「トランジション・ファイナンス環境整備検討会」
(第6回):議事要旨

1.日時: 令和4年12月5日(月曜日)9時30分~11時30分

2.会場: 経済産業省別館6階626・628会議室及びオンライン

3.出席委員:  伊藤座長(一橋大学)、伊井委員(株式会社みずほフィナンシャルグループ)、上野委員(一般財団法人電力中央研究所)、押田委員(マニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社)、岡崎委員(第一生命保険株式会社)、梶原委員(株式会社日本格付研究所)、金子委員(株式会社三井住友銀行)、金留委員(DNV GL ビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社)、北島委員(アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社)、栗栖委員(日本生命保険相互会社)、竹ケ原委員(株式会社日本政策投資銀行)、西地委員(株式会社三菱UFJ 銀行)、長谷川委員(一般社団法人日本経済段連合会)、林委員(BofA 証券株式会社、国際資本市場協会(ICMA))

4.議事:
(1) 開会
(2) 事務局説明
(3) 討議
(4) 閉会

5.議事内容:
議事(1)開会

⚫事務局より資料1~3に沿って研究会の概要、運営、ご参加者等について説明

⚫経済産業省産業技術環境局環境経済室 梶川室長より挨拶
  • 本日は、トランジション・ファイナンスの信頼性向上に向けた資金供給後のフォローアップ骨子案を提示しており、またファイナンスド・エミッションについては官民で議論する場として、サブワーキングの設置について示しており、ご意見いただきたい。


議事(2)事務局説明(トランジション・ファイナンスの課題への対応

⚫事務局より資料3について説明。
⚫本検討会では以下の論点について議論。
  • トランジション・ファイナンスの適格性・信頼性の確保
  • 金融機関への環境整備(ファイナンスド・エミッションへの対応について)
  

