証券取引法等の一部を改正する法律案要綱
内外の金融情勢の変化に対応し、証券市場の構造改革を促進する必要性にかんがみ、有価証券の販売経路の拡充・多様化に資する証券仲介業制度を創設するとともに、証券会社等についてその信頼性の向上の観点から株主に関する制度の整備を行うほか、我が国取引所について国際競争力の強化と取引の流動性の向上を図る観点から持株会社制度及び外国の取引参加者が国内に支店を設けることなく取引所取引に参加できる制度の整備を行う等、所要の措置を講ずるため、証券取引法、外国証券業者に関する法律、金融先物取引法その他の関係法律の整備等を行うこととする。
一 証券取引法の一部改正(第1条関係)
1. 証券仲介業等の定義等
証券仲介業とは、証券会社等の委託を受けて、有価証券の売買の媒介等を当該委託者のために行う営業をいうこととする等、所要の規定の整備を行うこととする。
(証券取引法第2条関係)
2. 証券会社等の主要株主
(1)証券会社の主要株主(原則、総株主又は総出資者の議決権の100分の20以上を保有している者)は、議決権保有割合、保有の目的等を記載した届出書を内閣総理大臣に提出しなければならないこととする。
(証券取引法第33条の2関係)
(2)内閣総理大臣は、証券会社の主要株主が欠格事由に該当することとなったときは、当該主要株主に対し主要株主でなくなるための措置等をとることを命ずることができることとする。
(証券取引法第33条の3関係)
3. 協同組織金融機関による有価証券の売買等に係る書面取次ぎの解禁
協同組織金融機関が顧客の書面による注文を受けてその計算において有価証券の売買等を行うことができることとする。
(証券取引法第65条関係)
4. 証券仲介業制度
(1)総則
○銀行等の金融機関以外の者は、内閣総理大臣の登録を受けて、証券仲介業を営むことができることとする。
(証券取引法第66条の2関係)
○内閣総理大臣は、登録の申請があった場合には、登録申請者が欠格事由に該当する場合、証券仲介業を適確に遂行できる知識及び経験を有しない場合等を除き、証券仲介業登録を行わなければならないこととする。
(証券取引法第66条の4、第66条の5関係)
(2)業務
○証券仲介業者は、証券仲介行為を行おうとするときは、あらかじめ、顧客に対し、所属証券会社等の名称等を明らかにしなければならないこととする。
(証券取引法第66条の10関係)
○証券仲介業者は、証券仲介業に係る顧客から金銭又は有価証券の預託を受けてはならないこととする。
(証券取引法第66条の12関係)
○証券仲介業者は、他の業務により知り得た有価証券の発行者に関する非公開情報を利用して勧誘する行為、顧客の注文の動向等を利用して自己の計算において有価証券の売買等を行う行為等をしてはならないこととする。
(証券取引法第66条の13関係)
(3)監督その他
○内閣総理大臣は、証券仲介業者が法令又は行政官庁の処分に違反した場合には、登録の取消しその他監督上必要な事項を命ずることができることとする。
(証券取引法第66条の18関係)
○所属証券会社等は、証券仲介業者が証券仲介業につき顧客に加えた損害を賠償する責めに任ずることとする。
(証券取引法第66条の22関係)
○証券仲介業者は、その役員、使用人のうち勧誘行為を行う者について、外務員登録を受けなければならないこととする。
(証券取引法第66条の23関係)
5. 証券取引所
(1)証券取引所は、内閣総理大臣の認可を受けて、取引所有価証券市場の開設に関連する業務を営む会社を子会社とすることができることとする。
(証券取引法第87条の2の2関係)
(2)何人も株式会社証券取引所の総株主の議決権の100分の50を超える議決権を取得してはならないこととする(証券取引所持株会社等を除く。)。
(証券取引法第103条関係)
(3)株式会社証券取引所の主要株主基準値(原則、総株主の議決権の100分の20)以上の数の議決権を取得しようとする者は、内閣総理大臣の認可を受けなければならないこととする。
(証券取引法第106条の3関係)
(4)証券取引所持株会社
○株式会社証券取引所を子会社としようとする者は、内閣総理大臣の認可を受けなければならないこととする。
(証券取引法第106条の10関係)
○証券取引所持株会社の議決権等について、証券取引所と同様の制度を整備することとする。
(証券取引法第106条の14~第106条の22関係)
○証券取引所持株会社は、子会社である株式会社証券取引所の経営管理及び附帯する業務のほか、他の業務を営むことができないこととする。
(証券取引法第106条の23関係)
○証券取引所持株会社は、内閣総理大臣の認可を受けて、取引所有価証券市場の開設に関連する業務を営む会社を子会社とすることができることとする。
(証券取引法第106条の24関係)
