アクセスFSA 第215号

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鈴木内閣府特命担当大臣(金融)就任インタビュー

 岸田内閣発足に伴い、令和3年11月10日に就任した鈴木 俊一 内閣府特命担当大臣(金融)に、意気込みや金融行政への考え等について伺いました。

インタビューの概要

  •  ◆まずは、コロナでお困りの事業者・国民の皆様への支援を、金融機関と協力して行う
     ◆若い方などに投資を前向きにとらえていただく環境づくり
     ◆常に新しいニーズに応えていく政治家でありたい

 
鈴木大臣

鈴木 俊一(すずき しゅんいち)内閣府特命担当大臣(金融)・財務大臣
 昭和28年4月13日生まれ。父は元総理大臣の鈴木善幸氏。平成2年(初出馬)に当選。平成14年9月に環境大臣として初入閣。五輪担当大臣に、平成29年8月、平成31年4月に就任。令和元年9月からは党総務会長を務めた。趣味はゴルフほか多才。

― 内閣府特命担当大臣(金融)として意気込みを教えてください。

 まず足元のことで、やはり新型コロナ感染症の拡大についてが、国民の皆さんの一番の関心事だと思います。感染防止対策に加え、人流抑制などで、だいぶ経済が動けなくなってしまいました。今回のコロナ禍で困っている事業者・国民の皆さんがたくさんいますので、その方々に対する経済支援を切れ目なく実行しなければならないと考えています。その中でも、中小・小規模事業者の方々には、資金繰りに大変困っている方が多くいます。金融機関の協力を得て、運転資金を過不足なく供給することが重要ですから、金融機関に対し更にしっかりと要請しなければならないと考えています。

 また、これから先も日本経済をしっかり成長させていくためには、そうした方々にもコロナを乗り越えて、その先を頑張ってもらわないといけません。そのためには金融機関の更なる役割が重要だと思います。様々な事業者に寄り添っていただいて、事業展開における様々なアドバイスや情報の提供などを行い、将来にわたって、それぞれの事業者がしっかり前に進めるようにするための役割も果たしていただきたいと思っています。

 もう一つは、今は個人金融資産が約2千兆円あり、その半分は現預金という状況ですが、ただ手元に持っていても経済的な貢献はあまりないわけですから、積極的に投資に回していただけるような環境を整備する必要があると思っています。

 金融資産を持つとか、いろいろな投資を行うということは、高齢者のかなり余裕のある方がやっているというような印象がかつてはあったかもしれません。しかし、これからは、将来の自分の人生設計を踏まえて、普通のサラリーマンや若い方に投資を前向きにとらえていただく、そういった環境づくりをしていきたいと思います。
 今はNISAやつみたてNISAなど、徐々に仕組みが整ってきています。現に個人金融資産があるわけですから、文化・風土として、そうした仕組みを利用していただく環境づくりが、これからの日本の経済・国力の向上のためにも非常に重要だと思っています。

― これまでに取り組まれた政策の中で、印象深いものは何ですか。

 私が初入閣したのは、19年前の環境大臣でした。京都議定書が議論されていた時で、そのころから地球温暖化は重要な問題だと指摘されていました。しかし、当時は、地球温暖化の影響は、表面的には理解していても実感することはあまりありませんでした。そして、20年ほど経過して、今は国民のみなさんが、肌感覚で気候変動を感じていると思います。外国では、千年に一度の大洪水があり、また、山火事に伴う山林火災で北海道・東北地方と同程度の面積が燃えてしまう。日本でも例年、豪雨災害が起き、大型化した台風が直撃し大きな被害が出ています。気候変動に伴う地球温暖化は待ったなしの問題だと思います。

 この問題への施策として、温暖化に対応する様々な産業も作っていかなければなりません。このような分野への投資として、ESG投資などが行われていく必要があると思います。グリーン分野の投資については、今はグリーンの外にあるものをグリーンの方向に移行し、グリーンの対象を広げることも重要です。このように、金融行政からも温暖化対策には十分貢献できます。地球温暖化への取組みについては、今、現実に地球温暖化の影響を実感する中で、20年ほど前の取組みも含めて印象に残っています。

写真:インタビューの様子
写真:インタビューの様子

― 国会議員になったきっかけを教えてください。

 私の父(注:鈴木 善幸 元総理)が長く政治に携わっていたことが一番の要素だと思います。父は新憲法下で初の選挙があった昭和22年から国会にいました。私は昭和28年生まれで、生まれたときには父は政治家でしたし、政治家としての父親しか知らないのです。子どものころからずっと、父の色々な活動を見ていました。当時は、敗戦から日本がどう立ち上がるのかと、民族の再生、日本の復興といった言葉をよく使っていました。国民の皆さんが政治に対する切実な思いを持っていた時代も含めて見ていましたので、政治という仕事がとても重要なものであるということが成長するにしたがって、だんだん心のなかで大きくなり、政治を志すようになりました。

― 政治家として目指すものを教えてください。

 端的に言うと、国民の皆さんの期待に応えていくということですが、初当選してからの30年間で感じるのは、国民の皆さんの政治に対するニーズが変わってきているということです。私は選挙区が岩手県ですから特にそうなのかも知れませんが、当初はまだまだ様々なインフラが整っていないということで、県内の道路をはじめインフラ整備の要望がとても大きいものでした。今、その地方も、人口減少、過疎化が進み、そのような中で、産業や集落をどうやって維持していくのかが課題です。