議事(3)討議 ①トランジション・ファイナンスの適格性、信頼性の確保

⚫ 前回と比較し、フォーカスが絞られ、わかりやすい内容となった。
⚫ ガイダンスの趣旨については賛成である一方、フォローアップの際にチェックすべきポイントに関して、戦略等の開示情報はグリーン投資ガイダンスから読み取れる内容もある等、複数のレポーティングを組み合わせる事で確認ができる内容である。資金調達者に追加的な開示を強いるガイダンスではないが、金融機関側が評価を行う際に参照する可能性があるレポートについて明記されると、資金調達者が積極的に開示すべき点が認識しやすくなり、本ガイダンスの利便性が高まるのではないか。
⚫ 「フォローアップ」という名称について、進捗補足(トラックプログレス)を採用する事を提案する。パリ協定で目標達成に向けた進捗を2 年に1度レビューしており、それをトラックプログレスと呼んでいる。一案として、本ガイダンスの内容も進捗確認という点で、類似が見られるため、名称として適切なのではないか。
⚫ 全般的に前回と比較して良い方向性なのではないか。
⚫ ガイダンスは個別ファイナンスのフォローアップに注力して良いと思うが、ファイナンス対象となる個別案件が企業の中でどのような位置づけなのかは確認すべきである。例えば、石炭火力を天然ガスに変更するプロジェクトの場合、そのファイナンスが企業のトランジション戦略の中でどの位置づけにあるかを、現状企業側で明確に説明できないケースがある。企業全体のトランジション戦略の中でどの位置付けにあるファイナンス案件なのか、排出量削減目標に対して、いつまでにどれだけ寄与するのか企業側は説明可能な状態とすべき事を本ガイダンス内で強調いただきたい。
⚫ 本ガイダンスは、ファイナンス組成時と現在で乖離が発生した際に、建設的な対話を行うためのマニュアルであると理解しているが、乖離の有無をどのように確認するかに焦点をあてて場合分けしてもよいのではないか。
⚫ 例えば、資金使途不特定型でKPI やSPT を設定して開示する事を義務付けている場合は、乖離があった際にそれらの開示情報をもとに明確に判断できるため、何らかのアクションを取っていく事に繋がる。
⚫ 一方、基本的にトランジション・ファイナンスの場合、クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本方針(以下基本指針)で示された4 要素等、ファイナンス実行時に目標と戦略が特定されており、これらの実現に向けた対象事業の妥当性について評価者へ明確な説明があれば、トランジションとラベリングする事が許容されている。
⚫ 組成段階で要件が充足したと判断する以上、特に対象事業を限定している場合は、対象事業による工事効果への期待をベースにラベリングを行ったことになり、一義的にフォローアップの対象は計画通りに対象工事が行われたかという資金使途ということになる。この場合、事後的な乖離を確認していく方法(想定通りの工事効果が発現しているかどうか等)が曖昧である。
⚫ 年次でKPI・SPT を設定できる場合も含めて、トランジション・ファイナンスは不確実な将来見通しに基づくため、当初の目標値からずれる事は当然の前提といえる。その認識の上で、どの程度目標値とずれが生じた場合を乖離と見なすのかという設定が難しい印象を受ける。そのため、フォローアップをどの様に行っていくか、という手法の部分について詳細に記載いただく事が重要である。
⚫ 例えば、資金使途特定型で乖離が生じる場合、使途となっているプロジェクトの性能や運用に問題があるならば補完措置の表明が必要になる。資金使途不特定型の場合は、内容を精査した上で、どのようなアプローチをとるべきか判断する必要があり、場合によってはKPI 等を設定し直すことも必要となる認識である。乖離をどのように捉え、乖離があった場合にどの様に対処すべきか、詳細を追記すべきである。
⚫ 以上の論点は本ガイダンスを「追加的な開示を求めるものではない」とする点とのバランスの観点からも重要である。場合によっては、乖離が生じた際の対応として、補完措置を取る事を表明してもらうよう資金調達者へ依頼する局面も出てくるのではないか。
⚫ 全体骨子については違和感がない。
⚫ 対象とする金融機関を大手・中小どちらも提示されているが、前回の議論でも大手・中小間で書き分けが必要なのではないかとの議論があったため、骨子を考える段階でも対象別での書き分けを意識していただきたい。
⚫ 資金調達者側については、トランジション・ファイナンスを進める中で、派生的にサプライチェーン上で中小企業が関係してくる。「その他留意すべき点」の中で、Scope3を考慮する際に、サプライチェーンに混在している企業をどのように捉えるか、あるいはそれらの企業へどのようなフォローアップが必要かという点を記載いただきたい。
