金融規制の質的向上 ― ベター・レギュレーション ―

「ベター・レギュレーション」とは、より良い規制環境を実現するための金融規制の質的な向上を指します。金融庁は、この「ベター・レギュレーション」をこれからの金融行政における大きな課題として位置付けています。

(なぜ、いまベター・レギュレーションなのか?)

(1) 我が国金融・資本市場の国際競争力の強化

少子高齢化が進み人口減少時代の到来を迎える中、我が国経済が持続的発展を遂げるためには、高い付加価値を生み出す金融サービス業が経済の中核的な役割を果たす必要があります。金融規制の質は、規制の適用されるマーケットの競争力を左右する重要な要素であり、金融規制の質的向上に伴う我が国市場の競争力強化は、我が国市場を母国市場とする金融機関の活躍の場を広げ、利用者利便の向上につながります。

(2) 金融セクターを巡る局面の変化

「金融システムの安定」、「利用者の保護」、「公正・透明な市場の確立と維持」という金融行政の目的を巡る状況が大きな変化を遂げています。不良債権の処理が進んで金融システムへの不安が払拭される一方、利用者保護や市場の公正や透明性を巡る問題の顕在化を受けた官民を挙げての取組の結果、枠組みの整備や実態の改善が進んでいます。こうした流れを定着させ更に深化させるという現在の局面においては、各金融機関の自己責任と自助努力による様々な課題への取組みが重要であり、金融規制もまた、金融機関の自己責任を重視し、自助努力を促すように変わっていく必要があります。

(ベター・レギュレーションへの4つの柱)

第一の柱 : 「ルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督の最適な組合せ」

詳細なルールを設定し、それを個別事例に適用していくという「ルール・ベースの監督」と、いくつかの主要な原則を示し、それに沿った金融機関の自主的な取組みを促す「プリンシプル・ベースの監督」とを最適な形で組み合わせることによって、全体としての金融規制の実効性を確保していくことが重要です。その組合せの在り方を関係者の方々と議論していきたいと考えています。

第二の柱 : 「優先課題への効果的対応」
(リスク・フォーカス、フォワード・ルッキングなアプローチ)

金融システムに内在するリスクをできるだけ早く認識し、そのような重要課題への対応のために行政資源を効果的に投入していくというアプローチです。 そのためには、経済、市場の動向把握や、金融機関の戦略や活動についての正確な認識が重要であり、金融機関や市場参加者とのコミュニケーションを強化していく必要があります。

第三の柱 : 「金融機関の自助努力尊重と金融機関へのインセンティブの重視」

PDF金融検査評定制度バーゼル II 地域密着型金融など、金融規制の枠組みにはインセンティブ重視、自助努力尊重という方向性が既にかなり織り込まれています。金融セクターを巡る局面の変化で金融機関の自助努力の重要性が増しており、こうした枠組みを更に中身の濃いものにしていきたいと考えています。

第四の柱 : 「行政対応の透明性・予測可能性の向上」

金融庁では、検査監督上の着眼点などを定めた検査マニュアルや監督指針、各事務年度の検査方針、監督方針を公表しているほか、行政処分の基準の公表、ノーアクションレター制度の改善、ルールの解釈等についてのQ&Aの掲載など、透明性・予測可能性の向上に向けた様々な取組みをしてきています。関係者の意見も聞きながら、更に改善すべき点がないかどうかを検討していきます。

(ベター・レギュレーションに向けての5つの当面の具体策)

(1)  金融機関等との対話の充実

金融機関等との対話の充実は、金融機関等から見た行政対応の予測可能性の向上に資するだけでなく、当局にとっても、市場や金融セクターの動向を素早く把握する上で重要です。金融システムが抱える問題について官民が協同して解決策を探っていく上でも対話は必要不可欠です。

(2)  情報発信の強化

金融関連法令等の英訳の推進や内外のシンポジウム等への積極的な参加を通じて、金融行政に関する基礎的資料や時々の金融行政の考え方に国民や世界の関係者が容易にアクセスできる環境の整備を進めていきたいと考えています。

(3)  海外当局との連携強化

金融のグローバル化に対応し、規制・監督の国際的な整合性の確保や、グローバルなマーケットの動向の把握が重要となっており、各国の規制当局や国際機関と連携し適切に対応していきたいと考えています。

(4)  調査機能の強化による市場動向の的確な把握

マクロ経済や金融・資本市場の動向が金融機関の経営や金融システム全体の安定に与える影響について分析、把握するとともに、必要な監督上の対応を時を失せず講じられる体制を整備することが求められます。庁内の調査機能を強化するほか、市場関係者、日本銀行、外国監督当局等との対話・連携の促進を図っていきたいと考えています。

(5)  職員の資質向上

金融は非常に高い専門性が求められる分野であり、ベター・レギュレーションに向けての取組みを実現させていくためには、金融庁職員が金融技術の進展や市場の動向に遅れをとることのないよう、その資質の向上を図ることが前提となります。研修の充実、人事制度上の工夫、官民の人材交流など、様々な方策を検討していきたいと考えています。

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