「トランジション・ファイナンス環境整備検討会」
(第13回):議事要旨

  1. 日時:令和 8 年 2 月 27 日(月曜日)10時30分~12時30分
  2. 場所: 経済産業省別館11階1120各省庁共用会議室及びWeb会議
  3. 出席委員
    伊藤座長(一橋大学)、秋元委員(公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE))、芦田様(株式会社三井住友銀行、佐野委員代理)、天田委員(株式会社三菱UFJ銀行)、伊井委員(株式会社みずほフィナンシャルグループ)、池田委員(一般社団法人日本経済団体連合会)、上野委員(一般財団法人電力中央研究所)、岡崎委員(第一生命保険株式会社)、押田委員(マニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社)、梶原委員(株式会社日本格付研究所)、金留委員(DNV ビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社)、北島委員(アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社)、林委員(BofA証券株式会社、国際資本市場協会(ICMA))、宮本委員(日本生命保険相互会社)
  4. 議事:
    1. (1)開会
    2. (2)事務局説明・討議
      1. ①トランジション・ファイナンスを巡る国内外の動向について

      2. ②トランジション・ファイナンスに関する分野別技術ロードマップ更新について

      3. ③クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針について

    3. (3)閉会
  5. 議事内容:
    【議事①国内外動向、議事②分野別技術ロードマップ更新】
    • ⚫ 事務局より議事①②について説明した後、討議。
    事務局説明を踏まえ、委員から以下の発言があった。
    • ⚫ 投資家目線ではラベルの有無そのもの以上に、開示の透明性・比較可能性・検証可能性が重要。ただ、海外投資家の場合、ラベルがあると説明コストが下がり、結果として発行体に調達上のメリットがあるため、海外から資金を呼び込むうえでラベルの重要性は引き続き高い。
    • ⚫ セカンド・パーティ・オピニオン(SPO)等の取得費用がラベル付き発行の障害になっていると理解。現在も実施されているSPO取得費用への補助の継続等も対応策として考え得る。
    • ⚫ トランジション・ファイナンスの拡大にあたり、中小企業では移行戦略等の策定におけるデータの制約が大きい。英国のトランジション・ファイナンス・ガイドラインのドラフト版では、データがない場合、代替手段があれば一定程度認める内容が示されている。国内でも同様の緩和条件を設けることは一案だろう。
    • ⚫ 海外のガイドラインやプリンシプルの中で、特にセーフガードの点等、ラベルの要件が具体化されている。ラベル要件が具体化されると投資判断の材料になるため、海外投資家からの資金調達を拡大していくためには、海外投資家が求める水準を満たした具体的な開示事項等をベストプラクティスとして示していくことが重要ではないか。
    • ⚫ ラベル有無の重要性は、投資家の規模・レベル感にもよる。大手でリソースがある投資家はラベルなしでも投資対象としての適格性を判断できると思うが、資金供給者の裾野を拡大していくにあたり、特に小規模な金融機関や投資家等、判断できる人材やリソースに乏しい先もいるだろう。SPOがあると社内稟議等の実務でも説明がしやすいと考えられるため、ラベルの位置づけは比較的重要である。
    • ⚫ トランジション・ファイナンスを拡大していくにあたり、コスト、人材不足、フレームワーク策定の手間、ラベルを付けても需要が増えない等、テクニカルな課題がある。特に地方・中小の企業が資金調達をする場合、コストやフレームワーク策定の手間はある程度金融機関側で対応していくことが必要だろう。人材不足の点は、省庁協力のもと教育機会を増やし、判断できる人材を増やすことが重要。
    • ⚫ 現状、事業会社でcapex投資の判断ができない要因はオフテイカーが見えず需要が立たないことと理解している。本検討会の範囲を超えると思うが、オフテイカー支援は幅広く行う必要があるだろう。
