ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チーム(第9回)議事要旨

1.日時:

平成19年3月19日(月)13時00分~15時55分

2.場所:

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3.議題:

「ソルベンシー・マージン比率等に関する検討課題について」

4.議事内容:

  • 第九回検討会が開催された。

  • 事務局より、資料9-1「主な論点(第六稿)」に沿って説明が行われた。

  • 米山座長より、資料9-2「検討チーム 第9回検討会 主な検討課題 ~リスク項目等の見直しについて~(座長メモ)」に沿って説明が行われた。

上記説明に対して、自由討論が行われた。主な内容は以下のとおり。

「ソルベンシー・マージン比率(規制)の信頼性の向上、リスク量測定(信頼水準)の目指すべき方向、足元の具体的見直しにおける信頼水準」

(意見)

ソルベンシー・マージン比率が過去に200%を超えて破綻したところがあったため、解約するかどうかを判断する目安として400%程度といった使われ方をするようであるが、新しい基準で再計算した場合200%を下回っていれば一定の信頼性を示すことができるのではないか。

(意見)

比率が200%を上回った場合の評価であるが、比率で見られるため弊害が多い。高ければ高いほど健全という使われ方をするのは問題である。リスク量とマージンを金額で比較すればよいのではないか。

(意見)

現行基準は問題点があるため見直しているのは事実であるが、過去の破綻事例については、今の基準を当てはめた場合200%を下回っている。有価証券の含み損を反映させる事としたことが大きかったのではないか。

(意見)

過去の破綻事例も重要であるが、新しい基準で当てはめて、現行基準で問題ない会社がいきなり、200%を下回ることも問題がある。消費者の不安をあおるような数値になる可能性もあることから、見直しに当たっては十分注意する必要がある。

(意見)

一般の認識として200%を下回った場合破綻と解釈されてしまい、風評リスクの問題が生じる。周知のレベル感と水準感が見合うよう一般に周知できるかが課題である。

(意見)

基準を厳しくした上で周知徹底をしていかないと何も変わらないことになる。ソルベンシー・マージン比率は規制としての健全性指標であり、市場規律を達成するための指標ではない。その他の指標を用いることが適切な場合もある。

(意見)

ソルベンシー・マージン比率は、監督上の一つの指標に過ぎず、数値に絶対的な意味を持たせることは問題がある。健全性がこの指標のみで捉えられるものではない。まず、その意味づけについて周知していくことが必要ではないか。

(意見)

信頼水準を90%から99%にすると、リスクが2倍程度になるという例が示された。その場合、ソルベンシー・マージン比率が二分の一くらいになる。見直すのであれば急激に下がったことの周知が必要。見直しによりトリガーが近づいた場合どのように措置するかなどの問題がある。

(意見)

取り組みにスピード感が必要ということももっともであるが、急激にポートフォリオを変えることも困難であり、スケジュール感を示すことが大事である。

(意見)

短期対応がすぐ行われるのであれば、コミュニケーション面のリスクがある。また、リスクが過大になっているケース、マージンが過小になっているケースがある。前者がヘッジ効果、後者が含み益の算入割合である。工程を明示した上で近い将来にターゲットをおいて総合的に見直してはどうか。

(意見)

工程表をイメージするに当たって、大きなステップが共有化できていないのではないか。工程表を考える上での踏み石となるような課題について、共通認識を持った方がよい。

(意見)

短期的対応(リスク係数の見直し等)、中期的対応 I (経済価値ベースでの資産評価、ALMの反映、ヘッジ効果の織込み等)、中期的対応II(リスクマージン・オプション等を負債の価値に反映させた経済価値ベースでのソルベンシー評価、経済価値の変動というコンセプトに基づいたリスク評価、内部モデルの利用)と進むとして、中期的対応 I が5~7年後というイメージではなく、短期的対応と中期 I を併せて、もう少し早い段階でねらっていくというのが、ひとつ現実的な対応と考える。

そのためには、諸外国のサーベイ、データ整備状況、リスク管理状況の調査などのステップを地道にやっていくということではないか。

(意見)

