所属保険会社ということが明示されているとはいえ、そのことは具体的に不適切な勧誘行為をした者が責任を負わないということでは、もちろんなく、そして今も私法上の責任としては、おそらく不真正連帯というようなことになるかと思いますので、その規律のもとで、しかし想定される保険会社のコントロールについて強弱がどうしても出てくるということが代理店の形態によってはありますので、それに合わせて適切な予防というか、行為の誘導づけというのができるような責任のあり方というのは、なお考えていく必要があると思っておりまして、後藤委員がおっしゃった、求償は原則として行わなければならないというような考え方というのは、全く思いつかなかったのですが、あるいはそういう考え方ですとか、補充的な責任にするとか、賠償責任のあり方というのはあわせて検討する必要があるというのは、そのとおりではないかと思います。

以上です。

○洲崎座長

丹野委員。

○丹野委員

皆さんがおっしゃっているように、今、沖野先生がおっしゃったみたいに、私もB案の絞り込みの理由をあわせて説明というところ、ここの部分は欠かせないものだと思っています。

それから、A案の公平・中立の話は、少し保険をかじったことのある人間として、公平・中立というのは仲立人しか言えないと思い込んでいたのですが、現実が軽々とそれを乗り越えて、この間アンケートを見せていただいたら、もう公平・中立とアンケートの中に既に書いてあるというような段階まで、そこまで行っているということであれば、やっぱりそれは本来誤認を招くものですから、そこは何らかの形で制限をするのが望ましいのだろうと思っております。

乗合代理店のまちの保険ショップの話をなさっていますが、私は随分前にプレゼンをさせていただいたときに、銀行の話を申し上げて、そのときに、銀行に対して、もう既に保険会社はコントロールができませんよと申し上げて、283条との関係を何らかの形でご検討いただきたいと申し上げました。

そのときに、既に私法上の販売責任があるのだからというようなお話があったので、そういうものなのかなと思いましたが、先ほど後藤先生がおっしゃっていただいたことにいたく勇気づけられまして、そういう意味では、現実に保険会社が大きな代理店に対して、代理店が販売上の過失があったときに、一義的には保険会社が賠償責任を負うのだけれど、では、代理店に対して求償をしているかというと、私が聞いている限りでは、求償が実際に行われているようには見えないという部分では、やっぱりそこら辺について何らかのご検討は必要なのではないかと思います。

○洲崎座長

神戸委員。

○神戸委員

ありがとうございます。公平・中立というイメージというのは、間違いなく顧客に誤認を生じさせる原因の一つになると思います。そこで公平・中立をアピールすることをもしも禁止するとどうなるかというと、おそらくは複数の会社の商品から選択できますというアピール方法に今度はなるかと思います。これはより実態に近いわけで、現状よりもいいとは思うのですが、その場合でも、沖野先生などがご指摘になっておられましたが、ほんとうに顧客の意向に合致している商品だということの理由を正しく説明できるかという問題が残るでしょう。実態を見ますと、同じようなニーズの顧客に対して推奨する商品が時期によって変わっていたりします。これはコミッションやインセンティブとの関係が、おそらく存在していると思われ、代理店側がこのような理由で、その商品を推奨したという記録を積み重ねていくのと同時に、チェックする側が、重要なチェックポイントの一つとして、時期によって結論が異なっていないかどうか、整合性がとれているのかをしっかり把握するようにしていけば、実態にメスを入れられる可能性が高いと思います。

誤認を生じさせやすい言葉を、とりあえず使わないようにするというのと同時に、イタチごっこを繰り返さないようにするためには、むしろ選択理由のきちんとした説明がより重要になると思いますので、皆さん方のご意見もそういう方向性かと思いますが、私もそちらに賛成したいと思います。

○洲崎座長

米山委員。

○米山委員

これまでのご意見を聞いていますと、一番最初に葛石オブザーバーがおっしゃった制度的な不整合という点について、あまり議論されていないようですが、本来は平成4年に使いにくい仲立人制度をつくったというところが出発点であり、正論としたら、仲立人の制度変更をおこなうことが、公平・中立な立場な募集を制度として手当ておこなわざるをえないのではないかと思います。これが正論だと思います。

ただし、皆様のお話を聞いていますと、公平・中立な立場という文言によって消費者に生じる誤認が、契約の錯誤にまで至るような深刻な問題を生じているということはなさそうです。また乗合代理店も顧客を錯誤させてまで契約をたくさん取ろうというのではなく、顧客に対するひとつの販売話法として、手数料が多いのを売るのではなくて、顧客に適切なものを売るのが、長期的な利益にはかなうことでしょう。そもそも保険以外のビジネスであっても、販売というのはお客様の立場に立って販売するというのが基本ですので、顧客本位という販売話法までをそ禁止することはないと思います。

以上、私が言いたいのは、現時点で契約に錯誤が生じていて、すごく大きな問題が生じているのならば、制度変更を根本的に考えるべきだと思うのですけれども、現状を考えれば、それほど大きな問題を生じていないようです。よって、むしろ公平・中立な立場の表明ということよりも、比較募集を通して、いかに顧客のニーズに合った保険商品を購入するかということについて、そのためにはどういう方法が必要かというところに焦点を当てるべきだと感じます。

後者の立場からいきますと、先ほど、わりと皆様から支持があったようなB案のほうがよく、A案のように言葉だけを禁止するのではなく、B案で、例えば意向確認を実質化すると言いますか、あなたのニーズは私はこう主観的に受けとめました、その中で、幾つかある商品のうちでこれを勧めたのは、こういう理由ですということをきちっと伝えることが大事だと思います。ただし、それを規制ではなくて、業界の自主的な取り組みに任せることが、この比較募集というものを、より今後充実させて、消費者のためになるような方向にいくのではないかと思っております。

抜本的な制度改正については、正論は正論ですけれど、現在検討されている問題の性格上、正論を押し通すのは余裕はないので、いろいろ考えたあげく、やはりB案的な方向のほうが、現時点ではよろしいかなというのが私の意見でございます。

以上です。

○洲崎座長

加藤委員。

○加藤委員

ありがとうございます。数少ないA案派ということかと思います。今日の議論で、いろいろなご意見を聞かせていただきました。しかし、お聞きした上でも、やはりA案のほうがいいのではないかと私は思っております。

その理由を申し上げたいのですが、ご説明の中でB案、A案比べたときに、A案は大変厳しい規制で、B案のほうはより緩い規制だというご説明があったかと思うのですが、実態論では全く逆なのではないかと認識をしています。

例えばB案での推奨理由説明責任、手数料開示、賠償責任。一番目の推奨理由の説明をとりましても、相当にこれは難しい、厳しい規制だということを、3つの点から申し上げたいと思います。まず1点目ですが、推奨理由説明というと良いことのように聞こえます。ですが、例えば、友人が保険を買いたいといったとき、あの商品がいいよと言葉で伝える、アドバイスをする。なぜと聞かれて、あそこはソルベンシーがどうでと説明する。これは簡単ですが、いわゆる法律上の推奨理由説明責任、義務と言われるレベルになってきますと、書面にして、後に検査等々があったときに「中立・公平」な説明をしたという証拠を整えるというような義務が出てくると考えます。

諸外国の例をあまり持ち出すつもりはありませんが、そういったお客様一人一人の書類をつくるだけでも、2時間程度の時間がかかると聞いております。この辺は実務をやられていらっしゃる仲立人協会さん等々にお話しいただいたほうがいいのではないかと思いますが、自分が思う主観での推奨理由説明をしているという話と、推奨理由説明が合理的であり公正であるという立証責任を果たすという負担の重さは相当に違うのではないかということが、1つ目のポイントです。

2つ目のポイントは、先ほど神戸委員からもご説明がありましたが、比較販売というと、ついつい何かアドバイスをしてという販売形態だけに目が向きがちです。しかし、世の中には、単純に5社、10社の商品を横に並べ、お客様の意思で選んでくださいといった販売形態のビジネスモデルも、存在すると思っています。推奨理由説明責任を、単純に複数のものを並べているだけの代理店にまで課していくのは、その人たちはそもそも推奨していないのですから、過剰な規制ではないかと思っております。

最後に3点目ですが、規制が厳しいこと自体をいけないと言うつもりはございません。ございませんが、規制が厳しい結果として、先ほど米山委員からもお話しがあったように、事務対応コストと言いましょうか、お客様にきちんとしたサービスを提供していくコストが、規制対応によって高くなってくる。結果として、お客様、消費者に対して低廉な商品を販売することができなくなる。仲立人さんからも、今取り扱っている商品の単価が幾らぐらいという説明が前にあったと思いますが、通常は高単価の商品、企業向け等々が主流だと認識をしています。これは日本だけではなく、諸外国もそうかと思います。

こういった何時間もかかる事務・書類作成対応を課していくとしたときに、消費者が実際求めている月額数千円といった低単価の商品を、並べてあるものの中から、消費者が自分の意思で選ぶといった購入形態まで、実態的に駆逐をしてしまうような規制というのは、あまり望ましくないと私は思います。

○洲崎座長

後藤委員。

○後藤委員

今の加藤委員のご発言に関連してですけれど、B案のほうが厳しくないと申し上げたのは私であったかと思いますが、加藤委員ご指摘のように、規制コストがどうなっていくかということは非常に重要な点で、そこが軽いということを申し上げたつもりではなくて、どういう趣旨で申し上げたかと言いますと、特定の行為をそもそもやってはいかんというのがA案で、やってもいいのだけれども、やるにはちゃんとやりなさいというのがB案であるということからすると、およそやってはいけないというよりは、ちゃんとやれば、やっていいですよというB案のほうが、規制のタイプとしては厳しくないという趣旨でございます。

