「トランジション・ファイナンス環境整備検討会」
(第11回):議事要旨

  1. 日時:令和 7年 1 月 24 日(金曜日)16時00分~18時00分
  2. 場所: 経済産業省別館10階1031各省庁共用会議室及びWeb会議
  3. 出席委員
    伊藤座長(一橋大学)、秋元委員(公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE))伊井委員(株式会社みずほフィナンシャルグループ)、池田委員(一般社団法人日本経済だな替連合会)、上野委員(一般財団法人電力中央研究所)、岡崎委員(第一生命保険株式会社)、長田委員(株式会社三菱UFJ銀行)、押田委員(マニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社)、梶原委員(株式会社日本格付研究所)、金子委員(株式会社三井住友銀行)、金留委員(DNV GL ビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社)、北島委員(アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社)、高村委員(東京大学)、竹ケ原委員(国立政策大学院大学)、林委員(BofA証券株式会社、国際資本市場協会(ICMA))、宮本委員(日本生命保険相互会社)
  4. 議事:
    1. (1)開会
    2. (2)事務局説明・討議
      1. ①基本指針改訂について
      2. ②アジアでのトランジション・ファイナンス推進のあり方に関するサブワーキングの設置について
    3. (3)閉会
  5. 議事内容:
    • 議事(1)開会

      ⚫事務局より検討会の概要、運営、ご参加者等について説明。

      ⚫経済産業省イノベーション・環境局GXグループ 環境金融室 鬼塚室長より挨拶

      ➢前回の検討会実施から半年間で政府の中でも様々な動きがあった。第7次エネルギー基本計画(案)、地球温暖化対策計画(案)、GX2040(案)が示され現在パブリックコメントを実施しており、2040年に向けて日本がどのような道筋を歩むか議論が進んでいる。併せて、国際的には米国で第2次トランプ政権が発足し、色々な動きがあると認識している。その中でも日本としては方針は変わらずなすべきことを実施していく。トランジション・ファイナンスは日本においては着実な進捗があり、政府によるクライメート・トランジション利付国債を除く民間によるトランジション・ファイナンス発行額は2.3兆円に到達した。政府によるクライメート・トランジション利付国債についても令和5、6年と着実に発行を進めており、来週1月29日に令和6年度最後の発行を予定している。令和7年度も約1.2兆円規模でクライメート・トランジション利付国債の発行を見込んでいる。本日の検討会ではトランジション・ファイナンスの更なる発展に向けて忌憚ないご意見をいただきたい。

    • 議事(2)トランジション・ファイナンスに関する動向について討議

      • ①基本指針改訂について

        ⚫事務局より資料3「基本指針改訂(案)のポイント・参考資料集」および 資料4「クライメート・トランジション・ファイナンス基本指針改訂(案)」を説明。

        ⚫GFANZの資料があったが、日本への影響をどう捉えたら良いか。

        ⚫事務局

        ➢GFANZやNZBAの動きにより、日本のGX施策を変える必要はないと考えている。2040年や2050年など中長期的に政策を進めている中で、方向性は変わらず、粛々とやるべきことを進めていく方針である。

        ⚫GFANZ各アライアンスへの加盟継続に関する判断は各金融機関に委ねられるが、各金融機関の基本的な取組については変わらないと認識している。

        ⚫「こういう会社には資金を提供しない」ではなく、「どうしたらよい方向になるか」という形で検討していくべきだろう。

        ⚫直近では欧州や英国もトランジション・ファイナンスに興味を示しており、日本としてアジアへのトランジション・ファイナンスへの取組を真剣に考えて行く必要がある。

        ⚫今回の基本指針改訂草案を確認する中で、客観的にビジネスの観点から見ると、この基本指針の使用者として事業会社や資金調達者をメインに想定しているように見える部分が多いと感じた。それ自体は間違いではないが、例えば金融機関が利用する際に、もう少しわかりやすい形で提示されるべきではないかと考える。また、カーボンニュートラルポートにおける自治体等で、直接資金調達を行わない事業者も取組を担っており、幅広い事業者がいる。必ずしも資金調達者がフレームワークを策定するのではなく、地方自治体でのサプライチェーンでのイニシアチブの活用など、幅広い事業者が利用できるものであることをアピールできるとよい。

        ⚫秀逸と感じたのはタクソノミーとロードマップのコラムにおいて、妥当性の検証が容易か、あるいはグラデーションがつけやすいかの2軸で整理している点。ASEAN Transition Finance Guidance V2で日本の取り組みがアセットベースのトランジション・ファイナンスと整理されていることにも対応しており、非常に良いのではないか。元々トランジション・ファイナンスはESGインテグレーションの一部として、フォワードルッキングな視点で、より深く戦略を見るものとして捉えられており、タクソノミーとの対比としても、伝統的なネガティブ・スクリーニングとはまるで違うもの明記すると良いのではないか。

