アクセスFSA 第209号

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和田 義明 内閣府大臣政務官(金融担当)インタビュー

  菅義偉内閣発足に伴い、令和2年9月18日に就任された和田 義明 内閣府大臣政務官(金融担当)に、意気込みや金融行政への考え等について聞きました。

インタビューの概要
  • 国際金融センターの実現へ向け積極的に取り組みたい
  • 男性の育児休業取得率を向上させたい
  • 「徹底した現場主義」の政治家でありたい
 
和田 義明(わだ よしあき) 内閣府大臣政務官 (金融担当)
昭和46年10月生まれ。
三菱商事株式会社に20年間勤務。平成28年、岳父、町村信孝の逝去に伴い衆議院補欠選挙に立候補し当選。平成29年衆院選で再選。趣味は、テニス、ダイビング、ラグビー、料理等。

― 内閣府大臣政務官(金融担当)として意気込みを教えてください。

 金融庁担当の大臣政務官になれたことは本当に嬉しいです。担務説明を受けた際、興味深い案件が非常に多くありましたので、自分自身も興奮しています。

 特に国際金融センターについては、商社に勤めていた時の経験も生かせると思います。また、日本に新たな産業を生み出せるのではないかという期待感もあります。自分として、「これをやった」という足跡を残したいなと思っています。

 地域金融機関の活性化も重要な任務です。私は、北海道を選挙区にしている地方選出の国会議員です。「地方創生」が政府の看板政策になってから久しいですが、実際に“創生”されているかというと、まだまだ課題は多いと思います。特に、私の選挙区の大半は、地方の中でもさらに地方都市ですが、年々厳しさが増していることを肌身に実感しています。ですから、金融機関には、より経営基盤を強化いただいて、地域の企業・商店に対する経営サポートや資金提供をいっそう良い形でできるようになったらいいなと思っています。


― 金融行政の中で、特にご関心のある政策は何でしょうか。

 やはり国際金融センターが一番楽しみです。香港の現状、またシンガポールの今後の限界を考えると、日本しかないと思っています。

 海外のいろんなファンドに対して、日本に目を向けて欲しい、投資して欲しいという思いは、実は政務官になる前からありました。特に社会貢献、インフラ整備に関して、国のお金だけではうまくいかないのは明らかですので、民間企業や海外ファンドの資金を活用していく必要があると思います。

 また、平井卓也 デジタル改革・IT担当大臣が委員長を務めていた自民党の「デジタル社会推進特命委員会」において、私は事務局次長をやっていました。そこでの議論を通じて、民・官・学すべてのデジタル化が今後の日本発展の鍵だと思っています。競争力のある金融センターを日本へ作るには、税制面でも、手続き面でも、海外から見て魅力的な環境を整備しておかなければなりません。しかし、その前に、海外で当たり前にできているようなデジタル化への対応・言語への対応が整っていないと誘致がうまくいかなくなります。

 「デジタル社会の推進」という大きな取組みにおいて、日本でデジタル化が進んでいるかどうかを世界から評価される、テストグラウンドの一つが国際金融センターのプロジェクトだと思っています。負けるわけにはいきませんので、世界で評価される環境を整備して、成功へ導きたいですね。
 
(写真:インタビューの様子)

― これまでに取り組まれた政策の中で、印象の深いものは何ですか。

 まず挙げるとすれば、男性の育児休業の義務化です。去年の6月に自民党内でプロジェクトを立ち上げ、安倍総理(当時)に提言したところ「これを看板政策にしよう」と言ってくださって、一気に話が進みました。全世代型社会保障検討会議でも議論されていますし、当然「骨太の方針」にも明記されています。

 現状、男性の育児休業の取得率は7%程度と言われています。これが60~70%になるよう、しっかりとフォローしていきたいと思います。

 また、私は「土地安全保障」の問題に従前から取り組んでいます。健全な土地取引は内外無差別であるべきですし、様々な資本を日本に呼び込むのは重要です。一方で安全保障上、外国資本に取得されてはならない土地もあります。ところが、日本は土地の所有者情報を一元的に把握できるデータベースも、それを管理・規制できる体制もありません。「土地安全保障」は内閣府大臣政務官としての私の担務ですので、これもまた巡り合わせだなと思い、しっかりやっていきたいです。


