【金融フロンティア】

金融庁スタッフによる大学経済学部での講義の教室から


金融庁金融研究研修センター副センター長
金 井 達 也

 金融研究研修センターは、毎年夏、新シーズンの初めに1年間の目標を決めますが、2003-2004は「外への情報発信」をテーマに掲げました(詳しくは先月のアクセスFSA第12号の吉野直行センター長のインタビューをご覧ください)。その具体策の第一弾として慶應義塾大学経済学部で10月11月に行った講義についてレポートします。


.「金融庁若手職員」のはずが「率先垂範+同期頼み」へ

 実は、年間目標「外への情報発信」の具体的施策についての内部検討ペーパーには、「金融庁若手職員による大学での講義」と書かれていました。そして当然のように、金融庁内の全ての幹部が賛成でした。現場を預かる筆者は、早速パイロットプロジェクトとして、吉野直行センター長が慶應義塾大学経済学部で行っている講義のうち4コマで講師を務める、という段取りをつけました。

 ところが、ところが、ここで難問です。金融庁というところは、昔の日本の役所の良さを体現したようなところで、入庁1年目から15年目くらいまでのやる気のある若手職員が一番難しい仕事をばりばりやっています。これはプロ野球の新人選手なら「開幕即一軍」として、新人採用の時には、自信を持って金融庁をお薦めできるポイントなのですが、実際の若手の生活は、現在の案件に身も心もかかりきり、いわば蛸壺に胸まではまっています。予想通り、彼等にこの講義の話を持って行ったところ、全員「趣旨は大賛成、やりたい気持ちもある。しかし、2・3週間後に頭を整理して講義をするのは・・・」という反応でした。筆者自身も数年前まで同じ立場でしたので、彼等の気持ちも良く分かり、新シーズンの目標は早くも頓挫か、となりました。

 よく思うのですが、役所で新しいことをやろうと思ったら、「率先垂範」自分でやるのが一番早い、そして困った時には「同期頼み」です。今回も、直ちに作戦を変更、4コマのうち1コマは自分でやり、あとは同期(とその周辺)に頼むことにしました。その結果出来上がったのが、次に掲げる秋のシリーズのカルテットです。
 

 「金

融資産市場論」
 
10月17日(木)  後藤真一 監督局証券課長
11月13日(木)  金井達也 金融庁金融研究研修センター副センター長
 「中 小企業金融論」
 
10月20日(月)  太田 充 金融庁監督局総務課協同組織金融室長
11月10日(月)  橘高公久 経済産業省中小企業庁事業環境部金融課長

 この4コマの講義は、慶応三田キャンパスの800人入る大教室で経済学部の3、4年生に話すという、やる者にとっては正直言って非常にチャレンジングなものでしたが、学生さん達に素晴らしい熱意で聞いていただき、講師全員、大変に楽しい90分間を過ごすことになりました。筆者の経験をお話しする前に、カルテットのメンバーの感想をご紹介します。
 

 後

藤証券課長
 「大教室であるにもかかわらず、皆さんものすごく真面目に聞いてくれた。不良債権の話をしたが、内容についてもよく勉強していた。講義後個別の質問を受けていたら、あっという間に30分経ってしまった。」
 太 田協同組織金融室長
 「皆さんが真剣にノートを取ってくれているので、感銘を受けた。大教室なので、質問をしてもらうのは無理かなと思っていたが、質問も出て、正直楽しい時間だった。」


.2ヶ月前「学生さん達全員にどうやって理解し満足してもらうか?」

 ここからは、筆者自身の経験を、楽屋裏風にお話しようと思います。吉野センター長の「金融資産市場論」ということで、元気よくお引き受けしたのが、講義の2ヶ月前。まず、同期の後藤君が「銀行の不良債権問題」、筆者が「日本の証券市場」と分担を決めました。

 そしてこの時考え始めたこと、それは、「証券市場についての基礎知識が多様な学生さん達全員にどうやって理解し満足してもらうか」、ということでした。経済学部生800人を前に話をさせていただけるということは、創立まだ2年半の金融研究研修センターにとってはまたとない機会であり、全ての学生さんに満足してもらいたいと思いますが、証券市場の話というのは、なかなか馴染みない上、深みに入ると直ちにおタクの世界に入りこむという逆の面もあります。さらに経済学部の3、4年生800人となると証券市場についてどのくらい知っているのか、考えても考えてもイメージが湧きません。結局、資料としては、「I. 基礎編」と「II. 政策編」の二つを用意して、当日学生さん達に聞いてみることにしました。できあがったレジュメの1ページ目で、段落構成をご覧ください。(資料1)