○証券取引所持株会社に対して報告徴求・検査等を行うことができることとする。
(証券取引法第106条の27、第106条の28関係)
6. 外国証券取引所
(1)外国証券取引所による国内への端末設置
外国有価証券市場を開設する者は、内閣総理大臣の認可を受けて、その使用する電子情報処理組織と証券会社等の使用に係る入出力装置とを電気通信回線で接続することにより、当該証券会社等に有価証券の売買等の取引を行わせることができることとする。
(証券取引法第155条関係)
(2)監督
内閣総理大臣の認可を受けた外国証券取引所について、報告徴収・立入検査等を行うことができることとする。
(証券取引法第155条の9関係)
7. 罰則
所要の罰則規定の整備を行うこととする。
(証券取引法第198条~第201条、第203条、第205条~第207条、第207条の3、第208条関係)
8. その他
その他所要の規定の整備を行うこととする。
二 外国証券業者に関する法律の一部改正(第2条関係)
1. 定義
許可外国証券業者とは、内閣総理大臣の許可を受けて、取引所有価証券市場における有価証券の売買等(取引所取引)を業として営むことができる者をいうこととする。
(外国証券業者に関する法律第2条関係)
2. 取引所取引の許可
外国証券業者(外国証券会社を除く。)は、内閣総理大臣の許可を受けて、取引所取引を業として営むことができることとする。
(外国証券業者に関する法律第13条の2関係)
3. 監督
許可外国証券業者について報告徴収・立入検査等を行うことができることとする。
(外国証券業者に関する法律第31条関係)
4. 罰則
所要の罰則規定の整備を行うこととする。
(外国証券業者に関する法律第45条~第48条、第51条、第54条、第55条関係)
三 投資信託及び投資法人に関する法律の一部改正(第3条関係)
投資信託委託業者の主要株主について、証券取引法における証券会社等の主要株主に係る規定と同様の規定を整備するほか、所要の規定の整備を行うこととする。
四 有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律の一部改正(第4条関係)
(1)認可投資顧問業者が証券業又は信託業務を営む場合について、所要の規定の整備を行うこととする。
(2)認可投資顧問業者の主要株主について、証券取引法における証券会社等の主要株主に係る規定と同様の規定を整備するほか、所要の規定の整備を行うこととする。
五 金融先物取引法の一部改正(第5条関係)
1. 金融先物市場を開設する株式会社
金融先物取引所の主要株主など株主に関する制度等について、証券取引法における証券取引所の株主に関する制度等と同様の規定を整備することとする。
(金融先物取引法第34条の20~第34条の52関係)
2. 国内に営業店又は事務所を有しない者の取引参加
金融先物取引所は、国内に営業所又は事務所を有しない者に取引資格を与えようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣の認可を受けなければならないこととする。
(金融先物取引法第35条の2、第35条の3関係)
3. 外国金融先物取引所
外国金融先物取引所による国内への端末設置について、証券取引法における外国証券取引所による国内への端末設置と同様の規定を整備することとする。
(金融先物取引法第55条の2~第55条の12関係)
4. 罰則
所要の罰則規定を整備することとする。
(金融先物取引法第94条の3~第95条、第97条、第98条、第100条~第102条、第104条、第104条の2関係)
5. その他
その他所要の規定を整備することとする。
六 商工組合中央金庫法、農業協同組合法、水産業協同組合法、中小企業等協同組合法、信用金庫法、労働金庫法及び農林中央金庫法の一部改正(第6条~第12条関係)
協同組織金融機関が営む有価証券の売買等に係る書面取次ぎに関する規定の整備等、
所要の規定の整備を行うこととする。
七 社債等の振替に関する法律の一部改正(第13条関係)
加入者保護信託制度における加入者への支払に係る所得税法等の適用に関する所要の規定の整備を行うこととする。
八 その他
1. 施行期日
この法律は、平成十六年四月一日から施行することとする。ただし、次に掲げるものは、それぞれ定める日とする。
(1)証券取引法及び金融先物取引法等の所要の改正規定 この法律の公布の日
(2)協同組織金融機関の有価証券の売買等に係る書面取次ぎに関する規定、社債等の振替に関する法律の一部改正 この法律の公布の日から一月を経過した日
2. 経過措置等
(1)所要の経過措置等を定めることとする。
(2)証券取引法等の改正に伴い、関連法律の改正を行うこととする。