証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第123号)

平成31年3月12日
証券監視委ウェブサイト
https://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

 

<目次>
1) 新着情報
2)市場へのメッセージ
1. CLSA証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
2. 最近の開示検査に基づく勧告について
・昭光通商株式会社に係る有価証券報告書等の虚偽記載
・トレイダーズホールディングス株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載
・株式会社ストリームにおける開示規制違反
・東邦金属株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載
・神栄株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載
3. 最近の取引調査に基づく勧告について
・ダイベア株式に係る相場操縦
・夢展望株式会社との契約締結者の社員から伝達を受けた者による内部者取引


1) 新着情報


◎AAA投資顧問株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190312-1.htm

◎FIP投資顧問株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190312-2.htm



2) 市場へのメッセージ



1. CLSA証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、平成31年1月25日、金融庁に対して、CLSA証券株式会社(以下本節において「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190125-1.htm

【事案の概要】

(1) 空売り規制違反等

当社は、外国に居住する法人顧客から受託した空売り注文について、当該空売りに係る有価証券について借入契約の締結その他の当該有価証券の受渡しを確実にする措置(以下本節において「決済措置」といいます。)が講じられていることを確認しないまま、長期間にわたり多数の空売り注文を執行していました。また、当該注文の執行に際して、これらの決済措置に係る有価証券の調達先についても確認していませんでした。こうした杜撰な空売り注文の受注・執行態勢により、当社が行った空売りについて、当社と顧客との間で多数の決済遅延が発生していました。

(2) 売買管理態勢の不備

当社は、実勢を反映しない作為的な相場を形成させるべき行為を防止するための売買審査について、売買審査を行うべき取引を著しく狭く限定するとともに、抽出された取引についても、実質的な売買審査を行っていませんでした。

また、当社において売買審査を行うべき取引を抽出するためのシステムには、当社が受託した取引の一部が取り込まれておらず、売買審査を行う上で必要となるデータそのものが不足している状況が認められました。

(3) 問題の背景

当社は収益拡大に積極的に取り組む一方、第一種金融商品取引業者に課せられている市場のゲートキーパーとしての役割をほとんど意識しない業務運営を行っていました。また、コンプライアンス部門においても、営業部門に過度に配慮し、法令等遵守態勢に問題意識を持ちながらも必要な措置を講じておらず、さらに、経営陣においても、決済遅延の発生状況や、不適切な売買管理態勢の状況を認識しながら長期間にわたって黙認し、特段の措置を講じていない状況が認められました。

このように、投資者保護上問題のある業務運営については、今後も厳正に対処していきます。

なお、当社に対しては、平成31年2月1日に、金融庁から業務改善命令の行政処分が発出されています。
https://www.fsa.go.jp/news/30/shouken/20190201-1.html
 



2. 最近の開示検査に基づく勧告について

証券監視委は、開示検査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。

・H30.12.14 昭光通商株式会社に係る有価証券報告書等の虚偽記載
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181214-1.html

・H30.12.18 トレイダーズホールディングス株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181218-1.html

・H30.12.18 株式会社ストリームにおける開示規制違反
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181218-2.html

・H31.1.18 東邦金属株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190118-1.html

・H31.1.22 神栄株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190122-1.html
 



・昭光通商株式会社に係る有価証券報告書等の虚偽記載

【事案の概要】

昭光通商株式会社(以下本節において「当社」といいます。)は、当社の連結子会社(以下本節において「A社」といいます。)による炭化ケイ素等の架空取引による売上の過大計上や貸倒引当金の不計上のほか、当社によるA社の連結子会社化に伴い発生したのれんの減損損失の不計上等の不適正な会計処理を行いました。これにより、当社は、過大な当期純利益や純資産等を計上した連結財務諸表を記載した有価証券報告書等を提出しました。

なお、当社は、平成29年4月25日、これらの連結財務諸表を訂正する訂正報告書を提出しています。

【不適正な会計処理の概要】

当社が行った不適正な会計処理の概要は下記(1)及び(2)のとおりです。

(1) 売上の過大計上(A社が行った架空取引による架空売上の計上)

