ディスカッションペーパー

ディスカッションペーパーとは

金融研究センターにおける「ディスカッションペーパー(DP)」とは、当センター所属の研究官等が、研究成果を取りまとめたものです。随時掲載しますので、ご高覧いただき、幅広くコメントを歓迎します。

なお、DPの内容はすべて執筆者の個人的見解であり、金融庁あるいは金融研究センターの公式見解を示すものではありません。

29年度ディスカッションペーパー

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ファイル 題名 執筆者 年月
DP2017-7
(PDF:1.50MB)
国際的な動向を踏まえた金融サービス利用者保護に係る現状調査―仮想通貨を巡る規制及び中銀デジタル通貨の発行可能性に係る各国比較― 北見 良嗣
首藤 優
2018年3月
DP2017-6
(PDF:1.10MB)
昨今の経済環境等の変化に対応した不適正会計の早期発見に関する調査・研究 宋 明子 2018年2月
DP2017-5
(PDF:3.57MB)
自己資本規制におけるマーケット・リスク計測 磯部 昌吾 2017年12月
DP2017-4
(PDF:3.57MB)
サイバー攻撃の脅威動向に関する公開情報からの情報収集・分析(OSINT)について 花田 隆仁 2017年10月
DP2017-3
(PDF:690.53KB)
予防的な金融政策(lean-against-the-wind policy)にかかる最近の議論のサーベイ 砂川 武貴 2017年7月
DP2017-2
(PDF:1.81MB)

資料1(PDF:4.51MB)
資料2(PDF:5.06MB)
資料3-1(PDF:2.16MB)
資料3-2(PDF:2.20MB)
資料3-3(PDF:2.33MB)
資料3-4(PDF:2.34MB)
資料3-5(PDF:2.37MB)
資料3-6(PDF:2.46MB)
資料4-1(PDF:2.55MB)
資料4-2(PDF:2.17MB)
資料4-3(PDF:2.66MB)
資料4-4(PDF:2.76MB)
資料4-5(PDF:2.70MB)
資料4-6(PDF:2.71MB)
与信集中リスク管理の高度化に向けた研究 室町 幸雄 2017年7月
 DP2017-1
(PDF:503KB)
Trading and Ordering Patterns of Market Participants in High Frequency Trading Environment -Empirical Study in the Japanese Stock Market- 斎藤 大河
足立 高徳
中妻 照雄
高橋 明彦
津田 博史
吉野 直行
2017年6月

ディスカッションペーパー要旨

DP2017-7
「国際的な動向を踏まえた金融サービス利用者保護に係る現状調査―仮想通貨を巡る規制及び中銀デジタル通貨の発行可能性に係る各国比較―」

   北見 良嗣   金融研究センター特別研究員
   首藤 優 金融研究センター特別研究員


 2017年は仮想通貨(cryptocurrency ; virtual currency)が注目を集めた年であった。仮想通貨の代表格ビットコインの相場動向をみると、2017年12月央までおおむね上昇傾向を辿り、その後一転してピーク時の約半分の相場に下落して最近は推移している。この間、基礎技術たるブロックチェーン(Blockchain)の利用状況を見ると、ブロックチェーンを利用した決済・送金サービスの実験が具体化したほか、夏場にかけてICO(Initial Coin Offering)発行の動きが世界各地で活発化し、監督当局からの証券法適用等規制強化の動きが目立つようになった(第1章)。
 第2章では各国の仮想通貨に係る全般的な規制動向について、第3章ではICO規制の状況について、それぞれやや詳しく見ることとした。いずれについても、現時点では全面的禁止の方向に舵を取る動きと、仮想通貨を規制のコントロール下に置きつつそのメリットを享受しようとする動きの2つの傾向がみられる。
 第4章では、銀行デジタル通貨、中銀デジタル通貨、預託金見合いの中銀・銀行デジタル通貨の発行の可能性について、それぞれの特徴点・メリット・課題を整理した。特にメリット・課題に関しては、ⓐ利用者利便の向上、ⓑ金融政策へのインプリケーション、ⓒ金融システム安定に及ぼす影響、ⓓ中銀口座のシステム維持コスト等の観点から整理を行った。銀行・中銀デジタル通貨の在り方、さらに今後の社会経済の進展方向は、技術発展の可能性にも大きく依存しよう。