― 国会議員になったきっかけを教えてください。

 私の妻の父は、文部科学大臣、外務大臣、官房長官、衆議院議長を歴任した町村信孝という政治家でした。2014年頃、脳梗塞で体調を崩した際、「自分の後を継いでくれないか」と言われました。

 私と妻は、商社マンとしての海外駐在生活を満喫していたので、全くの想定外でした。しかし、32年間政治の世界で真面目に頑張ってきた岳父から、ベッドから起き上がれない、上手く話せない状態のなかで、「やってくれ」と頼まれたことは、自分の中で非常に重かったです。それから1年半悩みました。

 岳父から話を聞いて一番心に響いたのは、「商社の仕事は、一定の人を幸せにできる。だけど、国会議員はちゃんと頑張ったら、より多くの人を幸せにできる職業だ。やりがいはどんな仕事にも負けないと思うし、幸せにできる人の数もどの仕事にも負けないよ」という言葉でした。

 人生の最期に、何をもって自分の人生を評価するか?ということを考えたときに、私は「挑戦をし続けたか」、「人の役に立てたか」の2つだと思っています。ですから、そもそもできるのかどうか皆目見当もつきませんでしたが、挑戦してみようと思いました。向いていないと思うこともたくさんありますが、色々な人に支えていただいて、今日があるといったところです。


― 政治家として目指すものを教えてください。

 大きな話をすると、日本という国の更なる発展、国民の皆さんの幸せと豊かさ、そこに尽きると思いますね。国の発展の定義と、個人の幸せの定義というのは、ありとあらゆるもので構成されていますので、幅広い分野で頑張って、国の発展と国民の皆さんの幸せにつながっていくようにしたいなと思います。

 私のモットーは「徹底した現場主義」です。現場を見ないとわからないということを商社マン時代に嫌というほど経験しましたし、本で読んだこと、聞いたことだけでは決して判断できないものがあります。

 北海道胆振(いぶり)東部地震が発生した際、被害状況が各市町村役場から逐一報告されてきました。ところが、実際に現場に行ってみたら、情報として知るのと、自分の目で見るのとでは全く違うんですよね。だから自分の目で見ること、自分の耳で話を聞くことが重要です。そうしないと、実際に誰がどの程度困っているか、何がどの程度足りないかということが分からない。そのことを政治家の仕事でも痛感します。だからこそ「徹底した現場主義」の政治家というのを目指したいと思います。

 また、私は政治家然としているのが嫌いなので、気軽に話せる、その辺のおじちゃんみたいな人でありたいと思っています。政治家の仕事は、あくまでも数ある仕事のうちの1つだと思っていますし、そういった意味ではフラットな人間であり続けたいな、と思いますね。
 

― 休日の過ごし方はいかがでしょうか。

 休日は、ありません(笑)。

 カレンダー上の休日ということでしたら、地元に帰ることが多いですね。支援者の方と会ったり、コロナ禍以前は様々な会合に出たり、視察に行ったりしていました。

 あとは、普段会えない家族と一緒にいますね。特に何をするわけでもないですが、家でトランプをしたり、近所にご飯を食べに行ったり。最近子どもが熱帯魚を好きなので、一緒に買いに行って、買いすぎて妻に怒られたりしています(笑)。


― 最後に座右の銘をお願いします。

 まずは、先ほどの「徹底した現場主義」ですね。

 他にあと二つあって、一つは「失敗は成功の糧」です。年なりに色々と経験してきましたが、「これが自分の人間形成の柱になったな」とか、「これが自分を大きく変えたな」ということは大体「失敗したこと」なんです。若いうちに積極的に挑戦をして、失敗するのは非常に良いと思います。色々な経験を自ら進んでするというのは、度胸もつきますし、含蓄のある人間にもなれると思います。