A社は、同一の者が代表取締役を務めるB社及びC社との間で、次のア~ウの取引を行ったように見せかけていました。

ア.B社は、仕入れた炭化ケイ素等をA社に販売し、
イ.A社は、当該炭化ケイ素等をC社に販売し、
ウ.C社は、当該炭化ケイ素等をエンドユーザーに販売する。

しかしながら、B社が炭化ケイ素等をA社に販売した事実、A社が炭化ケイ素等をC社に販売した事実及びC社が炭化ケイ素等をエンドユーザーに販売した事実は存在せず、その一方で、C社からA社に対する資金の移動、A社からB社に対する資金の移動及びB社からC社に対する資金の移動の事実が認められたことから、これらの取引は架空取引(資金循環取引)であると考えられます。

当社は、このようなA社による架空取引に基づき、架空売上を計上し、その結果、売上の過大計上を行いました。

 なお、ア~ウの架空取引により増加したA社のC社に対する売掛金残高(炭化ケイ素等の販売代金)を減少させるため、上記取引と逆の資金の流れになる架空取引も行われていました。

(2) 貸倒引当金の不計上等及びのれんに係る減損損失の不計上

[1] 貸倒引当金の不計上等

上記(1)の架空取引に基づくA社のC社に対する債権(A社からC社に対する炭化ケイ素等の販売代金に相当)等については、営業取引から生じたものではないことから、例えば「未収入金」などといった科目で計上するべきところ、当社は、売掛金として計上していました。

これらの債権について、B社及びC社の財務状況を考慮するとそもそも回収が見込めず、また、B社及びC社は架空取引の中で循環されていた資金をA社への返済に充てていたこと等を踏まえれば、当社は、当該未収入金に係る貸倒引当金を計上すべきであったと考えられますが、計上していませんでした。

[2] 当社によるA社の連結子会社化に伴い発生したのれんに係る減損損失の不計上

当社は、平成26年1月、A社を連結子会社にするとともに、発生したのれん(約4億円)を計上しました(当社は、収益力向上等を目的に、当時約3億円の純資産であったA社を7億円で購入しました。)。

しかしながら、売上の過大計上(前記(1))や貸倒引当金の不計上等(前記(2)[1])のA社に係る不適切な会計処理を適正に処理した上で、改めてA社の純資産を計算した場合、当社の連結子会社となった時点でのA社は債務超過(約マイナス3億円)であったと認められ、のれんは10億円に上るものと考えられます(当社は、マイナス3億円の純資産であったA社を7億円で購入したこととなります。)。

このような中で、A社が計上していた売上の多くは、前記(1)に記載した架空取引によるものであったことから、A社の売上は実際には連結前に想定していたものよりも低いものであり、A社を連結子会社化したことにより発生したのれんの回収可能性は極めて低い状態であったと考えられます。このため、当該のれんについては、全額減損損失を計上すべきであったと考えられますが、計上していませんでした。

【不適正な会計処理が行われた原因・背景】

○ 検査の結果、下記[1]~[3]が本件の不適正な会計処理が行われた原因・背景であると考えられます。

[1] 当社は、A社買収時において、A社の取引の大部分はB社及びC社を相手方とする取引であると認識していたにもかかわらず、A社の取引実態に係るデュー・ディリジェンスを十分に実施していませんでした。

[2] 当社の社内規程上、子会社の運営管理は所管本部が行うこととされていたにもかかわらず、当該所管本部は、子会社に対する調査・報告徴求等の権限を有しておらず、実質的にA社の経営を管理する機能を有していませんでした。

[3] 当社において、B社及びC社との取引はリスクの高い取引として分類されていましたが、従前からの取引経緯等を踏まえ、本件(架空)取引の継続が決定されており、リスクに比べて過剰な取引を行っている状態となっていました。

○ また、当社は、平成27年に当社の海外子会社において架空取引が発覚したことを踏まえ、海外子会社における取引に係る内部調査を行い、再発防止策を実施しました。しかし、当該内部調査においては、国内子会社の取引実態・商流等が対象とされておらず、その管理・点検が網羅的に実施されていなかったことから、本件架空取引を早期に発見することができませんでした。
 



・トレイダーズホールディングス株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載

【事案の概要】

トレイダーズホールディングス株式会社(以下本節において「当社」といいます。)は、再生可能エネルギー関連事業を行う関連会社A社を株式交換により連結子会社とした際に発生したのれんの減損損失を計上しなかったほか、A社の事業に係る売上及び棚卸資産の過大計上を行うなど、不適正な会計処理を行いました。これらにより、当社は、過大な親会社株主に帰属する当期純利益や純資産等を計上した連結財務諸表を記載した有価証券報告書等を提出したほか、当該有価証券報告書等を組込情報とする有価証券届出書を提出し、当該有価証券届出書に基づく募集により新株予約権証券を取得させました。

