証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律要綱

内外の金融情勢の変化に即応し、諸外国の制度との調和を図りつつ、より安全で、効率性の高い証券決済制度等を構築していく必要性にかんがみ、社債、国債等について、券面を必要としない新たな振替制度の整備、より効率的な清算を可能とする清算機関制度の整備を行う等、決済の迅速化、確実化をはじめとする証券市場の整備のため、所要の措置を講ずることとする。

一 短期社債等の振替に関する法律の一部改正(第1条関係)

  • 1. 題名等

    • (1)題名の改正

      法律の題名を「社債等の振替に関する法律」に改めることとする(以下「社債等振替法」という。)。

    • (2)目的の改正

      この法律は、社債等の振替を行う振替機関及び口座管理機関、社債権者等の保護を図るための加入者保護信託並びに社債等の振替等に関し必要な事項を定めることにより、社債等の流通の円滑化を図ることを目的とする。(社債等振替法第1条関係)

    • (3)定義の改正

      振替制度の適用対象の拡大、多層構造化、加入者保護信託の創設に伴い、所要の定義規定を設けることとする。(社債等振替法第2条関係)

  • 2. 振替機関等

    • (1)振替制度の多層構造化等に伴う所要の整備等

      • 振替機関の業務規程において、口座管理機関に関する事項、加入者集会に関する事項等を定めることとする。また、業務規程において、口座管理機関は、その加入者(適格機関投資家等を除く。)に対し、当該口座管理機関の上位機関が負う消却義務等を連帯して保証する旨を定めるべきこととする。(社債等振替法第11条関係)

      • 振替機関が振替業に係る組織変更について承認を要する加入者の範囲を振替機関の直接の加入者に限定するとともに、加入者集会の召集、議決権の行使について電磁的方法により処理するため所要の規定を設けることとする。(社債等振替法第26条、第28条、第30条、第32条、第34条、第36条関係)

      • 口座管理機関となることができる者、口座管理機関の業務等、口座管理機関に関する所要の規定を設けることとする。(社債等振替法第44条~第46条関係)

    • (2)日本銀行が指定を受け国債の振替を行う振替機関となることができるよう、日本銀行が国債の振替に関する業務を営む場合の特例に関し、所要の規定を設けることとする。(社債等振替法第47条~第50条)

  • 3. 加入者保護信託

    • (1)加入者保護信託契約

      • 振替機関は、主務大臣の認可を受け、振替機関を委託者、信託会社等を受託者、補償対象債権を有する加入者(適格機関投資家等を除く。)を受益者とする加入者保護信託契約を締結しなければならないこととする。(社債等振替法第51条~第53条、第57条関係)

      • 信託管理人の指定、運営委員会の設置、その他加入者保護信託契約について必要な事項を定めることとする。(社債等振替法第54条~第56条関係)

    • (2)受益者への支払等

      • 受託者は、加入者の請求に基づいて、加入者が振替機関等の誤記載等によって受けた損害に係る債権であって、破産手続等開始時において加入者が直近上位機関等に対して有する債権(補償対象債権)に相当する金額(上限は政令で定める金額)を支払うこととする。(社債等振替法第60条関係)

      • 受託者は支払を行うときは、運営委員会に対して支払の指図を求めることとし、運営委員会は補償対象債権であることの確認を行い、支払の指図を行うこととする。(社債等振替法第61条関係)

    • (3)負担金

      振替機関及び口座管理機関は振替機関の定める業務規程に従い、加入者保護信託の信託財産とするための金銭(負担金)を受託者に対し支払わなければならないこととするほか、当該負担金に関する所要の規定を設けることとする。(社債等振替法第62条~第64条関係)

  • 4. 社債の振替

    • (1)振替の対象を社債に拡大することに伴う所要の規定の整備

      振替の対象を短期社債等から一般の社債に拡大することとし、権利の帰属、社債券の不発行、振替口座簿の記録事項、新規記録手続、振替手続、振替の効果等について、所要の規定の整備を行うこととする。

    • (2)振替制度を多層構造化することに伴う所要の規定の整備

      • 振替口座簿について、口座管理機関が有する振替社債を記録する自己口座と、加入者が有する振替社債を記録する顧客口座に区分すること、その他振替口座簿の記録事項、新規記録手続、振替手続、抹消手続等について、振替制度の多層構造化に伴う所要の規定の整備を行うこととする。(社債等振替法第68条~第72条関係)

      • 誤記載等により善意取得が生じた場合の振替機関及び口座管理機関の消却義務等に関する規定の整備を行い、振替機関と口座管理機関の消却義務との調整、消却義務不履行の場合における取扱い等について、振替制度の多層構造化に伴う所要の規定の整備を行うこととする。(社債等振替法第78条~第82条関係)