 もう一つは、吉田松陰の言葉で、「至誠(しせい)天に通ず」という言葉ですね。私の祖母が小さい頃に吉田松陰の本をくれて、その時に色々と話を聞かされたんです。頭に残る言葉で、年を経るごとに「やっぱりそうだよな」と思っています。特に国会議員になったときは、ゼロからのスタートで、本当に大丈夫かなと不安に思っていました。しかし、色々地道にやっていったら、思いが通じたことは多分にありました。

 また、商社マン時代にインドに5年間駐在していましたが、その時のミッションは破綻寸前の会社の再生でしたので、良い話などほとんどないわけです(笑)。だけど、常に前向きに、目指すゴールに向かって走り続けていると、ついてきてくれる人、理解してくれる人もいるし、少しずつ状況が好転するようになりました。世界のどこでも誠を尽くすことが大事ですね。
 
(インタビュアー:広報室長 境 吉隆 )

 


「中小企業等の金融の円滑化に関する意見交換会」の開催等について


 令和2年11月30日、金融庁は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい資金繰り状況に直面している事業者がおられることや、年末・年度末に向けて、運転資金等の需要が高まることを踏まえ、中小企業等の金融の円滑化について、麻生大臣、梶山経済産業大臣をはじめとする政府当局者と各金融機関等の代表者が出席する意見交換会を開催しました。(オンライン形式も併用)
 
写真:意見交換会で発言する麻生大臣

 同意見交換会においては、麻生大臣から各金融機関等の代表者に対して、コロナ禍における積極的な資金繰り支援等に感謝を申し上げるとともに、依然として厳しい資金繰り状況に直面する事業者がおられることを踏まえ、引き続き事業者の相談に親身に応じていただきたいこと、また、金融機関の皆様が資金繰り支援だけではなく、経営改善、事業再生、事業承継等の支援を行っていただくことが重要であること等について発言がありました。
 また、出席した各金融機関等の代表者からは、中小・小規模事業者の中には、今後の資金繰りに不安を抱えている事業者も多く、年末に向けて、事業者の資金繰りに支障が生じないよう、万全の対応に努めるといった声が聞かれました。
 
写真:意見交換会の様子
 
<意見交換会参加金融機関等>
全国銀行協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、信託協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、全国労働金庫協会、農林中央金庫、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、日本政策投資銀行、全国信用保証協会連合会、住宅金融支援機構

 さらに、同日付にて、金融機関関係団体等に対し、年末における中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化について、事業者の資金繰りに重大な支障が生じることのないよう、引き続き、関係機関とも連携しつつ、継続的に業況等の実態をきめ細かく把握し、新規融資の積極的な実施や既往債務の条件変更の迅速かつ柔軟な対応など、適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮に努めること等を書面で要請を行うとともに、当該要請文を公表し、要請内容の周知徹底を図りました。
 

  詳しくは、金融庁ウェブサイトにて「中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化について」(令和2年11月30日公表)〈https://www.fsa.go.jp/news/r2/ginkou/20201130.html〉をご覧ください。

 


資産運用業フォーラムにおける赤澤副大臣挨拶について

 令和2年11月16日(月)、投資信託協会と日本投資顧問業協会の共催による「資産運用業フォーラム」が開催され、赤澤副大臣がビデオメッセージにより挨拶を行いました。フォーラムの最後には、資産運用会社の社会的使命や目指すべき姿を表明する「資産運用業宣言2020」が採択されました。なお、フォーラムの模様は、日本経済新聞社ウェブサイトからご覧いただけます。
 
赤澤副大臣による挨拶の様子
 

はじめに
 皆様、こんにちは。金融担当副大臣の赤澤亮正です。記念すべき第一回「資産運用業フォーラム」において、ご挨拶の機会をいただきまして、大変光栄でございます。本日のフォーラムの開催に当たり、主催者である投資信託協会の会長、日本投資顧問業協会の会長をはじめ、両協会会員の皆様、ご協力いただいた日本経済新聞社様、ゲストスピーカーの皆様、開催に当たりご尽力されたすべての関係者の皆様に対し、この場をお借りして、御礼申し上げます。