【不適正な会計処理の概要】

当社が行った不適正な会計処理の概要は次の(1)~(3)のとおりです。

(1) A社を連結子会社とした際に発生したのれんの減損損失の不計上

当社は、平成27年12月、関連会社であったA社を株式交換により連結子会社としました。

A社は、平成27年4月、国内大手の産業ガス関連事業会社B社との間で、木質バイオマス発電装置(以下本節において「発電装置」といいます。)を設置して引き渡す内容の売買契約(以下本節において「本件契約」といいます。)を締結していました。本件契約が締結されていたことを踏まえ、当社は、A社について、連結子会社とした時点(平成27年12月)で債務超過ではあったものの、将来的な収益力が高いと判断し、A社の株式価値(企業価値)を高く評価しました。その結果、当社は、A社を連結子会社とした後、当該A社株式の取得価額とA社の純資産額との差額をのれんとして資産計上しました(以下本節において「本件のれん」といいます。)。

当社は、本件契約に基づく発電装置の設置工事を完了させることでA社の実績を作り、その実績をもって他の案件の受注等を拡大させることで、A社の将来的な収益を拡大させていくという事業計画を立てていました。

しかしながら、その後、本件契約で求められた発電装置の設置工事をA社は完了できなかったことから、平成29年7月末に本件契約は解除されることとなりました。これにより、

・本件契約に基づく発電装置の設置工事を完了させるという実績が作れなかったことから、A社の将来的な収益力を拡大させていくための当社の計画が崩れること

・A社は平成29年3月期に営業損失を出していたところ、本件契約の解除により、平成30年3月期も営業損失となり、2年連続して営業損失を計上する見込みとなったこと

等、本件のれんに係る減損の兆候が生じる状態となりました。

加えて、平成29年6月には、試験的に稼動していた発電装置において発火事故が発生し、運転停止に至るなど、本件契約の解除の原因となる事象が、平成29年6月第1四半期末時点においても認識されていました。

このため、当社は、平成29年6月第1四半期において、平成29年7月末の本件契約解除を修正後発事象としたうえで、本件のれんに係る減損の兆候を認識し、減損損失を計上すべきであったと考えられます。

しかしながら、当社は、A社の将来的な収益力は大幅に低下するものではないと判断し、本件のれんに係る減損会計の適用について検討を行わず、平成29年6月第1四半期において計上すべきであった本件のれんに係る減損損失を計上しませんでした。

(2) 本件契約による発電装置の設置工事に係る売上の過大計上

A社は、本件契約による発電装置の設置工事に係る会計処理において、工事進行基準を採用しており、決算日時点における本件契約による発電装置の設置工事の進捗度合い(決算日までに発生した工事原価(費用)を工事原価総額で除した割合)に応じて、工事から発生する売上及び費用を見積もり、計上していました。

A社は、本件契約で求められた発電装置の設置工事が予定通りに進まず、納期を延長する必要があったこと等から、将来的に、当該設置工事を完了させるまでに追加的な費用(工事原価)が発生すると見込んでいました。しかしながら、A社は、工事進捗度の算定の中で当該追加的な費用の一部を故意に認識しないことにより 、あたかも実際よりも工事が進行していると見せかけ(工事進捗度の水増し)、結果、設置工事からの売上の過大計上を行いました。

(3) A社の発電装置に係る棚卸資産の過大計上

[1] 前記(1)のような状況の下で、本件契約で求められる発電装置を完成させる目処が立っていなかったことを踏まえると、当社は、平成29年6月第1四半期において、当該発電装置に係る減価償却を行うべきであったが、これを行わず、結果、棚卸資産の過大計上を行いました。

[2] 本件契約の解除後、A社は、本件契約に係る発電装置を材料・構成機器等に解体した上で、他の案件に転用するため、棚卸資産として倉庫に保管することとしました。

当該発電装置に係る材料・構成機器等は、中古品であり、合理的な価額の算定が困難であったため、これら材料・構成機器等を棚卸資産として計上するに当たって、中古品であることや経年劣化等を踏まえた評価の切り下げを行う必要があったほか、他の案件に転用する際に発生が見込まれる費用(補修費用や輸送費用等)を減額控除すべきであったと考えられます。