キーワード: ブロックチェーン、マネーロンダリング規制、銀行・中銀デジタル通貨

DP2017-6
「昨今の経済環境等の変化に対応した不適正会計の早期発見に関する調査・研究」

   宋 明子   金融研究センター特別研究員
 本研究は大きく二つに分けられる。一つは不適正会計の早期発見に関わる先行研究に関するレビュー、もう一つは先行研究の分析結果を踏まえた不適正会計の早期発見のためのモデル構築に対する提言である。
 先行研究に関するレビューにおいては、昨今の経済環境等の変化を踏まえて、不適正会計の早期発見に関する国内外の研究成果を取りまとめた。調査に当たっては様々な不正の中から、有価証券報告書に対する虚偽記載をターゲットとして、財務情報及びコーポレートガバナンス情報を用いて不正会計を予測するための先行研究について分析結果をまとめた。分析結果をまとめる際には数多い先行研究の中から多くの論文に引用されている代表的な先行研究を中心に概要を取りまとめた。財務諸表からの定量情報を用いて不正会計を予測するための海外の代表的な先行研究としてBeneish(1999a)のM-Score及びDechow et al.(2011)のF-Scoreについてモデルの概要をまとめたほか、日本のデータを用いた先行研究としてSong et al.(2016)のモデルについて概要を取りまとめた。またコーポレートガバナンス情報を用いて不正会計を予測するための海外の先行研究については、日本のコーポレートガバナンス情報より分析可能ないくつかの先行研究についてレビューを実施した。さらにコーポレートガバナンス情報と不正会計の関係については先行研究のレビューだけではなく、コーポレートガバナンス情報、役員情報、関連会社情報、大株主情報等のコーポレートガバナンス情報を用いた実証分析も実施した。その結果から不正会計の予測に有効ないくつかのコーポレートガバナンス指標を発見することができた。
 不適正会計の早期発見のためのモデル構築に対する提言について、先行研究の中から不正会計の予測に有効とされる様々な定量情報やコーポレートガバナンス情報を検討した上でモデル構築の提言を行った。今回の研究では有効性が確認されたいくつかのコーポレートガバナンス指標についてモデルへの採用も提言している。


キーワード: 不正会計、予測モデル、コーポレートガバナンス

DP2017-5
「自己資本規制におけるマーケット・リスク計測」

   磯部 昌吾   金融研究センター研究官
 銀行に対する自己資本規制において、マーケット・リスクは、信用リスクとオペレーショナル・リスクとともに、リスクアセットの重要な構成要素の1つである。マーケット・リスクの計測手法には、①予め定められた算式を用いる標準的方式と、②銀行自身の内部モデルを使用する内部モデル方式、の2種類がある。バーゼル銀行監督委員会は、1996年にマーケット・リスクに対する資本賦課の導入に合意して以降、現在までマーケット・リスク計測の枠組みを発展させてきた。
 現在の自己資本規制においてマーケット・リスク計測が義務付けられる銀行は、各国・地域で多様である。米国では、トレーディング業務が重要なボリュームを有する場合にマーケット・リスク計測を義務付け、一般市場リスクに対しては内部モデル方式の使用を義務付けている。他方、EUでは米国よりもマーケット・リスク計測の対象となる銀行の範囲を広くしている一方で、内部モデル方式の使用の義務付けはない。
 現行の枠組みは、グローバル金融危機に対して応急措置的に対応するにとどまっていることから、バーゼル銀行監督委員会は、2016年1月にトレーディング勘定の抜本的見直し(FRTB)に合意した。FRTBの実施にあたっては、その影響度の把握・分析をしつつ、FRTB合意文書における残された課題に対応し、各国が協調して実施することが重要であるといえよう。また、幅広い関係者の理解を得るとともに、今後のあり方を考えていくという観点から、より詳細にFRTBの枠組みや各種手法の理論的な背景が示されることが有益であろう。


キーワード: 自己資本規制、マーケット・リスク、FRTB

DP2017-4
「サイバー攻撃の脅威動向に関する公開情報からの情報収集・分析(OSINT)について」

   花田 隆仁   金融研究センター研究官
 金融機関や官公庁をはじめとして、組織を狙ったサイバー攻撃の脅威が増加しており、また攻撃手法も多様化している。こうした中、日々変化し続けるサイバー攻撃の脅威動向に対応すべく、金融機関や官公庁においても自らサイバー攻撃に関する情報収集・分析を行い、自組織のサイバーセキュリティ態勢の見直し(自助)、及び他組織との情報共有(共助・公助)に繋げていくことが重要である。
 筆者は2015年より、当庁の研究官として、公開情報を用いて情報の収集、分析などを行うOSINTを活用し、主に金融業界におけるサイバー攻撃の脅威動向の把握、及び庁内職員への情報展開を業務として行ってきた。今回、この業務を通じて得られた、サイバー攻撃の脅威動向に関する情報収集・分析の具体的かつ効果的な手法、及び組織内への情報展開方法等について説明する。特に、収集すべき情報ソースの種類、有用な情報ソースの見極め方、収集した情報の分析時に留意すべきポイントなどについて、実例も交えて詳説する。最後に日本の金融機関がどのような対応をすればよいかについて、私見を述べる。


