銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律要綱
一 総則
1目的
この法律は、銀行等の公共性及び銀行等をめぐる諸情勢の著しい変化にかんがみ、銀行等の業務の健全な運営を確保するため、当分の間、銀行等による株式等の保有を制限するとともに、その制限の実施に伴う銀行等による株式の処分の円滑を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
(第1条関係)
2定義
銀行等とは、銀行、長期信用銀行、農林中央金庫又は全国を地区とする信用金庫連合会をいうこととする。
(第2条関係)
二 銀行等による株式等の保有の制限
1銀行等及びその子会社等は、当分の間、株式その他これに準ずるもの(以下「株式等」という。)については、合算して、その自己資本に相当する額(以下「株式等保有限度額」という。)を超える額を保有してはならないこととする。
2銀行等及び子会社等は、合併その他の政令で定めるやむを得ない理由がある場合には、あらかじめ主務大臣の承認を得て、当該株式等保有限度額を超える額の株式等を保有することができることとする。
3上記1及び2については、銀行持株会社及び長期信用銀行持株会社に準用することとする。
4その他所要の規定を設けることとする。
(第3条、第4条関係)
三 銀行等保有株式取得機構
1総則
(1)銀行等保有株式取得機構(以下「機構」という。)は、銀行等による株式等の保有の制限の実施に伴い、銀行等の保有する株式の短期間かつ大量の処分により、株式の価格の著しい変動を通じて信用秩序の維持に重大な支障が生ずることがないようにするため、銀行等の保有する株式の買取り等の業務を行うことにより、銀行等による株式の処分の円滑を図ることを目的とする。
(第5条関係)
(2)機構は、法人とすることとする。
(第6条関係)
(3)機構は、一を限り、設立されるものとする。
(第7条関係)
(4)その他所要の規定を設けることとする。
(第8条~第10条関係)
2会員
(1)機構の会員の資格を有する者は、銀行等に限ることとする。
(第11条関係)
(2)会員は、機構の承認を受けて脱退することができるほか、一定の事由によって脱退することとする。
(第12条関係)
3設立
(1)機構を設立するには、その会員になろうとする十以上の銀行等が発起人となることを必要とする。
(第13条関係)
(2)発起人は、定款及び業務規程を作成した後、会員になろうとする者を募り、創立総会を開かなければならないこととするほか、創立総会に係る所要の規定を設けることとする。
(第14条関係)
(3)発起人は、創立総会の終了後遅滞なく、認可申請書を内閣総理大臣及び財務大臣に提出して設立の認可を申請しなければならないこととするほか、設立の認可等に係る所要の規定を設けることとする。
(第15条~第17条関係)
(4)機構は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立することとする。
(第18条関係)
4管理
(1)機構の定款には、目的、名称、事務所の所在地等を記載しなければならないこととするほか、○一定の期日(機構の設立の日後10年を経過する日までの日に限る。)の到来、○買い取った株式をすべて処分したときを解散事由として定めなければならないこととする。また、定款の変更は、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じないこととする。
(第19条関係)
(2)機構に、役員として、理事長1人、理事4人以内及び監事1人を置くこととし、役員の職務及び権限、任免及び任期、欠格事由等に係る所要の規定を設けることとする。
(第20条~第25条関係)
(3)機構に、運営委員会(以下「委員会」という。)を置くこととし、委員会に係る所要の規定を設けることとする。
(第26条関係)
(4)機構の役員・職員、委員会の委員又はこれらの職にあった者は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならないこととする。
(第27条関係)
(5)機構の役員・職員及び委員会の委員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなすこととする。
(第28条関係)
5総会
(1)理事長は、毎事業年度一回通常総会を招集しなければならないこととするほか、必要があると認めるときは、臨時総会を招集することができることとする。
(第29条関係)
(2)内閣総理大臣及び財務大臣は、当該職員をして総会に出席させ、意見を述べさせることができることとする。
(第30条関係)
(3)定款の変更等は、総会の議決を経なければならないこととする。
(第31条関係)
(4)その他総会に係る所要の規定を設けることとする。
(第32条、第33条関係)
6業務
(1)機構は、○会員の保有する株式の買取り並びに当該買い取った株式の管理及び処分、○会員の保有する株式の売付けの媒介、○拠出金及び手数料の収納及び管理、○これらの業務に附帯する業務を行うものとする。