しかしながら、A社は、当該発電装置に係る材料・構成機器等を取得価額のまま棚卸資産として計上したため、棚卸資産の過大計上となりました。

【不適正な会計処理が行われた原因・背景】

検査の結果、以下の[1]及び[2]が本件の不適正な会計処理が行われた原因・背景であると考えられます。

[1] 当社は、財務部門の役職員に対して、A社のような新規の事業分野に関する財務関連知識を習得させる機会を設けず、また、会計的な知識を有していない取締役に財務部門を管掌させていたこと等から、財務部門における役職員の知識・経験が不足していました。そのため、新規の事業分野に関する会計処理を適切に行うための体制整備が不十分でした。

[2] 当社取締役は、A社の事業分野に対する知見が乏しかったことから、A社がB社との契約期限内に発電装置を完成できなかったこと等、A社の事業に係る管理監督を適切に行っておらず、当社の子会社管理が機能不全でした。
 



・株式会社ストリームにおける開示規制違反

【事案の概要等】

株式会社ストリーム(以下本節において「当社」といいます。)は、平成26年1月14日、関東財務局長に、有価証券届出書(新株予約権証券の募集(第三者割当))を提出しました。

その後、当該届出の効力が生ずる平成30年1月30日の前に、当該有価証券届出書について、以下(1)~(3)に掲げる「記載すべき重要な事項の変更」があったにもかかわらず、当社は、提出すべき訂正届出書を提出しないで、募集を行い、新株予約権証券を投資家に取得させました。

(1) 新株予約権の割当予定先の変更

当社は、平成26年1月14日に有価証券届出書(以下本節において「本件有価証券届出書」といいます。)を提出し、新株予約権証券(以下本節において「本件新株予約権」といいます。)の募集(第三者割当)を行うこととしていました。本件有価証券届出書には、本件新株予約権の割当予定先として「Licheng (H.K.) Technology Holdings Limited」(以下本節において「リシェン社」という。)と記載されていました。

その後、当該届出の効力が生ずる前の平成26年1月25日に、リシェン社とAとの間で、次の[1]~[3]の内容を含む投資協議書が締結されました。

[1] Aが本件新株予約権の実際の権利者となり、リシェン社は本件新株予約権の名義上の保有者としてAの代わりに保有すること。

[2] リシェン社が本件新株予約権の取得代金(約900万円)を立替払いした後、Aがリシェン社に当該取得代金相当額を返済すること。

[3] Aは、取得した本件新株予約権の行使時期を決定するものとし、その際、本件新株予約権の行使代金をリシェン社の口座に入金すること。

当該投資協議書の締結後、[2]のとおり、Aは、リシェン社に対して本件新株予約権の取得代金相当額(約900万円)を返済し、[3]の通り、最終的に、Aが取得した本件新株予約権の行使代金について、Aはリシェン社に返済していること等を踏まえれば、[1]のとおり、Aが本件新株予約権の実際の権利者となったと認められます。

したがって、当該投資協議書の締結により、本件新株予約権の割当予定先はリシェン社からAに変更されたものと認められます。

(2) 株券等の保有方針の変更

本件有価証券届出書において、割当予定先をリシェン社と記載するとともに、「株券等の保有方針」として、本件新株予約権の「割当予定先の保有方針につきましては、少なくとも2年以上の中長期にわたる期間、当社株式を保有する旨の説明を(中略)口頭にて伺っております」と記載されていました。

一方で、前記(1)のとおり、本件新株予約権の割当先となったAは、債務返済に窮している中、実際に本件新株予約権の取得・行使により得た当社株式の大半を売り抜いていたこと等から、本件新株予約権の行使により取得する当社株式を短期的に高値で売り抜ける意図を有していたものと考えられます。

したがって、前記(1)のとおり、平成26年1月25日に投資協議書が締結され、本件新株予約権の割当予定先がリシェン社からAに変更されたことに伴い、本件新株予約権に係る割当先における保有方針についても、Aの保有方針に変更しなければならないものと認められます。

(3) 総議決権数に対する所有権議決権数の割合の変更

本件有価証券届出書の「第三者割当実施後の大株主の状況」において、「劉 海涛」の「割当後の総議決権数に対する所有議決権数の割合(%)」が「29.58%」と記載されていました。