 世の中の技術が進んで、デジタル化にしても、地方こそ、そうしたニーズが都会よりもあります。例えば、自動運転の車にしても、だんだん公共交通が地方でなくなってしまうので、そういうものはむしろ地方にニーズがあります。また、コロナ感染症拡大を経験し、働き方については、テレワークを実際にやってみたら、テレワークでも働けるなとなり、これだったら地方で住みながら仕事しても良いじゃないかと、そういう新しい考えが生まれています。

写真:インタビューの様子
写真:インタビューの様子

 地方においても、この30年間、いろいろと課題も変化しています。目指すべきものは、常にそういった状況の変化に十分目配り気配りをして、常に新しいニーズに応え、有権者の皆さんの期待に応えていくことです。これがあるべき姿だと思います。

― 休日などに、どのようにリフレッシュされていますでしょうか。

 趣味のゴルフがリフレッシュや健康管理につながってきたと思います。しかし、最近はゴルフも自由にできず、コロナで外出できない時もあります。偶然、テレビの通販番組で手頃なランニングマシーンを見つけ、購入しました。今はゴルフができない分、そのランニングマシーンで30分間、家で健康管理を兼ねてリフレッシュしています。また、孫が同居していまして、別の孫も近くにも住んでおり、休みの日は孫たちと一緒に遊ぶのが楽しみになっています。

― 最後に座右の銘をお願いします。

 私は、人との争いごとを好まない性格でして、色紙などへの揮毫を頼まれますと「和を以て尊しとなす」を書きます。私の父も同じような性格だったのかもしれません。父は「和」という字をよく書き、父の内閣は「和の政治」というスローガンを掲げて運営していました。それを倣ったわけではないですけれども、座右の銘を聞かれましたら、私も「和を以て尊しとなす」とお答えしています。

以 上
(インタビュアー:広報室長 齊藤 貴文)

鈴木内閣府特命担当大臣(金融)車座対話の開催
~ 「国民の資産形成と金融リテラシー」 ~

 本年10月8日の、岸田首相の所信表明演説にて、全閣僚が、様々な方と車座対話を積み重ね、その上で、国民のニーズに合った行政を進めているか、徹底的に点検する旨の指示がありました。これを受け、11月26日に金融庁でも、「国民の資産形成と金融リテラシー」をテーマに、鈴木大臣の車座対話を開催しました。会場は日本橋兜町にあるKABUTO ONE。兜町は、渋沢栄一が設立した、日本最古の銀行である第一国立銀行の初代本店が据えられた地であり、東京証券取引所も所在する、日本の金融業界を象徴する場所です。対話にご参加いただいたのは、資産形成や金融教育に造詣の深い大学生、20代社会人、サラリーマン投資家、経済アナリスト、ジャーナリスト、FP、消費生活アドバイザーの計7名です。

 出席者からは、

・大学の投資サークルを運営しているが、親の理解が得られず証券口座開設ができなかったり、学生が投資するということに大学側の理解がなく、サークルを公認してくれなかったりというケースが多い。若年層に金融教育を行うことはとても良いことであるが、親世代や社会全体の認識も変える必要があると感じる。

・若い世代はこれまでになく資産運用への関心が高まっており、インターネット証券会社を利用して実際に投資を初めている。これに対し、40代以降の世代は投資やお金の話にネガティブであり、取り残される懸念がある。

・金融教育とは投資教育にとどまるものではなく、より幅広いもの。お金とは何か、というところから始める必要。

・個々人が金融リテラシーを高めることも重要だが、販売側の金融機関が情報開示をすることも重要。金融商品の選択にあたっては、利回りがいいというだけなく、情報開示をきちんとしている商品を選択することが重要。

・お金に対するアレルギーがない若い世代から金融教育をやっていくことが重要。なお、金融商品の購入に誘導するような金融教育にならないよう留意することも必要。

といった意見をいただきました。鈴木大臣からは、執務室の中に籠っているだけでは聞けない貴重なお話をお伺いできたことへの謝辞と、参加者の皆様の意見を踏まえ、国民の資産形成と金融リテラシーの向上を進めていく旨の決意を示していただきました。

 今回の車座対話では、様々な分野の参加者から幅広い取組みの紹介をいただけたということと、単に「国民の資産形成や金融リテラシーが大切だ」というだけでなく、「どのような点を問題と感じるのか」「どういった施策が必要なのか」ということについて、それぞれのお立場から具体的なご指摘、ご提案をいただけたという点で、非常に実り多い議論を行うことができたと感じています。金融庁では、いただいたご意見も参考にしながら、引き続き国民の資産形成に資するような制度のあり方の検討や、金融リテラシーの向上とリテラシーを活用できる環境づくりに取り組んでまいります。

 
車座対話の模様
写真:車座対話の模様

 


第48回金融審議会総会・第36回金融分科会合同会合の開催
~鈴木大臣より「公認会計士制度の改善に関する検討」を諮問~

 本年11月22日(月曜日)、第48回金融審議会総会・第36回金融分科会合同会合が開催※1されました。今回の合同会合では、鈴木大臣より、挨拶の後、新たな諮問が行われたほか、「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」中間論点整理、金融庁の経済対策項目などに関する報告が行われました。

 
鈴木大臣

 
写真:諮問文を読み上げる鈴木大臣
  • 公認会計士制度の改善に関する検討

【諮問】会計監査を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、会計監査の信頼性確保や公認会計士の一層の能力発揮及び能力向上に資する公認会計士制度の改善に関する事項について検討を行うこと