        ⚫GXに係る取り組みが海外から反発を受けるとは現状考えていない。日本として、長期的なビジョンを持ち、CO2排出削減を目指していくことが重要ではないか。

        ⚫マルチソリューションとしてGXを推進していくことは、海外から特に反発を招くものではないと認識している。国内向けにもマルチソリューションの考えを根付かせていけると良いのではないか。

        ⚫今後、公正な移行が重要になると考えている。地域として公正な移行を捉え、自治体や、後から参画する企業や去る企業なども含めより多面的なステークホルダーにおいて公正な移行の議論を組み込んでいけると新しいマーケットができてくるのではないかと思う。

        ⚫トランジション・ファイナンスを拡大していくためには、ASEANを含むアジア各国への仲間づくり、ICMAやLMAとの連携が重要である。

        ⚫現状トランジションが進んでいないのはビジネス上の問題によると考えている。技術的な不確実性がある中で、基本指針でも、マルチソリューションでトランジションを進めていけるようにしてほしい。「これは良いけどこれは駄目」という発想になると、トランジション技術が完全に確立されていない中で対象が限定されてしまう。それは避けていただきたい。

        ⚫脱炭素に資する取組は長い時間軸で考えれば、グローバルでやらなければならないことであることは間違いない。多少の政権の揺れ動きがあっても、やらなければならない時に右往左往してしまうと長期的な信頼を失う。組織としてそこは気をつけなければならない。日本の金融機関として、経済産業省をはじめとする日本の政策立案や産業政策とも連携したうえで取組を進めており、中長期的な目標達成のために取組を進めていくというのが基本線と考える。基本指針について、マルチソリューションの考え方に賛成である。一方で、トランジションの理念は大切にしなければならない。理念とその理念を構成する要件をきちんと明示する必要があり、本基本指針の中にしっかり組み込まれている。

        ⚫以下は基本指針の書きぶりに関する提案である。実務家から見ると3章を具体的に見ていくことになる。P.15のロードマップや戦略に対する信頼性を担保するという点を受ける部分だが、原案ではl)に設備投資計画に加えて具体的なアクションや戦略も入っていたと思う。それが現状案では抜けているように感じる。企業の戦略の信頼性を担保するには、戦略の具体的な中身、アクション、投資計画が本質であるため、アクションという要素は明示的に残した方が良いのではないかと考える。加えて、P.18のe)目標達成のシナリオの「なお~」以降に関し、科学的根拠に基づく移行パスウェイが存在しない場合、「同業他社との比較や過去の実績の利用」できると記載があるがこれで良いのか。同業他社の取組が十分ではない場合良くないのではないか。近しいセクターや参照する地域、科学的根拠に基づくパスウェイを参照すべきであり、その点は外さない方が良いのではないか。この2点が気になったところである。

        ⚫事務局

        ➢P.15の書きぶりについてはご意見参考にさせていただく。P.18の書きぶりについてはICMAの記載をそのまま参照している認識である。

        ⚫細かい文言の趣旨については、CTFHを作成したICMAに確認するのが良いのではないか。

        ⚫基本指針の事例集については、今後もトランジション・ファイナンスの案件が組成されることを考えると、事例を一つのページに集約し、基本指針にそのURLを掲載することも一案ではないか。優れた案件が出てきた際に、その案件が基本指針に掲載されていないのはもったいない。

        ⚫ASEANへのトランジション・ファイナンス拡大の話が挙がっていたが、ASEAN以外のアジアの国の動向にも着目できるとよい。例えば、自身も以前、中国はトランジションには興味がないと思っていたが、中国の国内債市場ではトランジションボンドマーケットがかなり盛んであるらしい。中国のトランジション・ファイナンスと日本のトランジション・ファイナンスがどう違うかという点について、基本指針に記載するかは別として、一度議論をするのが良いのではないか。

        ⚫基本指針について、良質な事例の積み上げによって市場の健全性を維持し、資金調達者の挑戦と、資金供給者の理解深化の双方の工夫が必要であるという考え方が示されており、全く異論はない。前回の改定案からの変更点として、トランジション・ファイナンスのルール形成を主導できるよう我が国の先進性を表現する記述が追記されている点を評価したい。本基本指針が日本以外の地域でも積極的に適用されるような発信が期待される。