短期的な見直しの方向性として現在のフレームワークを変えずに価格変動等リスクの信頼区間を高めるというところがコンセンサスであると思うが、それが本当に適正なリスクを反映しているかは難しいところである。重要なのは中期的な見直しであり、一般に対するコミュニケーションとしても、ある程度ビジョンを持って公表していく必要がある。特に、中長期的な部分に関しては、ある程度年数を明らかにすることが重要で例えば3年を目処といった具体的な目標を報告書に記載するのがよい。

(意見)

経営者に提示してインセンティブを働かせるとすれば、具体的な年限が必要。意欲的な目標を掲げるのは、あながちミスリードなことではない。進めていきながら進捗状況に合わせて方向修正を行えばよい。実務に落とす場合には準備にさらに検討が必要な場合もある。先が見えなければ短期的対応で終わりというイメージになる。

したがって、例えば中期的対応 I を2から3年、IIを3から5年といった目処を示す必要がある。当然、現実的には国際的な議論なども参考にしつつ進める必要はあるが、そういった内容を盛り込むということが、ある意味でいろいろな部分の重要な解決策になる。

(意見)

いつまでにやるかは目安であって、きちんとしてものをつくるということで進捗状況に応じて進めていくべきではないか。

(意見)

保険会社の行動がマーケットに影響することがあり、その逆もあることに考慮して進めていくべきである。

(意見)

先進的手法と従来手法を並存させることにより、先進的手法を用いているところはディスクロすることによりアドバンテージになる。したがって、インセンティブも働く。

(意見)

きちんとしていなければいけないということになるといつまでも決められない面がある。全体の8~9割程度の内容がつかめたらスタートできるイメージが必要。準備ができた会社から段階的にスタートするなどスピード感が重要である。

(意見)

ソルベンシー・マージン比率が規制のトリガーであることから考えると、並存させた場合、あまりにも違う基準になってしまうことは問題である。

(意見)

リスク計測等の精緻化のためには、内部モデルに移行することが必要と考えるが、3から5年後とすると今決めきれる材料は揃っていないのではないか。各社のリスク管理の状況をサーベイするところから始める必要がある。スピード感をもって進めていくことが重要。

(意見)

目標とする年数をレポートに記載するのがよい。今後のステップを示していくことは非常に重要である。

(意見)

ファクター方式では無理な場合に先進的な方法が必要。そのような望ましいモデルがあるかというと与えられたモデルは存在しないため、実務家の使っているモデルが真実に近いと考えるということである。各社の内部モデルの現状を調査するとしても線引きするということではなく、情報としてうまく見せながらインセンティブとなるような方向性で考えていく必要がある。

(質問)

信頼水準として99.5%を目指すとすれば、その水準まで持っていくのに何年程度かかると考えられるか。

(回答)

国際的な議論とすれば、ソルベンシーIIは2010年をターゲットとしており、今から動いて3から5年後を目指すということであり、10年後ということでは、実質的に動かないのではないか。技術論としても10年かかるということはないのではないか。むしろ技術論ではなく、経営層が納得した上で会社のリスク管理に用いることが重要である。

結果として先送りになるのは致しかたないが、早急に取り組んでいく必要がある。

(意見)

将来のソルベンシー評価は、比率ではなくリスク額とマージン額の大小比較を行うことも考えられる。

(意見)

リスク管理の考え方、有価証券のポートフォリオの組み換えなどにも一定の時間がかかることについても考慮すべきである。

(意見)

過去に見直しにより数百パーセント下がったこともあった。現在は、健全性がそれほど注目されていないこともあり、やり易い時期といえるのではないか。

(質問)

仮にソルベンシー評価を率でしないとすれば、当局はどういった基準で介入するのか。

(回答)

リスク量とマージンを比べて判断する。介入の段階は、リスクのレベルによって区分すればよい。無意味な比較を行わせないためにも積極的に率をださないだけでも意味がある。

(意見)

比率は絶対的なものではない。ひとつの目安として用いているという意味でも中長期的なスケジュールを見せたほうがよい。トリガーにかかったことが必ずしも破綻ではないことについても消費者に知らせる必要がある。

(意見)