 金融庁は、本年9月より「会計監査の在り方に関する懇談会」を開催してまいりました。この懇談会では、中小監査事務所を含む上場会社の監査の担い手全体の監査品質の向上や、公認会計士の働き方の多様化を踏まえた対応等を議論し、「会計監査の信頼性確保」、「公認会計士の能力発揮・能力向上」等を柱とする論点整理を公表しました。

 上記の諮問は、この論点整理を踏まえて行われたものであり、今後、金融審議会「公認会計士制度部会」において具体的な制度整備に向けた調査・審議が行われることとなりました※2

〇報告
  • ●「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」中間論点整理
 今回の合同会合では、「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の中間論点整理について報告が行われました。この研究会は、本年7月以来4回にわたって開催され、送金・決済分野から検討が行われてきました。本報告はステーブルコインへの対応※3についての議論の結果をまとめたものです。今後、金融審議会「資金決済ワーキング・グループ※4」において、ステーブルコインへの対応の制度的な論点についての更なる議論がなされる予定です。
 
  • ●金融庁の経済対策項目
 本年11月19日に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」※5のうち、金融庁関連施策について報告が行われました。

 金融庁では、引き続き、金融審議会での議論を踏まえ、各種施策を推進してまいります。

 


※1 議事次第および配付資料については、
 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/soukai/siryou/2021_1122.htmlをご参照ください。

※2 今回の合同会合後、本年11月29日に公認会計士制度部会が開催されました。
 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/kounin/siryou/20211129.htmlをご参照ください。

※3 いわゆるステーブルコインに明確な定義は存在しないが、本報告書の中では、法定通貨の価値と連動した価格(例:1コイン=1円)で発行され、発行価格と同額で償還を約するもの(及びこれに準ずるもの)を今後の議論の対象と結論付けております。

※4 資金決済ワーキング・グループについては、
 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/base_gijiroku.html#shikinkessai_wgをご参照ください。

※5 「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」については、内閣府ウェブサイト
 https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/keizaitaisaku.html新しいウィンドウで開きますをご参照ください。


「企業会計審議会総会・第8回会計部会」の開催
~黄川田副大臣への意見書の手交~

 本年11月16日、企業会計審議会総会・第8回会計部会を開催※1し、「監査に関する品質管理基準」の改訂及び最近の会計監査・会計基準を巡る主な動向について議論が行われました。
 
総会での黄川田副大臣

 
写真:総会での黄川田副大臣
  • 「監査に関する品質管理基準」の改訂について
     監査事務所に適切な監査業務の実施を求めるため、監査の品質に影響を及ぼす可能性のあるリスクの積極的な識別・対応を求めることを内容とした、「監査に関する品質管理基準」の改訂が了承されました※2

  •  今回の改訂により、監査事務所自らが、達成すべき品質目標を設定し、当該品質目標の達成を阻害しうるリスクを識別して評価を行い、評価したリスクに対処するための方針又は手続を定め、これを実施するという、リスク・アプローチに基づく品質管理システムを導入することとされました。

  •  リスク・アプローチに基づく品質管理システムは、当該監査事務所が実施する業務の内容や監査事務所の状況によって変化しうるものであるため、上場会社等の監査を行う監査事務所については、監査業務の公益性に鑑み、充実した品質管理システムの整備及び運用が求められることとされました。

  •  本総会では、堀江監査部会長より、監査部会における審議の状況等についての説明が行われた後、企業会計審議会総会として「監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書」が取りまとめられ、徳賀会長から黄川田副大臣へ同意見書が手交されました。
 
意見書を手交する徳賀会長(右)と黄川田副大臣(左)

 
写真:意見書を手交する徳賀会長(右)と黄川田副大臣(左)
最近の会計監査・会計基準を巡る主な動向
・会計監査の在り方に関する懇談会の論点整理
・金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおける検討状況
・IFRSの任意適用企業の推移
・日本基準の開発や国際的な意見発信の状況
・国際会計人材の育成の取組み
等について、議論が行われました。

 


※1 議事次第および配付資料については、
 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/kaikei/20211116.htmlをご参照ください。

※2 本年11月19日公表「『監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書』の公表について」は、
 https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20211116.htmlをご参照ください。

※3 本年11月12日公表「『会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)』論点整理の公表について」は、https://www.fsa.go.jp/news/r3/singi/20211112.htmlをご参照ください。


国際金融都市ニューヨークと日本市場

          企画市場局市場課 市場業務監理官 繁本 賢也

(※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。)
 
1.国際金融都市ニューヨークと州・都市間競争
 ニューヨーク・マンハッタンでは、世界をリードする多数の金融機関や金融サービス関連が本拠地を置き、活発に金融・資本取引を行っています。フィラデルフィアから金融都市の座を奪った1800年代前半から1900年代半ばまで、多くの金融機関がウォールストリート(ダウンタウン)周辺に所在していたことにちなみ、ニューヨークの金融業界は「ウォールストリート」と呼ばれます。もっとも、情報通信技術の発達に伴い、1970年代以降、大手金融機関を中心に、マンハッタン中心部のミッドタウンへの移転が進み、9.11のテロ事件後に更に移転が加速しました。さらに、ミッドタウンで金融業を中心とする企業の集積が進み、オフィス賃料が上昇する中で、マンハッタン西部の再開発地域であるハドソンヤードへの移転も進みつつあります。