(資料1)




.2週間前「金融庁で働いていると当然と考えていることをどう説明するか?」

 さて、2週間前になると、準備も佳境に入ります。筆者の経験では、大学で90分の講義を一コマやろうと思うと、完全に予備知識がある場合でも準備にまるまる3日間はかかります。資料を作っていると、「ああ、この講義引き受けなければよかった」と何回か心から後悔しますが、それ以外の時は、知的な楽しい時間です。

 この頃一番思い悩むのは、「金融庁で働いていると当然と考えていることを、どう分かりやすく説明するか?」です。今回のテーマ、日本の証券市場について言えば、「直接金融市場が拡大することが何故重要か」、あるいは、「市場型金融システムが何故望ましいか」です。金融庁で一生懸命働いていると、この命題を当然としてスタートし、実現するための施策を必死で考えます。

 ところでこの命題、「800人の学生さんに、短時間で、分かりやすく」説明しようとすると、意外に考え込みます。平成14年7月12日の「日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会(いわゆるビジョン懇)」の報告書は「経済がキャッチアップを終了し、何が資金供給に値するか判然としない段階に至れば、情報の収集、チェックが多数の参加者により行われる市場金融モデルが望ましいと考えられる」と述べていますが、これだけでは、30秒で終わってしまいます。あれこれ考え、金融研究研修センターの仲間ともディベートして、講義での説明用に作ったのが資料2です。

 実際の講義では、「君等が新しい会社を興すとき、吉野銀行と金井証券で、どちらが仕事の内容理解してくれると思うかい?そしてファイナンスをどちらに頼む?」と何人かの学生さんを当てました。当然講師としては、上記のビジョン懇の考え方通り、「金井証券」という答えを期待してたのですが、何と全員「吉野銀行」。吉野先生の信頼が絶大なのか、熱弁を奮ったつもりの筆者の説得力がまだまだだったのか・・・。

(資料2)




.講義当日―金融の話はできるだけ具体的に

 そして、11月13日の当日、午後1時から講義開始です。800人の教室はさすがに大きく、高い演壇があって、さながら講演会場のようです。日本の講義は一方的に話すことが多いですが、欧米だと先生が3分話すごとに生徒から質問の手が挙がり、講義というよりはディベートのようになります。筆者はこの方式が好きで、何時も教室の中を廻りながら話すのですが、800人はさすがにこれまでで最大です。どうしようかなと一瞬だけ迷いましたが、やはり何時もの通り、ワイヤレスマイクを手に、演壇をおりました。

 まずは、ウォーミングアップ、学生さんたちとリズムを一緒にすることが第一歩です。今回は資料3のような問いに○×を順番に言ってもらいましたが、やはり阪神タイガースの力は絶大、「金融庁内の阪神ファンは、セ・リーグ優勝の際、大祝勝会を開催し、竹中大臣も参加した」というところで大爆笑、すっかり楽しい雰囲気になりました(なお、正解は(1)(2)(3)全て○です)。
(資料3)
 
次の文章は正しいでしょうか?○×で答えてください。
 (1) 金融庁が現在最も力を入れている証券市場における政策は、個人投資家の育成である。
 (2) 金融庁は、「新人職員を直ちに第一線で働かせる」という先進的な考え方をとっている
 (3) 金融庁内の阪神ファンは、セ・リーグ優勝の際、大祝勝会を開催し、竹中大臣も参加した。

 ところで、金融の話というのは、具体的に話さないとすぐ迷路に入り込んでしまうという難しさがあります。そこで今回は、次に資料4の「運用手段いろいろ」というのを皆にやってもらいました。何人かの学生さんに自分の意見を言ってもらいましたが、予想に反して(?!)全員が預金派。後で職場に戻って考えさせられました。

(資料4)
 

資金運用手段いろいろ


 ある週のサッカーくじが大当たり、あなたは2000万円を手にしました。10年後に使おうと思います。それまで、次のどちらで運用しますか?
(a)下の運用方法のうち、気に入った一つで。
(b)全ての運用方法に分散して。

運用方法1

 普通預金(年利0.001%)
運用方法2  定期預金(年利0.200%(10年大口定期(1千万円以上))
運用方法3  外貨預金(12ヶ月ものドル預金年利0.30%)
運用方法4  郵便貯金(3年以上定額貯金0.06%)
運用方法5  10年利付国債(表面利率1.4%)
運用方法6  TOPIX(東証株価指数-東京証券取引所一部上場1504社へ分散投資)の投資信託
 