⚫ 今後の乖離の有無について、大手企業の戦略に左右される部分もあるが、現在展開している技術や下請け企業が提供している技術が不要となり、業界転換が起こる事もあり得る。その様なケースに対してファイナンスする際に資金供給者側が何を確認すべきか、という点についても、ガイダンスの内容を作成する際に意識いただきたい。
⚫ 本ガイダンスは金融機関全体に関わってくる内容である一方、ボンドが強調されており、ローンは対象外であると理解される懸念がある。今回は、ボンドを主眼に置きつつも、金融機関全体も読み手として想定している事を効果的に表現する工夫が必要である。
⚫ 資金供給者側にのみ課題を課しても、資金調達者側から評価に必要な情報が十分に出てこない場合が想定される。資金調達者側に関しても、情報開示を促進いただける様な記載・表現の調整も必要である。
⚫ 資金調達者に対して「追加的な情報開示が不要である」、と言い切る事は難しい。現状、企業によって開示の粒度にばらつきがあるため、「現状の開示内容で良い」とした場合に、十分な評価材料が無い状態を許容する事に繋がりかねない。評価の平仄を合わせるためにも、開示の質の底上げを促進できる様な内容としていただきたい。
⚫ 個別ファイナンスが資金調達者全体の評価につながる点はあると思うが、本ガイダンスの対象が個別ファイナンスであるのか、資金調達者そのものなのかという点についても、明記いただきたい。
⚫ 読者を資金供給者と設定しているが、資金調達者にも開示の質の向上を訴求する様な内容でなければ一方通行の対話となるため、幅広く読者を設定すべきである。
⚫ ボンドとローンを一緒に議論せず、ボンドに特化しても良いのではないか。ボンドに特化しつつ、本ガイダンスは個別の案件ではなく資金調達者そのもののパスウエイを描く内容となっているため、結果として本ガイダンスの内容はローン側でも参考になる、という程度にローンを位置づけてとりまとめても良い認識である。ローン・ボンドの両者(ローンの相手方となる銀行とボンド投資家との仲介を行う引受証券会社)の法的位置づけと取り組みが異なるため、議論の対象を整理しても良いのではないか。
⚫ 当初の戦略や目標等と、実績に乖離が生じた場合にどのように確認をするか、という議論について、乖離の判断のために何を確認すべきか、という点を具体的に記載いただきたい。
⚫ ガイダンスを遵守して定期的に情報開示・報告をしていくとなった場合、トランジションが工数のかかるファイナンスであると捉えられかねないという言及がヒアリング内で出ていた。グリーンボンドであろうと、トランジションであろうと、脱炭素化という観点では資金調達者は漏れなく対応しなければならない内容である。そのため、トランジション・ファイナンスのみを切り取って情報開示の負荷について言及する事には違和感がある。
⚫ 本ガイダンスを遵守した結果、100 件・200 件もの投資家がボンドのフォローアップに向けて資金調達者に殺到することを避けるため、効率的な対話を実現するための仕組を検討する事が必要である。
⚫ 本ガイダンスはボンドを中心と想定されているが、ローンも対象に含む場合、銀行ローンは企業と金融機関との長期的な関係性を前提としているため、アプローチが異なる。
⚫ 一方、実際の案件では、シンジケートローンとなる場合、金融機関の代表者がアレンジャー、エージェントとして前面に立ち企業と対話するため、ボンドとアプローチが似ている点もある。シンジケートローンの参加行全てがガイドラインに基づいて企業に対話するのは現実的でないという点で、ボンドにおける投資家と企業との関係に近い。
⚫ 企業の負担とガイダンスの実効性とのバランスの観点で、対象となるトランジション・ファイナンスの定義についても検討すべきである。昨今、煩雑かつ議論を呼びやすいトランジション・ファイナンスを避けてSLL、SLB を採用する傾向がある。この様な抜け穴が発生して必要なトランジション支援が進まない事を避けるためにも、トランジション・ファイナンスの対象範囲をどこに設定するか検討を進めていただきたい。
⚫ 銀行の場合、個別のファイナンスにかかわらず、もともと企業との間に長期的な関係性が構築されており、エンゲージメントを実施している。その場合にも、啓蒙等の観点から本ガイダンスは参考にはなると考える。
⚫ 現在トランジションの議論を進めているのは大企業や多排出産業が中心であり、中堅・中小企業では、取り組みの優先順位が異なる。企業の変化に対する対応についての内容を本ガイダンスに組み込むのはよい。加えて、金融機関側がエンゲージメントに際し有しているべきリテラシー・知見を要件項目として列挙し、本ガイダンスに記載いただく事で金融機関と企業の対話を促進できるのではないか。