「第三者割当実施後の大株主の状況」については、他人名義で所有している株式数を含めた実質所有による割合を記載しなければならないこと等から、「劉 海涛」の「割当後の総議決権数に対する所有議決権数の割合(%)」は「29.58%」から「42.79%」に変更しなければならないものと考えられます。
 



・東邦金属株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載

【事案の概要】

東邦金属株式会社(以下本節において「当社」といいます。)は、炭化ケイ素等の架空取引により、売上の過大計上及び貸倒引当金の不計上といった不適正な会計処理を行いました。これにより、当社は、過大な当期純利益等を計上した財務諸表を記載した有価証券報告書等を提出しました。

【不適正な会計処理の概要】

当社が行った不適正な会計処理の概要は下記(1)及び(2)のとおりです。

(1) 売上の過大計上(架空取引による架空売上の計上)

当社は、同一の者が代表取締役を務めるA社及びB社との間で、次のア~ウの取引を行ったように見せかけていました。

ア.A社は、仕入れた炭化ケイ素等を当社に販売し、
イ.当社は、当該炭化ケイ素等をB社に販売し、
ウ.B社は、当該炭化ケイ素等をエンドユーザーに販売する。

しかしながら、上記ア、イ及びウの取引が行われた事実は存在せず、その一方で、B社から当社への資金の移動、当社からA社への資金の移動及びA社からB社への資金の移動の事実が認められたことから、これら取引は架空取引(資金循環取引)であると考えられます。

当社は、このような架空取引に基づく架空売上を計上することにより、売上の過大計上を行いました。

(2) 貸倒引当金の不計上等

上記(1)の架空取引に基づく当社のB社に対する債権(架空取引上の当社がB社から受け取ることになる販売代金に相当)については、営業取引から生じたものではなく取引実態の無い資金提供に過ぎないものであることから、例えば「未収入金」などといった科目で計上するべきところ、当社は、売掛金として計上していました。

この当社のB社に対する債権については、B社の財務状況からはそもそも回収が見込めめず、また、B社は架空取引の中で循環されていた資金(A社からB社への還流資金)を当社への返済に充てていたこと等を踏まえれば、当社は、当該未収入金のうち、少なくとも、A社に対して支払うとされていた仕入代金を控除した部分に関しては、貸倒引当金を計上すべきであったと考えられますが、計上していませんでした。

【不適正な会計処理が行われた原因・背景】

検査の結果、下記[1]及び[2]が本件の不適正な会計処理が行われた原因・背景であると考えられます。

[1] 当社は、業績不振が続いていた中で、新規取引先の開拓等の経営改善に対するプレッシャーが相当程度ありました。

[2] 当社は、新規事業として不慣れな炭化ケイ素等の取引を行うに当たって、取引の実在性、既存の商流に当社が介在することの合理性、取引先の信用情報等について、十分な検証を行っていませんでした。
 



・神栄株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載

【事案の概要】

神栄株式会社(以下本節において「当社」といいます。)の海外連結子会社(以下本節において「A社」といいます。)は、自社の売上を増加させるため、A社の取引先であるB社及びその関係会社(以下本節において「B社等」といいます。)や当社の国内連結子会社(以下本節において「C社」といいます。)等との間で、服飾雑貨製品等の架空取引による売上の過大計上や、A社のB社等に対する滞留売掛金に係る貸倒引当金を計上しないなど、不適正な会計処理を行いました。これらにより、当社は、過大な親会社株主に帰属する当期純利益等を計上した連結財務諸表を記載した有価証券報告書等を提出しました。

【不適正な会計処理の概要】

当社が行った不適正な会計処理の概要は下記(1)~(4)のとおりです。

(1) 名義変更による滞留売掛金の隠蔽

A社は、自社の売上を増加させるため、B社と取引を拡大させていましたが、B社における業績悪化等のため、A社は、B社に対する売掛金を回収することができず、滞留売掛金が発生し、与信枠が超過しました。そこで、A社は、B社の関係会社に対して新たに与信枠を設定のうえ、一部の取引名義をB社からB社の関係会社に変更し、B社に対する滞留売掛金の発生を隠蔽しました。この結果、当社は、当該滞留売掛金に係る貸倒引当金について、本来は計上するべきところ、計上していませんでした。