 (1) 株は、長期間をとれば預金よりも高い運用成績を上げるという実証研究が内外にあります。
 (2) TOPIX 最高値 1989年12月28日 2884.80
 (3) TOPIX 直近  2003年11月6日  1035.57
運用方法7  好きな会社の株式
 2002年1年間、東京証券取引所上場の株式で
 (1)一番上昇した銘柄は、49円から178円へ263.27%上昇
 (2)一番下落した銘柄は、307円から45円へ85.34%下落しました

 なお、上記の運用方法には、「保護範囲」があります。要約すると次の通りですので、注意してください。
.普通預金、定期預金、外貨預金 別紙の表(いわゆるペイオフ解禁とはこのことです。
 なお、外貨預金は預金保険の保護対象ではありません。)
.郵便貯金法 第三条(国の保証)
 政府は、郵便貯金として預入された貯金の払戻し及びその貯金の利子の支払いに係る公社の債務を保証する。
.国債 満期には国が元本償還します。
.株式 会社の業績が上がれば株価も上がりますが、事業がうまくいかなければ価値がなくなることもあります。

 さて、調子の上がって来たところで本論です。ここで、先刻書いた「学生さん達全員にどうやって理解し満足してもらうか?」という一番大切な点、つまり、何処から話し始めるかを決めなければなりません。今回は、「TOPIX(東証株価指数)という株価の計算の仕方を知ってるかどうか、正直に手を挙げてくれるかい?」と聞いてみました。TOPIXというのは、東京証券取引所の一部上場株式の時価総額の指数で、証券市場を議論するには最も理論的な株価の指標である一方、日経平均に比べなじみが薄い指標であることも否めません。挙手の結果は知っている学生さんが1割弱。ということで、レジュメの基礎編を中心にやることにしました。

 もう一つ、今回の筆者の講義の資料は、90分しゃべるために77ページ用意しました。いくつかの行政処分については、新聞発表の実物も用いました。1分間に1ページのペースで話さなければいけないことになりますが、そんな膨大な資料を作ったのは、「学生さん達に是非、金融庁が使うオリジナルの資料を見て、自分の意見を言って欲しい」と思ったからです。インターネットの時代、報道だけでなくオリジナルも見て、自分の意見を持ち、議論をしてもらいたい、議論を吹っかけてもらいたい、というのが講義の当日筆者が学生さんたちに最も言いたいことでした(意見が、金融庁にどんなに厳しくても、もちろん大歓迎です)。


.3分に1回質問される講義を目指して

 というわけで、今回の講義も無事に終わり、直前の「何で引き受けたんだろうというすごい後悔」は、「少しでも学生さんたちの役に立ってくれたらいいな」という爽快感に変わりました。苦しいけれど、終わった瞬間に次をやりたくなるのは、なんだか、かつて走っていたマラソンのレースに似ています。

 最後に、今回やり残したと思うことを一つだけ書けば、学生さんたちに、授業中にもっと質問をもらって議論のような形でやりたかった、ということでしょうか。先程書いた通り、欧米だと先生が3分話す毎に質問の手が挙がります。もっともっと工夫して、近い将来ディベート授業を是非とも実現したいと思います。

 聞いていただいた慶応義塾大学の皆さん、どうも有難うございました。是非金融庁の業務説明会にも来てください。


 最後に、吉野・藤田両先生とそのスタッフの方々、膨大なる資料作りにあたった金融研究研修センターの同僚に心からの御礼を申し上げて筆を置かせていただきます。お読みいただいている皆様と、教室でディベートさせていただく日を楽しみにしております。

(文中意見にわたる部分は筆者の個人的見解である)


 金融研究研修センターは、平成13年7月、金融庁における「研究と研修の効果的な連携」を目的として発足し、金融理論・金融技術等に関する研究を通じて専門的な知識を蓄積しつつ、それを活かした研修等により不断に職員のレベルアップを図っていくための活動を行っています。センターの概要や活動内容等については、ホームページ(http://www.fsa.go.jp/frtc/index.html)を御覧下さい。

【金融ここが聞きたい!】


 このコーナーは、記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、金融を巡る時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっと沢山ご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。
 
