ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チーム(第6回)議事要旨

1.日時:

平成19年2月9日(金)16時00分~18時30分

2.場所:

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3.議題:

「ソルベンシー・マージン比率等に関する検討課題について」

4.議事内容:

  • 第六回検討会が開催された。
  • 御子神委員より、資料6-1「支店形式の保険会社に対する監督行政の各国の現状」に沿って説明が行われた。
  • 猪野委員より、資料6-2「価格変動等リスク・予定利率リスクの見直しについて」、田口委員より、資料6-3「積立保険の予定利率リスク」に沿って説明が行われた。
  • 事務局より、資料6-4「ソルベンシー・マージン比率の算出におけるリスク係数算出方法の概要」、資料6-5「主な論点(第三稿)」に沿って説明が行われた。

上記説明に対して、テーマごと自由討論が行われた。主な内容は以下のとおり。

「支店形式の保険会社の監督行政の各国の現状」について

(意見)

ニューヨーク州では、支店方式でアメリカに進出している保険会社の場合は、通常のリスクベースドキャピタル制度の上乗せとしてトラスティードアセットの確保が強制されており、トラスティードアセットから負債を差し引いたサープラスの額が一定の最低金額を超えなければいけないということで、支店形式の方が厳しい場合もある。

「予定利率リスク・ALMリスク」について

(質問)

  • 「負債との対応が明確である債券」とは、何らかの枠組みを作って監査などを前提とするのか。

  • 株式又は不動産のデュレーションはどのように考えるか。

(回答)

  • 「その他有価証券」であっても、負債との対応がつくのであれば、「責任準備金対応債券」と同様に扱うよう配慮してよいのではないか。ソルベンシーのリスクを評価するための区分として考える。

  • 金利変動ということを考えると、対象は金利感応度のある資産と考えている。株式については、全く金利に相関がないわけではないが、価格変動リスクでみるものと考える。デュレーションは0というイメージである。

(意見)

「責任準備金対応債券」であってもデュレーションのミスマッチはある。そうすると債券の保有目的区分を意識するのではなく、デュレーションのミスマッチを把握できる。保有目的区分を意識せず、資産の時価-負債の時価として評価すればよい。

解約は金利上昇時、逆ざやは金利低下時の話で同時に起こりえないことからどちらか大きい方という考え方もある。

(意見)

モデルの前提として、株式のデュレーション0としてカウントということであるが、株価も金利に相関があることを考慮してはどうか。

(意見)

  • 解約時の売却損と金利変動による資産と負債の時価変動は重複があることから調整する必要はある。解約時の売却損については、短期的な対応であり限界はあるが、解約返戻金を保証していることから、金利上昇時の売却損失を考慮する必要があると考えたものである。

  • 株式のデュレーションについては、ALMリスクの対象とする負債および資産を狭めることで弊害をなくすことも考えられる。金利の変動に敏感な負債および資産に対象を限定し、バランスが取れているところからスタートし、金利変動に対する差額がどう変化するかをみるというイメージ。ただし、金利に感応しないような資産が全てであれば、金利変動に対するリスクがあると考えざるを得ない。

  • 価格変動リスク、金利リスクは当面は個別に計測し合算するのが短期的対応として現実的。各社共通の方法でリスクを正確に評価することは難しいが、個別のリスク間の相関、分散効果を考慮するアプローチになる。長期的には株式、金利などのリスクについて、個別に評価するのではなく、整合的な経済シナリオによりリスクを統合的に評価するアプローチとなる。

(質問)

積立保険の際の残高の金利感応度によって算出した予定利率リスクと金利低下時の自然体の予定利率リスクというものと同じにはならないという認識でよいか。

(回答)

金利感応度は金利を動かしたときにどの程度動くかということである。金利感応度を1%の金利変動に対する(限界的な)変化率と考えるのであれば、自然体のリスクでは必ずしもそれを想定しているわけではないことから一致はしない。ただし、概念的には負債の経済価値はどの程度増えるかということであるから同様のことを述べている。

(質問)

積立保険に関する提案になっているが、生保にも適用可能か。

(回答)

積立保険料については、死差、費差の要素がなく、生保ほどのパラメータはない。生保で行った場合良い近似になるかはわからない。

(質問)

どのくらいの金利感応度を設定するとどのくらいのリスクの水準になるか、イメージしているか。

(回答)