 他方で、最近では、コロナ禍の影響もあり、ヘッジファンドを中心に、税金等のコストが低いフロリダ州やテキサス州に移転する動きも見られており、企業誘致のための州間・都市間競争が激しさを増しています。また、ニューヨーク州議会の一部議員が、パンデミック対策による財政の逼迫に対応するために株式取引課税の導入を提案した際には、ニューヨーク証券取引所のCEOが他州への移転を示唆するなどの動きも見られました。また、マイアミ市が暗号資産先進都市を標榜し、これに対抗するかのようにアダムス次期ニューヨーク市長が暗号資産の中心地となることを打ち出しています。19世紀末にアメリカで生まれた州間の規制競争(競争的ガバナンス)の概念は、グローバルな広がりを持つとともに、米国内でも連綿と続いているようです。

 さらに、米国には、ニューヨーク以外にも、歴史的経緯により、資産運用業者が集積するボストン、商品・デリバティブ取引所を擁するシカゴ、ベンチャーキャピタルが集うシリコンバレー等、世界を代表する様々な金融センターが存在しています。

 米国における企業の拠点移動・設置に係るインセンティブや、自治体の企業誘致策とその効果、企業の地域分散の在り方といった点は、日本が国際金融センターとしての地位を持続可能な形で維持・向上していく上で、一つの参考になります。


2.日本に投資する米国投資家
 日本市場における海外投資家の勢力は大きく、市場の価格形成、企業経営や経済の在り様にまで影響を及ぼすキープレイヤーとなっています。例えば、日本の株式市場の売買高を見ると、2020年の東証第一部総売買代金に占める海外投資家の割合は6割にも上り、海外投資家の存在感の大きさを示しています。

 日本ではなかなか接することが難しい海外投資家ですが、ニューヨークでは、そうした日本市場に投資する投資家たちの生の声を直に聞くことができます。投資家と一口に言っても、大手のアセットマネジメント会社から、グローバルマクロファンドやクオンツファンドを含むヘッジファンド、更にはアクティビストやプライベートエクイティに至るまで、様々な規模や投資対象・投資戦略があり、物の見方も様々です。

 米国投資家の立場で見ると、彼らは、母国市場が上値を追い続けており、また、世界中に魅力的な投資先がある中で、「なぜ日本に投資するのか」という問いに常に直面しています。また、運用担当者の面々を見てみると、日本経済のプレゼンスが現在よりも相対的に大きかった1980~90年代に日本で経験を積み実績を上げた人が多く、高齢化が進みつつあります。社内において、日本投資向けの資産配分を獲得することが難しいという声も聞かれます。

 こうした現実の中で、米国投資家の運用担当者の多くは、日本という投資先に機会を見出すべく、日本の経済・市場の優れている点や課題点について日々真剣に考えを巡らせています。彼らの意見の中には、厳しい指摘も多々ありますが、一方で、コーポレートガバナンス改革のように、大いに期待・評価されている取組みもあります。日本国内にいると得られない気付きを得られることも多くあります。

 もちろん、海外投資家は自らの投資リターン向上を最優先に行動しており、その意見が正解とは限りません。また、いわゆる短期筋・投機筋と長期投資家とでは全く思惑が異なります。他方で、海外投資家に見放される市場が日本にとって良い市場だとは言い難いように思われます。日本市場をより魅力あるものにし、経済の成長に繋げられるよう、海外投資家の意見も参考にしながら、政策や制度の在り方について、絶えず検証し、必要かつ適切な改善を図っていくことが重要と考えられます。

 そうした作業において、米国の金融資本市場の在り方は、大いに参考になります。米国では、アイデアをビジネスとして成長させる環境が整っており、そうしたビジネスに対して、大学基金(エンダウメント)を始めとする機関投資家や個人投資家が旺盛な投資意欲を持っており、非上場株式を含め、円滑に資金調達や投資・取引を行う金融システムが存在しています。日本の金融制度や実務は、様々な面で米国を手本として形成されてきましたが、進化し続ける米国の経済・金融構造の在り方は、今後も一つの見本になり続けるように思われます。

 他方で、彼我の前提条件の違いにも留意が必要です。今日の米国の金融システムが効率的であるのは、公的部門の施策の貢献もありますが、民間部門が市場の非効率性を単に事業運営上の障害ではなく収益機会として捉え、ビジネスとしてその解消に取り組んできたことが大きく寄与していると言えます。例えば、新興資産運用業者への投資を専門にする資産運用会社や、ファンド形態ではなく会社(ベネフィットコーポレーション)形態で出資を集め脱炭素化プロジェクトに長期投資する会社等、新たな資金の流れを生み出す企業が次々に立ち上がっています。こうした点を含め、同じような前提が成り立つか、成り立たないとすれば日本ではどうすべきか、考えを突き詰めていくことが重要と思われます。
 
写真

 
写真:再開発が続くハドソンヤード。日系の不動産会社も開発に携わる。コロナ禍の影響が注目される。

3.金融関係者との地道な交流
 ニューヨーク総領事館では、現地の投資家を始めとする金融関係者に日本の経済・金融に関する政策やビジネスの動向について理解を深めてもらうとともに、建設的なフィードバックを得ることを狙い、継続的にセミナーを開催しています。例えば、本年3月には、世界に開かれた国際金融センターの実現をテーマに米国投資家向けウェビナーを開催し、金融庁の岡田総合政策課長、山川課長補佐(いずれも当時の肩書)より、外国の金融機関や投資家を日本に誘致することを目的とした省庁・関係機関に横串を刺す取組みを発信し、活発な意見交換が行われました。今後も、こうしたセミナーや個別の意見交換を通じ、ニューヨークの金融関係者との交流を深めることで、日本市場の魅力向上と発展に貢献していきたいと考えています。