Q: 今般、足利銀行に対して預金保険法第102条第1項第3号措置が適用され、同銀行は特別危機管理銀行となりました。この措置の内容・趣旨を教えてください。


:この3号措置というのは、国がしっかりと管理をして営業を続けて、それで再生して、その後新しい受け皿に引き継がれるという仕組みです。(略)この間預金は全額保護されて、かつ地域に対する影響を最小限にする。この3号措置というのは、いわゆる貸し渋りや貸し剥がしが一番起こりにくい措置だというふうに我々考えておりますので、この趣旨に則ってしっかりと運用をしていきたいと思います。
 (略)銀行としては債務超過に陥りました。そういう状況の中で、県内に対する影響を一番小さくする方法をいうのを我々とったつもりでおります。銀行は、預金、貸し付けそれぞれの面で県内で約5割のシェアを持っております。場合によっては、5割強のシェアを持っております。そうしたことを考えて、我々としては国がしっかりと管理をして営業を続けてそして再生していくというこの3号の措置を、預金保険法102条の第3号の措置をとったわけです。
 (略)選択肢としてはですね、102条を適用するのかしないのかという判断がまずあります。我々としては、その判断としては102条を適用しないと預金者に負担が及ぶことになるから、102条はやはり適用すべきであると、これは我々の政策の判断としていたしました。そうなってくると、債務超過の場合に、これは1号は適用できませんから、2号か3号かということになります。そうした中で、2号に比べて今回の場合ですね、3号を適用するのが適切であるというふうに判断をいたしました。これは金融危機対応会議の中でも出席者の皆さんがその3号の措置が適切であるという判断を示されました。
 (略)お願いしたいのは、3号措置というものに関してですね、誤解を持たないでいただきたいということなんです。1号措置だったらいいんだけども、3号措置だったら大変なことになるというようなことを仰る方が意外と多いんですが、これ繰り返し言いますが、今回の3号措置、つまり一時国有化というのは、何と言っても国がしっかりと管理して営業を続けるということにあります。そしてそれを再生して新たな経営に引き継ぐということにある。預金は全額保護される、地域への影響は最小限に食い止める。それが3号措置ですので、この趣旨を正しくご認識いただくというのが大変重要かと思います。
平成15年11月29日(土) 竹中大臣記者会見抜粋)

 
Q: 今回の措置に伴って足利銀行の営業はどうなるのでしょうか。融資などは厳しくなるのでしょうか?また関連して、国の関係省庁連絡会議が設置とのことですが、どういった対応がとられるのでしょうか?


:国がしっかりと管理をして、営業を続けていきます。その中で、もちろん健全なところに対する融資は続けられますし、更にはそうした問題を抱えている企業についてもしっかりとした再生を行っていくというのが、これは金融機関としての当然の責任であります。即ですね、RCC送りというようなことを言う人がいますけれども、これはそういうことではありません。しっかりとした経営再生して、それで新たな経営に引き継いでいくというのが、この第3号の趣旨でありますので、その点もしっかりと理解をしていただきたいと思います。いずれにしましても、そういったきっちりとした経営を行う経営者を就任させると、しっかりとかつ我々としてはガバナンスの効くような体制を作っていくということが何よりも重要であると思っておりまして、この措置が上手く機能するかどうかは、努めてそこにかかっていると言っても良いと思っています。その点で我々は努力を是非したいと思います。
 (略)関係省庁の連絡会議ですけれども、(略)いろんなことを議論しなければいけないと思いますが、とりわけ政府系金融機関の最大限の活用、中小企業等に対する融資の円滑化の問題、それと各種雇用対策の活用の問題、地域再生のための諸施策、そういうことを私自身はイメージしております。内閣全体で取組むことですので、他省庁と相談をしなければいけませんが、今申し上げたようなイメージでですね、ぜひ他省庁の協力をいただいて、こういうものをしっかりと機能させたいと思います。
平成15年11月29日(土) 竹中大臣記者会見抜粋)

 