⚫ 金融機関が評価を行う際の情報の参照先リストがある事は非常に重要である。例えば、戦略を理解するには企業の開示内容のどの部分を参照すべきか、等の情報を本ガイダンスで示すことが有効であると考える。現状、評価の際に参照すべき部分が開示情報の中でも分散している。追加の開示義務を極力課さないという観点からも、参照先のリストを含めることは、企業・金融機関両者の負担軽減に繋がるのではないか。
⚫ 乖離の有無の確認プロセスは、企業の開示内容を是とする事を前提とした議論であるが、開示内容そのものを許容するか否かも重要な観点である。乖離の有無を判断する前の段階として、企業から提示された脱炭素ロードマップの可否を判断するプロセスが存在する。ロードマップについて問題がないと判断したうえで、乖離の検証が発生するが、前段のロードマップの判断において、2 度目標に即しているものを許容するのか、1.5 度目標に即しているもののみを許容するのかという点は考慮すべきである。日本では2 度目標をベースとした議論が多いが、昨年のCOP の後から、1.5 度目標に即していなければいけない潮流が主となっているため、その潮流に準拠すべきか、という点も検討すべきである。
⚫ 企業側から提示されたロードマップについて、金融機関側がどの程度のレベル感のロードマップを是とするかによって、その後のアウトプットの質も大きく変わる認識である。
⚫ 資金使途特定型についても、トランジションではない、という批判を避けるためにもプロジェクトのみを確認するより、事業戦略に即しているかという点を確認する事は重要である。
⚫ 資金使途特定型についても排出量との対比は重要である。目標と実績値の乖離について、大手金融機関が国際規格に沿って1.5 度シナリオを前提に置いている中で、企業ではNDC を使用したシナリオが多い。それらの目標の対比を説明しなければいけない状態が発生している認識である。1.5 度目標と日本のNDC との乖離に関しては、企業側ではなく資金供給者側が国際的なアライアンス等に説明する必要がある。
⚫ 中小企業では特に、開示する投資家にグローバルな投資家は存在しないと考えるため、既に目標値を定めている企業が1.5 度目標を採用し直すことを強制する必要は決して無いと考えるが、日本のロードマップの内容を国際的に発信していく事は重要であり、大手金融機関が主体的に1.5度目標とNDC との間の乖離の発生理由等に関する国際発信を担うべきである旨を本ガイダンスに明記いただきたい。
⚫ 投資家が一斉にフォローアップを実施すると企業の負荷が非常に大きくなるため、株主総会のような形で、トランジション・ファイナンス総会のような会を開くことで、調達側の個別報告の負荷を減らせる。また、リソースが少ない中小金融機関も参加できる状態を整備し、質疑応答を実施出来るため、エンゲージメントできるプレーヤーも多くなり、開示内容の底上げにも繋がるのではないか。
⚫ 乖離があった際の対処方法や参照すべき情報が分散している課題は、実際にエンゲージメントを実施していても実感する。評価の負担を軽減していくという観点では、評価会社のレポーティングをどのように投資家が活用すべきか、という観点も含めて検討すべきである。
⚫ ロードマップをどのようにエンゲージメントで活用していくかという点にフォーカスして本ガイダンに記載しても、実務的には有効な内容となるのではないか。
⚫ 目標も戦略も可変であるため、国際的な議論の進展や、Scope3 の算定方法の開発等、外部環境の変化に応じて企業に適切に対応いただく事がエンゲージメントの成功の秘訣かと考える。その上で、北島委員からご意見のあった様な説明会の場があると、幅広い金融機関が企業の活動内容を明確に認知できる状況になるのではないか。
⚫ トランジション戦略の変更や目標値の設定を評価機関が確認する際は、乖離のレベル感として、例えば45%の目標を設定した企業が、どの程度目標値に変更があった場合に乖離と判断し、開示していくかという点を確認している。その際、45%という目標に対する現時点での前提条件として、内部的な条件・外部的な条件はどの様なものがあるかを、アセスメントの中で確認している。条件は複数あるが、国の政策や産業セクターの大きな変更がある場合、特に見直しが必要であると判断している。基本指針の要求事項の1-Mにて戦略に変更があった場合には開示する事が要請されており、これに該当するケースはどのようなケースであると想定しているか、という点についてもアセスメントの際に伺っている。機密情報もあるため、すべての内容が示されているわけではないが、昨年のモデル事業では1-Mという項目にて開示されているため、その項目にどの様な記載がされているか確認をしている。SPO 等を参照しながら企業へ進捗を伺う事で、一方的な対話とならず企業と目線を合わせた良い対話ができるのではないかと考える。
⚫ ある企業では目標値の5%-10%超えたら乖離と判断し、開示するケースや、事例として東京ガスでは年3回サステナビリティ委員会を開催し、ロードマップに変更があるかをモニタリングする等の取り組みが見られる。