そのときに、書類をどれだけつくるかというのはいろいろ問題があるということは、ご指摘のとおりかと思いますし、また、先ほど米山委員のご発言にあったように、比較募集をして売る、業者側が比較をしてあげるというのは、それは公平・中立を標榜するというよりは、むしろ実態に即した切り口なのかなとも感じましたけれども、そのときに、比較というのが、お客さんが勝手に見て選ぶというのは、それはここで言う業者側が比較をしてあげているというのには入らないのではないかと感覚的には思っておりますが、ただ、おそらくB案を採用するにせよ、A案を採用するにせよ、どういう定義で、この対象を捉えるかということは重要な問題であると、加藤委員のご発言からも思ったところでございます。

以上でございます。

○洲崎座長

ちょっと私も発言してよろしいですか。私は2回前のワーキングのときには、どちらかと言うとB案にはやや消極的な発言をしたと思うのですけれども、そのときの発言の趣旨は、現状は代理店と保険仲立人という2分法になっているところで、B案をとると、3つ目の類型を新たにつくることになる。保険会社と継続的に委託関係にありながら、顧客に対してもベストアドバイス義務を負うような、そういう新しい類型をつくることになりかねないけれども、それについてはまだ一般的な合意ができていないのではないか。それについてはワーキングで十分に議論する必要があるのではないかということを申し上げたと思います。

ただ、A案でよいと思っていたわけでもなくて、A案の問題点、この事務局の資料にもありますように、「公平・中立」の言葉を用いない他の表示を網羅的に禁止することは困難ではないかとありますように、公平・中立と言ってはいけないといった場合にどういうことが起こるかと言うと、先ほど神戸委員からもご指摘あったと思いますけれども、複数の保険会社の商品の中から選択して推奨しますと、顧客本位で推奨いたしますというようなセールストークになるのではないかと予想されます。しかし、顧客本位で売りますということをおよそ言ってはいかんというのは非常に難しいと思うのです。個々の保険会社の営業職員であっても、お客様本位で私は推奨するのですということは、一般的に言っていることだと思いますし、それこそ、あらゆる物品販売で言われるようなセールストークだと思うので、それを禁止するというのは難しい。

しかし、顧客の側からすると、複数の保険会社の商品から顧客本位で推奨するのですと言われると、ベストな商品を選んで売ってもらっているのかなという誤解が、やはり生じてしまうという問題があって、そこはおそらく一番の問題だと思いますので、その場合A案のように公平・中立を禁止するということだけでは済まなくて、さらにそれに類似するような表示も禁止しなければいけないのだけれども、ただ、それを現実のルールに落とし込むというのは非常に難しいかなという気もいたしております。

一方で、B案のように、乗り合っている保険会社の商品の中から顧客にとって一番いいものを売りますよと言った場合には、それに応じたルールを適用するという、そういう柔軟なルールというものも、果たして実際のルールに落とし込むことが容易かというと、例えば監督する立場としては、この代理店は一体どういう立場で売っていたのかというのは、まさにその売る現場でないとわからないわけです。

また、代理店の中には、先ほど沖野委員からもご指摘があったように、必ずしも顧客にとってベストの商品を選んで売るんですよと、別にそこまで言って売るつもりはない、単に複数の商品の中から、乗り合っている保険会社の商品の中から売るのですよというだけの代理店もあるかもしれないので、実際のルールの落とし込みを考えると、何か代理店それぞれについて、自分はどういう立場で売るのかという立場を表明するようなことをさせてからでないと、なかなかB案もうまく働かないのかなという気もするのです。

とりわけ代理店だと、保険業法283条で保険会社の損害賠償責任が出てきますので、保険会社としても、これも2回前にオブザーバーの方からご発言があったかと思いますが、代理店がどういう立場で売るのかわからないと、管理ができない。それこそ仲立人的な責任を負ってまで売ろうとしているのか、それとも、単に乗り合っている保険会社の複数の商品の中から推奨しているだけで、顧客に対しては別にベストアドバイスをするつもりもないというだけの、そういう代理店なのかというのが、保険会社の側からわからないと、安心して委託できない。保険会社としては、普通の代理店と同じものだと思って委託契約を締結したところが、実は、その代理店は、ベストアドバイス義務を負いますよというような形で顧客に対して販売するかもしれないという問題を考えますと、やはり代理店にどういう立場で売るのかということを表明させるという、そういうルールを組み合わせることが1つ考えられるのかなという気がいたしております。

では、家森委員。

○家森委員

そもそも論で、少しお尋ねしたいのですけれども、今回は、乗合代理店ということで、A社の商品とB社の商品のどっちがいいか、悪いかという話をしていますけれど、A社の商品の中でも手数料がいっぱいもらえる商品と、そうでない商品があれば、同じことが起こっていると思うのです。それで、私たちの議論の目的である、安心して選択できる保険募集という観点から言うと、そういうような、仮に1社の保険しか扱っていなくても、手数料のいいものと、そうでないのがあって、どっちを売るかという時に、お客さんにとってというよりも、代理店の観点で販売するというのを禁止すべきなのか、それも商売なのだと考えるのかというところも当然議論の範囲に入ってくるはずです。しかし、そんなことを言い出すと、極端には、各代理店は1つの商品しか売ってはいけないとかになってしまうので非現実的だと思うのです。

そこで、私自身は、やはり現状ではお客さんの側との間で情報の非対称性があるので、何らかの形で顧客の側の情報の非対称性を補うような措置が必要で、このような体制整備を何らか設けていくというのが現実的ではないのかなと思います。

最終的には、我々が、乗合代理店に対して顧客のニーズに合った保険の提供を促すということは大事だということでは合意ができているのですけれども、それをどこまで厳しくするかという程度の問題ではないのかなと、今のところ感じます。

○洲崎座長

いかがでございましょうか。葛石様。

○葛石オブザーバー

少し補足の説明をさせていただきたいと思うのですけれども、先ほどのB案につきましての反対というような表明をさせていただきましたが、このB案に書かれております代理店さんと、保険会社の間の距離なのですが、私どもがそれを距離感の問題として把握をいたしましたときに、実は先般9回のときに、アンケートのご説明があったと思うのですが、現実に乗合代理店さんは乗合保険会社さんと均等に取引をされておる現状ではないのです。いわゆる偏向があるのです。

ですから、例えば10社乗り合いしているからといって、10社の保険会社と均等に売り上げを分布させているというようなことではなくて、いわゆる特定の保険会社数社に、実は偏っているというのは、この間のアンケートの中にもあったように思います。

そんなところがありまして、必ずしもここで公平・中立という言葉を標榜するということは、基本的に誤解があるということを申し上げた理由で、反対ということを申し上げたことでございます。

2つ目、賠償資力のことでございますけれども、4,000万、1,000万というお話もさせていただきましたけれども、今現状、最低4,000万、最高8億というのは補償金としてそれを積んでいただきたいということでありまして、賠償として、別に8億円が限界だとか、限度であるとかいうことではございません。むしろ8億円では賠償としては足りないケースもあるのかなと。もちろん取引高によるのですけれども、そういうことも想定しておりますので、ただ補償金としての問題であって、我々は今現行4,000万を超えるところは、賠償保険でその補償金を代替えできるという制度でございます。それを1,000万まで引き下げていただきたいというのが要望の趣旨であったとご理解いただけたらと思います。

3つ目でございますけれども、商品販売の問題につきまして、少し仲立人に対して過剰なご期待をいただいているところがあるのではなかろうかと思います。実は仲立人は、完全オーダーメードで商品を売っておるというのは、これは全くの誤解でございます。仲立人は、昨年、一昨年でありましたか、私も参考人でここへ出させていただいたときに申し上げましたけれども、例え話で申し上げると、いわゆる薬局の薬を買うときに、薬局で買われる場合と、それとお医者さんのところへ行って薬を出していただく場合と、2つありますということを申し上げたと思うのです。

要は、薬局でいろいろな薬が並んでおって、その薬をお客様が自分で選ぶ。これは当然薬剤師さんという方がいらっしゃってアドバイスをいただくこともあるやもわかりませんが、基本的にお客さんが主体で選ばれる。ところがお医者さんの場合は、そこへ患者さんが行くわけですから、お医者さんはその状況を見て合った薬を調合して差し上げる、調剤薬局のようなことになるのですけれども、そういう概念がもともとあると思います。

今、仲立人はオーダーメードと言われるのは誤解だと申し上げるのは、やはりイージーオーダーもあるのです。というのは、現に代理店さんもイージーオーダーをやっておられるケースは、もう多様でございます。そんなところで、実は仲立人はお客様のために商品を選択をしてさしあげる。この選択をしてさしあげるというところには、能力が要るのだというのが1つの私は今の制度の問題なのだと思っております。

ですから、お客様が並んだ既成商品をご自由に選択をされるということは、それはそんなに、いわゆる販売者側の能力を問われることではございませんので、そこのところは制度整備の中ではきちっとご理解をいただければいいのかなと思っております。

それから4つ目でございますけれども、仲立人は企業向けだという、これも誤解でございます。今の日本の仲立人制度は、結果そうなっているということでございまして、別にリテール部門が仲立人に合わないということでは決してございません。例えば米国においては、リテールは仲立人制度で約30%ぐらい、おおよそでございますけれども、3割ぐらいはリテールは仲立人が現に取り扱っております。そんなところをご理解をいただきたいと思います。