:(略)新頭取につきましては、特別危機管理銀行として行うべき業務の重要性に鑑みまして、幅広い方々とご相談をしながら、地域金融、企業再生等に精通した方として、横浜銀行の非常勤取締役である池田 憲人(いけだ のりと)氏を選任させていただきました。
 (略)新経営陣につきましては、池田氏に加えて、外部から、例えば地元の経済にお詳しい方、法律の専門家等の観点から選任することを考えておりますが、今後、新頭取のお考えも伺いながら、引き続き人選を進めてまいりたいと思います。
 外部からの役員招聘のほかに、若干名の役員について内部登用を考えており、この内部登用の人選は、然るべき時点で新頭取がされることになります。現在の役員の方々については、基本的にご退任頂くことになりますけれども、当面、現頭取と前頭取を除く現役員の方には暫定的に役員を務めていただくこととしています。
 今後、新経営陣の下で、健全化に向けて経営改革を進めまして、企業価値の維持・向上を図り、受皿への円滑な移行を目指すことになります。受皿への移行までの期間においても、もちろん栃木県を中心とした地域の金融の円滑化、中小企業等の再生に積極的に取り組んでいただきたいというふうに考えております。
 これは11月29日の記者会見でも申し上げたのですけれども、今後、新経営陣の下で、「経営に関する計画」を作成していただくことになります。その際には、例えば、経営の方針としまして、経営の合理化等、健全化に向けて経営改革を進めるとともに、地域金融の円滑化、中小企業等の再生に積極的に取り組むこと。更には、ガバナンスの強化、透明性の確保を図る観点から、来年6月の定時株主総会時に「委員会等設置会社」に移行すること。そして、業務運営の適切性・透明性の確保の観点から、融資、資産処分等の業務の適切性を監査するために、法律・会計の専門家から成ります「業務監査委員会」を設置すること、等を盛り込んでいただきたいと考えております。
 また、経営改革を進めるに当たっては、抜本的な経営合理化策が必要でありまして、今般の特別危機管理開始決定という事態に立ち至ったことも踏まえますと、先般のりそな銀行並みあるいはそれ以上の合理化が求められると思います。このため、「経営に関する計画」には、現行の経営健全化計画を大幅に上回る人員及び人件費の削減、営業経費の徹底的な削減、組織のスリム化等を盛り込んでいただきたいと考えています。
 特に、従業員の年収の水準については、りそなの場合、賞与不支給を含め3割程度の削減を行っておりますが、当行についても、こうした努力が必要であるというふうに思っています。
 更に、経営責任の追及については、経営直轄の独立した調査組織として、弁護士等を委員とします「内部調査委員会」を設置していただきたいと考えております。
 冒頭にも申し上げましたけれども、本日選任された新頭取におかれては、適切な業務運営を確保しながら、健全化に向けて経営改革を進めて、企業価値の維持・向上に努めるとともに、地域金融の円滑化、中小企業等の再生に積極的に取り組んでいただきたいというふうに思っています。
 当庁としましても、新頭取をしっかりとサポートしていきたいと考えている次第であります。
平成15年12月16日(火) 竹中大臣記者会見抜粋)

 
Q: 今回の足利銀行の件は特殊なケースだったのでしょうか? 他の地域金融機関は大丈夫なのでしょうか?


:我が国の金融システムについては、金融再生プログラムに掲げた施策の着実な実施により主要行を中心に不良債権処理は順調に進捗をしてきており、その一層の強化が図られているところであります。また、中小地域金融機関につきましては、中小企業の再生と地域経済の活性化を図ることで、不良債権問題も同時に解決することを目指し取組みを着実に進めているところです。このような諸施策の進捗の中で、大変遺憾なことでありますが、今般足利銀行から15年9月期決算において債務超過となる旨の報告がありました。(略)ご承知のように、大手の不良債権は着実に減っていると、地域の金融機関についてもリレーションシップバンキングの取り組みの中で健全な方向を今目指して進んでいる。
 (略)今般の9月の決算で全ての銀行が自己資本を十分に健全基準を満たしているという報告がなされています。その点からいきますと、この銀行はやっぱり極めて特殊な状況にあったというふうに思います。こうした状況がもちろん広がらないように我々としては引続きしっかりと見て行きたいと思いますが、現時点においてこういうことが懸念される銀行はないと、他にないと、このことははっきりと認識をしております。
平成15年11月29日(土) 竹中大臣記者会見抜粋)

 
<関連リンク集>
 平成15年11月29日の金融危機対応会議以後の竹中大臣記者会見については、金融庁ホームページの「記者会見概要」から
   ・平成15年11月29日(土)
   ・平成15年12月2日(火)
   ・平成15年12月5日(金)
   ・平成15年12月9日(火)
   ・平成15年12月12日(金)
   ・平成15年12月16日(火)1
   ・平成15年12月16日(火)2
   ・平成15年12月19日(金)
の会見をご覧ください。


 「金融危機対応会議第2回会議 審議結果」及び「内閣総理大臣の談話」については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「(株)足利銀行に対する「経営監視チーム」の設置について」(平成15年11月29日)にアクセスしてください。