    • (3)社債等の発行に関する商法等の特例等

      • 社債申込証及び社債原簿に社債等振替法の適用がある旨を記載することとする。

      • 振替社債の応募者は、自己のために開設された口座を社債申込証に記載し、又は総額引受契約締結の際に発行者に示さなければならないこととする。

      • 消却義務不履行の場合における社債権者の議決権は、社債の金額(発行者が支払義務を負わない額を除く。)に応じて有することとする等、消却義務不履行の場合における社債権者の議決権等について所要の規定を設けることとする。

      • 社債権者集会における議決権の行使等をするためには、振替社債の社債権者は振替口座簿の自己の口座に記録された振替社債の銘柄に係る証明書を供託しなければならないこととするほか、証明書の供託に関し所要の規定を設けることとする。(社債等振替法第84条~第86条関係)

      • 振替機関は振替社債の総額等について公示しなければならないこととする。(社債等振替法第87条関係)

  • 5. 国債の振替

    社債と同様の振替が行えるよう所要の規定を設けることとするほか、財務大臣が指定した振替国債(分離適格振替国債)については、元本部分と利息部分の分離、統合を行い、元本部分、利息部分のみの振替を行うことを可能とすることとし、振替手続、振替機関及び口座管理機関の消却義務、消却義務不履行の場合の取扱い等について所要の規定の整備を行うこととする。(社債等振替法第88条~第112条関係)

  • 6. その他の社債等の振替

    地方債、投資法人債、相互会社の社債、特定目的会社の社債、特別の法律に基づき発行される法人債、投資信託又は外国投資信託の受益権、貸付信託の受益権、特定目的信託の受益権、外国法人等により発行される外債の振替について、社債と同様の振替が行えるよう所要の規定を設けることとする。(社債等振替法第113条~第127条)

  • 7. 雑則

    振替社債等の供託、最高裁判所規則への委任等について、所要の規定を設けることとする。(社債等振替法第128条~第136条関係)

  • 8. 罰則

    所要の罰則規定の整備を行う。(社債等振替法第137条~第146条関係)

  • 9. その他

    • (1)社債に関する特例措置

      施行日から5年内の政令で定める日までに発行決議がされ、発行後に取締役会において社債等振替法の適用を受ける旨を定めた社債(特例社債)のうち、社債権者の申請により振替受入簿に記録された特例社債について、社債等振替法の規定を適用することとし、所要の規定を設けることとする。

    • (2)その他の社債等に関する特例規定

      国債、地方債等その他の社債等について、上記(1)と同様の特例措置を設けるため所要の規定の整備を行うこととする。ただし、特例国債については、振替国債と異なり、元本部分と利息部分を分離し、元本部分、利息部分のみの振替を行うことはできないこととする。

二 株券等の保管及び振替に関する法律の一部改正(第2条関係)

対象となる有価証券の範囲を株券及び株券に関するものに改めるとともに、所要の規定の整備を行うこととする。

三 社債等登録法の廃止(第3条関係)

社債等登録法を廃止することとする。

四 商工組合中央金庫法の一部改正(第4条関係)

短期商工債券に関する規定の整備等、所要の規定の整備を行うこととする。

五 信用金庫法の一部改正(第5条関係)

短期債券に関する規定の整備等、所要の規定の整備を行うこととする。

六 農林中央金庫法の一部改正(第6条関係)

短期農林債券に関する規定の整備等、所要の規定の整備を行うこととする。

七 信託業法の一部改正(第7条関係)

  • (1)信託会社が信託財産として有する振替社債等に関し、振替機関等が消却義務を有する場合に、受けた損失について元本の補填又は利益の補足を行うことができることとする。

  • (2)信託財産に属する債権であって証券取引清算機関及び金融先物清算機関を債務者とするもの(清算機関が債務引受により債務者となったものに限る。)について、信託会社は他の信託財産に属する債務と相殺することができることとする。

等、所要の規定の整備を行うこととする。

八 証券取引法の一部改正(第8条関係)

  • (1)定義の改正

    証券取引に係る清算に関する制度の整備に関し、有価証券等清算取次ぎ、有価証券債務引受業及び証券取引清算機関について定義規定を設ける等、所要の整備を行うこととする。(証券取引法第2条関係)

  • (2)登録金融機関が行える業務として有価証券等清算取次ぎを規定することとする。(証券取引法第65条関係)