 
図
図:国際金融センターの実現に向けた取組みに関するセミナー実施に係る広報

金融経済教育の取組み
~ eラーニング教材・うんこお金ドリル ~

      総合政策局総合政策課 課長補佐 上大谷 起一

(※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。)

  金融庁では、金融リテラシー向上のため、金融経済教育に取り組んでおり、これまで高校や大学等への出張授業(講師派遣)を行ってきました。新型コロナウイルス感染症拡大後は、オンラインでの授業の実施も増加しております。ただ、すべての学校でオンライン環境が整備されているわけではないことや、いつでも視聴できるオンデマンド授業の必要性、可能性に鑑み、高校生や高校教員向けの授業動画、解説動画の作成・公表等を行ってまいりました。そして、この取組みは金融庁単独での取組みでしたが、今般、関係機関と連携して新しいeラーニング教材を作成※1しましたので、お知らせしたいと思います。

 もともと金融経済教育については、日本銀行内に設置された「金融広報中央委員会」が事務局である「金融経済教育推進会議」が、金融庁や各業界団体での金融教育に関する取組みの連携ハブとなっています。この「金融経済教育推進会議」が作成したeラーニング講座「マネビタ〜人生を豊かにするお金の知恵〜」が、本年11月25日に開講しました(受講申し込み自体は10月29日より受付開始)。
 
マネピタ

 
「マネビタ〜人生を豊かにするお金の知恵〜」は、上からもご覧いただけます↑
 講座の対象は、上記の金融庁の動画より若干年齢層が高く、主に大学生~若手社会人向けとしていますが、どなたでも無料で受講できるようになっています。プログラムは「経済の仕組み」「金利等の金融の基礎」、「ライフプラン作成」「借入」「資産形成」「保険」「金融トラブル」など全13パートで、金融に係る幅広な内容をカバーしています。もちろん、ご関心がある部分だけ視聴することも可能となっています。ちなみに金融庁は、講座全体の冒頭部分にあたる「あなたの夢の実現と持続可能な社会の形成に向けて ~なぜ金融リテラシーが必要か?」というパートを担当させていただきました。

 配信先は、ドコモgaccoが運営する無料オンライン講座プラットフォーム「gacco®(ガッコ)」を利用しており、いったんの受講期限は2022年3月31日までとしておりますが、それ以降も、適宜内容の更新等を行ったうえで、継続的に配信していくことを予定しています。また講義資料等は、学校関係者や企業研修の担当者等に幅広くご利用いただけることを念頭に、一定の条件の下で二次利用も可能としております。

 新型コロナウイルス感染症拡大は、学校の授業や企業研修のあり方を大きく変えてしまいましたが、それに応じて新しいやり方も様々に検討されており、オンデマンド授業もその一つです。無料でだれでも受講可能ですので、ぜひ一度gaccoにご登録いただき、動画をご覧いただければと思います。金融の基礎知識はすでに身に付けている、という方も、改めて初歩から学びなおすと、新しい発見もあるかもしれません。もちろん「こうしたほうが分かりやすいのではないか」「こうした目線での解説も必要ではないか」といったご指摘も大歓迎です。

 もう一つ、金融庁の取組みとして取り上げたいのが「うんこお金ドリル」※2です。ご存じの方も多いと思いますが、改めてご説明させていただくと、「うんこドリル」は、株式会社文響社が出版する、すべての問題に「うんこ」を使って作られた学習ドリルで、シリーズ累計で890万部を超える、子どもたちに大人気の学習ドリルです。

 先述のとおり、金融庁では高校や大学向けの授業は多く実施しておりましたが、特に低年齢層向けのコンテンツは少なく、授業の経験も少ないのが悩みでした。こうした中、なんと文響社よりご連携の提案をいただき、本年3月に公表したのが、「うんこお金ドリル」でした。これについてはFinancial Times誌にも取り上げられるなど、非常に注目をいただきましたが、実は当初からこれは「生活編」という位置づけで、主に子どもたちが日常生活で経験しそうなお金にまつわる出来事を取り上げておりました。

 そして本年10月に、新たに「経済編」と題した「うんこお金ドリル」の第二弾を公表しました。これは、うんこねこ(「うんこドリル」のキャラクターです)がクッキーのお店を開く…というシチュエーションで、商売の面白さや悩み、お金が社会を回っていく経済の仕組みについて、子どもたちもわかりやすく学べるという、生活編とは異なるコンセプトで作成したものです。生活編と合わせ、こちらもオンラインでどなたでもドリルに挑戦することができますし、なにより一つ一つの「うんこ」の選択肢は、文響社と金融庁の担当者が、喧々諤々、「こういうストーリーのほうが面白いのでは」「こういう選択肢のほうが伝わりやすいのでは」と何度も議論を繰り広げた結果ですので、ぜひ一度ご覧になっていただければと思います。

 蛇足ながら申し上げると、霞が関ではほかにも「うんこドリル」が展開されており、消防庁とのコラボのほか、海上保安庁と連携した「うんこ海の安全ドリル」、財務省と連携した「うんこ税金ドリル」もございますので、ご関心ある方は是非そちらもご覧ください。

