銀行法等の一部を改正する法律要綱
最近における銀行業、保険業その他の金融業等を取り巻く社会経済情勢の変化に対応し、銀行等の健全かつ適切な経営を確保しつつ、我が国金融の活性化を図るための環境を整備する必要性に鑑み、銀行等の株主に関する制度整備を行うとともに、金融における新たなビジネスモデルに対応した環境整備を図るため、銀行法、保険業法、信用金庫法、労働金庫法、協同組合による金融事業に関する法律、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律その他の関係法律について、所要の規定の整備を行うこととする。
一 銀行法の一部改正(第1条関係)
1. 定義
銀行の発行済株式の総数の百分の二十(内閣府令で定める要件に該当する者にあっては百分の十五。以下「主要株主基準値」という。)以上の数の株式の所有者(他人名義の所有を含む。)であって、認可を受けているものを「銀行主要株主」とする等、所要の整備を行うこととする。
(銀行法第2条関係)
2. みなし銀行主要株主
法人に準じる団体や銀行を連結対象とする会社等の株式の所有についてのみなし規定を設けることとする。
(銀行法第3条の2関係)
3. 需給調整規定の廃止
銀行の免許審査における需給調整規定を廃止することとする。
(銀行法第4条関係)
4. 取締役の適格性
銀行の常務に従事する取締役は、銀行の経営管理を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者でなければならないこととする。
(銀行法第7条の2関係)
5. 営業所の設置等
銀行の日本における営業所の設置、位置の変更等について認可制を届出制とすることとする。
(銀行法第8条関係)
6. 特定関係者との間の取引等
不利益取引等の規制対象となる特定関係者に銀行主要株主を加えることとする。
(銀行法第13条の2関係)
7. 銀行の子会社の業務範囲等
銀行の子会社に関し、従属業務と金融関連業務の兼営を認めることとする。
(銀行法第16条の2関係)
8. 特定取引勘定
特定取引勘定の設置に係る認可を廃止することとする。
(銀行法第17条の2関係)
9. 外国銀行の免許等
外国銀行に係る支店ごとの免許制を廃止し、外国銀行が日本において銀行業を営もうとするときは、主たる外国銀行支店を定めて内閣総理大臣の免許を受けた場合には、従たる外国銀行支店の設置等については認可を受け、位置の変更等については届け出ることとする。
(銀行法第47条、第47条の2、第49条関係)
10. 株主
(1)銀行の株式所有に係る届出等
○銀行又は銀行持株会社の発行済株式の総数の百分の五を超える数の株式所有者は、銀行株式所有届出書を提出しなければならないこととし、銀行株式所有届出書に記載すべき重要な事項の変更があった場合には、変更報告書を提出しなければならないこととする。
(銀行法第52条の2~第52条の4関係)
○銀行株式所有届出書又は変更報告書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている疑いがあると認められるときには、報告等の徴求や立入検査を行うことができることとする。
(銀行法第52条の7、第52条の8関係)
(2)銀行主要株主に係る認可等
○銀行の主要株主基準値以上の数の株式の所有者になろうとする者は、あらかじめ認可を受けなければならないこととする。
(銀行法第52条の9、第52条の10関係)
○銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため、特に必要があると認められるときは、その必要の限度において、銀行主要株主に対して、当該銀行の業務又は財産の状況に関し参考となるべき報告等の徴求や立入検査を行うことができることとする。
(銀行法第52条の11、第52条の12関係)
○銀行主要株主が、認可の基準に適合しなくなったときは、当該基準に適合させるために必要な措置をとるべき旨の命令をすることができることとする。
(銀行法第52条の13関係)
○銀行の発行済株式の総数の百分の五十を超える数の株式を所有する銀行主要株主に対して、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、当該銀行の経営の健全性を確保するための改善計画の提出を求めること等ができることとする。
(銀行法第52条の14関係)
○銀行主要株主が法令等に違反したとき又は公益を害する行為をしたときは、認可の取消し等の措置を講じることができることとする。
(銀行法第52条の15関係)
11. その他所要の規定の整備を行うこととする。
二 長期信用銀行法の一部改正(第2条関係)
銀行法の改正に準じて、長期信用銀行主要株主及び子会社の業務範囲等につき、所要の規定の整備を行うこととする。
三 保険業法の一部改正(第3条関係)
1. 定義
保険会社の発行済株式の総数の百分の二十(内閣府令で定める要件に該当する者にあっては百分の十五。以下「主要株主基準値」という。)以上の数の株式の所有者(他人名義の所有を含む。)であって認可を受けているものを「保険主要株主」とする等、所要の整備を行うこととする。
(保険業法第2条関係)
2. みなし保険主要株主
法人に準じる団体や保険会社を連結対象とする会社等の株式の所有についてのみなし規定を設けることとする。
(保険業法第2条の2関係)
3. 取締役の適格性
保険会社の常務に従事する取締役は、保険会社の経営管理を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者でなければならないこととする。
(保険業法第8条の2関係)
4. 特定関係者との間の取引等
不利益取引等の規制対象となる特定関係者に保険主要株主を加えることとする。
(保険業法第100条の3関係)
5. 保険会社の子会社の業務範囲等
保険会社の子会社に関し、従属業務と金融関連業務の兼営を認めることとする。
(保険業法第106条関係)
6. 特定取引勘定
特定取引勘定の設置に係る認可を廃止することとする。
(保険業法第112条の2関係)
7. 株主
(1)保険会社の株式所有に係る届出等
○保険会社又は保険持株会社の発行済株式の総数の百分の五を超える数の株式所有者は、保険株式所有届出書を提出しなければならないこととし、保険株式所有届出書に記載すべき重要な事項の変更があった場合には、変更報告書を提出しなければならないこととする。
(保険業法第271条の3~第271条の5関係)