以上でございます。

○洲崎座長

米山委員。

○米山委員

今のご意見に関連して、先ほど私は正論は正論だけれども、今回は正論を押し通すことに対して否定的な発言をしてしまったのですけれども、多少エクスキューズしますと、私の真意は、中立・公平の言説に関する解決のために、抜本的な制度変更で対応するのはやや大げさかもしれないという意見でございます。

今葛石さんの言われたように、もともと仲立人の制度というのは、かなり使いにくくできていて、やや供託金の規定なども、私から考えると非合理な、つまり基本的に供託金というのは賠償資力の証明なのですけれども、それは供託金だけができることではなくて、賠償責任保険だとか、いろいろな手当てがあるわけですから、総合的にそこの賠償資力を証明すれば足りることであって、ただただお金を積めばいいという問題ではないかなと思います。

そういったことを考えると、乗り合い代理店のカウンターバランスとして、せっかくこういった仲立人制度があるわけですから、もう少し使い勝手がよくなるとよいと思います。

あと、保険産業の仲立人に関する参入障壁が非常に高いので、参入障壁が低くなれば、こういったビジネスをやってやろうという人が出てくるかもしれません。

今現在は、この前のご報告を聞きますと、保険仲立人は若干数はあるけれども、実際には廃業したりして少なくなっているのが現状とお聞きしました。本日の本題からは外れるかもしれませんが、ある意味で産業育成的な観点からも、ブローカーの制度を見直す必要があると考えております。

以上です。

○洲崎座長

錦野委員。

○錦野委員

先ほどの座長のご発言の中の、売る側の立場を表明、明示すべきだというところには、ほんとうに大賛成でございまして、私の先ほど申し上げました発言も、やはり販売者側と顧客側との間の認識のギャップですから、そういうところで売る側の立場についての誤解がお互いに生じてしまえば不幸になる。それをクリアするためにはどうすればいいかということなので、その立場をお互いが認識を共有し合えば、間違うことがなければ、クリアできる問題というのはたくさんあるのだと思います。

そういう意味では、例えば加藤委員がおっしゃられたように、10社の商品は並べていますけれども、並べているだけで、自由にスーパーマーケットみたいに勝手に選んでくださいというのであれば、それはもう推奨は一切しません、並べているだけです、どうぞご自由にということを表明していただければいいのだと思いますし、推奨もしない人に対して、推奨理由を説明しろと言っても、それはちょっと酷というか、不可能を強いることになるので、そういうところまで申し上げるつもりはございません。

それと、ちょっと論点は変わるのですが、後藤委員が先ほどおっしゃられていた、代理店に対する保険会社からの283条の求償の問題なのですけれども、保険会社も会社、すなわち株式会社・相互会社であって、取締役は善管注意義務とか忠実義務を負っていますので、求償すべきものを、しないとか、あるいは求償できるのに、しないとか、そういうことに対しては一定の歯どめというのは、私は弁護士という立場で外部から見て、そういうところについて意見書を求められるところもございますし、私は一部しか多分把握できていないのだと思いますけれども、そんなに保険会社さんがいい加減にやっているという印象はなくて、一応きちんとした検討を経た上で、求償するのかしないのか、するにしても何パーセントいくのかというのは決めていらっしゃるのではないかと思っております。

以上でございます。

○洲崎座長

後藤委員。

○後藤委員

先ほどの葛石オブザーバーと、今の錦野委員のご発言について、若干の補足をさせていただければと思います。まず、仲立人の賠償資力についてですが、私が多分1,000万と4,000万という数字だけ挙げて、8億のほうを言わなかったかと思うのですけれど、8億もあれば確かに大丈夫なのかなとは思う反面、結局、仲立人の賠償責任保険がどういう場合に支払われるかという問題があり得るわけでして、この責任保険の約款をちゃんと拝見したことがないので、わからないのですけれども、例えば故意でやってしまった場合には、免責になるのが責任保険一般ではないかと思いますが、そういう場合に8億の保険金は出ないわけですし、また責任保険で代替できる額の下限を1,000万まで下げてしまいますと、下限というか、そういう場合には供託金しか残らないわけですが、それを1,000万まで下げてしまいますと、そこにはやはり不安が残る。決して仲立人を何か敵視しているというわけではないのですけれども、この保険でどこまでいけるかという問題はあるのかなと思って、先ほどのような発言をした次第でございます。

また、今の錦野委員のご発言で、確かに保険会社が求償を適当にやっているというわけではないのですけれども、申し上げたかったのは、制度設計として代理店が責任を負うということの抑止効果を発揮させるためには、そもそもそこが責任をちゃんと負わなければならないということであって、保険会社が求償をしないという判断が保険会社の経営判断としては許されるとしても、それによって求償がなされないとすると、代理店は自分のやったことについて責任を負わないということが生じてしまいますので、そこの経営判断はむしろ求償をするという方向で狭めるのが、賠償責任法の抑止効果を発揮させるためには、制度設計としていいのではないかという趣旨でございます。決して、保険会社がそこをおざなりにやっているというわけではございません。

○洲崎座長

よろしゅうございますか。

いろいろご意見をいただきましたが、A案かB案かで、どちらかと言うとB案のほうが多数意見であったかとは思いますけれども、先ほど申しましたように、B案をとれば、それで問題解決するというわけではなくて、当代理店はこれだけの保険会社から委託を受けて、これだけの商品を販売することができます。この中から顧客本位で推奨いたしますという形で売る代理店が出てきた場合に、そういう代理店にB案のルールを適用するとした場合に、具体的にどうなるかというと、多分答えは出てこないと思うのです。

だから、B案的なルールを採用するとしても、具体的な落とし込みのところを、もうちょっと検討する必要があるかなと思いますので、事務局ともご相談いたしまして、また次回以降に事務局のほうで整理していただいて、さらに検討を続けさせていただければと思います。

よろしゅうございますか。

では、この問題に関してということですね。

○荻野オブザーバー

AとかBの話ではないのですけれども、1つだけ、やっぱりちょっと気になることがございまして、代理店の身分開示ということについてでございますけれども、資料に記載されております保険会社のために保険募集を行っているというような身分開示の方法というのは、保険募集に携わる者といたしまして、やはりその使命感とか職業倫理といった面から、何か非常に違和感を正直感じるところでございます。

法的立場とかチャネルにかかわらず、お客様のためにお役に立ちたいという思いというのは、全チャネル共通しているはずでございまして、そうした実務を通してお客様の信頼を得ていく。そしてそれが、あえて言えば保険会社のためになっているというのが保険募集のあるべき姿になっているのではないかと思います。

また、保険会社自体も、お客様の視点、お客様の立場に立ってと言われていることからしましても、この募集人がそうした方針に従って募集に励むということ自体、何ら自然なことではないかと思います。

したがって、保険会社のためにという身分開示は、やはりちょっと問題があるのではないかと思います。

以上です。

○洲崎座長

これは一例として、こういうルールも考えられるかなということで書かれたかなと思いますけれども。

この問題については次回以降の会合で改めて議論を行いたいと思います。

それでは、続きまして保険募集に関する行為規制・募集文書のあり方に係る議題について、再度事務局から簡単にご説明をお願いいたします。

○伊野保険企画室長

それでは、右肩に資料1と書いてあります、説明資料をごらんいただければと存じます。

まず1ページでございます。1ページから2ページにかけまして、前回いただきました各委員のご意見をざっと整理しております。簡単に読み上げていきます。販売勧誘の局面で顧客のニーズを把握して、それに見合った商品を勧める。結果として顧客がニーズに合致した商品を購入する、これが非常に大事なことであり、共感が得られているところだと思う、というご意見をいただきました。

これをどう実現するのかという観点からということだと思いますけれども、顧客の意向のニーズを把握するということは当然で、余計なものを売るような変なことをしている人がマーケットからなぜ排除できないのかという、そういう問題をそもそも扱うべきではないか。市場で解決してもらうのが原則ではないかと思う。各社の自主的な努力、創意工夫で十分ではないかという、規制よりは市場原理に基づいた淘汰を重視するご意見をいただきました。

一方、現在制度化されている意向確認書面による意向確認を、どのようにして実効性のあるものとしていくのかという観点を中心にしたご意見を多数いただいております。意向確認という振り返りの確認を、「意向確認書面」を取りつけてやっているという実務があるが、一番最後に意向確認を取るというところにあまり利益がないのであれば、それを前に持っていってしまうほうがよいのではないかというご意見。

一方で、やはり最後の時点での確認が重要という観点のご意見もあり、保険商品の特性を考えると、いろいろ学習した結果、一番最後の時点で自分が納得するかどうか、最後の時点での確認をもう少し充実させることが、保険商品の特性に合わせたニーズに見合った契約かどうかの確認方法ではないか。

次に、最終的な意向確認のところで、本当に加入者が自分が買う商品というのがどういうものかというのをわかっているかどうかを確認するのが一番大切である。最終的な意向確認の部分について、もっときちんとやるような仕組みを考えるのが大切。契約概要・保険設計書の内容の1つとして、顧客のニーズに応えて変更していったという履歴が残るものがあるので、ここをもう少し上手に活用するということで対応できるのではないかといったご意見をいただいております。

契約に至る経緯、過程を振り返れる仕組みをつくるという観点からは、この他にも募集主体の側から、どういう理由でどういう商品を勧めているか、それが何か記録に残るような仕組みがあってしかるべきではないのか。