(2) A社・B社等・C社間の架空取引

A社は、C社の資金を利用してB社に対する滞留売掛金を回収するため、A社・B社等間の取引の商流にC社を加えることとしました。当該取引において、C社は、B社代表者から紹介された取引先(以下本節において「D社」といいます。)から商品を仕入れ、当該商品をB社等に対して販売する取引を行ったとしていました。しかしながら、当該取引における商品の実在性は確認できず、当該取引は架空取引であったと考えられます。

当該架空取引において、商品は実在しなかった一方、以下ア~ウに掲げる資金循環は行われており、この結果、A社のB社等に対する滞留売掛金の回収に充てられていました。当社は、当該滞留売掛金に係る貸倒引当金について、本来は計上するべきところ、計上していませんでした。

ア.商品の仕入代金とみせてC社からD社に資金が移動し、
イ.当該資金はD社からB社等に還流し、
ウ.A社のB社等に対する滞留売掛金の回収に充てられていた。

同時に、当社は、C社からB社等に対する架空売上を計上することにより、売上の過大計上を行いました。

(3) A社・B社等間の架空取引

A社は、(1)の取引を継続する中で、B社の関係会社(以下本節において「E社」といいます。)に対する与信枠も超過し、滞留売掛金が発生したことから、当該滞留売掛金を隠蔽するため、E社から商品を仕入れ、当該商品を他のB社の関係会社(以下本節において「F社」といいます。)に販売する取引を行ったとしていました。しかしながら、当該取引における商品の実在性は確認できず、当該取引は架空取引であったと考えられます。

当該架空取引により、A社は、E社から架空仕入を行い、架空買掛金を計上し、この計上分をE社に対する滞留売掛金と相殺させることで、滞留売掛金の減少を偽装しました。この結果、当社は、当該滞留売掛金に係る貸倒引当金について、本来は計上するべきところ、計上していませんでした。

同時に、当社は、A社からF社に対する架空売上を計上することにより、売上の過大計上を行いました。

(4) A社・B社・G社間の架空取引

A社は、上記の架空取引を行った後も、滞留売掛金が発生したことから、B社代表者からの提案により、B社から商品を仕入れ、当該商品をG社に販売する取引を行ったとしていました。しかしながら、当該取引における商品の実在性は確認できず、当該取引は架空取引であったと考えられます。

当該架空取引により、A社は、B社から架空仕入を行い、架空買掛金を計上し、この計上分をB社に対する滞留売掛金と相殺させることで、滞留売掛金の減少を偽装しました。この結果、当社は、当該滞留売掛金に係る貸倒引当金について、本来は計上するべきところ、計上していませんでした。

同時に、当社は、A社からG社に対する架空売上を計上することにより、売上の過大計上を行いました。

【不適正な会計処理が行われた原因・背景】

検査の結果、下記[1]~[4]が本件の不適正な会計処理が行われた主な原因・背景であると考えられます。

[1] 当社は、海外グループ会社の現地化を進めた結果、A社における日本人駐在員が代表者1名のみとなる中で、当該代表者自らが営業及び管理業務を行っており、A社における内部牽制機能が不全でした。

[2] C社は、本件不正取引が行われた際に、大量の商品が多額に取引されている等の不適切な点を認識していましたが、元C社代表取締役であり、B社の代表者との取引を開始した執行役員繊維部長の意に反してまで、改善策及び調査の実施等を行うことが出来ませんでした。

[3] 当社の総務・審査部において、連結子会社の取引先も含めて各取引先に対する与信枠の設定を審査していたものの、与信枠が各社の代表者の権限内の金額内に収まっているかといった形式的な審査にとどまり、与信先のリスクを踏まえた与信枠の設定といった実態を踏まえた検討を行っていないなど、当社における内部牽制機能が不全でした。

[4] 当社の内部監査では、本件不正取引において基本取引契約書がないこと等について指摘は行うものの、その原因究明を行っていませんでした。また、監査役監査においても、滞留売掛金に係る管理の不備を指摘していましたが、その原因究明を行っていませんでした。このように、当社は、A社の問題点に気付きながらも、A社内の牽制機能が機能していないことを認識しておらず、また、A社の財務的な規模も小さいことから問題点の究明は行われていませんでした。
 



3. 最近の取引調査に基づく勧告について

証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。

・H31.1.11 ダイベア株式に係る相場操縦
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190111-1.htm

・H31.1.11 夢展望株式会社との契約締結者の社員から伝達を受けた者による内部者取引
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190111-2.htm
 