期間に応じた利付債のキャッシュフローとかわらないと考えれば、一般的にデュレーションと残存期間は概ね比例し、残存期間5年のものであれば、5年くらいとなる。

仮に途中で保険料が発生する場合は、それよりはかなり大きな水準になる。

(意見)

キャッシュフローの推定の難しさというよりも、経済価値の方が低く算出されるということではないか。水準の議論は難しいが、リスクを計測するという観点からみると、大きな違いはないのではないか。

(意見)

事故率と金利などには相関はないと見ており、むしろ金利と解約の関係が問題となる。

解約時の売却損を認識するのは短期的対応では困難。短期的に考えるのであれば、予定利率リスクの是正にフォーカスしたほうがよい。解約を考えるのは中期的課題としてはどうか。

(意見)

キャッシュフローの見積もりについても難しいところがあり、一つ一つ考えていく必要があるという認識である。「主な論点」でも「比較的フィージビリティが高い」と記載されているが、難しい点があると考えている。

(質問)

短期的な対応で見積もりが難しいのは分かるが、簡便法でできるという考え方なのか。次に進むためには難しいのか。

(回答)

少なくとも、責任準備金の計算されているキャッシュフローと同じにして、予定利率を変更するという方法をとれば計算はできる。それなりのベスト・エスティメイトはできるという考え方である。

(回答)

複数の金利シナリオで動的な解約率の前提を考慮しているといった会社は少ないが、多くの保険会社は一つのシナリオで計算することはできる。EVを計算している会社もあり、大抵の会社ではインフラは整っていると考えている。

(意見)

可能であるということであれば、今回の見直しで、できるだけ将来の負債の評価をより促すようなインセンティブを与えるような対応ができればよいと考える。

(意見)

金利変動と解約との関係については、米国と比較して、日本は解約コストが高いのではないか。したがって、解約コストを含めた議論が必要である。そういった議論がなく、データベースもなく、金利変動と解約との関係を今回の議論に入れることは困難である。金利感応度については、欧米ではデュレーションをリスクに換算するという国もあるが、日本ではかってない低金利であり、単純に日本に当てはめてよいかは疑問である。

現行制度の枠組みでは、解約オプションを下ぶれの期待値で計算する方法もあるのではないか。

(意見)

短期的対応であればリスクファクター方式にならざるを得ないが、損保の積立保険、生保の長期の商品については、金利感応度については同じような構造であり、生保、損保で同じような規制とすべきである。

(質問)

  • 予定利率リスクで使用している保険会社の一般的な資産ポートフォリオの内訳はどのようなものか。

  • 1995年3月までの10年間の数値を使っているとのことであるが、1995~2005年までのデータを基に数値を見直すとどうなると認識しているか。

(事務局)

  • 一般的なポートフォリオは、資産区分別にINDEXに見合う資産のポートフォリオを調査して使用している。

  • 直近の期間をとれば、金利は下がってくるものと認識している。

(質問)

ポートフォリオが一般的な場合と比較して、乖離が著しい場合には、不適切な数値となりうると考えられるがどうか。

(事務局)

この検討会でもご指摘の点を踏まえて検討いただければと考えている。

(意見)

解約は金利が上がる場合、金利リスクはむしろ下がるときであり、解約はクリティカルではないのかと考える。

金利感応度については、予定利率を今の金利と1%下がったものと二通り計算し、差額でリスクをみてはどうかという提案である。同時に資産サイドでも同様の計算が可能で、差し引きすると合理性がでてくる。1か0かということではなく、マッチングの状況が反映できると考えている。

(意見)

  • 相関をうまく考慮すれば、株と金利の相関についても対応可能と考えられる。

  • 保険会社のポートフォリオの違いの反映については、ALM的な考え方の導入により解決できるのではないか。

  • 係数、標準偏差は継続的使用が望ましいと思うが、毎年変わるものであり、係数及び計算の方法に関して定期的なレビューは必要。

(意見)

  • 短期的見直しの中では係数の見直しは必要であるが、ファクター方式の大幅な見直しは困難。全体としてよく考慮した検討が必要である。

「価格変動等リスク」について

(意見)

リスクを評価する場合、ソルベンシー・マージンについては、負債の時価評価を行って、純資産を計算する必要がある。ALMを行うのであれば、時価にした上で評価しなければいけないのではないか。分子と分母を同じ次元で評価すべきではないか。

(意見)

原則的には、ご指摘のとおりである。「可能な限り保険会社の投資行動等に深刻な影響を与えない」という表現があったが、現状ではALMが不十分な部分もあり、規制により方向性を示す必要があるのだと考えている。