また、打ち合わせ記録のような形で、やりとりの過程で適切な確認をしていくということはできないのかといったご意見。

2ページに移りまして、意向確認書面の効果を最大限あらしめるには、振り返りを行うということが重要だが、今は振り返る相手先がない。振り返ることができるような記録があった方がいいのではないか。ある1点の時点でなく、契約に至るまでのやりとりや、契約者本人の思考の過程をたどっていくことができるような、保険設計書をつくるときの営業マンのコメントであるとか、打ち合わせ記録などをうまく活用しながら、後からたどれるようなものを整備した方がいいのではないのかといったご意見を頂戴しております。

次に、法令上の義務となると、募集実務との関係で留意すべき点としてご指摘をいただいていることといたしまして、意向把握書面について、非常に多様なので、全部1つの形式でやるというのは非常に難しく、法令で規制する書類とするには疑問があるというご意見。

意向把握、意向を踏まえた商品を推奨する義務については、募集プロセスの入り口におけるニーズ把握とか、募集プロセスの途中とか、最終段階などにおける当初のニーズの振り返りができる仕組みというのは有用であるが、商品とか顧客とか、チャネルなどの特性に応じた対応が可能なものであることが妥当ではないかといったご意見を頂戴しております。

こういったものを踏まえまして、3ページ、4ページで論点として整理をさせていただいております。行為規制のあり方について、保険募集に当たっては、本来、募集人が顧客の潜在的ニーズも含めたニーズを把握し、当該ニーズに沿った商品をわかりやすく説明・提案し、顧客自身が自身のニーズに沿っているものであることを認識した上で保険契約が締結される必要がある。このため、現状、推奨された保険商品が自らのニーズに合致しているものかどうかについて顧客自身が確認した上で保険に加入できるよう意向確認書面を導入し、顧客自身による契約締結前における最終確認の機会を確保している。しかし、昨今、当該意向確認自体が形骸化しており、導入時に求められた効果が必ずしも発揮されていないとの指摘がされているところである。

大体、以上のあたりまでは、皆様の共通の認識といったところではないかと考えております。

3つ目でございますが、顧客が、自らのニーズと保険商品の内容が合致していることをしっかりと確認・認識した上で、当該保険に加入することを確保するためには、顧客自身が募集人の説明を受ける毎にニーズの変遷を確認し、契約締結前の段階において顧客が自らのニーズの形成過程や商品内容との関係を理解した上で、契約を締結できるようにすることが有用であると考えられる。この観点からは、募集人が面談毎に顧客とのやり取りについて記録し、当該記録について顧客自身が募集人とともに確認し合い、当該確認した内容を文書で残すことが理想と考えられる。

しかし、ニーズの変遷を含めた両者のやりとりの概要の全てを記録し、保管・提示・確認することは、顧客・募集人にとって過度な負担を課すおそれがあるというところで、この辺についても、おおむね皆様の認識という意味では一致と言うと、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、おおむねの認識はこんなところではないかと考えております。

それを踏まえて、4ページでございます。そこで、個別・具体的な商品の提案に入るまでに、提案の前提となる顧客ニーズについて、募集人と顧客が確認をするプロセスを確保することが重要であると考えられるが、具体的には、どのような手法によることが考えられるかといった論点とさせていただいております。

注1ですが、来店、訪問、通信販売、インターネットなど、保険募集のチャネルは様々なものが考えられます。各チャネルに共通する考え方を整理するとともに、具体的手法については、各チャネルの属性に応じたものとすることが考えられるがどうか。

注2ですが、顧客のニーズを把握した上で、個別・具体的な商品提案を行うことができないような実務面の障害はあるか。あるとしたら、具体的にどのようなものかということでございます。この点につきましては、特にオブザーバーの方から、実務に即した具体的なご指摘を是非いただければと存じます。

最後に、上記プロセスと連動させて意向確認を行うことが考えられるがどうかといったことが論点と考えられます。

以上でございます。

○洲崎座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいま事務局より説明があった、保険募集に関する行為規制・募集文書のあり方について、ご質問、ご意見をお願いしたいと思うのですが、最初に事務局のほうからも投げかけがありましたように、最後の4ページの注2のところにあります、実務面での障害、これについて具体的にご説明いただけますでしょうか。

では、村田様。

○村田オブザーバー

自動車保険を例にとって申し上げます。自動車を買ったから自動車保険に加入したいというお客様は、付保意思という意味での意向は既に明確なので、これを確認する意味はないと思います。

一方で、初めて自動車を買ったお客様は、自動車保険の内容を知らないので、補償の範囲や金額などについての意向をいきなり聞かれても、示しようがありません。これを障害と言うべきかどうかわかりませんが、早期に意向を確認し、その後、変遷した結果を踏まえて再度確認するというプロセスを置いたとしても、うまく働きにくいと思います。

誤解がないようにあえて申し上げますが、これまでに論点として提示された意向確認のあり方、その必要性についての問題意識に対して、何ら異を唱えるものではございません。それはそれで大事なことだと思っているのですが、自動車保険のような商品の実際の募集・契約のプロセスを考えたときに、早期に意向把握をし、記録した意向と最終的な意向を比較するという方法でニーズに合致していることを担保しようというアプローチでは難しいのではないかと思います。

実際の募集においては、対人賠償があります、対物賠償があります、など商品の概要を説明しながら、人身傷害を付保するか、対物賠償の保険金額を幾らにするか、運転者の年齢条件をどうするか、家族等に運転者を限定するかしないか、あるいは車両保険はオールリスクにするかそうでないかといったことを1つずつ相談して決めていき、最後にもう1回確認して、プロセスは終わりとなります。少なくとも自動車保険のような商品については、このインタラクティブなコミュニケーションのプロセスをいかに的確に行うか、その的確性をどう担保するかということが重要だと思います。意向を確認するといっても、自動車保険に入りたいかどうかから始まるわけではありませんし、早期の段階で契約条件に関する具体的な意向を聞いても答えられませんので、少し違ったアプローチで考えないといけないのではないかと感じました。

また、何回も提案をし直して設計書をつくり直すということが常に行われているのではなく、一度で契約に至ることが一般的です。重要事項説明書もしくはパンフレットで一連の説明をしながら契約条件を決めていって、その場で契約を締結して、その直後から保険のカバーをスタートさせることもあります。特にディーラーで車を購入して、明日納車というときには、自動車保険をゆっくり検討しているわけにいかないので、説明の時間が長いか短いかはともかく、おそらく1回で、その日のうちに契約を締結することになると思います。

この点を含めて考えても、時間をかけて記録をとってというやり方ではない別のやり方で、きちんと正しい説明をできるようにすべきなのではないか、ではそこをどう担保するかというアプローチで検討すべきではないかと思います。一言で言えば、商品やチャネルの特性に応じて、ある程度対象を分けて議論をしていただきたいということかと思います。確かに一般則は大事ですが、一般則を全部に貫徹することはなかなか難しいと思いますし、1月30日の事務局資料にも柔軟性を持たせるといったような注記もありますとおり、重々ご理解いただいているものとは思うのですが、やはりアプローチとして対象となるものの特性を踏まえての検討が必要なのではないかということで、議論に際しては、この点はお願いしたいと存じます。

実務に即しての具体的な障害としては、自動車保険を例にとって申し上げたような説明と合意のプロセスにうまく馴染まないということかと思います。火災保険ではもっと単純かも知れません。お客様にはおそらく火災だけの保険というイメージがあって、いや、実は火災保険は雪も風もカバーしていますよというようなことをお話ししながら、そういうカバーが要るか要らないかという相談をしていくのが実際の募集プロセスだろうと思いますので、やはり自動車保険と似たような点が障害になるのだろうと思います。

以上でございます。

○洲崎座長

この問題を検討するに当たって、さしあたりは特にルールの適用対象を限定せずに議論はしておりますけれども、今ご指摘があったように、火災保険、自動車保険のように顧客のニーズがはっきりしているものについて、このルールを適用しなければいけないかというと、それはかなり疑問がありますので、むしろ募集期間が相当長期にわたる可能性が高く、顧客のほうもよくわかっていない、それが募集の間にニーズがはっきりしてくる、そういう商品をむしろ念頭に置いているということだと思いますので、損害保険会社でいうと、介護リスク等を含む医療保険とか、そういった商品の販売で実務面の障害があるのかどうかについて、もし後ほどご指摘いただけるのであれば、ご指摘いただくとして、先に生命保険のほうで、梅﨑様、よろしくお願いします。

○梅﨑オブザーバー

まず、資料4ページの(注2)についてですけれども、原則的な考え方といたしましては、お客様のニーズを把握した上で、商品提案を行うというのは当然のことと思っておりますので、そのこと自体に実務面で何か支障があるかとおっしゃられるのであれば、支障はないということになるかと思っております。

ただ、実際の募集プロセスにおきましては、募集の最初の段階で設計書などを使ってお客様のご意向を確認するという方法も一般的にとられております。なぜそうした方法になるかというと、やはり保険料水準といった具体的な商品内容をあらかじめご説明しないと、お客様ご自身のニーズが明確にならない、お客様自身も具体的なイメージができないということがあります。

ですから、仮にということでございますけれども、最初の段階で、例えば死亡保障をお望みですかというようなニーズをお伺いしないと、パンフレットや設計書で商品説明ができないといった硬直的、画一的なルールになると実務上、大きな支障になるのではないかと思っておりますので、その点は念のためご留意をお願いしたいと思っております。

○洲崎座長

事務局のご提案というか、まとめでも、それほど硬直的なルールを考えられているわけではないように思いますので、そうすると、今伺っている限りでは、どうしても実務上の障害になって、このルールは受け入れられないというようなところは、それほどはないと理解してよろしいのですか。