・ダイベア株式に係る相場操縦

【事案の概要】

本件は、インターネットで株取引を行っていた個人投資家が、ダイベア株式の売買を誘引する目的をもって、直前の約定値より高指値の売り注文と買い注文を対当させて株価を引き上げるなどの方法により、自己の計算において

[1] 同株式の株式併合前(平成29年10月1日付けで2株を1株に併合、実務上の効力発生日は同年9月27日)である平成29年9月2日午後2時50分頃から同月26日までの間、同株式合計20,000株(株式併合後10,000株)を買い付ける一方、同株式合計27,000株(株式併合後13,500株)を売り付け、

[2] 同株式の株式併合後である平成29年9月27日から同年10月19日午後3時頃までの間、同株式合計32,900株を買い付ける一方、同株式合計30,400株を売り付け、

約94万円の売買差益を得たという事案です。

【事案の特色等】

課徴金納付命令対象者(以下本節において「対象者」といいます。)は、対当売買による株価引上げ、終値関与といった相場操縦の手法により、違反行為期間中、自らが買い付けた株式につき、[1]翌日の寄付き前に、前日の終値以上の指値で売り注文を発注し、寄付きや寄付き直後に売り抜けたり、[2]対当売買による株価引上げの過程で、他の投資家から高値の買い注文が発注されると売り抜けるといった手法で、買い付けた価格よりも高値で売り抜けていました。違反行為期間中、対当売買による株価引上げについては95回、終値関与については7取引日で行っていました。

また、対象者は、対当売買が受託証券会社に発覚することを避けるために、3証券口座を使用し、売り注文と買い注文を異なる証券会社から発注していました。

証券監視委は、これまでに相場操縦規制違反について多数の告発・勧告を行ってきたところですが、相場操縦規制違反は後を絶たない状況にあり、その要因・背景としては以下のようなものが考えられます。

・インターネット取引の普及及び発注システムの進歩等により、個人投資家であっても、迅速かつ大量の発注・取消が可能となっているため、見せ玉等の手法を用いて人為的に相場を変動させれば、容易に売買差益を稼げる、又は損失回避を図ることができるとの誘惑

・市場では膨大な取引が行われているため、個人が行う小規模の相場操縦行為までは市場監視の目も届かないだろうとの誤解

相場操縦行為は証券市場の公正性・健全性を損なうものであり、証券監視委は、証券市場に対する投資家の信頼を確保するため、厳正な調査を実施しており、調査の結果、法令違反が認められた場合には、課徴金勧告や刑事告発を行っています。

本件が広く周知されることにより、相場操縦の抑止効果が発揮されることを期待しています。

 



・夢展望株式会社との契約締結者の社員から伝達を受けた者による内部者取引

【事案の概要】

本件は、夢展望株式会社(以下本節において「夢展望」といいます。)が平成29年5月16日に公表した、夢展望の個別経常利益及び個別当期純利益に係る業績修正に関するインサイダー取引です。

課徴金納付命令対象者は、夢展望と業務委託契約を締結している法人に勤務していた社員から、夢展望の平成28年4月1日から平成29年3月31日までの事業年度(以下本節において「平成29年3月期」といいます。)の個別経常利益及び個別当期純利益について、平成28年5月13日に公表された前事業年度の実績値に比較して、平成29年3月期の決算において、投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとなる差異が生じた旨の重要事実(以下本節において「本件事実」といいます。)の伝達を受けながら、本件事実の公表前に、自己の計算において、夢展望株式を買い付けたものです(インサイダー取引違反行為)。

会社関係者は、金融商品取引法に規定されており、上場会社に勤務している役職員がその職務に関し知ったときだけではなく、上場会社と契約を締結(交渉)している法人の役職員が、当該契約の履行(交渉)に関し知ったときも、会社関係者となります。本件のように、上場会社の役職員から直接重要事実を聞いていなくても、会社関係者に該当する者から重要事実を聞いた場合、第一次情報受領者としてインサイダー取引規制の対象となります。

本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。

*******************
<発 行>
証券取引等監視委員会 事務局総務課
(情報公開・個人情報保護係)
〒100-8922
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)
証券監視委25周年記念映像はこちら↓
https://www.youtube.com/watch?v=Y2wahfg5hIM
*******************

サイトマップ

ページの先頭に戻る