キーワード: サイバーセキュリティ、サイバー攻撃、OSINT

DP2017-3
「予防的な金融政策(lean-against-the-wind policy)にかかる最近の議論のサーベイ」

   砂川 武貴   金融研究センター特別研究員
 金融危機後、これまで金融政策の主要な目的と考えられてきた物価の安定が、金融システムの安定のための十分条件ではなく、金融システムの不安定化が、経済に対するショックを増幅するような負のフィードバックを通じて、物価の安定も毀損しうることが各国の政策当局によって認識されてきた。こうした状況下で、政策当局は、金融政策のリスクテイキングチャネルを通じて、低金利下での金融システムの脆弱性と、名目金利の引き上げによるインフレや実体経済の落ち込みの間のトレードオフに直面する。本稿では、金融システムの脆弱性に配慮した予防的な金融政策(lean-against-the-wind policy)について、最近の議論を中心に整理を行う。金融監督当局がマクロプルーデンス政策を行う際にも、こうした整理は有用であると思われる。


キーワード: 予防的な金融政策、リスクテイキングチャネル、マクロプルーデンス

 DP2017-2
「与信集中リスク管理の高度化に向けた研究」

   室町 幸雄   金融研究センター特別研究員
 本稿では金融機関の与信ポートフォリオに内在する集中リスクについて検討する。近年、個別銀行の与信ポートフォリオにおける集中リスクをHHI(Herfindahl-Hirschman Index)を用いて評価しようとする動きが見られるが、そこには多くの問題点があることを指摘し、代わりにリスク寄与度(risk contribution)に基づく視点からポートフォリオの最適性について考察し、最適ポートフォリオであるための必要条件を導出する。これらの議論は任意のポートフォリオに対して適用可能であり、例えば、日本の金融機関が直面する(i)貸出、(ii) 国債投資、(iii) 国内有価証券投資、(iv) 海外有価証券投資等にどのように資金配分をすることが望ましいかという問題に対しても一つの方向性を与えるものである。また、分析対象は金融機関が保有するポートフォリオ全体でも、国内株式や債券など一部のサブ・ポートフォリオでも構わないので、資産クラスごとに議論を行うこともできる。さらに、導出した必要条件をもとにHHI の代替となる幾つかの指標を考案し、簡単な数値例により、HHI および提案指標のポートフォリオの最適性指標としての妥当性を検討する。結果として、提案された指標は必ずしも適切とは言えなかったが、HHI もまた適切な指標ではないことが示された。


キーワード:与信ポートフォリオ,集中リスク,HHI,最適ポートフォリオ,リスク寄与度

DP2017-1
Trading and Ordering Patterns of Market Participants in High Frequency Trading Environment -Empirical Study in the Japanese Stock Market-

斎藤  大河   金融研究センター研究官
足立  高徳   立命館大学BKC社系研究機構客員教授
中妻  照雄   慶應義塾大学経済学部教授
高橋  明彦   東京大学大学院経済学研究科教授
津田  博史   同志社大学理工学部数理システム学科教授
吉野  直行   金融研究センター顧問
(慶應義塾大学名誉教授、アジア開発銀行研究所所長)

本研究では東京証券取引所における取引参加者の発注・約定パターンを、日本取引所グループより提供された株式の発注データを調べることにより分析する。
 初めに東京証券取引所の取引システムにおける仮想サーバーを、キャンセル率、約定率、後場明け直後の約定数、オーダー一件当たりの注文金額により4タイプ(サーバータイプA、B、C、D)に分類する。
 次に2015年3月末における取引量が多い上位10銘柄について、取引時間を10秒間毎に分割した上で、その10秒間を4局面 (株価の大幅下落、小幅下落、小幅上昇、大幅上昇) に分類し、これらの4局面におけるサーバータイプ毎の発注・約定のパターンを調べる。
 最後に、2015年7、8、9月において、日経平均株価の大幅な下落からの急反転がみられた局面において、各サーバータイプの約定シェアを調べる。
 

キーワード: High frequency trading, Trading and ordering patterns, Japanese stock market

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