    • ⚫ 国内ファイナンスにおいて、そもそも海外投資家の参加が少ない。そのため、日本の企業が外債や海外で資金調達する場合に、いかに外国から投資してもらえるようにするか、という話にもなるだろう。海外投資家にとってのインセンティブはスプレッドとIRRだと思うが、その観点で海外投資家から見て好条件の企業案件は現状あまり多くない可能性がある。海外への裾野拡大では金利水準も考慮する必要があるだろう。
    • ⚫ 先ほど教育の話もあったが、日本の投資家がどこまで詳細にラベルを理解して投資しているかわからない。ラベル投資のマンデートを課されているケースは少ないと理解しており、ラベルの有無より利回りを重視して買っている可能性もある。
    • ⚫ 日本のGXは経済活動にとって重要であり、その推進のためにも、株・債券ともに海外からの投資が増えることが重要。特に債券について、海外投資家はラベル付きを好んでいるため、ICMAやローン市場協会(LMA)準拠でラベル付きのトランジション・ファイナンスを発行できるような環境整備は重要である。
    • ⚫ 足元では金利の上昇で国内債券に対する海外からの需要も高まっていると理解している。分野別技術ロードマップ等、素晴らしい取組をしているので、より積極的に日本の取組を発信していくことが重要ではないか。また分野別技術ロードマップについて、日本の取組に関する情報は散在しているため、HPの掲載を工夫する等、海外投資家の情報収集窓口を整理して示すことが有効。
    • ⚫ 中小企業はボンド発行よりローン中心。ローンはバイラテラルな性格が強く、国際基準への整合を厳密に求めるよりも、当事者間の判断に委ねつつ、最低限グリーンウォッシュにならないよう求める形が健全だろう。
    • ⚫ 分野別技術ロードマップは、2030年の日本の脱炭素基準が確定するタイミングを見ながら改訂してほしい。また、分野別技術ロードマップは海外でトランジションを考える際の参照先として評価されているため、日本に閉じず海外でも使える形にしてほしい。また、船舶・航空も含め、省庁横断で日本全体のロードマップとして整理してほしい。
    • ⚫ 海外では、金融商品に限らず、信頼できる人が評価したものを買うという傾向が強く、第三者評価が求められる。中身が良ければラベルなしで問題ないというのは、日本固有の考え方かもしれない。SPOでなくても良いが、最低限の第三者評価は必要になるだろう。
    • ⚫ SPO取得における事業会社のコストは、直接的なSPO費用だけでなく、社内体制の整備や評価会社とのコミュニケーション等の間接コストも大きい。トランジション・ファイナンスは比較的リソースに余裕のある大企業等には一定アプローチできたが、今後は中小・地域への拡大が課題と考えている。
    • ⚫ 分野別技術ロードマップから産業別のフレームワークを策定することも1つの手段だろう。個別に事業者がSPOを取得する必要がなく、冒頭に述べたトランジション・ファイナンスの課題である事業者のコスト等の負荷低減につながり得る。事務局資料にある神戸サステナブルファイナンス・フレームワークの事例も含め、共通枠組み・フレームワークを作成する取組を行う主体(資金調達者以外)に補助金を重点配分する発想もあり得る。
    • ⚫ 海外は日本事例を参照しており、経産省の補助金事業等による支援の成果は大きいと感じている。日本の課題解決を進めることが海外の入口支援にもなる。
    • ⚫ 海外投資家はグリーンかトランジションか等、識別することを好むため、一定基準を示す必要があるのではないか。クライメート・トランジション・ボンド・ガイドライン(CTBG)等の活用によりグリーン、トランジション、その他の識別可能性を高め、正確に伝えるべきだろう。
    • ⚫ 分野別技術ロードマップは、先ほど述べた産業別のフレームワークを作る場合について、ロードマップとして充実した情報が含まれている。ただ、脱炭素燃料、水素・アンモニア、CCS等の共通技術は実行責任者不在のまま、需給像が不明確になりやすく、可能であれば量的な観点等も含めた整理をしていけるとよい。
    • ⚫ ローンの観点では、ラベル付き・ラベルなしを含め、トランジション関連ファイナンス需要は拡大していく見立てである。
    • ⚫ ラベルの有無に関わらずトランジションに資するものにファイナンスしていければと思うが、ラベル付きの場合、企業の移行計画等を確認できる点に価値がある。そこからリスクテイクを考える材料にもなる。
    • ⚫ 脱炭素に向けた企業の投資が進みにくくなっている局面もあり、投資が進まなければファイナンスも出ない。エネルギー安定供給に資する取組、GX産業立地など集積地の脱炭素化、需要喚起等にも金融機関として取り組んでいきたい。
