アクセスFSA 第62号(2008年1月)
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「地域の中小企業者等との意見交換会」(新潟県三条市)にて基調講演を行う 渡辺 大臣(1月16日) | 全国財務局長会議において挨拶する 渡辺 大臣(1月22日) | |
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【フォトギャラリー】
※ このコーナーは、大臣、副大臣、大臣政務官、金融庁幹部が出席された会議等をはじめ、金融庁で行われた行事等についての写真を掲載し、皆さんに情報をお届けするものです。
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第125回自動車損害賠償責任保険審議会の模様 | 金融市場戦略チーム第11回会合の模様 | |
(1月18日) | (1月31日) |
【大臣談話・講演等】
※ このコーナーは、大臣、副大臣、大臣政務官、金融庁幹部が行った談話・講演等についての情報をお届けするものです。下記内容にアクセスしてください。
【特集】
「渡辺金融担当大臣と中小企業者等との意見交換会」(新潟開催)の概要
金融庁と財務省関東財務局では、地域の皆さんからご意見をお伺いし、今後の行政に反映させるため、渡辺喜美金融担当大臣と地域の企業経営者や金融機関の方々との意見交換会を、1月16日(水)、新潟県の燕・三条地域で開催しました。
今回の意見交換会は、政治や行政のあり方のすべてを見直し、真に消費者や生活者の視点にたった行政に発想を転換すべきとの総理の指示に基づき、現場感覚を金融行政に反映させるべく、地域における金融サービスの受け手・担い手の双方と対話を行うことを目的として、以下のプログラムにより開催しました。
基調講演の模様についてはこちらを、講演資料につきましてはこちらをご覧ください。
≪プログラム≫ 1.渡辺金融担当大臣による基調講演 2.参加者との意見交換 |
1.渡辺金融担当大臣による基調講演の概要
(1) 最近の金融・経済情勢
残念ながら世界経済における日本の競争力が非常に落ちてきています。その中で、サブプライムローン問題をきっかけとして、世界的に金融資本市場が動揺しています。原材料価格の高騰により企業収益が圧迫される一方で、もしこれから円高が進むと製品の輸出価格に直接的な影響が及ぶことになります。大変な危機認識を持って事に当たらなければいけない事態を迎えています。
名目GDPは、右肩上がりのアメリカに対し、日本は残念ながら横這いの状況です。一方、新興諸国を代表する中国も右肩上がりであり、着実に日本との差を縮めてきています。一人当たりの名目GDPにおいては、まさに我が国は右肩下がりです。OECD加盟国の中では、1993年の第2位が最高でしたが、今や18位です。この間雇用者所得は非常に停滞しており、デフレ経済の脱却が最終的にできていない大きな要因になっているわけです。
世界の証券市場における時価総額の伸びを1990年と比べると、東京市場では大体1.5倍、アメリカでは5.7倍、それに対して香港、深圳、上海という中国の3市場を見ると、それぞれ約20倍、25倍、55倍となっています。こういう高い伸びを示しているところに自然とお金が集まっていくことによって、さらに投資主導の経済成長が促進されています。中国あたりでは逆に、今大変な過熱をどうやって冷やすか、ということに腐心をしているような状況があります。
そういう中で日本の企業のバランスシートを法人企業統計からとってみると、資本が35、負債が65と、資本が小さいという特徴があります。インフレの時代には借金が非常に有利な資金調達手段でしたが、資産デフレが起きるとこの構造は大変にもろい、ということがこの十数年間の我々の教訓だったわけです。他の先進国では、資本のほうが大きいというのが普通です。
設備投資とキャッシュフローの関係を見ると、バブルが崩壊して、キャッシュフローの範囲の中でしか設備投資は行われてきませんでした。民間企業の資金調達の状況を見ると、バブル崩壊以降借金返済に走り、ようやく最近になって借入れで資金調達をするという傾向が出てきています。貸出金の推移を見ると、今の水準で400兆円を僅かに超えるぐらい、GDP比では80%ぐらいのところまで水準が落ちてきています。企業の資金調達額と家計の金融資産額の推移を日米で比べると、アメリカではパラレルになっていますが、日本では家計の金融資産の推移に対して非常にアンバランスな企業の資金調達の構造になっている。まさにデフレ経済の中で借金返済に走ったということが日本の特徴です。
(2) 地域経済の現状
地域経済においては、国際的な競争の激化の中で需給のミスマッチが厳然としてあります。日本がデフレから脱却できていない最大の理由は、まさにこの地方経済の中にあるような気がします。
そういう中で、各地において色々な取組みが行われています。例えば世界経済とつながって地域発展を遂げていこうという取組みです。北海道の倶知安町にはパウダースノーがあり、これに気がついたオーストラリア人の投資が行われています。
国内経済の中で活性化を図っている滋賀県の長浜市のようなケースもあります。明治時代に作られた黒壁銀行と呼ばれる建物を買い取り、街並み景観づくりを行いました。また、お土産づくりのためにガラス工房を作ったところ、これが大当たりをしました。まさに地域活性化の一点突破、全面展開の成功事例です。
離島においてもこうした取組みは行われています。島根県の海士町では、海士牛という、海から運ばれる非常に豊富なミネラルを含んだ牧草を食べている黒毛和牛のブランド化が始まりました。また、ご当地ではサザエカレーというのがあるそうですが、こういうものを島まるごと百貨店みたいにして売り出すようになりました。すると、島に戻るかという人たちがあらわれて、人口が増え始めたわけです。