○梅﨑オブザーバー

追加でお話しさせていただきますと、前回お話が出てきましたけれども、そもそも生命保険の募集のプロセスにおいて、お客様のご意向は募集人との対話を通じて固まってくるというところがあり、必ずしも一方通行ではなく、行きつ戻りつしながらニーズが固まっていくという特徴がございます。

ですから、前回の資料の中に、契約締結直前の意向確認の段階において、特定の一時点における当初の意向ということで記載がございましたが、当初の意向との違いを振り返るという手法はなかなか困難ではないかと思っております。

また、そのルールをどういう義務のレベルにするのかということにもよりますけれども、仮に一時点における当初意向の証跡を保険会社が管理しなければならないとか、その証跡管理のためにお客様にご署名をいただくということになりますと、これはいまだ契約に至るかどうかもわからないお客様に多大な負荷をかけるということになりますし、当然ながら、そういう面倒なことであれば、契約しないということにもなりかねませんので、そういったことはぜひご理解いただきたいと思います。そういったことよりも、今回資料の4ページに記載されておりますが、募集人とお客様が対話の中でニーズを確認していくというプロセスを、どのように確保していくかということがより重要ではないのかなと思っております。

前回のワーキングの中でも、委員から現在使われている保険設計書を活用してはどうかというご意見もいただいておりますが、そういったことも含めて、いろいろなやり方があるかと考えております。

以上です。

○洲崎座長

葛石様。

○葛石オブザーバー

仲立人の実務的なところでお話を申し上げたいと思うのですが、仲立人は現行、実は顧客とのやりとりということにつきましての記録は、もう既に法令上求められておりまして、現在運用しております。

当初、実はこういう1つの記録を残していこうということに関しては、営業の担当者というのは結構それは面倒な事務なのだと言っておりましたのですけれども、今般のように、非常に消費者意識が強くなっておりますので、お客様のトラブルを避ける手段では、極めてこの記録というのは有効なものでございます。

実は、もう体制としてのコンプライアンス担当というのがおるのですけれども、そのコンプライアンス担当が営業社員とお客様の間において、どういうような話のやりとりがあったのかというのは、この1つの記録簿に基づいて話をすればいいわけでございますので、現時点では非常に面倒ではあるのだけれども、基本的にこれしか有効な資料はないのではなかろうかというところでございます。

実は、やりとりというのは、どういうやりとりかと申し上げますと、結局我々の考えていることは、保険のお客様というのは常に事故を想定してお話をされるのです。こんなケース、こんな事故があったらどうなるのという想定をされますから、我々はそれはリスクとして捉えるのですが、基本的にリスクのどういうような事故のときに対応できるというような記録をとるわけでございます。それが1つのやりとりの記録でございます。

それからもう一つは、面倒だというのは、では何が面倒かということは、書面に書くということが面倒だということでございまして、まさしく、さっき言った書面化して残していくという、それ自体の事務、これが極めて面倒だ、それが障害だと言うのならば、それが障害だと私は判断をしております。

ただ、仲立人は、これはもう既に法律で、しろと、記録を残しておかねばなりませんよというルールになっていますので、私は常に思うのですけれども、募集手続の公平さ、代理店さんと仲立人の募集手続の公平さというような観点からすれば、私は過度な負担を課すというようなところではないのだろうと。最初は面倒だと思われるかもわかりませんけれども、基本的には記録書面をとっていくということにおいての制度というのは、私は賛同いたすものでございます。

以上です。

○洲崎座長

水口委員。

○水口委員

ありがとうございます。事務局にもお示しいただいたところでありますし、前回の繰り返しにもなりますけれども、募集プロセスの入り口におけるニーズ把握、また以前の意向の振り返りができるということは有用であると考えています。

その一方で、消費者が感じる便益以上の事務とか管理コストの増加を伴う形での対応というのが、消費者利便の向上につながらないケースもあり得るといった観点に留意することが肝要だと思っております。

先ほど、仲立人の場合はというお話がありましたけれども、多分お話があったような事例は、最初から顧客がリスク認識を持っている事例だと思うのですけれども、例えば見込客が、みずからはこんなリスクがあるので対応したいとか思っていない段階から、見込み客に募集人がアプローチするといったようなコンサルティングセールスを実施するような場合では、顧客によるニーズの認識というのがどのタイミングで固まったかというのは非常に特定しにくくて、どのタイミングでも記録をとることが趣旨に照らして実効性があるのかどうかという考え方もあるかと思います。

繰り返しになりますけれども、先ほど村田さんのお話もありましたけれども、チャネルの特性とか商品の特性に応じた柔軟な対応を許容するような考え方というのは妥当であろうと思っております。

ざっくりした話で申しわけありません。実務のことはよくわからないので、これ以上踏み込んでは申し上げられませんが、以上です。

○洲崎座長

米山委員。

○米山委員

ありがとうございます。この記録の問題で大事なことは、なぜこれを導入するかの目的ですが、先ほど葛石委員がおっしゃったように、トラブルの対応として使うことには反対です。なぜかと言うと、トラブルの対応を考えれば顧客にサインしていただくのが一番ですけれども、これは形骸化の始まりです。そのためむしろこれはトラブル対応としてではなくて、最終的な振り返りの材料として、顧客が十分に商品を理解するという、そういう目的を持って導入してほしいということを強調させていただきます。

そのために、この記録についての重要だと思うことは、客観性にこだわる必要はないと思います。なぜかと言うと、そもそも顧客のニーズを客観的に募集人が把握するというのは難しいわけで、募集人としては、お客さんはこういうニーズをおそらく持っているだろうと。それに基づいて、こういう商品を提示しましたよという程度でいいわけで、それが客観的にニーズに合っているかどうかということは、あまり重要ではないと思っております。

もう一つ大事なことは、証拠性にこだわる必要はないと思います。その理由は、先ほど申し上げましたように、証拠性にこだわり過ぎるとトラブル対応ということで形骸化するということです。以上の意味で、最後の振り返りのとき利用する記録が必要であるとしたら、客観性や証拠性に偏らず、逆にいかにその記録が振り返りの材料として活用されたのかということを中心に考えていただきたいと思います。

以上です。

○洲崎座長

錦野委員。

○錦野委員

ちょっと視点は変わるのですけれども、現在保険会社におきまして、支払いの局面等におきましても、販売勧誘のときにどういうことを言っていたのか、どういうやりとりがなされたのかというのを検討せざるを得ない状況というのは非常に多いと私は思っております。

例えば、販売勧誘時において、こういう事故の場合には、ほんとうは約款上は補償されないのですけれども、補償しますと言ってしまっていた場合であれば、これは支払い時において払うという判断をせざるを得ない局面が多い気がするのです。それでないと、やはり販売勧誘時と支払い時の間でアンフェアなことをやっていることになりますし、裁判所の判断においても誤説明ということで一定の損害賠償責任が認められる場合も多いと思います。

ですから、そういう意味では、以前にも増して、保険会社の苦情対応の局面も含めて、販売勧誘時にどういうことが起こったのかというのを振り返るべき局面というのは非常に多いのだと思います。

しかしながら、ちょっと私は実務のことをわからないところがあって、顧客とのやりとりを顧客と共有するとかいう話の前段階として、内部の記録としてどれだけ残せているのかと。そういう記録がなければ、まさに販売勧誘に携わった募集人さんの頭の中の記憶ですとか、あるいは手元にあるメモ帳ですとか、そういう個人的なものに頼らざるを得ないことのなります。保険会社として組織的に業務を行っていく上では、保険会社のような免許業者さんがやるにしては、少し心もとない。保険会社が自分たちの主張を行うに当たっても、自分たちの立場を決めなければだめなわけです。ある説明をされましたと言われた場合に、そのような説明はしていないというのであれば、やはりそういう姿勢を決めるに当たっても、情報に立ち戻ってみるというのは非常に有効なことではないかなと思います。

それで、記録の内容につきましては、ほんとうに私、弁護士として訴訟とかやる中で、結構、言った、言わないの話を争うことがあるのですけれども、人の記憶というのは、何かちょっとよりどころがあれば、よみがえってくる場合が非常に多いのです。ただ何もよりどころがなければ、ほんとうに下手したら1カ月とか2週間前のことでも忘れてしまうのですけれど、何か手帳にメモ書きをちょっと書いていたり、あるいは内部の社内記録に取引経緯みたいな記録に1行でもポイントを書いておけば、その記憶というのが即座に喚起されるという場合をよく経験いたしますので、そこに書いておくべきことは、当然テープに全部録音するなんて無理な話ですし、何時間もかけて書く必要ないと思うのです。やはり、やりとりが終わって、会社に帰ってきて、事務所に帰ってきて、5分、10分ぐらいでポイントだけ。5分、10分もかける必要はないのかもしれません。ポイントだけ走り書きするような形でもいいのだと思いますけれども、そういうのが何もない状況というのは、少し心もとないという気がしますし、もし、教えていただけるのであれば、そういうところはどういう形になっているのかなというのを、実務者の方に聞きたいというのが1点でございます。

あと、これも質問なのですけれども、提案書というのはいろいろな局面で何回も提示する場合が多いと思うのですけれど、こういう提案書を出力しましたよ、ですとか、このお客様のために、こういう提案書をつくりましたよというのは、ある程度後で記録ができている、事後検証と言いますか、客観的にわかるような形になっているのかどうかというのも、あわせてご質問したいなと思います。

○洲崎座長

これは生命保険の募集に関して、設計書をつくって提案するときに、あるいは、あるときに提案したのと、次の提案が全く違うようなときに、なぜそういう違う提案をしたのかについて、業務日誌なり、作業メモなりにそういうことが書いてあるのかというお話、その確認でした。