 第2回金融危機対応会議の議事要旨及び会議資料については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「第2回金融危機対応会議議事要旨及び資料」(平成15年11月29日開催)(平成15年12月25日)にアクセスしてください。


 足利銀行の特別危機管理開始決定に伴う金融庁及び関係各省庁等の対応について、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表など」から「足利銀行の特別危機管理開始決定に伴う金融庁の対応について」(平成15年12月12日)にアクセスしてください。


 足利銀行の検査結果について、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表など」から「(株)足利銀行の検査結果について」(平成15年11月29日)にアクセスしてください。

 なお、足利銀行の特別危機管理開始決定については、アクセスFSA本号の「トピックス:足利銀行に対する預金保険法第102条に基づく金融危機に対応するための措置(特別危機管理)の必要性の認定及び同行に対する特別危機管理開始決定等について」にて詳しく掲載しております。

【金融便利帳】


 このコーナーは、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々な疑問について、わかりやすく解説するものです。
 今月のキーワードは「預金口座」です。


 日常的に銀行を利用されている方でも、「預金口座」とは何か?と改まって考えることは余りないかも知れません。「預金口座」の定義は、預金取引先別に預金勘定を記入した元帳区分のこと、ということになるようです。口座には必ず口座番号が付いており、金融機関の内部では預金の種類や取引先別に分類整理がなされるのが通常です。


 預金の基本的な種類としては、例えば以下のようなものが挙げられます。
 

当座預金・・・・

 預金者が振り出した手形・小切手の支払資金として用いられる預金で、利息は付きません。

普通預金・・・・

 預金者が必要に応じ、自由に預金を預け入れたり、払い戻しを請求できる預金で、当座預金のように手形・小切手の支払いには使えませんが、口座振替など資金決済にも多く用いられます。

通知預金・・・・

 預金を預け入れた後、一定の据置期間(払い出しできない期間)が決められ、払い戻す際にもあらかじめ予告が必要となることを条件として、普通預金より高い利率の利息が付く預金で、法人の余裕資金の一時的な運用に利用されることが多いようです。

納税準備預金・・

 納税に充てる資金をプールしておくための預金で、預金利率や課税上の優遇措置が講じられています。

貯蓄預金・・・・

 口座振替に使えないことなどを条件として、普通預金より高い利率の利息が付く預金です。

定期預金・・・・

 あらかじめ期間を決めて預け入れ、その期間が満了するまでは原則として払い戻しができない預金です。普通預金などと比べて高い金利が付くため、貯蓄を目的として利用されることが多いようです。

別段預金・・・・

 雑預金とも呼ばれ、本来は預金商品ではなく、金融機関が一時的な保管金や整理金などをプールしておくためのもので、通常は利息は付きません。


)(1)要求払いであること、(2)決済サービスを提供できること、(3)金利をつけないことの3つの条件を満たす預金を「決済用預金」といいます。例えば、当座預金や無利子の普通預金のようにこれらの条件を全て満たす預金は、決済用預金として預金保険法上全額が保護されます。
 


 新しい預金保険制度について、もっと詳しくお知りになりたい方は、アクセスFSA第2号の「金融便利帳:ペイオフ」にアクセスしてください。


 近年では、金融機関も顧客のニーズに合わせた独自の商品を開発するなど商品も多様となり、窓口でも多彩な名称の預金商品が販売されていますが、この名称は金融機関独自の商品名、いわば愛称であることが多いと思われますので、それが上記の種類のうちどれに該当するのかは、直接金融機関の窓口でお尋ねください。


 金融商品としての預金の特徴は、原則として元本保証がある(外貨建てで行う預金、いわゆる外貨預金の場合、為替差損により結果的に元本割れとなることがあり得ます)ことです。また仮に、金融機関が経営破たんに陥った場合でも、一定範囲までは預金保険制度により保護がなされています。
 なお、金融機関以外の者が預金の受け入れを行うことは、法律(「出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律」)により禁じられています。


 一方、最近、使用してもいないアダルトサイトの料金の支払いや、借りてもいないお金の返済を求める脅迫的な内容の文書を送りつけ、指定した口座に振り込ませてお金を騙し取る「架空請求」や、高齢者のお宅に電話し、氏名は名乗らず「おれ(私)だけど」といって息子や孫だと思わせ、「交通事故を起こしてしまってお金が必要」などと話して、これも振り込ませてお金を騙し取る「オレオレ詐欺」といった悪質な犯罪が多く発生しています。これらの手口には、被害者からお金を受け取る手段として金融機関の預金口座を悪用しているという共通点があります。