エクスペクテーション・ギャップがある。その時点で400%であっても、先が見えてしまう場合もあれば、通常の状況であればまったく大丈夫ケースもある。会計や経済、また経営者も変わる中で意味を持たせるのは危険。適性化する意味はあるが、指標の持つ意味に対する捉え方が過大であることを周知できるよう慎重に誘導していく必要がある。内部モデルを用いることはよいが、また、行政の基準として、厳しすぎる基準は経済の活力を削ぐおそれがある。

(意見)

破綻は100%防げないが、破綻する確率を少しでも下げる必要がある。規制上少しでも良い方向にもっていくという努力は必要であり、現状の水準では、まだ、経済の活力を下げるというレベルではない。それだけではなく、市場規律も発揮できるような仕組みを考えていくべきではないか。

(意見)

破綻事例が多ければ、基準としての信頼性を失うことになる。保険会社にとってソルベンシー・マージンは健全性規制の柱となるものであり、対外的な影響は勘案してみる必要がある。少なくとも、過去の生命保険の破綻に関しては、突発的なものではなかったと考えている。

(意見)

信頼水準の90%をあげることが必ずしも信頼性に直結しているものではない。一方99.5%といった高い水準では、規制によるリスクが大きすぎるとの指摘もあった。ソルベンシーIIでは、時価評価した場合の基準となっており、同列に議論ができるのかというように様々な論点がある。

(意見)

仮に信頼水準を99.5%としても、金利を債券でコントロールするようなポートフォリオであれば、それ相応のサープラスがあると考えられる。しかしながら、新たな金利リスクの導入を行わないとすれば、短期的フレームワークでは、一律厳しくするだけの内容になる。株のリスク係数については欧州でも政策的な観点からの議論も行われている。

(意見)

欧州の基準でいう、99.5%は投資適格の水準(BBB)と理解している。BBの場合、一般の契約者がどう判断するかという問題があるとの指摘があった。短期的には、BBBとマッチしているかというと、リスクの面でも、マージンの面でも意味づけが難しくなる。中期的な見直しのスケジュール感が重要。そこが明らかであれば、ソフトランディングという意味で短期的には95%という考え方もある。

(意見)

いきなり99.5%とするよりも段階を設けてソフトランディングを図っていくのがよい。

(意見)

日本では破綻保険会社のデータがなく、BBBがどの程度の水準になるかは、議論があるところである。保険会社の負債の長期性をどう判断するかなど難しい問題もあり一概に倒産確率をいえるものではない。また、99.5%はEUのソルベンシー II でも暫定基準という扱いになっており、今後議論の余地があると考えている。

(意見)

マーケットへのインパクトはあるが、保険会社は独自に内部管理を行っており、信頼水準としてはソルベンシー・マージン比率における90%を上回るリスク管理を行っていると考えられることから、ソルベンシー・マージン比率の動きが数百程度であれば、信頼水準の引き上げが保険会社にとって、耐えられないものとはならないのではないか。

(意見)

保護機構の補償が90%とか、予定利率が引き下げになるということがなければ過敏になることもない。保護のあり方ということで幅広く議論する必要があるのではないか。

たとえば逆ザヤになる可能性が高い契約については、保護機構の拠出額を高くとるなどの方法があるのではないか。

(意見)

ソルベンシー・マージン比率は信頼水準を何%とするか明確化することが重要。監督規制として99.5%は高すぎると考えるが、EUが99.5%と決めた場合は、何か説明できる理由が必要となる。99.5%の根拠としては、過去の倒産確率であるが、最近の会計基準で測るとBBBの破綻の確率が高い可能性もあるとの指摘があった。 BBBなのか、99.5%なのかということについては、慎重な検討が必要。ファクター方式で信頼水準のみ高くすることは問題であり、95%といった水準も可能。

(意見)

工程表で中期的な対応が明確になっているのであれば、今回の見直しでは現在の信頼水準で考えるというのも選択肢ではないか。

(意見)

短期的な取り組みとして、リスクやマージンの評価が不十分なことなどにより、意味のないショックを与えられるということであれば、変えないという選択肢もあるが、90%の妥当性に関して説明を行う必要もあり、判断の問題になるのではないか。

(意見)

信頼水準を90%とすれば、消費者に安心してもらうのはかなり無理があると考えられる。リスクのパラメータを甘くするのは問題。正規分布を仮定するのであれば価格変動等リスクの評価に対しては甘くなるおそれがある。