 金融経済教育については、令和4年4月から、高校家庭科の学習指導要領に資産形成が盛り込まれるほか、成年年齢が引き下げられることで、18歳からクレジットカードを作れるようになるなどの社会環境の変化もあり、現在注目度が非常に高まっていると感じています。そして同時に、この注目の高まりは、単に投資をする人が増えたためだけでなく、「自分のライフプランに応じてお金との付き合い方を考える必要がある」という、より広い視点からお金との関係をとらえていく機運が醸成されているためであるとも感じています。金融リテラシーの向上のため、こうした機運を逃さず、引き続き様々な取組みを検討、実施していきたいと思います。
 
うんこドリル

 
うんこドリルは、上からもご覧いただけます↑

  

※1 本年10月29日公表「eラーニング講座『マネビタ 〜人生を豊かにするお金の知恵~』の公表について」は、https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20211029/20211029.htmlをご参照ください。

※2 本年10月29日公表「小学生向けコンテンツ『うんこお金ドリル』第2弾の公表について」は、
https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20211020-2/20211020-2.htmlをご参照ください。


「金融機関システム・フロントランナー・ サポートデスク」の設置

総合政策局総合政策課フィンテック室 課長補佐 小泉 遼平
総合政策局リスク分析総括課マクロ分析室 係長       向山    綾
監督局銀行第二課地域金融企画室 課長補佐 山本 幸平

(※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。)

  昨今、多くの金融機関では、基幹系システムの複雑化が一つの課題となっています。複雑化した基幹系システムは、開発・運用に過大なコストがかかるだけでなく、デジタル化による利用者の利便性向上等、サービス改善面でも機動的な対応を困難にする一因となっています。
 こうした課題を乗り越えるべく、一部の金融機関やシステムベンダーでは、基幹系システムに関する新たな取組みを行っており、金融庁としてもその動きを支援するべく、令和2年3月より「基幹系システム・フロントランナー・サポートハブ」を設置しました。

 このたび、さらに金融機関が相談しやすくなるよう、本年11月2日、「ハブ」を「金融機関システム・フロントランナー・サポートデスク」として拡充※することとしました。具体的には、①基幹系システムに限らず情報系システムや外部システムとのAPI連携等も含む先進的な取組みに関して相談を受け付けるとともに、②個別金融機関からの事前申請や支援終了後の報告書提出を廃止し、より柔軟に相談いただける形としました。
 「デスク」においても、「ハブ」と同様に、システム開発の企画の早い段階より、法令解釈や、ITガバナンスおよびITに関するリスク管理等のシステムモニタリングの観点から、金融機関と一緒に議論することで、金融機関のチャレンジを後押ししてまいります。また、今後は支援案件ごとの公表は行わないものの、得られた知見は、各種レポート等を通じて公表し、金融機関等へフィードバックして参ります。

 なお、最後に、これまで「デスク」で支援してきた5つの案件をご紹介します。当初想定していた、①オープン系システムへの移行、②クラウド上での開発、③勘定系のコア部分の縮小・戦略領域での柔軟な対応、④コンポーネント・マイクロサービス化、⑤アジャイル開発といった取組みも、網羅される結果となりました。
 

(1)株式会社静岡銀行:オープン系技術を活用した記帳決済システム導入でハードウェアやロケーションの自由選択を可能とすること、システム機能のコンポーネント化により外部サービスとの機動的な接続を可能とすること等を目指す。本年1月の稼働後では、顧客に影響のある初期障害が発生したが、旧システム業務仕様の引継ぎの難しさによるもので、オープン系技術固有の原因による障害ではなかった。(支援期間終了により、本年11月10日最終報告書を提出・公表。)

(2)第一生命保険株式会社:既存の契約管理機能を中心とした基幹系システムについて、コアとなる顧客・契約データの管理・保存等をオン・プレミス環境に残しつつ、外部連携・データ分析等に関する機能をクラウド基盤に構築することで、新たなサービス実現と運用の効率化の両立を図る。

(3)株式会社みんなの銀行、ゼロバンク・デザインファクトリー株式会社:勘定系システムを、マイクロサービス化された疎結合型構成でパブリッククラウド上に構築。アジャイル開発の手法を導入した。さらに、API接続を通じて金融機能等を他の事業者にも提供するBaaS型ビジネスを目指す。

(4)株式会社横浜銀行:外部サービスとの連携や銀行の営業系システムを「戦略領域」と位置づけ、柔
軟かつ低コストでの機能追加を実現する一方、「非戦略領域」の勘定系システムはオープン系システムへの転換や機能追加抑制でコスト削減を図ることとし、両者を連携するための「オンラインデータ連携基盤」を設ける。

(5)株式会社西京銀行:基幹系システムを、メインフレーム上で稼働する共同利用型から、他行で稼働実績のあるクラウド型パッケージに更改。システムベンダーに依存しない自行主体のシステム開発を行い、開発コストの低減やフィンテック等の新サービスの柔軟な取り込みを図る。

 
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ご相談窓口

 
  

 本年11月2日公表「金融機関システム・フロントランナー・サポートデスクの設置について」は、
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200326.htmlをご参照ください。


「モデル・リスク管理に関する原則」の公表

総合政策局リスク分析総括課大手銀行モニタリング室 課長補佐 吉田  高
監督局外国証券等モニタリング室 課長補佐 田中 康浩

(※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。)

 はじめに
 金融庁は、本年11月に「モデル・リスク管理に関する原則」を公表※しました。ここでは、本原則の狙いや内容についてご紹介します。

必要性が高まるモデル・リスク管理
 金融機関は多くの「モデル」を使っています。モデルは近年その利用範囲を拡大させており、金融商品のプライシング・公正価値評価、リスク計測、ストレステスト等に留まらず、例えば引当、マネー・ローンダリング対策、不正検知、アルゴリズム取引等の領域も、ますますモデルに基づくものとなっています。これらのモデルには、コンピューターの計算能力の向上や、機械学習・人工知能の手法の深化といった技術革新の成果を活用したものも多くあります。