正しいリスク管理を行っていれば規制がその方向に改正されても保険会社の投資行動に深刻な影響を与えない」こととなる。ややバランスが悪くても現実的な対応として、見直しを実施すべきではないか。

(意見)

責任準備金の時価評価が行われないとできないのであれば、IFRSのフェーズ II を待たなければならず、完璧でなくともよい方向に持っていくことであれば短期的対応でも可能である。なお、現行の責任準備金制度の調整として解約返戻金相当額超過部分や将来利益をマージンに含めているという意味では、今の仕組みもバランスシートを意識したものになっていると考える。

(意見)

将来収支分析がきちんと行われているのであれば、将来10年分は時価評価していることになる。ソルベンシー・マージンについても、将来収支分析の期間を時価にして、徐々に期間を長くしていくという方法がある。

(意見)

分母、分子の不整合は起こりうると考えられるため、短期的対応の中でおかしなことがおきないか検証する必要はある。保険会社にALMリスクを意識してもらうことが重要であり、ソルベンシー・マージン基準にこのようなリスクが導入されることで、初めて保険会社も真剣に考えるようになると認識している。

(意見)

ソルベンシー・マージン基準は保険会社にとって見れば、規制の枠組みであり、リスク評価が各社の判断により数値がかわるものとすれば、トリガーとしては課題があるのではないか。

(質問)

「中期的にはプロジェクション方式に移行」とあるが、どのようなイメージか。長期的対応としては、非線形のものや分散共分散法でリスクが分かりにくいものなどをイメージしているのか。

(意見)

各社同じものを利用している状況から、各社個別の内部モデルを徐々に許容していくというイメージである。

(意見)

短期的対応に関しても、部分的には内部モデルの導入も可能ではないかと考えている。

(意見)

ここで議論している、「短期」・「中期」とはどのようなイメージで考えればよいか。

(事務局)

第一回目の会合でお示ししたが、短期的な対応、中期的な対応という枠組みで議論していただくことについて提示させていただいた。速やかにルール改正を行う「短期的な対応」とあるべき姿として「中期的な対応」を図っていくものをまさに議論いただいているというイメージである。

(質問)

ALMリスクについても、リスクの計測期間などは合せる方が整合的なのか。

(回答)

リスク測定期間の1年については、計算時点から1年後の経済価値を測定しているということである。リスクの測定期間と経済価値を算出するためのキャッシュフローの期間を合せる必要はないと考える。

(質問)

価格変動等リスクに関し、90%の事象をカバーするということに関し、根拠があるか。

(事務局)

リスクでも保険リスクなどかなり保守的に取り扱っているものがあるが、資産運用に関しては、そのような取扱いを行わなかったということである。

(意見)

90%と聞くと感覚的に低いように感じる。95%、99%が正しいのかというと根拠は示せないが、国際的な議論との関係では90%よりも高い水準が求められるのではないか。

(意見)

EUソルベンシーIIのところで、SCR(ソルベンシー・キャピタル・リクアイアメント)というよりはMCR(ミニマム・キャピタル・リクアイアメント)を要求しているものと考えることもできる。200%を下回れば危ないと考えられて、風評リスクを引き起こしてしまうという現実もある。

今までの信頼水準から急に異なる基準とすることは適当ではないのではないか。

(意見)

信頼水準を変えることは、考え方も変えて説明責任を果たしていくことであり、説明を行っていくことが重要である。行政が判断する水準として今回は決められて良い。

(意見)

価格変動リスクを考える場合、データの計測期間の問題が重要。為替リスクなどの例では、計測期間を短くして計算すると極めて危険ということがあった。したがって、データの計測期間は、できるだけ長く取った上でストレステストとの合計で評価すべきではないか。為替固定されているような場合には、リスクを0とおくことは危険である。

(意見)

激変緩和に関しては、1~2年の経過期間は必要かもしれないが、介入基準はSCRが基準と考えている。200%の信頼性を高めようということであり、ミニマムであるというのは適当ではない。データの計測期間については、恣意的にしないことが重要であり、慎重に検討する必要がある。

(意見)

99.5%タイルのリスクをみるということは200年に1度というかなり大きなリスクを想定するということである。それだけのリスクに対応するマージンを求めることを早期是正措置のラインとして引くか、保険会社のリスク管理の中でみていくのかという問題と認識しており、リスク管理を甘くすることを主張しているものではない。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
監督局保険課 秋田(内線3770)
山村(内線3431)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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