  • (3)証券取引所に関する規定の整備

  • 証券取引に係る清算に関する制度の整備に伴い、証券取引所に係る信認金、取引所の業務規程記載事項、取引証拠金等について所要の規定の整備を行うこととする。(証券取引法第107条~第108条の3関係)

  • (4)証券取引清算機関等に関する規定の整備

    • 有価証券債務引受業は、内閣総理大臣の免許制とし、免許の申請、審査及び免許の要件について、所要の規定を設けることとする。(証券取引法第156条の2~第156条の5関係)

    • 有価証券債務引受業を行う証券取引清算機関の業務、業務方法書、清算預託金、役職員等について、所要の規定を設けることとする。(証券取引法第156条の6~第156条の15関係)

    • 証券取引清算機関に対する内閣総理大臣の監督について、所要の規定を設けることとする。(証券取引法第156条の16~第156条の20関係)

    • 証券取引所が清算機関となる場合の所要の規定の整備を行うこととする。(証券取引法第156条の19、第156条の20関係)

九 金融先物取引法の一部改正(第9条関係)

  • (1)定義の改正

    金融先物取引に係る清算に関する制度の整備に関し、金融先物債務引受業、金融先物清算機関について所要の定義規定を設けることとする。(金融先物取引法第2条関係)

  • (2)金融先物取引所等に関する規定の整備

    金融先物取引に係る清算に関する制度の整備に伴い、金融先物取引所に係る業務規程記載事項、取引証拠金等に関する規定等、所要の規定の整備を行うこととする。(金融先物取引法第19条、第36条~37条、第41条、第42条関係)

  • (3)金融先物清算機関等に関する規定の整備

    • 金融先物債務引受業は、内閣総理大臣の免許制とし、免許の申請、審査及び免許の要件等について、所要の規定を設けることとする。(金融先物取引法第90条の2~第90条の5条関係)

    • 金融先物債務引受業を行う金融先物清算機関の業務、業務方法書、清算預託金、役職員等について、所要の規定を設けることとする。(金融先物取引法第90条の6~第90条の15関係)

    • 金融先物清算機関に対する内閣総理大臣の監督について、所要の規定を設けることとする(金融先物取引法第90条の16~第90条の22関係)

十 国債証券買入銷却法の一部改正(第10条関係)

国債の買入銷却の実施の要件を改め、国債の整理の円滑な実施のために必要があると認められるときに買入銷却を実施できることとする。

十一 国債整理基金特別会計法の一部改正(第11条関係)

国債の利子額を基準として財務大臣が定める金額を政府に支払うことを約する者に対し当該金額に相応するものとして当該国債の元金償還の金額について一定の方法によって計算した金額の支払いを約すること(金利スワップ取引)ができることとする。

十二 国債に関する法律の一部改正(第12条関係)

財務大臣が定める特定の国債について譲渡に制限を課すことができることとする等、所要の規定の整備を行うこととする。

十三 所得税法の一部改正及び租税特別措置法の一部改正(第13条及び第14条関係)

  • (1)利子所得の対象とされる公社債の利子から分離適格振替国債の分離された利息部分(分離利息振替国債)に係るものを除くこととする。(所得税法第23条関係)

  • (2)分離元本振替国債(分離適格振替国債の分離された元本部分)及び分離利息振替国債の譲渡の対価並びにその償還金及び利息の支払に係る告知制度及び支払調書の提出制度等の整備を行うこととする。(租税特別措置法第41条の12関係)

  • (3)外国法人の有する分離元本振替国債及び分離利息振替国債の償還金及び利息並びにこれらに係る譲渡益について、本人確認等の適正課税手続を整備の上で、外国法人の国内事業に帰せられる場合を除き、法人税を非課税とする制度を創設することとする。(租税特別措置法第68条の2関係)

  • (4)公共法人等及び公益信託に係る非課税等の適用対象とされる公社債等について、その適用要件とされている社債等登録法の登録等を社債等振替法の振替口座簿への記録等とすること、一括登録国債の利子の課税の特例の適用対象を一定の振替国債の利子とし、振替国債の利子の課税の特例に改組することその他所要の規定の整備を行うこととする。

十四 その他

  • 1. 施行期日

    この法律は、次に掲げる事項等を除き、平成十五年一月六日から施行することとする。(附則第1条関係)

    • (1)国債証券買入銷却法の一部改正、国債整理基金特別会計法の一部改正及び国債に関する法律の一部改正この法律の公布の日

    • (2)社債等登録法の廃止法施行の日から起算して5年を超えない範囲内で政令で定める日から施行

  • 2. 経過措置等

    • (1)所要の経過措置等を定めることとする。

    • (2)短期社債の振替に関する法律等の改正に伴い、関連法律の改正を行うこととする。


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