それともう一つは……。提案書がコンピューターの中に残っているのかというお話ですね。

○梅﨑オブザーバー

活動日誌の件ですけれども、弊社も営業職員は全員日誌をつけることになっています。その冊子がどのくらいの保存期間になっているのかというと、3カ月となっております。ですから、さきほどの後日のトラブル対応ということでは、ほとんど使えないというのが現状でございます。

あと、設計書について、皆さんどうお感じになっているかわかりませんが、我々としては設計書もかなりの枚数を作成しますので、120日、データとしては残っていますけれども、枚数はかなりになります。ですからお一人の方で数枚で済むということはなくて、何十枚も作成することがありますし、実際アプローチしてからクロージングに至るまで1年も2年もかかるというケースもありますので、最初のアプローチの際の設計書が残っているかというと、それもなくなってしまっているということも、よくあるということはご理解いただきたいと思います。

○洲崎座長

石川様。

○石川オブザーバー

基本的に梅﨑が申し上げたとおりなのですけれども、当然のことながら、システム上の保管期間というのは各社各様でして、120日というのは弊社の例でございます。あと、設計書については、私もシステム的に細かいところまで調べ切れていませんけれど、上書きされている部分もあります。お客様に提示した設計書について、お客様から例えば保険料をもうちょっと下げてくれということを言われれば、もともとのデータにさらに上書きする形になりますので、全部の履歴が120日残っているかと言われると、そういうシステムにはなっていないところもあります。

○洲崎座長

ハードコピーとして残す必要はなくて、データとして残っていればいいとも思えますので、そうだとすると、それほどシステム的にデータを残す容量を大きくすれば、残すことは可能かなという気はするのですけれども。そのあたりはどうなのでしょう。

○石川オブザーバー

物理的に可能か、可能ではないかと言われれば、可能なのでしょうけれども、コストの面は非常に大きいのだろうと思います。

○洲崎座長

もちろんコストは。ただ、以前は容量を大きくするということに、ものすごくコストがかかるということをよく聞きましたけれども、最近はそれほどでもないのではないかなという気が。

もちろん、ある時点でシステムを改めるという場合には、システムを改めるための費用というのはかかると思いますけれども、どこまでこれをルールとして定めるかですね。何月何日からいきなりルールを改めなさいということにするのではなく、しばらく猶予期間というのを与えて、いついつまでにやっていただければいいですということは、もちろんルールとしては可能かなとは思うのですけれど。

石川様。

○石川オブザーバー

前回申し上げましたとおり、ご契約に至るものよりも、至らないご契約、至らないで終わってしまう方が多いというのが事実でございますので、ルールの内容にもよるのですけれども、そういったことも含めて、全ての履歴を保管するということになると、膨大なデータになります。定量的にどれくらい増えるかというのは、今、申し上げられませんけれども、それ相応のデータ量になるというのはご理解いただきたいと思います。

○洲崎座長

後藤委員。

○後藤委員

やや実務的なというか、技術的な話が先行しているようにも感じるのですが、そもそも何のためにこれをやるのかということを前回お伺いして、今回も同じようなことを申し上げますけれども、前回の議論を私なりに整理をしますと、これによってやろうとしていることはおそらく3つで、ニーズに合っていないものを防ぐということからすると、まず1つは、銀行窓販のところで出されたお話で、預金をしに来たつもりが、全く違う投資性もしくは掛け捨ての保障性の商品に入ってしまったという場合に、そんなものは全く違っていたという場合。

もう一つは、保険に入ることは保険に入るのでいいのだけれども、このカバーが欲しいと思っていたのだけれども、それが足りなかったという場合。もしくは逆に、こんなカバーは本当は要らなかったのだけれども、うまく乗せられて余計な特約をつけてしまった、つけ過ぎたという場合。この3パターン以外にもあるかもしれないのですが、容易に想像つくのは、この辺りだろうかと思います。

それに対して、コストの面については、データ容量が30年前と今では全然想像つかないぐらいに進歩してきていますから、あと15年たってどうなるか、またわからないわけですけれども、そこはさておいて、今回やろうとしていることが、先ほど挙げました3つの場合にどういう効果を持つのかということを見きわめた上でないと、そのコストをかければ何とかなるという場合であっても、そのコストは最終的には契約者に転嫁されていくとすると、そこはコストとの見合いで、どれだけ効率的なものかということを検討する必要があるのではないかと思っております。

その観点から言いますと、この事務局のご提案がどういうことに対処しようとしているのかが、依然としてすっきり整理されていないように感じるところがありまして、例えば3ページの3つ目のところ、契約締結前の段階で、結局自分が入りたいものと合っているかどうかということを検討するというお話からすると、これはカバーが足りているか、足りていないか、余計なものがついているかというところに焦点が合っているようにも思われるわけなのですけれども、他方で、4ページの三角マークがついているところから言いますと、これは商品の提案に入る前に、大体どういうものがあなたは欲しいのですかということを聞くというのは、どちらかと言うと銀行窓販で預金だと思ったら投資性になってしまったとか、保障性の掛け捨てになってしまったというようなものにターゲットにしているように思いまして、この「そこで」というのが、私は論理的につながっていないところのような気がするわけですけれども、まずそこのターゲットの整理をする必要があるのではないかということが1点でございます。

その上で、またそれぞれ対処すべき問題ではあるとは思うのですけれども、もし最初の段階で預金のつもりで来た人に、余計なものは売ってはいかんということであるとすれば、それはやはり最初にご確認をする。金商法の適合性の原則が入ったときの実務が過剰反応したという話はいろいろありますけれど、それと似たことになってしまわないようにしつつ、最初に、あなたは結局ざっくりと分けて元本保証の預金が欲しいのか、投資をしたいのか、掛け捨てでもいいから保障が欲しいのか、そういうことを聞くというのは、それはそれで有益でしょうし、ただそのときには、それを後から振り返るという話ではなくて、最初に預金がいいと言って来た人に、ほかのものは売ってはいかんというタイプの規制になるのが本筋ではないかなと感じております。

それとは別に、先ほどからのお話で、対話を全て記録するとかというのは、おそらくその中で出てきた、こういうカバーも欲しいんだよねということを言ったら、それを拾うということがあるとすると、それはどうするか。全部記録ができればいいのでしょうけれども、それはなかなか難しい。設計書を全部保存するというのは、それはそれでできるのかもしれないのですが、設計書に反映し忘れたニーズの要望があった場合には、設計書全部取ってあっても意味がないわけですから、そこは何か別のものを考える必要があるだろうと思います。

おそらく一番有益なのは、最後の段階で提供され得るカバーのリストのうちから、あなたが今回選んでいるのは、これと、これと、これです、それぞれ保険料がこの部分で幾らですということがついていて、丸がついていない部分が明示的にわかるようになっていれば、ここはついていなくていいんですかということを募集人の方が確認すればいいでしょうし、また、カバーがついていますというだけではなくて、それぞれ幾らで、結局トータルこうなったのかということが分かれば、ここで保険料がこんなにかかっているのだったら、やっぱりやめておこうという判断が最後でできるのであれば、それはそこでできるかと思います。

その場合には、今現在の意向確認書は、非常に中途半端なものになっているというのは否めないかと思っておりまして、今の意向確認書面と申込書、もしくは生保の場合では設計書のカバーする範囲が一番詳しく載っている部分で、そこには当該申込者が選択していないものとかも載っている会社が多いかと思いますが、その辺を工夫することによって、少なくとも最後の段階をまずきっちりするということは、十分検討するに値するかと思いますが、それに加えて、途中のものを記録するというのは、コストとの見合いで、最後の段階の整備でなお足りない場合に何をするかというように考えるべきなのではないかなと思っております。一番申し上げたかったことは、結局何をされたいのか、どういう問題に対処されたいのかということを、まずはっきりと意識して、事務局のほうで整理をされていれば、それをお聞かせいただければと思います。

○伊野保険企画室長

かなりはっきり申し上げたつもりではございましたが、これまでの議論を整理させていただきますと、意向確認の時点で何に入るかというのは、現在では最終的な契約をする時点ですので、それでは実質的に同じ紙にサインを2つ書くだけだということになっている。そういう意味では、何らかの形で、その時点で振り返るものがあったほうがいいのではないかというのは、これまでの当ワーキング・グループでのご議論だったのではないかと理解をしております。

○洲崎座長

後藤委員。

○後藤委員

そのご趣旨は理解しているつもりなのですが、何のために振り返りたいのかということを、どうご理解されているかというご質問でございます。

○伊野保険企画室長

振り返ることによって、自分の意向が何だったのか、何に入りたいのかというのがはっきりするからだと思っております。

○洲崎座長

現状では、最終段階の少し手前というか、ほぼ最終段階で意向確認書面を顧客が見て、それに署名するということを実務としてやっていると思うのですけれども、その署名をするときの重要な情報として、どういう形で自分は販売勧誘を受け、意向確認書面として最終的に出てきたような契約を締結することになったか、それを振り返る資料として何かあればいいなという、振り返りというのは、そういうことかなと思います。

ただ、その振り返りの資料として、これまで出てきた設計書を全部出せばいいのかと言うと、そこは難しいと思います。具体的にどういう資料を出せば、振り返ったときに顧客がほんとうにこれは自分の意向だったのかということを確認する資料になるのかというのは、なかなか難しいところだとは思います。