 本日は、ウェブ形式での開催となっておりますが、ウェブ形式だからこそ、逆に物理的な距離の壁を乗り越え、資産運用業界の皆様や投資家の皆様をはじめ、多くの関係者の方々にご視聴いただいていると伺っております。新型コロナウイルス感染症の影響を受ける中にあっても、こうした形式により、本フォーラムが盛大に開催されますことに、心よりお慶びを申し上げます。

 開催に当たりまして、資産運用業界の皆様のご関心が高いと思われる、資産運用の高度化及び我が国の国際金融センター機能の強化について、お話をさせていただきます。

資産運用の高度化
 まず、資産運用の高度化についてです。皆様もご案内の通り、我が国では、長寿化が進み「人生100年時代」と言われる今、安定的な資産形成に対する関心が年々高まっております。金融資本市場を通じた企業・経済の持続的な成長とともに、国民の安定的な資産形成を目指していくためには、インベストメント・チェーンの各参加者がその役割を果たし、企業価値の向上と収益の果実を国民の皆様にもたらすという資金の好循環を実現することが重要です。

 投資家の皆様が銀行や証券会社で購入される投資信託などは、資産運用会社がその運用を行っておりますが、現在、資産運用会社が投資家より預かり運用を行っている資産は、約500兆円とGDPに匹敵する規模になっていると伺っております。世の中の多くの方々は、このことを聞かれると驚かれるのではないかと思います。実際私も驚きました。スチュワードシップ責任に則り、建設的な対話を投資先企業との間で行い、ESG等の取組みを後押しているのも資産運用会社です。このように、このインベストメント・チェーンの各参加者の中でも、その中核とも言える資産運用業界の役割は極めて重要であり、これから大きな成長が期待できる産業であると確信をいたします。

 こうした資産運用業界の成長を後押ししていくため、金融庁が国内外の資産運用会社との対話等を通じて、本年6月にとりまとめた「資産運用業高度化プログレスレポート2020」では、資産運用会社が運用力の強化などを実現していくための課題として、次の4点をとりあげています。
 

 ① 1点目は、経営やファンド管理に対する顧客利益の観点からのガバナンス体制の構築です。特に日本では資産運用会社が金融グループに属することが多く、資産運用会社が改革を進めていくには親会社の理解や協力が不可欠です。グループとして運用の高度化に向けた取組みにコミットすることが大変重要になってまいります。

 ② 2点目は、長期運用の視点を重視した経営体制の整備です。資産運用ビジネスに知見のある経営陣による、顧客利益を最優先に考えた経営体制を構築することが重要です。

 ③ 3点目は、目指す姿や強みの明確化です。数千を数える日本の公募投資信託の中には、優れた運用成果を実現しているファンドも存在していると承知しています。各社の運用力が特に試されるアクティブ運用において、中長期的に高い運用成果を出せるよう自社の強みを明確にし、競争力を高めていくことが重要です。

 ④ 4点目は、目指す姿を実現するための業務運営体制の整備です。顧客利益最優先、運用重視の視点を持って、役職員の評価・報酬制度の改善やファンドの運営管理を徹底していくことが重要です。

 資産運用会社の皆様におかれましては、既にこうした課題への取組みを進められているものと承知しておりますが、金融庁としても、具体的に皆様がどのように取り組まれているのか、引き続き対話をさせていただき、優れた取組みを後押しすることで、資産運用の高度化と資産運用業界の成長の実現に向けて共に歩んでいきたいと考えております。

国際金融センター機能の強化
 次に日本の国際金融センター機能の強化についてです。資産運用の高度化に向けては、世界中から金融人材、資金、情報を集積することも必要です。そのためには、日本がアジア、さらには世界の国際金融センターとしての地位を確立することが重要と考えております。

 また、日本の国際金融機能の向上を図っていくことは、国民の皆様の安定的な資産形成を実現する運用の高度化、雇用・産業の創出や経済力向上の実現に資するのみならず、国際的にも、リスク分散を通じて、アジアひいては世界の金融市場の災害リスク等に対する強靭性を高めることにもつながると考えております。