        ⚫Scope3については、記述に概ね違和感はない。ただし、コラムにも記載されている通り、Scope3の算定は発行体の実務負担が非常に大きい上に、Scope3は発行体間で比較可能な性格の数値ではないため、発行体と投資家の間の丁寧なコミュニケーションが重要である。金融機関側で発行体の開示に係る労力に見合った評価ができるか、開示されたScope3をどのように活用するのかをしっかり考慮し、実行に移していただきたい。政府には、それを可能とする取り組みを推進していただきたい。

        ⚫これまで日本の業種別ロードマップは必ずしも国際的に理解されていなかった部分があったが、今回の基本指針の改訂により、どちらかというと主流なアプローチであるタクソノミーと比較する形で、ロードマップの性質を整理いただいたことで、日本のトランジションアプローチの理解が非常に広がるのではないかと期待をしている。協調したい点としては、まず、タクソノミーとロードマップは対立する概念ではないという点である。日本の発行事例においても、ロードマップを使いながらタクソノミーを部分的に参照している場合があり、タクソノミーとロードマップは相補的な関係である。タクソノミーの特徴は、技術ごとに定量的な基準を当局があらかじめ作ることでる。「あらかじめ」というのがミソであり、結果、発行体の説明責任が少なく、発行コストが安い。その一方で柔軟性が低く、市場環境の変化を迅速に捉えることができないという課題もある。このようなタクソノミーとロードマップの違いをニュートラルに整理いただけると良い。

        ⚫タクソノミーやロードマップなどの様々な環境整備やLNG等の具体的な取り組みについて、周辺各国の動向を注視し、適宜連携していくことが重要ではないか。

        ⚫昨年9月に欧州の金融当局や産業関連の当局と議論をしたが、その際彼ら自身が「トランジション」という言葉を多く使うようになってきたと感じた。さらに、一部の方々は、「タクソノミーは狭すぎる、やり過ぎた」という発言をしており、よく使われる単語も「タクソノミーではなくトランジションだ」と述べる方もいた。日本が推進してきたトランジションという考え方については、誇りを持っていいのではないか。また、官民が一体となってロードマップを作り上げていくというアプローチ自体も賞賛されていた。

        ⚫資料4の12ページにおいて、「中堅中小企業が基本方針に基づいてローンの資金調達を行う場合」についての記載があるが、トランジション・ファイナンスを中堅中小企業まで広げていくということ自体については賛同である。一方で、トランジションの基準については緩めるのではなく、グローバルで合意されたものをベースに進めるべきであり、トランジションのアプローチの信憑性を国際的に訴え続けることは重要だと考えている。

        ⚫基本指針の改訂版について、概ね違和感はない。他の委員の発言にもあったが、欧州がトランジションの概念に寄ってきている印象を受けるので、さらに日本のトランジション・ファイナンスの取組を進めていくべきだと感じている。

        ⚫資料4の1ページについて、「IPCCの1.5度特別報告書では、今世紀末の気温上昇を産業革命前と比べて 1.5℃ に抑えるためには、2050 年前後に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることの必要性が 示された」との記載があるが、正しくは「世界のCO2排出量の実質ゼロ」であるので、正確に引用いただきたい。

        ⚫基本指針の改訂案について、非常によく練られた内容であるし、5ページに参考として示されている「日本におけるトランジション・ファイナンス環境整備施策の全体像」も非常に分かりやすいと感じた。また、タクソノミーとロードマップのコラムについても良い内容である。

        ⚫ICMAのCTFHと照らして基本指針の改訂版を確認した際に、次の3つの点を感じた。1つ目は、ICMAの付録についてである。ICMAの「付録1」と「付録2」はGSS債にフォーカスした内容だが、「付録」は発行体にとって参考になる情報が記載されているため、本基本指針に取り入れても良いのではないかと考える。

        ⚫2つ目は、ICMAの原文に「投資家に公開されている必要がある」「トランジション計画に焦点を当てた公表情報に当該情報を盛り込むこがベストプラクティスであり、マーケットプラクティスと合致する」という記載があるが、この文言が市場関係者にとって非常に重要な内容であるという点であり、日本の基本指針にもどこかに盛り込むべきではないかという点である。

        ⚫3つ目は、ICMAのメソドロジーレジストリーについて、基本指針でもどこかで紹介をした方が良いのではないかという点である。

        ⚫前の意見に同意で、ICMAの付録部分については、ぜひ基本指針にも追加いただきたい。また、付録では、日本の取組について、「分野別のロードマップを参考にトランジション・ファイナンスを調達」という旨の記載がされているので、その部分も基本指針で言及してはどうか。