もう一つは、顧客にとっての振り返りの効果だけではなくて、募集人の側でも最終段階ではなくて、最初あるいは中途の段階で顧客のニーズを把握しながら募集をすることに役立つのではないか。業務日誌なり、保険設計書なりで顧客とのやりとりをメモをすることによって、募集の質を上げることはできるという、そういう効果はあるのではないかなという気はするのです。

事務局側からのペーパーでは、そのあたりははっきりとは出ていないのかもしれないのですが、私は個人的には振り返りの効果とともに募集の質を上げるために役には立つのではないかという気はします。

ただ、これが後藤委員がおっしゃるようなコストとの見合いで、果たしてそれだけ大きな、コストに見合うようなベネフィットがあるかと言われると、私も100%大丈夫だという自信はないのですけれども。

それから、預金誤認の問題は、これは後藤委員がおっしゃるように、あまりこれでどうしようということではないのかと。確かにニーズを把握するという話が出てきたそもそものきっかけが、国民生活センターの預金誤認の問題提起として出てきましたけれども、しかしそれはそれとして考えればいい話であって、最初のところで預金なんですか、どうなんですかと、あなたが欲しいのは何なのですかということを聞けば、それでもう解決される問題ではないかと思いますので、今出てきているのは、それとは違うことを目的にしているのではないかと私は理解しております。

丹野委員。

○丹野委員

私はどちらかと言うと、非常に消極というか、後ろ向きでございまして、今取られている意向確認書面というものが、要はその消費者、お客様の意向を担保するということになっているのだけれど、でも、意向は本当は申込書で担保できるわけでしょう。申込書に契約条件が書いてあって、そこに署名捺印することで、そのお客様のその時点のニーズはほんとうは把握できるはずです。

ただ、それなの意向確認書面をどこで取ったらいいかわからないから、結局一番後ろへ持ってきて、そのニーズが顕在化したところで、そこが一番はっきりしているから、そこで取っているという実務で、それは完全に重複しているのではないかと思っています。

そういう意味では、意向確認書面が本来果たすべきであった役割を、その時点で取ることがそんなに意味があるのだろうかと思っております。トラブルのために取るのではないと、さっきご意見ありましたけれど、現実にトラブルがある中では、意向確認書面というのを取られましたでしょうと消費者に聞いても、そんなもの書いたかしらというレベルでございまして、非常に周知されていないし、理解されていない。だけど書面として厳然として証拠性を持って存在するということに、全部が全部とは申し上げませんが、そういう部分もあるということなのです。

でも、消費者の意向はやっぱり適切に把握して、保険会社はお勧めしなければいけないということになれば、では、せめてももっと証拠性が必要だとか、システムがどうのという話、ベネフィットがあるかという話は、非常に無責任な言い方をすると、わからないのですけれど、ある一定の前の時点で取るほうが、本来この意向確認をするという目的に沿うことが結果として想定できるのではないかと思って、それに賛成しております。

基本的に、例えば前も後ろも全部取ります、トレースも全部しますなんていうことを言われたら、せっかく前々回のときに、募集の帳票は非常に増えて、顧客がとても負担で困っていると。だから募集帳票をダイエットして、顧客が理解できるものにすべきだという方向性は皆様ご了解いただいていると思うので、書面をこのことで増やすという方向には、きっちり反対でございます。

○洲崎座長

沖野委員。

○沖野委員

何のためかというところなのですけれども、私も二兎か三兎ぐらいを追えるような感覚もございます。まず入り口ですけれども、どういう場面を念頭に置いているかですが、やはり一定の期間にわたるような交渉なり、やりとりがあって、その中で最終的にどういう商品の選択が望ましいのかが徐々に固まっていくというようなタイプのやりとりについて、典型的に念頭に置いているということかと思います。ですので、最初にお話のあった自動車とか火災とかはもちろんですけれども、銀行窓販との関係で全然違うものを売られるというような話は、別の問題と考えております。

そうしたときに、ここで確保すべきは、望んだ商品を買う、あるいは契約を締結することになったというところをいかに確保するかという問題で、望んでいるかどうかというのは最終的には顧客にしかわかりませんので、顧客が確認できる。そのためのサポートとして、どういうものが望ましいかということであり、現在は最終段階での意向確認書になっているのだけれども、これがおそらく契約の申込書とほとんど変わらない程度の情報や類型化になっているために、形骸化しているという指摘があったりするのだろうと思います。

そうだとすると、かつ、過程の中でいろいろと変わっていく、あるいは絞り込みが行われていくということからすると、その過程の要所要所で確認のための手がかりが残されることが必要ではないか。そして、その対話の中で固まっていくのだとすると、しかし、そうは言っても会話では、お話をしていてわかったような気になっても、実は、どうだったっけというようなことはありますので、ある程度透明性の確保のためにも、あるいは顧客自身が確認するために記録に残すということが考えられていいのではないかと思います。

そのときの視点や目的の1つには、意向を絞り込んでいくという中で、なぜこの商品の選択へとつながっていったのか、それが変わっていくということであれば、なぜこれになったのかというところを打ち合わせというか、やりとりの要所を記録する形で渡してもらう。それが新しく書面をまた1通、1枚つくってということですと大変ですので、現在使っておられるような設計書ですとか、あるいは提案書のところに備考のような形でつけてもらうようなことが想定されるのではないかと思っております。

それは選択の点で、望んだ選択へと向かっているのか、あるいはそれが実現されたのかという確認なのですが、それとともに、一方で問題となりますのは、商品を十分に理解しているのかという問題もあるかと思います。例えば、そういう保障の内容だとは思わなかったというようなことは、実は非常に重要な事項として注意喚起の情報ですとか、パンフレットとかにも書いてあるのだけれども、しかし、いろいろな情報の中に埋もれているということもあります。そういう中には必ずしも必要のないものも置かれて、幾つかの選択肢が全て書かれているために、自分にとっては特定の情報だけが必要なのだけれども、その情報がどれなのかが十分にわからないというようなこともあるのではないか。

それについては、選択として、商品を選んでいくということよりも、例えば一定の疾病については、そのカバレッジというのはこうなのだけれども、もっと広いカバーだと思っていたという場合を考えますと、では、もっと広いものが選べたかと言うと、そういうのはないのだけれども、内容についての期待が別途形成されていた。でも、それは、例えば約款のここを見ればとか、あるいは注意喚起のここを見ればわかるというようなときに、特定の疾病についてのカバレッジを重視しているということであれば、そのカバレッジのところは、ここに書かれていますからというようなことをあわせて備考欄にでも書いていただくと、そうすると注意喚起になり、そのことは商品理解を確実にした上で選択するという確保にもつながっていくのではないか。

一方で、そのことがさらには募集の質の確保につながるというわけで、選択についての確認というか、その確保と、それから商品理解についての確保、また募集自体の質と座長が言われた点もあるかと思いますので、そういうものとして利用ができないかということを考えております。

そうしたときに、今の提案というか、考え方の中では、個別具体的な商品の提案に入るまでにニーズを確認する、これ自体は確かにとても重要なのですけれども、こういう形で具体的な商品の設計に入るために大体詰めてからそれに入るというようなタイプでないもののほうが、念頭に置かれるものではないかと思いまして、そうすると、例えば入り口のところでぽんと1枚出して、間で1枚出してとか、そういう形ではなかなか対応としても、またそれが形骸化するというようなことにもなるように思われます。そうだとすると、募集の現在行われているものの中に追加的な行為として、業務日誌で書くようなことを一部、顧客にわかる形で、顧客の手元に残る形で追加してもらうということがいいのではないかと思います。

問題は、そのコストですとか、あるいは、そういうことをきっちりやっていますということを公にするためのさまざまな管理ということなのですが、具体的にそういった書面を実際に出したということを明らかにすべく逐一写しを取っておく、保険の最終の期間まで取っておくというようなことではなくて、例えば方針として、こういうことがあったら、それはここに記載してくださいとか、募集に当たる人たちへの教育だとか、あるいはそれが容易になるような書き方の例ですとか、そういうのを示す形で、実際に努力をしているということがある程度わかるようなものにする、そういう方針立てと教育の実施という、せめてそのくらいのことができないだろうかと思います。

○洲崎座長

阿部委員。

○阿部委員

議論を伺っていて、何をしたいかよくわからないのですけれども、2つあります。

1つは、3ページの下のほうから2つ目の、「理想と考えられる」と。この理想が実現できる範囲であれば、やればいいわけで、例えば特定の損保商品みたいに1回の面談で終わるようなものは、極端なことを言えば、録音を全部とっておいて、それをぜひ保存していけばいいわけで。そうでなくて、何度も面談しながら少しずつ形を変えていくようなものについては、とてもこれは過度な負担になるので、できない。

結局、保険の商品販売業態によって、やるべきことは全部違ってくるはずなのです。それを無理に何か1つの形式の行為規制におさめようとすると、またどうせ形骸化するに決まって、意向把握書面というのはできるに決まっているわけでありまして、ここはもう行為規制としては、個別具体的な商品の提案に入る前に、ともかく顧客ニーズの確認をしろというところが精いっぱいではないのですか。それをどうやって担保するかについては各業態に任せるしかないので、何か特定な文書を求めたりとか、あるいは行為規制として、こういうことをやれということをやっても、結局また何年かするうちに形骸化してしまうというだけではないかと思うのですが。

ここは業態、業界ごとの自主性に任せて、少なくとも入り口で顧客のニーズを把握しろということが精いっぱいのことではないのですか。

○洲崎座長

錦野委員。

○錦野委員

私も結論としては、今の阿部委員の意見と非常によく似ています。前々から申し上げているとおり、私はやっぱりそういうプリンシプル、顧客のニーズの的確な把握ですとか、それにのっとった商品の販売、この目的というのは非常に大事だと思いますし、実務家の委員のご意見を聞いていても、ここを否定する方はいらっしゃらないようにお見受けしているのです。