 また、近年深刻化するテロリズム対策や、麻薬・銃器等犯罪を防止するためのマネー・ローンダリング対策が国際的な緊急の課題となっていることを受けて、これらを防止するため、平成15年1月6日から施行された「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律(本人確認法)」により、金融機関は顧客の預金口座の開設等を行うに際して、運転免許証などの公的証明書により顧客の本人特定事項(顧客が個人である場合は当該顧客の氏名、住居及び生年月日、顧客が法人である場合は当該顧客の名称及び本店又は主たる事務所の所在地)を確認することが義務付けられています。
 


 本人確認法について、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「本人確認法について」のコーナーにアクセスしてください。


 なお、マネー・ローンダリング(資金洗浄)とは、犯罪で得た『汚れた資金』(犯罪収益)を、あたかも正当な取引で得た『きれいな資金』であるように見せかけるため、その出所を隠したりする行為であり、金融機関等を利用して行われることが多いのが特徴です。中でも銀行口座(預金口座)を利用して行われることが多く、例えば、
 
 ・  前述の「架空請求」、「オレオレ詐欺」等の事案では、被害者からの入金を受け取るために特定の口座を指定し、その口座にお金を振り込ませ、振り込まれたお金を直後にATM等で出金したり、他の口座に振込・振替等を行う
 ・  自分の名前や住所等を第三者、特に捜査機関等には知られたくない犯罪者が、架空の名前で偽の健康保険証等を作成したり、実在する他人の名前を無断で騙るなどして口座を開設したり、あるいは他人が正規に開設した口座を買う(口座売買)などして、他人名義の口座を手に入れ、その口座に犯罪収益を振り込む
   といったことが行われています。
 こうしたマネー・ローンダリングを防止するための主要な手段の一つとして、マネー・ローンダリングと疑われる取引の届出を金融機関等に義務付ける「疑わしい取引の届出制度」がありますが、金融庁では、マネー・ローンダリングと疑われる取引の典型例を「疑わしい取引の参考事例」として公表しており、先の違法な行為等に関連して
 
 ・  「多数の者から頻繁に送金を受ける口座に係る取引。」特に、送金を受けた直後に当該口座から多額の送金又は出金を行う場合。
 ・  「架空名義口座又は借名口座であるとの疑いが生じた口座を使用した入出金」
 ・  「匿名又は架空名義と思われる取引と思われる名義での送金を受ける口座に係る取引」
 についても、特に注意を払うべき取引として例示しています。


 また、金融機関に対しては、本人確認の厳格化以外にも、口座の名義人が存在しない(つまり架空預金である)ことが明らかになった場合や、口座の売買が行われている場合、また法令や公序良俗に反する行為に利用され、若しくはその恐れがあると認められた場合には、預金規定に基づき迅速かつ適切に預金取引を停止したり、または預金口座を解約するなどの取組みを行うよう求めています。
 


)預金規定とは、預金者と金融機関との間に預金取引が成立した場合に双方が遵守すべき事項をまとめた、いわば預金取引契約書とでもいうべきものです。


 預金口座は、資金決済や貯蓄の手段として大きな社会的役割を担っており、金融庁はこれまで述べましたような取組みを通じ、関係各機関とも連携を図りながら、預金口座の不正利用などに対して厳正に対応しているところです。
 


 口座の不正利用に対する金融庁の取組みについてもっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表など」から「事務ガイドライン(第一分冊:預金取扱い金融機関関係)の一部改正について(平成15年9月12日)」より「“ヤミ金融業者等による不正な預金口座の利用をなくすために”」のページへアクセスしてください。

【お知らせ】

〇「金融経済教育を考えるシンポジウム」の開催(参加者募集中)

