「短期社債等の振替に関する法律」の概要

短期社債等の流通の円滑化を図るため、短期社債等の振替を行う振替機関及び短期社債等の発行、譲渡等に関し必要な事項を定めるための所要の措置を講ずる。

【振替機関】

  • 1. 通則

    • (1)指定要件の整理

      振替機関は、特別の法的効果を伴う口座簿の管理者としての適格性・信頼性を有し、かつ、振替業を安定的・継続的に遂行できる者である必要がある。

      このような観点から、振替機関の指定については、振替業を適正かつ確実に遂行するに足りる財産的基礎及び人的構成等を備える株式会社であること等の一定の水準に達していることを要件とする。

    • (2)最低資本金及び最低純資産額

      安定的かつ信頼性の高い証券決済システムの維持・運営の観点から、振替機関の財産的基盤の健全性を確保するため、振替機関の最低資本金及び最低純資産額を5億円を下回らない金額で政令で定める金額とする。

  • 2. 業務

    • (1)業務の範囲

      業務範囲が無制限に拡大し、その結果、財産的基盤に悪影響が生じるなどして振替業の適正かつ確実な遂行が困難となることを防止するため、振替機関の業務の範囲を振替業及び株券等保管振替法に規定する保管振替業等に限定する。ただし、振替業の関連業務で、振替業の遂行に支障を生ずるおそれがないとして主務大臣が承認した業務については兼業を可能とする。

    • (2)業務規程

      業務規程は、振替業の実施に関する基本的な規程であり、加入者及び発行者にも関係する振替制度の根幹となる重要なものであることから、そこで定めるべき事項を規定する。

    • (3)業務の規制

      振替業の公正な運営を確保するため、特定の加入者又は発行者に対し不当な差別的取扱いをすることを禁止する。

  • 3. 監督

    • (1)事故の報告等

      振替業の安定的な維持・運営の観点から、振替等に関する事故発生時における報告義務のほか、定款等の変更の認可、商号等の変更の届出義務など監督上必要な規定を設ける。

    • (2)業務移転命令

      振替機能を維持する観点から、債務超過に陥るおそれ等のある振替機関に対し、他の会社への振替業移転を命令できる旨の規定を設ける。この場合、円滑かつ迅速な処理を可能とするため、株主総会の特別決議の特例を設ける。

  • 4. 合併、分割及び営業の譲渡

    振替機関の適格性維持の観点から、振替機関を当事者とする合併、分割及び営業譲渡などの組織変更は認可制とする。

  • 5. 加入者

    • (1)加入者の範囲については、法律上、特段の制限を設けない。

    • (2)短期社債の権利関係は、振替機関が管理する振替口座簿の記録によるものとし、株券等保管振替法における顧客口座簿に相当する制度は設けない(単層構造)。

    • (3)振替機関の合併、分割及び営業譲渡における加入者の利益を保護する観点から、加入者集会に関する規定を設ける。

  • 6. 解散等

    振替業の円滑かつ迅速な結了を確保する観点から、解散等のような重大な決定については、これを認可制とする。

  • 7. 機関口座

    振替機関は、消却義務履行のため、機関口座を設けることができる。

  • 8. 雑則

    主務大臣が行う振替機関の指定の取消しに係る財務大臣への協議、この法律の主務大臣、内閣総理大臣の権限の金融庁長官への委任等について、所要の規定を設ける。

【短期社債等の振替】

  • 1. 通則

    短期社債(償還期間1年未満、各社債の金額1億円以上等の要件を満たす社債)についての権利の帰属は、原則として振替口座簿の記録により定まるものとする。この場合、社債券を発行することができないこととする。

  • 2. 振替口座簿

    振替口座簿に係る記録事項、新規記録手続、振替手続、抹消手続及び記録の変更手続につき、所要の規定を設ける。

  • 3. 振替の効果等

    • (1)短期社債の譲渡、質入れについて、振替の申請による、譲受人、質権者の口座における増額の記録を効力要件とする。

    • (2)短期社債に係る信託は、受託者の口座における信託財産である旨等の記録を第三者対抗要件とする。

    • (3)加入者は、その口座における記録がされた短期社債についての権利を適法に有するものと推定する。

    • (4)加入者は、悪意又は重大な過失があるときを除き、振替の申請により、その口座において増額の記録を受けた短期社債に係る権利を善意取得する。

    • (5)善意取得により、社債権者の有する短期社債の総額がその発行総額を超えることとなる場合において、振替機関が短期社債の消却義務を負うこととするほか、所要の規定を設ける。

  • 4. 短期社債の発行等に関する商法の特例

    短期社債については、取締役会決議により、発行可能期間等を定めた上で、個別の発行の特定の取締役への委任を可能とするほか、社債原簿制度、社債管理会社制度、社債権者集会制度等を設けない。

  • 5. 雑則

    振替口座簿に記録されている事項の証明及び短期社債に関する強制執行等につき、所要の規定を設ける。

  • 6. その他の短期社債等の振替

    短期社債以外の短期社債等の振替に関する所要の規定を設ける。

【その他】

  • 1. 罰則

    振替口座簿に係る虚偽記録等に関して、所要の罰則規定を設ける。

  • 2. 施行期日

    この法律は、平成14年4月1日から施行し、施行日以後に発行される短期社債等について適用する。

  • 3. 関係法律の整備

    • (1)頻繁に発行・償還が行われる短期社債等に適合するよう、発行登録制度における開示事項及び開示方法について、証券取引法の所要の整備を行う。

    • (2)銀行その他の金融機関が、付随業務として短期社債等を取り扱えるよう所要の規定の整備を図るほか、相互会社における「短期社債」の発行規定を設けるなど銀行法等の所要の整備を行う。

    • (3)特定目的会社における「特定短期社債」の発行規定の新設その他、資産の流動化に関する法律の所要の整備を行う。

  • 4. その他所要の規定を整備する。

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