        ⚫基本指針の11ページ目の記載について、トランジションの「該当性」を「適格性」という表現に変更いただいた点は非常に良いと感じた。また、トランジションのアプローチについて「柔軟性が高い」という表現を使うと、場合によっては「緩い」と捉えられる可能性もある。そのため、トランジションの戦略に沿っていることに加え、地域性を踏まえた「Best Available Technology(BAT)」の採用や、ロックインの回避が必要である旨を追記しても良いのではないかと考える。

        ⚫経済界や国からGXを止めずに進めていくという非常に強いメッセージが発信されていることは非常に重要である。ASEAN諸国では、シンガポール、タイ、マレーシアを中心に資本市場においてもトランジション・ファイナンスの取り組みが強化されている。日本が脱炭素の取組を続けていることを国内外にアピールすることで、アジア諸国とともに脱炭素の方向に資金を誘導していくことは新たな価値を持つものだと考える。また、その際、他の委員が発言をされたように、アジアに対してトランジションの基準を緩めることなく、質の高いフレームワークを提示することが重要である。

        ⚫基本指針については、日本企業が指針を活用するという前提での発言だが、「日本の2035年、2040年、2050年のカーボンニュートラル目標あるいは1.5度目標と整合的なパスウェイでの削減を念頭においた移行計画の作成」を求める必要があり、それを基本指針においても示すべきではないか。企業が移行計画を作成し、それを金融機関や評価機関が評価する際にも重要な点であり、ロードマップの作成においても日本の脱炭素目標は言及すべき。

        ⚫2点目として、「TCFDなどのフレームワーク」という言葉が何度も出てくるが、むしろ「ISSBやISSBをベースとしたSSBJの基準」を前面に出すべきではないか。日本の企業にとっては開示の際に最初に参照すべき基準になると考える。

        ⚫今後の課題として2点挙げたい。1点目は、策定したセクター別のロードマップについて、その前提となる温暖化目標やエネルギー基本計画が更新されているため、ロードマップの更新や再検討を進めていただきたい。2点目は、公的機関においてどのようにトランジション・ファイナンスを進めるのかという点である。民間の金融機関は、メガバンクを含めてさまざまな形でガイダンスやガイドラインを作成しているが、公的機関についても、ブレンデッド・ファイナンスなどの可能性を含め、どのような考え方で基本指針を活用するのかを示すことは重要である。この点についても、検討いただきたい。

        ⚫セクター別のロードマップの更新について今後の方針は決まっているのか。

        ⚫事務局

        ➢セクター別のロードマップについては、多方面から意見をいただいており、基本指針の改訂の議論後に、議論をしたいと考えている。

        ⚫セクター別ロードマップは、あらかじめ策定されていることに意味がある。トランジション・ファイナンスの事例が出てきている中で、各セクターにおける技術のタイムスケールは変わってきているので、ロードマップにおいてもその動向がタイムリーに反映されていると望ましい。

        ⚫伊藤座長

        ➢本日の議論を踏まえ、基本指針の改訂における修正は座長、事務局に一任いただき、パブリックコメントに向けて準備を進める。

        ⚫事務局

        ➢今後の動きとして、パブリックコメントは2月中の実施を想定している。パブリックコメントを踏まえた最終案について、年度内に委員には最終確認をいただく形で進める。

      • ②アジアでのトランジション・ファイナンス推進のあり方に関するサブワーキングの設置について

        ⚫こうした仲間づくりをしていくという取組の方向性について、非常に賛成である。ただし、ASEAN関連では、民間主導だがATFSG(Asia Transition Finance Study Group)、金融庁ではアジアGXコンソーシアムなど、様々なサブワーキンググループが立ち上がっている印象を受けるため、テーマを絞り込むことが重要ではないか。特にファイナンスのつけ方についてアジアGXコンソーシアムとテーマが重複しているようにも見えるため、連携の仕方など整理・検討できるとよい。

        ⚫日本から何を提供するのかという点が重要であり、金融機関や銀行が参加して脱炭素化を進めることの他に、事業会社が自社の脱炭素技術や製品を提供し、それをファイナンスにつなげていくことがあると考える。例えば、環境省が進めているグリーンイネーブリングプロジェクトでは、水素製造装置を製造するための資金を提供し、その製品を現地で活用するという形が考えられる。こうした取り組みはサプライチェーン全体を支援する形で進めることができるもので、基本指針にも記載すべきと考えている。