 金融庁としても、日本市場の魅力向上のための制度改正等の検討や、海外の金融事業者・高度金融人材が日本に参入しやすくするための税制改正要望、登録審査・監督業務等を英語で行うとともに登録の迅速化を図る体制を整備するための人員や予算面での体制整備等を進めております。また、各省庁や関係機関、そして本日のフォーラムに参加されている皆様とも連携し、外国人にとってもビジネスのしやすい環境を整備していきたいと考えております。

 このうち英語対応については、「できることからやる」という姿勢のもと、11月6日に、新規に日本に参入する海外の資産運用会社による英語での登録申請などを可能とする内閣府令の改正案等のパブリックコメントを開始しました(2020年12月7日に意見募集は終了)。英語での登録申請は、内閣府令の改正後に提出された登録申請が対象となりますが、既に英語による登録の相談を受け付けております。

 日本に一社でも多くの資産運用会社が参入していただけるよう、本日参加されている皆様におかれましても、こうした取組みにそれぞれの立場からご協力いただけますと幸いです。

おわりに(資産運用業フォーラム及び宣言)
 本日の「資産運用業フォーラム」では、「資産運用業界の社会的使命と役割」をテーマに議論が行われ、本フォーラムの最後には、投資信託協会及び日本投資顧問業協会に主導いただき、各会員の皆様により、国民の健全な資産形成に貢献し、明るい未来を創るため、その社会的使命や目指すべき姿について、宣言文が採択されるものと伺っております。

 国民の皆様の資産形成に向けた意識が高まる中、今回のフォーラムの開催は、まことに時宜を得たものと考えております。また、こうした資産運用業界における自主的な取組みを通じて、資産運用が国民の皆様にとってより身近な存在になり、我が国の資産運用業界が更に発展していくことを期待しております。

 本日の議論を通じ資産運用業界が、我々国民一人一人の資産形成に資するとともに、日本経済を活性化させ、世界経済にも好影響を与えるような存在となっていくことを祈念申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。


 

※  日本経済新聞社ウェブサイト

  資産運用業フォーラム~資産運用業の社会的使命と役割~:https://channel.nikkei.co.jp/e/shisanforum2020新しいウィンドウで開きます

 


経済対策パッケージにおける
「世界に開かれた国際金融センターの実現」について

総合政策局総合政策課 総合政策管理官 中村 香織
 係長 尾花 祐美

(※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。)


 政府は令和2年12月8日に、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」(以下「経済対策」)を閣議決定しました。本稿では、その中の一つの施策として盛り込まれている、「世界に開かれた国際金融センターの実現」の背景と概要について説明します。


1.背景
 香港・シンガポール・上海などの国際金融都市と比較した日本の強みとしては、安定した政治・法律制度、良好な治安・生活環境などが指摘されてきました。また、大きな実体経済や1,900兆円もの個人金融資産は、特に資産運用ビジネスにとっては大きな魅力であり、海外から資産運用会社や金融人材を呼び込み、国際金融センターとなるポテンシャルがあると考えています。
 一方で、弱みとしては、英語による行政対応や生活環境の不十分さや、税金の高さ、専門人材の層の薄さといった点が指摘されています。日本を国際金融センターとして確立するためには、日本の持つ強みは引き続き強化しアピールするとともに、弱みとして指摘されている点は可能な限り改善することで、日本の金融資本市場の魅力を総合的に高めていくことが必要です。
 こうした観点から、経済対策では、①海外と比肩しうる魅力ある金融資本市場への改革と、②海外事業者や高度外国人材を呼び込む環境構築を戦略的に進め、世界に開かれた国際金融センターを実現するとしています。

