アクセスFSA 第63号(2008年2月)
金融審議会金融分科会第二部会
「中間論点整理~平成16年改正後の信託業法の施行状況及び
福祉型の信託について~」
金融審議会金融分科会第二部会(部会長 岩原 紳作 東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、平成19年10月より、計4回にわたり、平成16年改正後の信託業法の施行状況及び福祉型の信託について審議を行ってきました。
その審議を踏まえ、「中間論点整理~平成16年改正後の信託業法の施行状況及び福祉型の信託について~」が取りまとめられ、平成20年2月8日に公表しました。
<中間論点整理の概要>
1.経緯
信託業法は、平成16年12月に全面改正され、その際、見直し条項や福祉型の信託について検討を求める附帯決議が附された。これを踏まえ、昨秋から幅広く審議。
2.平成16年改正後の信託業法の施行状況
3.福祉型の信託について
(1) 福祉型の信託とは
大方の合意を得た定義はないが、企図するところは、信託を高齢化社会における「福祉」という公共目的に役立てようとするものと考えられる。
具体例
イ 高齢者が、介護が必要になった場合に介護費用に充てるため、信託を行う。
ロ 障害者である子の親亡き後の生活資金に充てるため、財産の信託を行う。
ハ 一定の財産を信託し、受託者に自らの死後の事務処理を依頼する。
(2) 検討に当たっての基本的視点
具体的な制度設計の前提として、以下のような基本的視点についての考え方を今後整理する必要。
- 社会福祉政策の一環として位置付けるべきではないか。
- 福祉型の信託は、信託を公共目的に役立てようとする点で「公益信託」に類似。公益信託については、事業型の導入や、公益法人等の参入も検討される見込み4。両者の議論は、平仄のとれたものとする必要。
- 福祉型の信託が、裁判所の関与のある成年後見の潜脱に使われ、受益者の利益を害さないように留意すべき。
4.福祉型の信託の制度設計
(1) 制度設計の基本
ニーズに即した制度設計をする必要があるが、ニーズの捉え方も様々。
- 受託者の役割は、財産管理に限られるのか、身上監護まで行うのか。
- 受託者は、信託財産の管理のみを行うのか、一定の処分・運用まで行うのか。
- 採算性が厳しいものが多いのか、相応の収益を確保できるものもあるのか。
- 長期の信託期間を想定すべきか、短期のものまで想定するのか。
(2) 担い手
制度設計の基本に関する考え方の相違により、担い手に対する考え方も様々。
- 受益者の個別の状況に応じた対応が求められ、主に大量・定型的な業務を営む既存の担い手では不十分。高齢者福祉や後見業務を行う弁護士等や公益法人等が担えるようにすべきではないか。
- 福祉型の信託には既存の担い手が適切な場合もあるのではないか。
- 福祉型の信託に対するニーズを検証し、その内容を類型化した上で、類型毎に担い手のあり方を議論する必要があるのではないか。
(3) 担い手に対する規律のあり方
担い手に対する規律のあり方に対する考え方も様々。
(1) 基本的な考え方
- 業を前提としない民事信託に類似しており、厳しい規制は避けるべきとの考え方と、受益者である高齢者・障害者保護の観点から、むしろ厳格な規律が必要との考え方が対立。
(2) 参入形態
- 弁護士等個人による受託を認めるべきとの考え方と、継続性・安定性の確保等の観点から法人に限るべきとの考え方が対立。
(3) 財産的基盤
- 他人の財産を預かる点で、一定の財産的基盤は必要との意見が大勢。一方で、弁護士等個人による受託を認めるべきとの立場から、受託した財産の管理に特化すれば財産的基盤要件は不要との意見も存在。
(4) 監督
- 業務の適正かつ安定的な継続を確保するには、行政による監督が必要との意見が大勢。一方で、弁護士が受託する場合、弁護士会の監督体制を充実させれば行政による監督は不要との意見も存在。
5.今後の議論のあり方
高齢化が進む我が国の社会状況における信託制度の位置づけ、公益信託制度との整合性等に留意しつつ、各論点について議論を深めていくことが必要。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「金融審議会金融分科会第二部会「中間論点整理~平成16年改正後の信託業法の施行状況及び福祉型の信託について~」の公表について(平成20年2月8日)にアクセスしてください。
平成19年3月期に係る有価証券報告書の重点審査結果について
1.重点審査の概要
重点審査については、各財務局及び福岡財務支局並びに沖縄総合事務局(以下「財務局等」という。)において、開示上重要な事項や法令改正により記載内容が追加された事項等に関して、有価証券報告書提出会社から有価証券報告書の提出に合わせて「調査票」の提出を要請し、これを基に記載内容等に係る審査を実施してきております。
今回は、決算期が集中する3月31日決算会社である3,380社を対象として、会社法の従来のルールが大きく見直されたこと等を受けて改正された開示項目が、適切に記載されているかについて審査を実施しました。
2.審査結果の概要
財務局等において審査を行った結果、記載内容が不十分と認められた事項がある提出会社に対し、訂正を求めました。
記載内容が不十分と認められた主な事例は次のとおりであり、(1)については、調査票提出会社の約1割に、(2)の各項目については、それぞれ提出会社の約5割にのぼりました。
(1) 配当政策に関する事項のうち、毎事業年度における配当の回数についての基本的な方針等について記載していない。
(2) コーポレート・ガバナンスの状況のうち、
- 取締役の選解任の決議要件について会社法と異なる別段の定めをしている場合等に、その内容を記載していない。
- 株主総会決議事項を取締役会で決議することができることとしている場合に、その事項及び理由を記載していない。
- 株主総会の特別決議要件を変更している場合に、その内容及び理由を記載していない。
3.おわりに
今回の重点審査では、新たに開示項目となったものについて、記載事項の一部が記載漏れとなっているなど不十分な事例が多数認められました。