 一方、モデルは金融機関にとってリスク要因となる面も併せ持っています。モデルは多くの単純化や仮定を伴うため、根本的な誤りを含んでおり不正確なアウトプットを出力する場合や、モデルが不適切に使用される事態も生じ得ます。そうなれば、誤った情報に基づく意思決定につながり、結果として金融機関の収益やレピュテーション等に重大な損害を与えかねません。

 モデル・リスク管理とは、モデルに起因するこのようなリスク(モデル・リスク)を管理する比較的新しい領域です。包括的なモデル・リスク管理の必要性はグローバル金融危機後に本格的に認識され、大規模な金融機関を中心にモデル・リスク管理態勢の構築が進んできました。足元では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響など金融機関を取巻く不確実性の高まりが、過去に観測されたパターンが将来においても成り立つとは限らない事実を改めて確認させるなど、モデル・リスクの実効的かつ能動的な管理はますます重要となっています。本原則は、これまでの検討や金融機関との対話を踏まえて、モデル・リスク管理実務のさらなる発展を促すべく策定・公表したものです。

「モデル・リスク管理に関する原則」の概要
 モデル・リスク管理原則は、金融システム上重要な金融機関を対象にモデル・リスクを管理する態勢の整備を求めるものです。本原則における「モデル」は、「定量的な手法(中略)であって、理論や仮定に基づきインプットデータを処理し、アウトプット(推定値、予測値、スコア、分類等)を出力するもの」を指します(資料1)。広範なモデルが該当すると考えられますが、これは、モデルがリスクをもたらし得る限りそのリスクを管理すべきだという考えに基づいています。また、モデルは現実を定式化し、推定値や予測値などを出力するものです。モデルのこの性質に起因する「不確実性」が、モデルに基づく意思決定を誤らせる可能性をもたらし、モデル・リスクを生じさせる本質的な要因となっています。
 
資料1

 
 本原則は、モデル・リスク管理における重要な概念として「3つの防衛線」「モデル・ライフサイクル」「リスクベース・アプローチ」の3つを挙げています。モデル・リスク管理における3つの防衛線は、資料2のような形をとると想定されます。モデルの所管・開発・使用等に携わる第1線に対して、モデル・リスク管理部署やモデル検証者等の第2線がけん制を行う枠組みが想定されています。モデル・ライフサイクルは、その名のとおりモデルの一生(モデルの特定、リスク格付の付与、開発、使用、変更、使用停止等の一連の流れ)を意味します。リスクベース・アプローチとは、金融機関が、モデルに内在するリスクを評価し、評価結果に基づいてリスクを管理することを指します。リスクが高いモデルは頻繁に検証を行う一方、リスクが低いモデルは定期的な検証を要しないといった管理が例として挙げられます。
 
資料2

 
 「モデル・リスク管理に関する原則」は、モデル・リスク管理に当たって考慮すべき8つの原則を記載しています。便宜的に、ここでは8原則を3つに区分して解説します(資料3)。

 
資料3

 

■原則1~2―ガバナンス・インフラ
 最初の2原則はモデル・リスク管理を行うためのガバナンスとインフラについて記載しています。まず、取締役会等及び上級管理職はモデル・リスクを包括的に管理するための態勢構築が求められます(原則1)。その際、第1線としてのモデルの所管部署の設定や、第2線のモデル・リスク管理部署の設置を行う必要があります。次に、自社にどのようなモデルがあるのかを把握するため、モデルの特定を行い、特定したモデルをデータベース(モデル・インベントリーと呼びます)に記録することが求められます(原則2)。リスクベースの管理を行うため、各モデルに対するリスク格付(例えば、リスク高・中・低)の付与も必要です(原則2)。

■原則3~7―個別モデルの管理
 原則3~7は個別モデルの管理についてです。まず、モデルの一生は第1線による開発(原則3)から始まります。開発時には、モデルがブラックボックス化しないように、モデルで用いられる手法や仮定等を記載した「モデル記述書」の作成等が求められます。

 使用開始前には、第2線が独立した立場から検証(原則6)を行い、検証結果を踏まえてモデルの使用を承認(原則4)します。モデル検証と承認は第2線が第1線に対して牽制を行う重要なプロセスです。形だけのものにならないよう、第2線は、モデル使用に関する制限等の条件を付した承認や、モデル使用の拒否を行う権限を持つ必要があります。モデルの使用開始後には、モデルに対して第1線が継続的なモニタリング(原則5)、第2線が再検証(原則6)を実施し、モデルが意図したとおりの性能を示すことが出来ているかを評価します。

 なお、金融機関はベンダーが開発するモデルを使うことも多いと考えられますが、外部開発のモデルについても、それに応じた適切な統制が求められます(原則7)。

■原則8―有効性評価
 原則8は、内部監査部門がモデル・リスク管理態勢の全体的な有効性を評価することを求めています。第3線としての独立した立場からのけん制をモデル・リスク管理の実効性向上につなげていくことが期待されていると言えます。

おわりに
 金融機関がモデルを利用するに当たっては、リスクを適切に管理しながら、モデルがもたらす便益を活用し、業務の効率性・実効性を高め、よりよい金融サービスの提供に努めていくことが重要です。モデル・リスク管理原則の公表がその一助となれば幸いです。
  