ですから、こういう目的、プリンシプルみたいな、金商法の適合性原則みたいな漠としたものを規制としては導入していただいて、具体的なものというのは、ほんとうに商品性、例えば先ほど村田オブザーバーからわかりやすいご説明がありましたけれど、やはり生保と損保、実損填補型でニーズ顕在型でというのと、ニーズを掘り起こしていくものとの違い、なかなか理屈では微妙なところがあるのですけれど、イメージとしてはものすごくわかりやすい話ですし、あるいは販売の形態です。非対面か対面か、あるいは特定の商品を推奨するというコンサルティング販売みたいなアドバイス型でやるのか、そうでない、先ほどのスーパーマーケットでやるのかとか、やりようというのは全然違ってくるのだと思いますので、そこはある程度、監督対象事業者の裁量が働くような形にしてはどうかなと思います。

それから、丹野委員が先ほどおっしゃられた意向確認書面の確認時期が、申込書と同時期だから問題なのではないかと。申込書でやればいい話ではないかというところは、私は必ずしも丹野委員の意見と同じではなくて、結局、申込書を書かなければ、買わなければ、そこで立ち戻ることができれば、それは当然購入者側が立ち戻ることもありますし、あるいは売り手側、募集人側が立ち戻ることもあります。そこで立ち戻ることができれば被害はないわけですから、しかも最終的なニーズ確認というのは、やはり一番真剣みを持って検討するというのは購入する前ですから、その時点において最終的なニーズ確認を行うというのは、私の中では一番実効的、かつ負担も少ない効果的なやり方ではないかと思っています。

確かに、それで全てが解決するか、それで全ての紛争が予防されたり、全てのことが解決するかというと、そうではなくて、プラスアルファも必要だし、今の意向確認書面の実態というのが少し形骸化しているというのも否定できないところはあるのですけれども、一方でその考え方自体は、私は間違っていないのではないかと思っております。

以上でございます。

○洲崎座長

神戸委員。

○神戸委員

確認は最終段階でというのは、私の前からの持論なわけなのですが、同時に現在の意向確認書が形骸化しているというのも事実だという認識を持っています。

普通に考えると、もしも形骸化してしまっているものであれば、このようなものに変えたらいいのではないかという話が進むのではないかと思います。前回、村田部長様から損保に関してはタスクフォースが立ち上がって、重要事項説明を具体的にこういうものに変えるというお話があり、以前のものとはずいぶん違うというのがはっきりわかったわけですが、生命保険会社さんへの素朴な質問として、現在用いられている意向確認書の内容自体を実効性があると思われる、またそれまでの経緯がわかるような内容のものに変えようという検討は、行われておられるのでしょうか。そのあたりについて伺えればと思うのですが。

○洲崎座長

では、梅﨑様。

○梅﨑オブザーバー

このワーキングでも一度お話しさせていただきましたが、契約概要と注意喚起情報につきましては、業界のほうで各社に分析を依頼して、それが終わって、各社から情報を集めて分析をし、有識者の方の意見を伺いながら見直す作業を、今やっているところでございます。

○神戸委員

その作業が進んでいけば、ここでこういうふうに確認できるねと納得できる形で、途中の経緯もわかるものができるのではないでしょうか。阿部委員がおっしゃるように、いつかまたそれも形骸化してしまう恐れがないとは言えませんが、少なくとも現状よりはだいぶ前進して、余計なコストもあまりかからずに、顧客の意向の振り返りも含めて、申込書に捺印する前にチェックできる仕組みができるのではないかと思います。

それが、ここまで議論が進んできた中での、私の率直な意見です。

○洲崎座長

丹野委員。

○丹野委員

要は、錦野先生さっきおっしゃいましたけれど、振り返りをすることに意義があるのだという話なのですけれど、ほんとうにそうなのかなというのは、やっぱり著しく疑問でございまして、これがいいよということになったから申込書に書いてある保険にサインするのでしょうということと、密接に結びついていて、そういう意味では、書面で取るかどうかは別にして、もっと前のところでニーズを把握するというご意見に私は賛成でございます。むしろ今ここまで話が進んでいるのであれば、ぜひ保険会社側にお願いをしたいのは、申込書をきちんと、今は別に意向確認書面を取らなければいけないことになっているから、そこは保険会社はなかなか難しいのかもしれないけれど、申込書が今の確認書面になるような形であれば、皆さんのおっしゃっている振り返りというのは現実に可能なのではないかという気はします。

ただ、それがほんとうにニーズの把握ということで、それでよろしいのかという部分については、まだ私自身はわからないでおります。

○洲崎座長

家森委員。

○家森委員

念のために事務局に教えていただきたいのですけれど、資料の3ページの最初のところで書かれていますが、保険募集に当たっては、本来、募集人が顧客の潜在ニーズに沿って、保険契約が締結される必要があるという旨について、現在の保険業法上、すでにこういう義務を負っていると理解してよろしいでしょうか。それとも、今回のWGの議論を受けて、新たな認識として、反映されるようなものでしょうか。まず、それを少し教えてください。

○伊野保険企画室長

現在でも意向確認書面というのが必要になっておりますし、その中で何を求めているのかというのは、以前資料につけていたかと思うのですが、基本的には、ここに書いているようなこと、形成過程の全てをということではありませんけれども、基本的には意向確認書面があるということは、そのニーズに沿ったものをちゃんと勧めているということを、お客さんと確認し合った上で入っていただくということですので、ここに書いている全てということではないとは思いますが、ここの基本線については、当然現在の法令の世界で求められているということだと考えております。

○家森委員

明示はされていなくて、間接的にそういうふうに理解できるという、そういうことが現状ということですか。

○伊野保険企画室長

明示されている部分もありますし、その全体の中で当然解釈される部分という部分もあろうかと思います。ちょっとすみません、個々にどこがということではありませんけれども。

○家森委員

先ほど錦野先生からも出ていましたように、私もここに書いているような理念を今度明示的に入れるとすると、革新的というか、非常に大きな意味があるのではないかと思います。これについては賛成したいと思いますが、下の書面云々のところは、前回申し上げましたように、これは保険会社の創意工夫でやっていただいて、先ほどの、例えば錦野先生から出てきた誤った説明でトラブルが起こるというのは、保険会社にとってよくないことで、うれしくないことですので、それに対応するようなシステムをきちんとつくられるということではないのかなと思います。

それから、念のために、例えば銀行で、最初に預金に来たのだという人に保険を売るということは、現実にはよくあると思うのですけれども、当初の意向と違うものを結果として買ったとしても、それで全員が後で、だまされたと言っているわけではないと承知しています。当初の意向と違っても別によいということも、念のために確認しておきます。つまり、意向は確認するけれども、最後までに、意向が変わってもいいという、そういうふうに理解されているということでしょうか。

○伊野保険企画室長

当然ながら、いろいろな話し合いの中で意向というのは変わり得るものというのは、この場でも皆さんからそういうご意見をいただいておりまして、当然そういうものだと思っております。あくまで先ほど申しましたように、一旦振り返ってみる何らかのきっかけをつくることによって、お客さんが意向をしっかりと確認できるような仕組みというためにつくってはどうかというのが、ここの発想です。そういう意味では、違ったら、なんで違ったのかというのを考えるきっかけに十分なり得るわけですので、そこが一致している必要は、ある意味全くないとも考えております。

それはもちろん一致していることもよくあることではあるとは思いますし、変わるときは、変わったときに、なぜ変わったのかなと、その契約されるときにお考えになれば、それで十分役割を果たしているということではないかと考えております。

○洲崎座長

いかがでしょうか。なかなか意見の集約が難しそうで。

とりあえず、次回以降また議論する必要があるかと思うのですけれど、果たして論点をもう一回整理して、新たにまとめて、何か事務局として提案することができるかどうか、ちょっと私もよくわからないのですけれども、とりあえず今日いただいたご意見をもう一度整理しまして、次回以降に議論をしたいと思います。

小原保険課長から。

○小原保険課長

1つ目の議題の中で、オブザーバーの荻野様から、事務局説明資料の中の代理人の立場の説明に関しましてご発言ありまして、保険会社のために保険募集を行っているというところについてご意見ございましたが、この事務局説明資料のこのフレーズは、保険課の意見を踏まえたものでございますので、どういう趣旨で入れたかということをご説明させていただきます。

保険業法の第2条第19項に生命保険募集人の定義がございまして、また、第21項に損害保険代理店の定義がございます。生命保険募集人の定義の中で、その生命保険会社のために保険契約の締結の代理または媒介を行う者、損害保険代理店の定義として、その損害保険会社のために保険契約の締結の代理または媒介を行う者と。これを前提に、私ども代理店の登録をいたしておりますので、論理的には、もし保険会社のためではないということが明らかであれば、登録できないということですので、さしたる抵抗があるとは思わずに、こういうフレーズを入れたというのが趣旨でございます。

○洲崎座長

多分、「ために」というのは、委託契約があるかどうかという、その話です。荻野様が問題とされたのは、実質的に顧客のことを考えてやっているのか、その保険会社のことを考えてやっているのかという、そちらのお話で、法律上の「ために」というのと、実質的な「ために」というのと、ちょっと齟齬があったということではないかという気がいたします。

次回については、第8回会合において議論いただきました募集の範囲についても議論をしていきたいと思います。

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課保険企画室(内線3571)

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