2.海外と比肩しうる魅力ある金融資本市場への改革
 経済対策では、主に資産運用業者の誘致に力点を置き、海外で資産運用業等を行ってきた事業者や人材が、同様のビジネスを国内で行いやすくするため、規制・税制面でのボトルネックの除去を図ります。
 規制面については、資産運用業の参入規制を見直します。通常、投資運用業は登録が必要であるため、登録審査に相応の時間が必要となりますが、主に海外のプロ投資家を顧客とするファンドの資産運用業者や海外での業務実績・海外当局による許認可がある資産運用業者であれば届出制とするなど、参入手続の簡素化を図ります。12月23日に金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」の報告書※1がとりまとめられ、2021年の通常国会に法案を提出予定です。
 税制面については、12月21日に税制改正大綱が閣議決定され、法人税・相続税・所得税について、大胆な措置が講じられることとなりました。法人税については、役員の業績連動報酬について上場会社等にのみ損金算入が認められていましたが、非上場会社にも認められることになります。相続税については、現状、日本に10年を超えて居住している外国人が亡くなった場合には、国内財産のみならず全世界の財産も含めて課税対象とされることから「Never die in Japan」などと言われていましたが、就労等のために日本に居住する外国人に係る相続税については、その居住期間にかかわらず、国外の外国人や短期的に滞在する外国人が相続人となる場合、国外財産を課税の対象外とすることとなりました。ファンドマネージャーに対する所得税においても、運用成果に応じ、出資持分を超えてファンドからファンドマネージャーに分配される利益(いわゆるキャリードインタレスト)について、経済的合理性を有するなど一定の場合には、「株式譲渡益等(一律20%)」として通常の所得税率よりも低い税率が適用されことが明確化されることになりました。
 そのほか、市場の魅力向上のため、成長資金の円滑な供給のための施策などにも取り組みます。
 

3.海外事業者や高度外国人材を呼び込む環境構築
 加えて、経済対策では、海外事業者や高度外国人材がビジネス・生活をしやすい環境を整えるために、以下のような施策に取り組むこととされています。
 まずは、金融行政の英語化に取り組みます。昨年11月6日に「金融行政の英語化及びワンストップ化について」を公表※2しておりましたが、1月中に、金融庁と財務局が合同で「拠点開設サポートオフィス」を立ち上げます。拠点開設サポートオフィスでは、新規の海外運用会社等の登録の事前相談から登録・監督までを英語によりワンストップで対応します。併せて、新規に日本に参入する海外の資産運用会社からの英語での登録申請書の受付を開始します。加えて、今後、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の開発するAI多言語翻訳技術を基礎とするサービスを導入して、文書や会話の翻訳に活用することで、金融行政の英語化を推進していきます。
 今般の経済対策の特徴は、これまで述べてきたような金融庁の取り組みにとどまらず、国・地方公共団体・民間が一体となって、資産運用業等を始める外国人の法人設立・事業開始・生活立上げまでをワンストップでの支援に取り組むという点です。今後、金融庁においてモデル事業を実施し、「金融創業支援ネットワーク」を構築していきます。そのために、外国語対応可能な士業(弁護士・司法書士・行政書士・公認会計士・税理士)や民間事業者の情報や、医療機関・不動産業者・インターナショナルスクールといった生活面に係る情報についても発信も強化します。
 そのほか、高度金融人材の来日を促すための在留資格の緩和や、信用保証制度等の拡充などにも取り組みます。

4.最後に
 当然のことながら、経済対策のとりまとめはいわば「スタート」に過ぎません。これからそれぞれの施策を実行して成果に結びつけていくことが重要です。
 金融庁内でも多くの部署で連携・協力しているところですが、官民の関係者のご協力・ご知見をいただきながら、不断に改善に取り組んでいくことで、国際金融センターとしての機能の確立に取り組んでいきます。
 
※1 令和2年12月23日公表、「金融審議会『市場制度ワーキング・グループ』第一次報告の公表について」:https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20201223.html
※2 令和2年11月6日公表、「金融行政の英語化及びワンストップ化について」:https://www.fsa.go.jp/news/r2/shouken/20201106-2/20201106.html

 


サステナブル・ファイナンスに関する国際的な議論への参画状況

総合政策局総務課国際室 課長補佐 池田 友理
係長 藤田 美穂

(※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。)

 2020年11月24日、金融庁は、サステナブル・ファイナンスに関する国際的な連携・協調を図るプラットフォーム(IPSF)のメンバーになったことを公表※1しました。本稿では、IPSFの概要や参加の経緯、当庁が参加するその他のサステナブル・ファイナンス関連の国際的取組みについて紹介します。