有価証券報告書には、投資者保護を図るため、投資判断に有用な情報を記載することとされており、こうした観点から法令改正が行われています。
したがって、有価証券報告書の提出にあたっては、法令改正が行われることを前提に、同報告書の提出時点における法令様式等を十分に確認の上、適切に開示を行ってください。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表関係」から「平成19年3月期に係る有価証券報告書の重点審査結果について」(平成20年2月7日)にアクセスしてください。
「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等について
(期間:平成19年10月1日~12月31日)
概要
金融サービス利用者相談室に寄せられた利用者からの相談件数や主な相談事例等のポイント等については、四半期毎に公表しています。平成19年10月1日から12月31日までの間における相談等の受付状況及び特徴等は、以下のとおりです。
(1) 平成19年10月1日から12月31日までの間に、11,608件の相談等(詳細については、
「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等(平成20年1月31日)別紙1をご参照ください。)が寄せられています。一日当たりの受付件数は平均187件となっており、19年7月1日から9月30日までの間の実績(169件)と比べ増加しています。
(2) 分野別の受付件数としては、預金・融資等に関するものが2,713件(23%)、保険商品等に関するものが3,833件(33%)、投資商品等に関するものが3,158件(27%)、貸金等に関するものが1,677件(14%)、金融行政一般・その他が227件(2%)となっています。
(3) 分野別の特徴等としては、
イ 預金・融資等に関するもののうち、融資業務については、融資の実行・返済についての相談等が、預金業務については、本人確認手続など預入れ時の態勢についての相談等が、その他業務では、為替についての相談等が寄せられています。
ロ 保険商品等については、保険金の支払に関するもの、保険金請求時等における保険会社の対応に関するものについての相談等が寄せられています。
ハ 投資商品等については、証券会社(第一種業)に関するもの、ファンド(投資運用業・第二種業)に関するもの、外国為替証拠金取引業者(第一種業)に関するものについての相談等が寄せられています。
ニ 貸金等については、一般的な照会・質問に関するもの、不適正な行為に関するもの、個別取引・契約の結果に関するものについての相談等が寄せられています。
(4) なお、受け付けた相談等の中には、検査・監督上参考となる情報(注)も寄せられており、利用者全体の保護や利便性向上の観点から、金融機関に対する検査における検証や監督におけるヒアリング等、金融行政を行う上での貴重な情報として活用しています。
(注)検査・監督上参考となる情報の例
イ 預金取扱金融機関によるリスク性商品等の販売時における顧客への説明態勢及び広告等の不適正な表示に関するもの
ロ 預金取扱金融機関における本人確認や説明を求めた際の不適切な顧客対応に関するもの
ハ 預金取扱金融機関の個人情報の取扱いに関するもの
ニ いわゆる貸し渋り・貸し剥がしに関するもの
ホ 保険会社の不払い等(保険金等の不適切な不払い、支払漏れ等)に関するもの
へ 保険募集人等の不適正な行為(重要事項の不十分な説明、手続きに関する不適切な案内・対応、保険料の立替、名義借り等)に関するもの
ト 金融商品取引業者の不適正な行為(ホームページを閉鎖し電話に出ない等)に関するもの
チ いわゆる集団投資スキームを利用した法令違反のおそれのある行為に関するもの
リ 貸金業者による法令違反のおそれのある行為(取立行為規制違反、取引履歴の不当な開示拒否等)に関するもの
また、預金口座の不正利用に関する情報については、金融機関及び警察当局へ119口座の情報提供を行っています。
さらに、平成19年7月1日から9月30日までの間における情報の活用状況は以下のとおりです。
イ 監督において行った150金融機関に対するヒアリング等に際して、相談室に寄せられた情報を参考としています。
ロ 金融庁が着手した19金融機関の検査等に際して、相談室に寄せられた情報を参考としています。
(5) 寄せられた相談等のうち利用者の皆様に注意喚起する必要がある事例等について、「利用者からの相談事例等と相談室からのアドバイス等」として周知しています。今回、新たに追加又は改訂する「利用者からの相談事例等と相談室からのアドバイス等」の項目・相談等は、以下のとおりです。
預金・融資等
○免許の確認、預金保険制度に関する相談等
- 最近、○○銀行という聞きなれない銀行ができたと聞きますが、免許のある銀行ですか。預金保険の対象金融機関ですか。どのような預金が保護されますか。
保険商品等
○特定保険業者に関する相談等
- 共済業者(特定保険業者)から加入の勧誘をされています。「少額短期保険業者として登録申請中であるから大丈夫」と言われていますが、この共済業者の信用性はどうでしょうか。
投資商品等
○ファンドに関する相談等(改訂)
- 投資事業有限責任組合から出資を勧められていますが、迷っています。注意点があれば教えてください。
- 投資ファンドや未公開株等に投資する投資事業有限責任組合から執拗な勧誘を受けています。当該事業組合は、「金融庁整備番号LP○○○○」で登録していると言っていますが、登録を受けた業者ということでしょうか。
-
貸金等
○金利引下げに関する相談等
- 貸金業法が改正されて、上限金利が引下げになると聞きましたが本当ですか。10数年前から貸金業者で借りて返済していますが、なかなか債務が減りません。
○ その他、金融庁のウェブサイト(「一般のみなさんへ」)では、金融サービスを利用する皆様に注意していただきたい情報を掲載しています。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等(期間:平成19年10月1日~12月31日)」(平成20年1月31日)にアクセスしてください。