    • ⚫ 中小企業は移行計画作成が難しく、厳密な基準等への整合を必ず求めるというよりも、トランジションに資する案件は支援していくということだろう。
    • ⚫ ローンの場合、プライシング等の面で海外投資家を呼び込みづらいだろう。
    • ⚫ 分野別技術ロードマップについて、改訂内容に特段違和感ない。
    • ⚫ ESGに対する投資を増やすためには、投資家への分かりやすさの観点で、ラベル付きが望ましい。
    • ⚫ LMAでは移行計画が無い場合に複数の代替指標を組み合わせて説明することが認められており、中小企業への裾野拡大に向けたボトルネック解消の一案になるだろう。
    • ⚫ 分野別技術ロードマップ改訂については、今回の改訂で第7次エネルギー基本計画の内容を反映したように、次の第8次エネルギー基本計画を踏まえて実施することが一案として考えられる。また、2030年が近づく中で、NDCの46%削減に対する分野別技術ロードマップの貢献をどう示すかといった振り返りの視点も今後改訂時の検討事項として考えられるだろう。
    • ⚫ ファイナンス側のボトルネックだけでなく、資金使途となるプロジェクト自体のボトルネックを懸念している。水素は混焼より専焼の方が技術的に簡単という話も聞く。仮に技術的には専焼が可能だがサプライチェーンの整備がボトルネックなのであれば、そこに重点的に対処していくことが重要だろう。水素に関しては値差支援等すでに様々な支援がある点は認識しているが、そうした重点課題を明確にして集中的に支援を行うべきはないか。またその際はGX推進機構が大きな役割を果たすと考えている。技術的ボトルネックとその解消策、20兆円等の政策投資の狙いをより分かりやすく発信すると民間が追随しやすい。
    • ⚫ RITEの説明資料について、Orderly2.0Cシナリオは2050年時点にネットゼロでないように見えるが、2度整合性の考え方としてどう理解すべきか確認したい。
    • ⚫ 分野別技術ロードマップについて、重点課題の特定と集中支援・発信を強化すべき。
    • ⚫ グローバルの視点ではラベルの有無で評価が大きく変わるため、海外から日本に資金を向けるには、ラベルが付いていることは非常に重要。ラベルが付くことで、ラベルにより担保される品質の水準について共通の認識が形成されることもあり、金融機関だけでなく、企業側でもラベルの使い方を考えると良い。
    • ⚫ 日本からの発信について、現在海外の日本に対する関心が急速に高まっており、この機を逃すべきではない。
    • ⚫ RITEの試算結果は非常に強力なものであり、ロードショー等でどのように活用していくか。前回の場合は解説の動画を作成されていたと思うが、高度な内容であるためついていけない人も多かったと考えている。今回の試算結果の打ち出し方について、お伺いしたい。
    • ⚫ トランジション・ファイナンスは、グローバルの脱炭素化と経済成長の両立を図りつつ持続可能な経済社会へ移行していくための重要な手段。
    • ⚫ 特にHard-to-abate産業では現実的かつ段階的移行を後押しする金融の役割が極めて大きい。ESGファイナンスの市場は急拡大局面から高原状態に入ったと認識しているが、脱炭素に向けた必要資金は依然莫大で、金融の役割は引き続き重要。市場の厚みと信頼性をいかに維持・向上させ、トランジションから脱炭素化に進めて行くかが今後の課題。大企業に加え、サプライチェーンを支える地域の中堅・中小企業に裾野を広げる取組が必要。
    • ⚫ 分野別技術ロードマップの改訂にあたっては、企業の多様な挑戦を許容する柔軟な道筋を示す特性を引き続き維持・発展してほしい。
    • ⚫ 米国では今年に入り、気候変動枠組み条約からの脱退表明や、大気浄化法の下での温室効果ガスの危険認定の撤回等、気候変動対策を根本から否定する動きが少なくとも政権サイドから出ている。サステナブルファイナンス/トランジションへの影響をどう見るか意見を聞きたい。個人的には、政権の動きが米国の動きの全てではなく、民間側の動きが残る可能性もあると見ている。
    • ⚫ 秋元委員
      • ➢RITEのモデルは世界全体の整合のもとで最適化しており、2度整合シナリオでは2050年時点で国内のGHG排出が一部残るケースもあり得る。さらに国内の部門別の最適化の中で、発電部門は多くのシナリオで2040年頃までにカーボンニュートラル化することが経済効率的だが、Orderly 2度シナリオでは排出が残る形である。ただ、この場合でも世界全体で見ると2℃シナリオには整合している。また、RITEのモデルが特殊ではないかというご指摘もあるかと思うが、資料内でIEA、NGFS、IPCC等と整合的であることも示している。