(第34条関係)
(2)機構は、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けて、信託銀行等に対し、その業務の一部を委託することができることとする。
(第35条関係)
(3)機構の業務規程には、株式の買取り、管理及び処分に関する事項等を記載しなければならないこととする。また、機構は、業務規程を変更しようとするときは、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けなければならないこととするほか、内閣総理大臣及び財務大臣は、業務規程が機構の業務の適正かつ確実な運営をする上で不適当なものとなったと認めるときは、その変更を命ずることができることとする。
(第36条関係)
(4)機構は、その業務を行うため必要があるときは、その会員に対し、資料の提出を求めることができることとする。
(第37条関係)
(5)株式の買取り及び株式の売付けの媒介は、平成18年9月30日までに限り行うことができるものとする。
(6)機構は、株式の買取り(買い取った株式を直ちに処分することが予定されているものとして政令で定める株式の買取りを除く。以下「特別株式買取り」という。)を行おうとするときは、あらかじめ、委員会の議決を経て、買取期間を定め、内閣総理大臣及び財務大臣に届け出なければならないこととする。
(7)特別株式買取りは、当該特別株式買取りの申込みに係る株式が上場株式又はこれに準ずるものとして政令で定める株式であること等の要件を満たしている場合でなければ、行ってはならないこととする。
(8)機構は、株式の買取りをしたときは、速やかに、その買取りに係る事項を内閣総理大臣及び財務大臣に報告しなければならないこととする。
(第38条関係)
(9)機構は、買い取った株式を処分したときは、速やかに、当該処分に係る事項を内閣総理大臣及び財務大臣に報告しなければならないこととする。
(第39条関係)
(10)機構が買い取った市場価格のある株式を発行する会社が、当該株式を機構から買い受ける場合において、商法第210条第1項の決議をするときは、同条第5項、第6項後段及び第7項の規定は、適用しないこととする。
(第40条関係)
7拠出金等
(1)機構の会員は、機構に対し、拠出金(当初拠出金)を納付しなければならないこととし、当該拠出金の総額は、100億円を下回ってはならないこととする。
特別株式買取りの申込みをした会員は、当該株式の買取価額に100分の8を乗じて得た金額を、機構に対し、拠出金(売却時拠出金)として納付しなければならないこととする。
(第41条関係)
(2)機構は、株式を買い取った場合においては、当該株式の買取りの申込みをした会員から、手数料を徴収することができることとする。会員の保有する株式の売付けの媒介をした場合においても同様とする。
(第42条関係)
(3)会員は、拠出金又は手数料を納期限までに納付しない場合には、機構に対し、延滞金を納付しなければならないこととする。
(第43条関係)
8財務及び会計
(1)機構の事業年度は、4月1日から翌年3月31日までとする。
(第44条関係)
(2)機構は、毎事業年度、予算及び資金計画を作成し、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けなければならないこととする。
(第45条関係)
(3)機構は、毎事業年度、通常総会の承認を受けた財務諸表等を内閣総理大臣及び財務大臣に提出し、承認を受けなければならないこととするほか、承認を受けたときは、遅滞なく、財産目録等を官報に公告し、かつ、財務諸表等を事務所に備え置き、一般の閲覧に供しなければならないこととする。
(第46条、第47条関係)
(4)機構は、業務ごとに経理を区分し、勘定を設けて整理しなければならないこととする。
(第48条関係)
(5)特別株式買取りとして買い取った株式をすべて処分したときは、特別勘定を廃止し、特別勘定に属する資産及び負債を一般勘定に帰属させるものとする。
(第49条関係)
(6)機構は、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けて、金融機関から資金の借入れをし、又は債券の発行をすることができることとし、債券に係る所要の規定を設けることとする。また、借入金の現在額及び債券の元本に係る債務の現在額の合計額のうち、特別勘定に係る金額は、政令で定める金額を超えることとなってはならないこととする。
(第50条関係)
(7)政府は、国会の議決を経た金額の範囲内において、機構の借入れ又は債券に係る債務(特別勘定に係るものに限る。)の保証をすることができることとする。
(第51条関係)
(8)機構の業務上の余裕金は、国債の保有等の方法により運用しなければならないこととする。
(第52条関係)
(9)以上のほか、機構の財務及び会計に関し必要な事項は、内閣府令・財務省令で定めることとする。
(第53条関係)