        ⚫このため、サブワーキングについては、どの業界をターゲットにするのか、どのような狙いで進めるのかを明確にする必要がある。日本にはどのような技術があり、それをどのタイミングで、どの程度提供していくことが適切なのかを整理することが重要である。タイムラインも含め具体的な計画を立てることで、資金を適切に配分し、アジアのトランジションを支援すると同時に、日本の経済成長にもつなげることができると考える。もし詳細がまだ決まっていないのであれば、こうした点について検討を進めていただく必要があると感じた

        ⚫GXは「脱炭素 × 産業政策」という方向性が明確に示されており、アジアで新たな脱炭素技術の需要を喚起するという観点が非常に重要だと考える。例えば、水素の利用促進や、BEVに注力する主体に日本の自動車産業が持つソリューションを示すことが考えられるが、今回のサブワーキングでファイナンス側からの意見だけに偏ると産業界の視点が不足する可能性がある。脱炭素の技術や取組について、国内の需要だけでは規模が十分に拡大しない、あるいはプレミアムを乗せられないといった課題がある中で、産業界からの意見を取り入れることで、拡大の余地を見出せる可能性がある。そうした意見を含めて取り組んでいただきたい。

        ⚫サブワーキングは重要な取組。産業界の意見が重要というのもご指摘の通り。JBIC(国際協力銀行)やJICA(国際協力機構)といった政府系金融機関が個別にトランジションについて議論する機会は多くあるが、アジアなど海外に進出する際には、しっかりとした枠組みの中で議論を行うことが重要である。

        ⚫また、これはできるだけ早く進める必要があると考える。COP29でFAST-P(Financing Asia’s Transition Partnership)が立ち上がったように、アジアにおけるトランジションの考え方は多様であり、しっかりと日本の意図を示さないと、我々が目指す方向性とは異なる形で資金提供が進んでしまう可能性があるだろう。そのため、日本として「こうあるべきだ」という明確な方向性を早急に示す必要があると考える。今回のサブワーキングのような取り組みは、そのための重要な一歩であり、非常に意義があると感じている。

        ⚫事務局

        ➢スケジュールについて、本日、サブワーキングの立ち上げを提案のうえ、2月以降に検討を進めていく予定である。その際、他省庁の取組との整合性や、日本政府としての考え方を明確にする必要がある。特に、公的機関を巻き込んだ形での日本政府の方針をしっかりと構築していくことが重要である。

        ➢これを短期間で進め、夏ごろには「ポジションペーパー」という形で発信し、その後に控える閣僚会合やハイレベルな会議でしっかりと日本の取り組みを打ち出す必要があるという認識がある。また、参加メンバーについては、公的機関や金融機関にも声をかけており、参加をお願いしているところである。

        ➢さらに、事業会社についても、経産省としてしっかりと巻き込んでいくことが重要である。アジアで具体的なディールを作り、それを基に事業会社を巻き込む形で進めていくことが大事だと考えている。まだ検討中の部分もあるが、こうした方向性で進めていきたい。

        ⚫他の委員から指摘のあった他省庁との取組との関係整理は必要であり、他の取組すべてに参加している機関もある中で、テーマや位置づけをしっかりと検討していただきたい。

        ⚫グローバルでトランジションの取組をスタックさせている課題についても議論が必要である。特に、新しい技術で既存のものを置き換える際、コストが高くなるという問題がある。サブワーキングやその他の活動の中で、こうした課題をどう乗り越えるのか、特にアジアの途上国では予算が限られている中で、価格差や価値差をどう克服するのかが重要である。その上で、需要を喚起し、スケールさせていく方法を議論する必要がある。そうでなければ、どれだけ日本が技術を用意しても、それを需要するマーケットが存在しないという状況になりかねない。

        ⚫サブサーキングの流れについては非常に賛成である。一方で、もともとICMA(国際資本市場協会)のCTFH(クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック)は完全にボンド市場向けに作られたものであり、基本指針はそれを日本向けに、どちらかというとローン向けにアレンジして適用したという経緯がある。これをそのままアジア市場に適用しようとすると、アジアの金融市場の特性に合わない部分が出てくる可能性がある。間接市場向けであればよいが、大企業を初期的な想定利用者として直接市場からの調達を考えると、適切な見せ方等も異なるだろう。この点について、経産省内でさらに議論を深めていただきたい。

        ⚫東南アジアのエネルギー産業では、国営企業が多いという特徴があるため、ファイナンスの面でこれまでとは異なる発想での議論が求められるのではないかと感じる。

        ⚫伊藤座長

        ➢アジアでのサブワーキング立ち上げに賛同いただいたと認識した。追加的に質問がある場合は事務局に問い合わせしてほしい。

―― 了 ――

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