      • ➢分析結果の発信は経産省と相談し、英語版の用意も含め進めて行きたい。
    【議事③基本指針】
    • ⚫ 事務局より議事③について説明した後、討議。
    事務局説明を踏まえ、委員から以下の発言があった。
    • ⚫ 基本指針改訂のスケジュールに賛成。
    • ⚫ LMAの原則について、トランジション・プロジェクトのみを資金使途として認めるような記載があるが、これでは投資額が積みあがりづらい。グリーンとトランジションを分けるかどうかはともかくとして、グリーンプロジェクトも使途に含めるようにしていく方が良いとも考えている。最終的な判断は投資家が行うが、読み手が誤解・混乱しない様に評価機関が整理し、伝えていくことが重要だと考える。
    • ⚫ 基本指針の位置づけを明確にしたい。これまではICMAのクライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック(CTFH)を参照していたが、今回ICMAではCTBGが原則で、CTFHへの整合はベストエフォートとされている。基本指針としてどの範囲を見ていくのか、確認したい。
    • ⚫ TLPにおいて、トランジション・ローンの資金使途の対象はトランジション・プロジェクトのみとされるような表現は、トランジション・ファイナンスを拾う意味ではボトルネックになり得る。基本指針の改訂議論に際しては、この点を考慮してほしい。
    • ⚫ ICMAのCTBGとLMAのTransition Loan Principles(TLP)において、TLPでは資金使途をトランジション・プロジェクトに限定しているように見えるが、CTBGではグリーン・トランジションが混合する場合も認めており、資金使途の考え方が異なるように見える。改訂スケジュールについて、ICMAやLMAの動向を踏まえつつ改訂の検討を進めて行くという意味で、2026年度中の改訂で違和感ない。
    • ⚫ 基本指針について、海外動向を見ながら年度内に改訂すれば十分で、拙速に進める必要はない。ボンドの原則をベースに土台整備をすることは、使う側のメリットも大きい。
    • ⚫ 発行体やSPOプロバイダー等が使いやすい形にすることが最も重要。ローンは国内で完結するものだが、国際原則と乖離しすぎない方が良い。環境省のグリーンボンドガイドラインのように、国際原則をベースに日本要素を追記する形式は分かりやすく、同様の整理が望ましい。
    • ⚫ ローンにおいてもCTBGベースで良い。改訂スケジュールにも違和感なし。日本固有の事情も、分野別技術ロードマップの参照等でカバーされているという認識である。
    • ⚫ ローンについて米国の動向を述べると、ラベル付きのものは出ないが、再エネ・CCS等を含め脱炭素に向けたファイナンスは伸びている。
    • ⚫ 環境省のグリーンファイナンス検討会の方でも、国際的な文書に書かれているものと日本独自のものを分離する作業を行って、読みやすさが向上した。また国際的な文書の更新への対応もやりやすくなった。この時の経験が役立つと思う。
    • ⚫ 関連して、環境省では改訂を重ねるたびに訳語の統一がとれなくなっていたところを、統一した。省庁は異なるが日本政府の文書なので、環境省の方も含めて、訳語の統一を図ってほしい。
    • ⚫ ルールメイクの観点で、諸外国との連携をお願いしたい。GXを進めて行く中で、資源循環等のテーマでは欧州と日本でルールメイクの争いをしており、欧州で作られたルールがグローバルスタンダードになると、日本企業が勝てなくなる可能性もある。こうしたルールメイクの観点を、ファイナンスの文脈でも意識して基本指針の改訂を進めてほしい。
    • ⚫ 運用機関におけるサステナビリティ関係のアナリストの数は、必ずしも多くない。使う側の観点では、調達手段や資金使途で参照する文章が異なると混乱するため、基本指針に集約する方向は分かりやすい。事務局資料に記載の方針に賛成である。
    討議を踏まえ、事務局から以下の発言があった。
    • ⚫ 経済産業省
      • ➢基本指針の改訂では、基本的にICMAのCTBG・CTFHやLMAのTLPも含めて全てカバーしていきたい。ただ、主たる参照先はCTFHとCTBGになると考えている。また、環境省が行ってきた改訂や用語の使い方等も参考に基本指針改訂の検討を進めたい。

―― 了 ――

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