○保険株式所有届出書又は変更報告書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている疑いがあると認められるときには、報告等の徴求や立入検査を行うことができることとする。
(保険業法第271条の8、第271条の9関係)
(2)保険主要株主に係る認可等
○保険会社の主要株主基準値以上の数の株式の所有者になろうとする者は、あらかじめ認可を受けなければならないこととする。
(保険業法第271条の10、第271条の11関係)
○保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保護を図るため、特に必要があると認められるときは、その必要の限度において、保険主要株主に対して、当該保険会社の業務又は財産の状況に関し参考となるべき報告等の徴求や立入検査を行うことができることとする。
(保険業法第271条の12、第271条の13関係)
○保険主要株主が、認可の基準に適合しなくなったときは、当該基準に適合させるために必要な措置をとるべき旨の命令をすることができることとする。
(保険業法第271条の14関係)
○保険会社の発行済株式の総数の百分の五十を超える数の株式を所有する保険主要株主に対して、保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保するため特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、当該保険会社の経営の健全性を確保するための改善計画の提出を求めること等ができることとする。
(保険業法第271条の15関係)
○保険主要株主が法令等に違反したとき又は公益を害する行為をしたときは、認可の取消し等の措置を講じることができることとする。
(保険業法第271条の16関係)
四 信用金庫法の一部改正(第4条関係)
銀行法の改正に準じて、事務所の位置の変更等及び子会社の業務範囲の規定の整備を行うとともに、決算関係書類のうち附属明細書を総会の承認事項から報告事項とする等、所要の規定の整備を行うこととする。
五 労働金庫法の一部改正(第5条関係)
1. 事務所の位置の変更等
銀行法の改正に準じて、事務所の位置の変更等及び子会社の業務範囲等の規定の整備を行うとともに、決算関係書類のうち附属明細書を総会の承認事項から報告事項とする等の規定の整備を行うこととする。
2. 出資
合併等を行った労働金庫連合会の会員に関し、一会員の出資口数の限度に特例を設けることとする。
(労働金庫法第12条関係)
3. 役員
役員の選任について、代議員又は創立総会代議員以外の者の定数を緩和することとする。
(労働金庫法第34条関係)
4. 総代会
役員の選任及び合併等を総代会の議決事項とすることを可能とするとともに、総会と総代会の関係についての規定を設けることとする。
(労働金庫法第55条、第55条の2関係)
5. その他所要の規定の整備を行うこととする。
六 中小企業等協同組合法の一部改正(第6条関係)
信用協同組合について、組合員の資格や定款の変更の認可等について、所要の規定の整備を行うこととする。
七 協同組合による金融事業に関する法律の一部改正(第7条関係)
銀行法の改正に準じて、事務所の位置の変更等及び子会社の業務範囲の規定の整備を行うとともに、決算関係書類のうち附属明細書を総会の承認事項から報告事項とする等、所要の規定の整備を行うこととする。
八 商工組合中央金庫法の一部改正(第8条関係)
特定取引勘定の設置に係る認可を廃止することとする。
(商工組合中央金庫法第39条の3、第51条関係)
九 信託業法の一部改正(第9条関係)
信託会社が信託財産として所有する登録社債等及び登録国債につき、信託の公示に係る特例の対象となる登録の範囲を拡大することとする。
(信託業法第10条関係)
十 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律の一部改正(第10条関係)
銀行その他の金融機関が営むことができる業務から、政令で定めるものを除くこととするほか、所要の規定の整備を行うこととする。
(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第1条、第5条関係)
十一 宅地建物取引業法の一部改正(第11条関係)
信託業務を兼営する金融機関に対するこの法律の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定めることとする。
(宅地建物取引業法第77条関係)
十二 不動産特定共同事業法の一部改正(第12条関係)
信託業務を兼営する金融機関に対するこの法律の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定めることとする。
(不動産特定共同事業法第46条関係)
十三 証券取引法の一部改正(第13条関係)
特定取引勘定の設置に係る認可を廃止することとし、所要の規定の整備を行うこととする。
(証券取引法第29条の4、第53条関係)
十四 外国証券業者に関する法律の一部改正(第14条関係)
認可業務に係る認可の審査基準から特定取引勘定設置と同種類の勘定の設置を除くこととする。
(外国証券業者に関する法律第9条、第24条関係)
十五 その他
1. 施行期日
この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとする。ただし、上記一8、三6、八、九、十三及び十四並びに経過措置の一部等については公布の日から起算して 3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとする。
(附則第1条関係)
2. 経過措置等
(1)この法律の施行の際、現に免許を受けている外国銀行については、その免許が一であるものについては、施行日に改正後の銀行法(以下「新銀行法」という。)の規定に基づく免許を受けたものとみなし、その免許が二以上であるものについては、施行日までに主たる外国銀行支店を届け出た場合には、施行日に新銀行法の規定に基づく免許を受けたものとみなすこととする。
(附則第2条関係)
(2)この法律の施行の際、現に銀行、長期信用銀行又は保険会社の株式の所有者である者は、施行日にあらかじめ認可を受けなければならない取引等以外の事由により株式を取得したものとみなして、改正後の法律を適用することとする。
(附則第3条~第5条関係)
(3)その他所要の規定の整備を行うこととする。