⚫ アセスメントの場でどのような議論があったか、という切り口から金融機関が対話を持ち込む事で、企業側が抵抗を抱かずに情報を共有でき、良いエンゲージメントに繋がるのではないか。
⚫ 戦略に変更があった場合、適格アセットの組み換えは発生する。変更された場合は、現在のロードマップをどのように組み直すか、それに伴い技術的な要件としてどの程度のCO2 削減が見込まれるプロジェクトをトランジションの候補とみなすか等、改めて前向きに対応方針を議論できる体制を整えていくべきである。
⚫ 適格アセットの組み換えはフレームワークではあり得る。例えば、企業の投資方針として、現時点では4 つ設定しているが、次世代技術が台頭した場合は5 つとなること等が想定される。
⚫ 個別ファイナンスでは、例えば、特定のLNG 船についてファイナンスを10 年で組んでいる間に、次世代技術としてアンモニア船が台頭した場合に、当該の個別ファイナンスの資金使途をアンモニア船に切り替える事は不要であるという点は明確に整理いただきたい。
⚫ 上記の様なファイナンスの際、留意していただきたいのは、プロジェクトの期間が長くなるほど、資金使途特定型では不確実性が増してくる点である。LNG 船の例でも、いずれ化石燃料をドックインしない技術を搭載する事を前提に長期でのファイナンスを実施しており、その点はグリーンボンドと異なる。
⚫ 1.5 度目標・2度目標の論点について、個別案件では戦略・ガバナンスにどの様に記載されているかという点において、全企業が同じ目標設定である必要はないし、資金供給者側にはファイナンスを実施する時点で対象案件の野心度や将来性を踏まえて投資判断をしていただけば良いのではないか。
⚫ ファイナンスを購入する際に、対象案件が、何を目標としている案件なのかの精査が必要であり、資金供給者側に、適切に判断できるだけの知識が必要となる。
⚫ ボンドは引き受けた時点で終了するケースが多くあると認識しており、ボンド購入後どのようにエンゲージしていくか、という点が課題であると考える。例えば、多排出産業への投資に伴うファイナンスド・エミッションの問題も解決されない中で、投資家がトランジションについて十分な知識を有していない状態のまま、ボンドの継続購入を中断するケースもあると考える。読み手としては、開示情報を参照しつつ、企業と対話しているプレーヤーを想定しおり、これらの方々に本ガイダンスのフォローアップのプロセスを理解していただかなければ、ボンドの裾野が広がらない認識である。
⚫ 資金調達者に資金供給者側が開示情報として何を求めているか理解していただく事も、本ガイダンスの1 つのターゲットである。誰にどの様な点を変えていってもらうか、を考えた際の読み手設定となっている。
⚫ 本ガイダンスを用いる上で、資金調達者に追加的な開示を求めるべきではないとは言い切れないが、全ての資金調達者に追加的な開示を求めるものではないと考える。現状、金融機関と資金調達者の間で認識を擦り合わせた結果、何に対してフィードバックを実施するのか、という点が章立ての中に存在しない。擦り合わせの結果のフィードバック内容として、追加的な情報開示が発生する等様々なパターンが考えられる。今後認識の擦り合わせ後に取るべき対応策について加筆する事で、現在議論されている課題がクリアできるのではないか。
⚫ トランジション・ファイナンスに限らず、国内ではローンが強く、ボンドではエンゲージメント含め長期コミュニケーションが働きづらいという指摘は長い間議論に上がっている。
⚫ トランジション・ファイナンスに限らず制度整備として、社債管理者等の仕組みを活用しながら、社債に対するエンゲージメントのコアとなるプレーヤーを設定し、継続的なコミュニケーションを図るような手法を促進している。
⚫ トランジションは特に長期的な議論となってくるため、主たる投資家と長期的な関係性を構築する事は非常に重要であるため、本ガイダンスを通じて関係性が構築できる状態となれば、本ガイダンスの有用性も増す上、ボンド全体のマーケットの活性化にもつながるのではないか。
⚫ レポーティングの項目に補足する形で、ファイナンス対象案件の現状を理解するために本ガイダンスを通して対話を実施する理解である。国際的な議論を踏まえながら、今後、本ガイダンスがファイナンスにおける基本的な国内ルールとセットで機能していくことを考えると、義務的開示項目の内容を本ガイダンスで議論するより、ファイナンス対象案件の効果・水準を上げていくために義務的に開示された情報をどのように理解するか整理を進めていく事が重要であると考える。
⚫ ガイダンスの内容を債券のみにフォーカスする事で、他のファイナンスを扱う関係者が本ガイダンスを参照する必要性を認識しづらくなる事を懸念している。ローンの金融機関に関しても内容を参照いただけるような書きぶりとすべきである。