今の時代が大変厳しいのだったら昭和の時代を振り返ってみるかと、レトロ路線に復帰をした町もございました。大分県の豊後高田では、こうした昭和のまちづくりというものが行われてきております。
燕・三条地域には、金属加工技術を根幹として長年にわたる絶え間ない業種転換によって需給のミスマッチを解消してこられたという経験があります。さらに、地域ブランドを立ち上げ、積極果敢に世界経済とつながり、かつ、新素材を活用したり、新商品を開発したり、その意味で私どもはこの燕・三条に大変着目をしています。まさに市場のニーズを的確にとらえ、高度なアンテナとしての役割を果たしてこられた、本当に尊敬に値する地域です。
こうした中にあって、地域金融機関にも新たな任務が加わっています。最近では過度に土地担保に依存しない融資を積極的に行っていこうという試みが行われています。動産担保融資あるいは売掛債権担保融資の取組みがあります。また昨年は、債権の流動化や債権譲渡の安全性を確保することと、企業の資金調達をより円滑に行うことを考え、電子記録債権法を国会で通していただきました。今やペーパーレス化の時代です。中小企業においても売掛債権は何十兆円もあり、大企業、中堅企業を入れますと100兆円をはるかに超えます。これらを電子登録してもらい、それによって公信力の認められた電子記録債権が流動化されれば、企業の資金調達が一変するということがあり得るわけです。
LCFI(巨大複合金融機関)も資本が足りなくなって、ソブリン・ウェルス・ファンドから資本を導入するときは、いわゆる優先出資を受けるという形になっていますが、こういうやり方を中小企業が導入し、地域金融機関が資本的な資金を供給してもよいわけです。先ほど申し上げましたように、日本は資本と負債の比率が非常にいびつな形態になっています。このバランスシートの構造を変えていくためにも、資本的な資金の供給というものをより深めていくことが考えられます。政府系金融機関においては、資本的劣後ローンを供給するという試みも始まっています。こうした取組みは恐らくこれから日本の地域金融の中で大いに考えていかなければならないところではないでしょうか。
点の事業再生のノウハウはさまざまに蓄積がなされてきていますが、地域として再生をしていくには、やはり面的な再生の試みが必要です。来年度創設予定の地域力再生機構は、まさに面的再生をもくろんだ新しい取組みです。この問題に長くかかわってきた者として、ぜひ地域力再生機構が地域の活性化に大いに役立ってほしいと考えています。地域金融機関は中小企業の企業情報あるいは地域の経済情報、社会情報をたくさん蓄積しています。地域金融機関には、地域を熟知し、地域のために尽力しようという意識の高い人材がそろっているはずです。地方公共団体など公的部門にはないビジネスセンスとスピード感をあわせて持っているはずです。地域力再生機構においては、こうした面的再生に関連する事業再生への支援も行っていくことが予定されています。例えば観光地、温泉地などのように地域で顧客を呼び込む、あるいは地方百貨店の再生に合わせて周辺商店街の活性化を図っていく、などということが考えられます。地域金融機関には、このような機能も念頭に置きながら、地域における面的再生にぜひ取り組んでいただきたいと考えています。
(3) 金融・資本市場の競争力強化
この通常国会において私どもが提案をするものに「金融・資本市場競争力強化プラン」に関する法案があります。日本の約1,500兆円の家計金融資産のうち750兆円が預金等で塩漬けになっています。日本市場をもう一度見直す必要があります。
世界の商品市場が大変な右肩上がりの状況になっている中で、日本の商品市場は非常に小さな市場になっており、その再構築が必要です。まずはETF(上場投資信託)という形で金融商品取引所と商品取引所の融合を図っていく必要があるのではないか。また、世界中の金融のプロに参加をしてもらうプロ向け市場も必要ではないか。
銀行・保険会社のファイアーウォール規制の見直しも行う必要があるのではないか。例えば、商品の現物取引というのは、銀行本体では難しいが兄弟会社においてやれるようにしてはどうか。イスラム金融についても大胆に規制緩和をする必要があるのではないか。省エネ・低炭素技術が日本の強みであることから、排出権取引についても大幅に規制緩和を行う必要があるのではないか。また先ほど申し上げたように、企業再生の株式保有について、今までの規制を大幅に緩和する必要があるのではないか。
こうした観点から「強化プラン」というものをつくりまして、法改正の必要なものについては今国会に法案を提出する予定です。
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2.参加者との意見交換
引き続き行われた質疑応答の中で、会場からは例えば以下のような意見がありました。
【企業経営者】
○燕・三条では、起業する件数と廃業・倒産する件数を比較すると、圧倒的に廃業の方が多く、年々企業件数が減っている。起業する意欲があれば一度廃業された方でももう一回やっていけるようにするような、企業をもっと増やすような方策というのを、国で何か考えているのか。
○都市銀行も地方の中小企業に融資に来ているが、都市銀行も中小企業をしっかりサポートする、事業を再生するような取組みを行うべきではないか。
【金融機関関係者】
○協同組織金融機関の信用金庫、信用組合の制度の見直しというものが今うたわれているが、大臣は信用金庫、信用組合の今後のあり方をどのように考えているか。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「大臣談話・講演等」から渡辺金融担当大臣講演「今後の地域産業の発展と地域金融機関の役割」(平成20年1月16日(水)場所:三条・燕地域メッセピア)及び「記者会見」から『「渡辺金融担当大臣と地域の企業経営者等との意見交換会」後の大臣記者会見の概要』(平成20年1月16日)にアクセスしてください。