 本年11月12日公表「『モデル・リスク管理に関する原則』に対するパブリックコメントの結果等について」は、 https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20211112.htmlをご参照ください。


金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習「Delta Wall Ⅵ」を開催

 金融庁では、今年で6回目となる金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習「Delta Wall Ⅵ」※を、本年10月20日から27日にかけて開催しました。

1.金融分野のサイバーセキュリティを巡る状況
 世界各国において、大規模なサイバー攻撃が発生しており、攻撃手法は一層高度化・複雑化しています。我が国においても、サイバー攻撃による業務妨害、重要情報の窃取、金銭被害等が発生している状況であり、今後の金融分野への影響が懸念されています。

 こうしたサイバー攻撃の脅威は、金融システムの安定に影響を及ぼしかねない大きなリスクとなっており、金融業界全体のインシデント対応能力の更なる向上が不可欠です。


2.昨年までの演習の概要
 昨年までに5回演習を実施し、2016年度は77先、2017年度は101先、2018年度は105先、2019年度は121先、2020年度は114先の金融機関が参加しました。これまでの演習を通じて、多くの金融機関がコンティンジェンシープラン、対応マニュアル等の規程類の見直しや社内外の情報連携強化に向けた対応を実施し、インシデント対応態勢を改善してきているところです。


3.今年の演習(Delta Wall Ⅵ)の概要
 今年の演習(Delta Wall Ⅵ)は、金融機関の演習参加率を向上させる観点から、信用金庫、信用組合の参加枠を拡大するとともに、不正送金等の事案が発生した業態として資金移動業者の参加枠を拡大し、他の業態を併せ、過去最多の合計150先が参加しました。また、演習には財務局、日本銀行、日本公認会計士協会も参加し、金融機関からの連絡に対応しました。

 演習シナリオでは、最近のサイバー攻撃の情勢を踏まえ、標的型攻撃やランサムウェア感染を契機としたシステム障害、顧客情報の漏えい、顧客資産の流出の発生といった事象を想定しました。

 また、演習では、インシデント発生時における情報連携や、業務継続を図るための確認に加えて、外部委託先とも適切な意思疎通を図ることができるかどうかを確認するため、攻撃内容の調査などの基礎的な技術的課題を新たに追加しました。

 なお、銀行業態では演習での気づきを業務に活かせるよう、演習後1ヵ月以内にホットウォッシュ(振返り研修)を開催し、演習での良好事例や明らかとなった課題について参加者間で共有したうえで意見交換を行うことで、業界全体のインシデント能力の向上を図っています。

 
演習の模様 演習の模様
写真:演習の模様

4.演習結果の評価とフィードバックについて
 本演習では、参加金融機関がPDCAサイクルを回し、対応能力を向上させることができるよう、具体的な改善策を示すなど、事後評価に力点を置いています。

 本年度は、参加金融機関が演習において対応できなかった項目の自己分析(例えば、演習の結果判明した課題が、コンティンジェンシープラン(Plan)の課題か、対応(Do)の課題かを分析する)を行い、その結果も考慮して評価を行うことで、金融機関にとって何が課題かがより明らかとなるようにするなど、演習効果を高める工夫をしています。

 評価結果については、参加金融機関に個別にフィードバックするだけではなく、業界全体にも還元することにより、金融業界全体のサイバーセキュリティ対策の向上を図っています。

 

 本年10月19日公表「『金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習(Delta Wall Ⅵ)』について」は、
https://www.fsa.go.jp/news/r3/20211019/deltawall.htmlをご参照ください。


銀行をご利用のお客さまへ
-マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策にご協力ください-

 

注意喚起リーフレット

 


先月の金融庁の主な取組み(令和3年11月1日~11月30日)

・LIBOR利用状況簡易調査の結果概要について公表(11月1日)
・障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査の結果について公表(11月5日)
・偽造キャッシュカード問題等に対する対応状況(令和3年3月末)について公表(11月5日)
・高病原性鳥インフルエンザ疑似患畜の確認を踏まえ、金融上の対応について要請(東北財務局:11月10日九州財務局:11月15日近畿財務局:11月17日
・「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」論点整理について公表(11月12日)
・「デジタル・分散型金融への対応のあり方等についての研究会」中間論点整理について公表(11月17日)
・「監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書」を公表(11月19日)
・「海外投資家等特例業務・移行期間特例業務を行うみなさまへ」を公表(11月22日)
・「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を踏まえた事業者支援の徹底等について金融機関に要請(11月24日)
・中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化について公表(11月24日)
・「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等について公表(11月26日)
・金融庁国際総括官の保険監督者国際機構(IAIS)執行委員会副議長就任について公表(11月26日)
・令和3年度第1次補正予算(案)について公表(11月26日)
・「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会」論点整理2.0を公表(11月30日)
・金融機関における貸付条件の変更等の状況について更新(11月30日)

 



 今月号の冒頭は、鈴木大臣の就任インタビューです。
インタビューの際、鈴木大臣からは、経験に裏打ちされた、国や地方への熱い思いがひしひしと伝わってきました。
 海外からの寄稿については、シンガポール(10月号)、インド(11月号)に続き、今月はニューヨークからとなります。
 今後、ヨーロッパへの展開も計画しています。
 来月以降も、インタビューなどコンテンツを充実させていきます。
 来年もご愛読いただけますと幸いです。

金融庁広報室長 齊藤 貴文
編集・発行:金融庁広報室

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