1.IPSFへの参加について
 IPSFとは、2019年10月に、欧州委員会を中心に発足した公的機関の多国間フォーラム※2で、サステナブル・ファイナンス市場における民間資金流通の拡大という目標を達成すべく、以下の3つの実務的な目的を掲げ活動しています。
 1.ベストプラクティスを促進するための情報交換と発信
 2.各国の取組みの比較や課題・機会の特定
 3.各国・地域の状況を尊重し、必要に応じて国際的な協調の促進
 具体的には、①タクソノミー(分類基準)、②金融商品の基準とラベル、③サステナビリティ開示の3つの作業部会の中で議論が進められ、日本はスイス・欧州委員会とともに③の開示に関する作業部会の共同議長も務めています。
 日本はIPSF発足当初から参加の検討を進めていたところ、2020年9月、「クライメート・イノベーション・ファイナンス戦略※3」が公表され、日本のサステナブル・ファイナンスに対する基本的な考え方と今後の戦略が示されたことで、金融庁としても、IPSFの場でメンバー国と情報交換を行うとともに、こうした考え方を積極的に紹介していくことが重要と考え、参加を表明するに至りました。
 


2.サステナブル・ファイナンスに関するその他の当局間の取組み
 上記で紹介したIPSFの他にも、サステナブル・ファイナンスに関する議論はここ数年で拡大し、様々な多国間の枠組みで議論が進んでいます。例えば、NGFSという気候変動リスクへの対応を検討する中央銀行と金融監督当局の国際的なネットワーク(金融庁は2018年9月にメンバーとして参加)では、ミクロプルーデンス・マクロ金融・グリーンファイナンス促進といった作業部会に分かれて分析を行い、金融監督者や金融機関向けの気候リスク管理に係るハンドブックやガイダンスなどを作成・更新しています。
 また、従来からある金融関連の会議体においても、サステナブル・ファイナンス関連の作業部会が次々と設置されています。金融安定理事会(FSB)では、気候変動リスクが金融安定に与える影響などについて分析が行われているほか、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)・証券監督者国際機構(IOSCO)・保険監督者国際機構(IAIS)等においても、各業態に沿った形でサステナブル・ファイナンスに関する検討が進められています。

3.最後に
 2021年11月のCOP26に向け、気候変動を巡る国際的な議論は益々加速していくことが見込まれます。こうした国際的な議論に貢献していけるよう、関係省庁等とも連携しながら取組みを進めてまいります。
 
※1 2020年11月24日公表、「サステナブル・ファイナンスに関する国際的な連携・協調を図るプラットフォーム(IPSF)への参加について」:https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20201120.html
※2 国際的な基準を策定する機関ではない。
※3「クライメート・イノベーション・ファイナンス戦略2020」:https://www.meti.go.jp/press/2020/09/20200916001/20200916001.html新しいウィンドウで開きます

 


事業者支援ノウハウ共有サイト創設に向けたトライアルに関する参加機関の公募について

 金融庁では、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部(事務局:日本生産性本部)が運営する『地方創生カレッジ』内に地域金融機関及び信用保証協会職員専用の事業者支援ノウハウ共有サイトを創設します。創設に当たり、トライアル期間を設けた上で、本格実施を目指すため、この度、トライアルに参加する機関・職員を公募しました。

 

◆施策概要
 令和2事務年度 金融行政方針で、「金融機関の現場職員の間で、地域・組織を超えて事業者支援のノウハウを共有する等の取組みを支援していく」旨、明記しました。
 新型コロナウイルス感染症の影響を受けられた事業者の方々に対しては、これまで官民の金融機関において、様々に資金繰り支援を進めてこられました。今後は、こうした資金繰り支援だけではなく、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えて、経営改善や事業再生、事業転換、事業承継といった支援も進めていくことが、金融機関の現場職員に期待されています。
 しかし、このコロナ禍において、こうした事業者支援を進めるうえで金融機関の現場職員が必要とされる実践的なノウハウ・知見は、業界団体や各金融機関ごとの研修等を通じて、じっくり広めていくだけでは、必ずしも足らない・間に合わないといった声もあります。
 そこで、現場職員の間で、地域や組織を超えた、実践的な事業者支援のためのノウハウ・知見を共有する「共助」の動きが進むことを目指し、以下に取り組むこととしています。