9監督
(1)機構は、内閣総理大臣及び財務大臣が監督することとする。
内閣総理大臣及び財務大臣は、この章の規定を施行するため必要があると認めるときは、機構に対し、監督上必要な命令をすることができることとするほか、機構の役員がこの法律に違反する行為をしたとき等は、当該機構に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができることとする。
(第54条関係)
(2)内閣総理大臣及び財務大臣は、この章の規定を施行するため必要があると認めるときは、機構に対しその業務・財産に関し参考となるべき報告・資料の提出を命じ、又は当該職員に機構の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができることとする。
(第55条関係)
(3)内閣総理大臣及び財務大臣は、機構が○この章の規定、この章の規定に基づく命令若しくはこれらに基づく処分又は定款・業務規程に違反したとき、○その業務又は財産の状況によりその業務の継続が困難であると認めるとき、○公益を害する行為をしたときは、設立の認可を取り消すことができることとする。
(第56条関係)
10解散
(1)機構は、定款で定める解散事由の発生、総会の決議又は設立の認可の取消しによって解散することとする。
(2)総会の決議による解散は、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じないこととする。
(3)機構が解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、当初拠出金の総額と売却時拠出金の総額の合計額(一般勘定において損益計算上利益を生じた場合にあっては当該利益の額を加え、損益計算上損失を生じた場合にあっては当該損失の額を控除した額)の二倍に相当する額(以下「分配限度額」という。)以下の残余財産を、機構の会員に対して分配することとする。
(4)残余財産の額が分配限度額を超えるときは、分配限度額を超える部分は国庫に納付することとする。
(5)政府は、機構が解散する場合において、その財産をもって債務を完済することができないときは、予算で定める金額の範囲内において、機構に対し、当該債務を完済するための費用の全部又は一部に相当する金額を補助することができることとする。
(第57条関係)
11雑則
(1)機構に対する課税について、所要の規定を設けることとする。
(第58条関係)
(2)上記のほか、認可等の条件等について所要の規定を設けることとする。
(第59条、第60条関係)
四 雑則
内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を金融庁長官に委任することとするほか、所要の規定を設けることとする。
(第61条、第62条関係)
五 罰則
役員等の秘密保持義務等に関して、所要の罰則規定を設けることとする。
(第63条~第68条関係)
六 その他
1施行期日
この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとする。ただし、上記二については平成16年9月30日から、下記3(3)については銀行法等の一部を改正する法律の施行の日から施行することとする。
(附則第1条関係)
2経過措置
(1)平成13年3月31日(以下「基準日」という。)における株式等の保有額がその自己資本に相当する額に政令で定める数を乗じた金額以上の額である銀行等及びその子会社等が、主務大臣の承認を受けたときは、株式等の保有の制限に関する規定は、平成17年9月29日までの間は、適用しないこととする。
(2)上記の承認を受けた銀行等及びその子会社等のうち、基準日における株式等の保有額がその自己資本に相当する額に政令で定める数を乗じた金額以上の額である銀行等及びその子会社等であって、主務大臣の承認を受けた者に関しては、平成17年9月30日から平成18年9月29日までの間における株式等の保有の制限に関する規定の適用について、所要の経過措置を設けることとする。
(3)その他所要の経過措置を設けることとする。
(附則第2条、附則第3条関係)
3関係法律の整備
(1)金融庁設置法の一部改正
金融庁の所掌事務として、政令で定める日までの間、銀行等保有株式取得機構の業務及び組織の適正な運営の確保に関する事務をつかさどることを規定する。
(2)財務省設置法の一部改正
財務省の所掌事務として、政令で定める日までの間、銀行等保有株式取得機構の業務及び組織の適正な運営の確保に関する事務をつかさどることを規定する。
(3)その他所要の規定の整備を図ることとする。
(附則第4条~附則第6条関係)
4検討
政府は、この法律の施行後3年以内に、この法律の施行状況、特殊法人等改革基本法第3条に規定する基本理念、社会経済情勢の変化等を勘案し、銀行等による株式等の保有の制限及び機構に係る制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(附則第7条関係)