(意見)

有価証券等の含み益に関しては、10%をマージンから落としているが、含み損益は反映させるべきではないか。

「予定利率リスク」

(意見)

簡便な将来キャッシュフローによる方法を推奨する。現在の方法では、負債の金利リスクが測れないのが問題である。何らかの方法があるのであれば導入したい。

(意見)

短期的な見直しにおいては、一方でヘッジ効果のようなものが反映されない中でグロスの数値が増えていく。信頼区間の引き上げは手法の合理化とセットではないか。

信頼区間に関しては、工程表の中で考えていくべきであると考える。

(意見)

簡便な方法については、今のリスクと大きく違わないのであれば、導入することを考えてもよい。ヘッジ効果については、短期的な対応として考えてもよいのではないか。キャッシュフローの推計に関しては、債券以外の構成割合が高いことが理由ではなく、むしろ解約の推計の部分が問題である。

(意見)

負債の構造がそれほど単純ではないということがポイントである。簡便なモデルに関してはまず、やってみなければどのような結果となるかわからない。工程表を作成し、実際の影響を見ながら進めていくのがよい。

(意見)

キャッシュフローを推計するのが現時点では難しいということで中長期的見直しとするという考え方である。アセットとライアビリティ全体として併せて計算すればよく、あえて残すのであれば現行のフレームワークでの見直ししかない。予定利率のところだけあえて現行のフレームワークでアップデイトする方法があるが、よい見直しではない。その場合は中期的な工程表を示して取り組んでいくことが重要。

(意見)

足元の見直しを行うに当たってどうするか明らかになっていない。そのために検討を行うとしても検討の時間が必要であることから、現行の枠組みでできることとしては、データのアップデイト、保険会社各社のポートフォリオの反映があるのではないか。

(事務局)

現行の生命保険会社に関する予定利率リスクは、確実に得られるであろう利息・配当金収入等を源泉として予定利率を賄えるかを確認してきたものである。これは、経済価値による負債の評価という考え方がない従来の枠組みでは一定の合理性があったものと考える。

(事務局)

簡便法であれ、経済価値ベースでの金利リスクの評価方法を検討するために一定の準備期間が必要であるとすれば、現行の枠組みでの見直し案として、得られる利息・配当金収入等がどの程度であったか各社独自のポートフォリオに改めてみてはどうか。

「価格変動リスク」

(意見)

期待収益率は、恣意的になる可能性があること、ブレが大きい指標であることなどからリスク係数を求める際にリスク量から期待収益率分を除かない方がよいのではないか。

(意見)

期待収益率については、マーケットのデータを用いるのであれば、恣意的とは言えないのではないか。

外貨建て保険の場合は、外国債券等について為替のリスクがなくなることを適切に反映すべきである。

(意見)

現状では債券のリスクは、デュレーション別には設定していないが、仮にALMを評価しない形で短期的な見直しを行うのであれば、単純に長期の債券のリスクを大きくするような見直しはすべきではない。

「巨大災害リスク」

(意見)

モデルの精度の問題などや、単一のシナリオで考える危険性の問題なども考慮すれば、ストレステストを用いる対応もありうるとの賛成意見があった。ただし、中期的な観点からみれば再現期間を70年に統一することは、必ずしも適切ではない。

短期的対応としては、どちらか大きいほうを選ぶか、合計するかという問題。

(意見)

短期的な見直しの視点でみれば、自然災害は価格変動リスク等と異なった信頼水準で議論されているところが問題である。再現期間を長く設定することは、バランスを欠いていないか。

(意見)

詳細な地域ごとのデータがあるはずであり、そのようなデータを用いてリスクを計算すべきではないか。

(意見)

地震のリスク係数が関東大震災を想定しているために1都8県に限定したものとなっている。モデルを用い関東大震災級を想定した上で係数を見直す必要があるのではないか。関東地域の保険金額を合計してその一定割合とするのは問題がある。

(意見)

短期的な対応が可能かわからないが、シミュレーションやストレステストを行うのが適切である。関東大震災という特定のシナリオに依拠するのは問題がある。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
監督局保険課 秋田(内線3770)
山村(内線3431)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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