 ① 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部と連携して、Web上に金融機関専用の事業者支援ノウハウ共有サイトを創設する

 ② 各地域内ですでに始まりつつある事業者支援等のノウハウ共有の取組みを後押しする

 このうち、①ノウハウ共有サイト創設に先立ち、活発なやり取りに繋がるようにサイトの使い勝手を点検するため、トライアル期間を設けることとし、協力頂ける機関を公募すること としました。
 なお、期間は3ヶ月程度を予定しており、50名程度の参加者を念頭に置いています。期間終了後、サイトについて必要な改修を行った上で、全対象機関に活用を呼びかけ、本格稼働を始めたいと考えています。
 金融庁では、コロナ後の新たな日常を踏まえた経済の力強い回復に向け、金融機関の現場職員の方々と共に、この「共助」の仕組みを通じて、コロナ禍で打撃を受けた中小・小規模企業の経営改善・事業再生・事業転換支援といった金融仲介機能の一層の発揮・強化を後押ししてまいります。
 
 令和2年12月8日公表、「事業者支援ノウハウ共有サイト創設に向けたトライアルに関する参加機関の公募について」: https://www.fsa.go.jp/news/r2/ginkou/20201208/20201208.html

 


先月の金融庁の主な取組み(2020年12月1日~12月28日)

事業者支援ノウハウ共有サイト創設に向けたトライアルに関する参加機関の公募(12月8日)
国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」を踏まえた事業者支援の徹底等について要請(12月8日)
高病原性鳥インフルエンザ疑似患畜の確認を踏まえ金融上の対応について要請(12月17日)
令和2年度第3次補正予算(案) (12月17日)
イベントの中止等の影響を踏まえた資金繰り支援について要請(12月17日)
関東財務局が「令和2年12月16日からの大雪による災害に対する金融上の措置」について要請(12月18日)
年末年始に向けた感染拡大防止措置を踏まえた事業者の資金繰り支援等について要請(12月18日)
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(5)(12月18日)
第1回 金融審議会「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」(12月18日)
令和3年度予算、機構・定員(案)(12月21日)
令和3年度税制改正の大綱における金融庁関係の主要項目(12月21日)
「金融審議会 銀行制度等ワーキング・グループ報告」(12月22日)
株式会社みんなの銀行に対する銀行業の免許の付与(12月22日)
金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」第一次報告(12月23日)
「金融庁の1年(2019事務年度版)」(12月24日)
最終化されたバーゼルIIIの国内実施に関する規制方針案(12月24日)
「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会」論点整理(12月25日)
「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」論点整理(12月25日)
金融機関における貸付条件の変更等の状況について(令和2年11月末までの実績)(12月25日)
銀行口座と決済サービスの連携に係る認証方法及び決済サービスを通じた不正出金に係る調査」の調査結果(12月25日)
「トランジション・ファイナンス環境整備検討会」の開催について公表(12月25日)
「サステナブルファイナンス有識者会議」を設置(12月25日)

 



 新年あけましておめでとうございます。
 2021年最初のアクセスFSAでは、和田 義明 政務官へのインタビューを掲載致しました。和田政務官の様々な政策(国際金融センターの実現、男性の育児休業取得率向上等)への熱い思いをお伺いするとともに、私自身インタビューをさせて頂く中で、和田政務官の気さくで優しいお人柄を感じました。是非ご一読下さい。
 その他、政策解説コーナーでは、2021年益々注目を集めるであろうサステナブル・ファイナンスについて取り上げさせて頂きました。本年も皆様に金融行政の最前線をお伝えし、より一層分かりやすい広報誌となるべく鋭意努力を重ねて参りますので、引き続きご覧頂けると幸いです

金融庁広報室長 境   吉隆
編集・発行:金融庁広報室
 

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