 

議事(3)討議 ②金融機関への環境整備(ファイナンスド・エミッションへの対応について)

⚫ファイナンスド・エミッションへの対応については、強く期待している。
⚫ 我々はメガバンクに投資する立場でもある。メガバンクに投資する際、ファイナンスド・エミッションが大きな問題と認識されている状態では、投資対象を絞られてしまうリスクを感じている。国際的にトランジションパスウェイを達成するために、ファイナンスド・エミッションへの日本の対応を国際的にアピールしていただく事は重要であり、今後の対応に期待している。
⚫ 国際的に取り組みを発信いただく事が、資金の流れを創出する意味でも重要である。
⚫ ファイナンスド・エミッションの問題が投融資の妨げになると理解する一方で、ファイナンスド・エミッションはトランジション・ファイナンスの本質的な課題ではなく付随的な問題だと認識している。
⚫ 何を以てトランジション・ファイナンスとするかという定義付けの問題や、レピュテーションリスクなどの固有のリスクの存在、予見性の難しさなど、ファイナンスド・エミッションよりも更に本質的な課題がトランジション・ファイナンスの投資を妨げている。
⚫ 本質的な問題について適切に国際レベルで発信できれば、ファイナンスド・エミッションが増える事はそれ程問題にならないという議論の流れを構築できると考えるため、本質的な問題をファイナンスド・エミッションの問題とセットで考えなければいけない。
⚫ ファイナンスド・エミッションの問題で、算定に関する側面は欧州を中心にハードルが高い課題であると認識している。そのため、ファイナンスド・エミッションに関する開示方法の工夫を検討する事が、現実的かつ納得感がある解決策なのではないか。
⚫ 目標の野心性を重視する国際潮流の中で、トランジション・ファイナンス対象案件の進捗を、妥当性をもって説明する事が重要であり、NDC で掲げている内容について、日本の金融機関が如何に国際的に説明していけるか、という点が非常に重要である。サブワーキングにてこれらのグローバル向けの説明方法についても議論すべきである。
⚫ トランジション・ファイナンスの国際認知を進めていく意味で、ファイナンスド・エミッションに関しての整理を進める事は重要である。
⚫ ファイナンスド・エミッションがトランジション・ファイナンスのボトルネックではないが、ファイナンスド・エミッションは分かりやすい指標であり、注目されるが、GFANZ では、FE は1 つの指標に過ぎず、他の指標と相対化する議論が進んでいる理解である。日本としての説明の仕方を一枚岩で発信できれば良いと考える。
⚫ トランジション・ファイナンスはこれまで経済産業省をはじめ、日本が推進してきた概念で、サブワーキングで国際発信の有効な方法・タイミング等を検討できると有益である。来年G7 の議長国として国際的に意見発信する絶好のタイミングであると思われる。例えば、JETP など国際的なイニシアティブ推進にも有効な整理である、といった打ち出しで、ファイナンスド・エミッションとトランジション・ファイナンスの関係性の整理の仕方について提案していけると建設的ではないか。
⚫ 金子委員のコメントと同様、複数の指標を使用してトランジションを評価する事が勧められている中で、ファイナンスド・エミッションという指標のみではなく、併用できる指標についても検討すべきである。様々な指標を用いる事でトランジション・ファイナンスの取り組みを判断していく入り口として、サブワーキングは重要である。
⚫ 削減貢献量の議論も昨今話題になっており、ファイナンスド・エミッションの議論のみではなく、余地があれば削減貢献量の議論もどこかで実施すべきではないか。
⚫ 本サブワーキングは、日本からトランジション・ファイナンスに関する発信を進めていく中で、1 つの大きな障壁としてファイナンスド・エミッションが存在しているという認識のもと実施する予定である。削減貢献量は経済産業省的には企業成長の機会となる認識であるが、現状開示側と金融機関側で使用する評価対象データに認識の齟齬が生じている点が課題である。
⚫ 以上の点を踏まえ、GX リーグの中でどのような評価データが有用かを検証し、金融機関・事業会社の間で評価指標とする内容について合意形成を取る方針である。国際的な発信をしながら、国内の目線合わせについても推進していきたい。
⚫ トランジション・ファイナンスに積極的な金融機関ほど、排出量が多い金融機関であるとみなされてしまう点は大きな問題だと認識している。
⚫ 国際発信の方法・タイミングは重要であり、特に欧州を如何に味方にするかという点が肝要である。
⚫ 国際発信は重要である一方、発信を進めながらも、日本だけがガラパゴスにならない様注意すべきである。国際潮流を観察しつつ、国際的なルールメイクに日本も加わっていくという意識を前提に持ちながら、環境整備をしていただきたい。
⚫ サブワーキングで議論された結果については、本検討会へ報告されるとのことだが、取り纏め前に本検討会にて確認する機会もあるのか。
⚫ 都度報告は難しいが、最終報告前に本検討会に対し、内容を共有する方向で考えている。

議事(4)閉会

⚫事務局
  • 本日の議論を踏まえ、ガイダンスについてはドラフト作成作業に入り、春頃のパブリックコメント発出を進めたい。
  • 次回検討会については2 月頃を想定しており、ファイナンスド・エミッションのサブワーキングも年明けキックオフを目指しながら、別途メンバー候補の皆様にはご参加を依頼させていただきたい。
  

―― 了 ―― 

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線 2770、3515)

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