 金融経済教育の重要性についての理解を深めるため、金融庁の主催により、教育関係者及び金融教育を推進しているNPO関係者などを対象に「金融経済教育を考えるシンポジウム」を開催します。
 参加をご希望の方は、郵便番号、住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記のうえ、金融庁ホームページから、またはハガキ、FAXによりお申し込みください。
○ 開催日時  平成16年1月31日(土)(午後1時30分〜4時00分)
○ 開催場所  津田ホール(東京都渋谷区千駄ヶ谷1-18-24)
○ パネリスト(順不同) ○プレゼンテーション(順不同)
  新井 明(都立国立高等学校教諭)  大学生
  伊藤元重(金融知力普及協会理事長)  高校生
  柳谷 孝(野村證券専務執行役)  高校教諭
  竹中平蔵(金融担当大臣)  赤田英博
 (日本PTA全国協議会会長)
  コーディネーター:野中ともよ(ジャーナリスト)
○ 定  員   300名程度(参加費 無料)
○ お申し込み・お問い合わせ
  金融庁ホームページからの申し込み:
   http://www.fsa.go.jp/symposium160131.html
  ハガキ・FAXによる申し込み先
   「金融経済教育を考えるシンポジウム」事務局
    〒103-0026 東京都中央区日本橋兜町8-1(金融知力普及協会内)
    FAX:03−5644−1570
  申し込みに関する問い合わせ先:03−5644−1637
※1  申込み後、参加証を送付いたしますので、当日は必ずご持参下さい。
※2  席に限りがありますので、定員になり次第、受付を締め切らせていただきますので、あらかじめご了承下さい。

〇 大臣・副大臣への質問募集中


 本号では休載させていただきましたが、アクセスFSAでは、読者の皆様から寄せられた金融を巡る大臣や副大臣へのご質問に、大臣・副大臣が直接お答えする【竹中大臣に質問!】【 伊藤副大臣に質問!】のコーナーを設けております。「金融庁のやっている金融行政って、よくわからないんだけれど、大臣・副大臣にこんなことを、是非、直接聞いてみたい!」というご質問がございましたら、金融庁ホームページの「ご意見箱」にお寄せください。その際、ご意見箱の件名の欄には、必ず「大臣に質問」あるいは「副大臣に質問」とご記入ください。また、本文の欄にご質問の内容をご記入下さい。ご意見箱のコーナーには、「45行以内」とありますが、「大臣に質問」、「副大臣に質問」の場合には、ご質問の趣旨を明確にさせていただくために、恐縮ですが100字以内に収めていただきますようお願いいたします。お寄せいただきましたご質問の中から1問選定させていただき、「アクセスFSA」において大臣または副大臣の回答を掲載させていただきます。大臣・副大臣へのご質問がございます方は、「ご意見箱」へどうぞ。また、「大臣・副大臣への質問募集中」にもアクセスしてみてください。

〇 新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内


 金融庁ホームページでは、新着情報メール配信サービスを行っております。皆様のメールアドレス等を予めご登録いただきますと、毎月発行される「アクセスFSA」や日々発表される各種報道発表など、新着情報を1日1回、電子メールでご案内いたします。ご登録をご希望の方は、「新着情報メール配信サービス」へどうぞ。

【11月の主な報道発表等】
 
5日(水) 第11回金融審議会金融分科会第一部会開催
       
6日(木) 日本興亜生命保険(株)、日本興亜損保(株)及びピーシーエー生命(株)に対する行政処分
  「資金洗浄対策の観点から監視を強化すべき取引について」の発出
       
10日(月) 日興コーディアル・アドバイザーズ株式会社に対する投資一任契約に係る業務の認可
       
12日(水)   全国財務局理財部長会議開催
       
13日(木) 貸金業に係る実態調査結果の公表
       
14日(金) 特別検査のフォローアップ結果の公表
  りそなホールディングス・りそな銀行の経営健全化計画の見直しの公表
       
17日(月) 住友不動産投資顧問株式会社に対する投資法人資産運用業務の認可
  「公認会計士法施行令の一部を改正する政令(案)、公認会計士等に係る利害関係に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)及び財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」の公表  (パブリック・コメント)
  「専門職大学院における会計教育と公認会計士試験制度との連携について」(金融審議会公認会計士制度部会専門的教育課程についてのワーキングチーム報告)公表
       
18日(火) 株式会社りそなホールディングス、株式会社りそな銀行の産業活力再生特別措置法に基づく事業再構築計画の変更認定
       
19日(水) アールジーエー・リインシュアランス・カンパニーに対する外国損害保険業の免許
       
21日(金) 第12回金融審議会金融分科会第一部会開催
       
25日(火) 主要行の平成15年度中間決算について《速報ベース》
    第23回金融トラブル連絡調整協議会の開催
       
27日(木) 東京ゼネラル株式会社に対する行政処分
       
29日(土) (株)足利銀行に対する「経営監視チーム」の設置
  (株)足利銀行の検査結果の公表
   
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