【トピックス】

「金融市場戦略チーム」第一次報告書の公表について

11月30日に「金融市場戦略チーム」(座長:髙尾義一・朝日アセットマネジメント常務執行役員)の第一次報告書が公表されました。

「金融市場戦略チーム」は、渡辺金融担当大臣の私的懇談会として、我が国の金融戦略を議論するため、民間の実務家等を中心に発足したもので、その後計10回にわたり、米国のサブプライム・ローン(信用力の劣る借り手に対する住宅ローン)問題に関する議論を行ってきました。その議論を踏まえ、今般、第一次報告書がとりまとめられたものです。

本報告書では、世界の金融資本市場や金融システムに影響を及ぼしているサブプライム・ローン問題の背景やその展開、問題点等を分析するとともに、グローバルな観点からの市場正常化に向けた道筋や、我が国として今後必要な施策についての提言が行われています。

サブプライム・ローン問題の背景としては、証券化等の金融技術の普及により、新しい金融仲介の在り方として、貸し手が市場を通じて原資産の信用リスクを投資家に分散させるというビジネスモデル(”originate-to-distribute” モデル)が広がる中、低金利と住宅価格上昇の継続への期待とがあいまって、信用リスクの移転や借換えを見込んで住宅ローン融資が十分な審査なく実行されていたことが挙げられています。そして報告書は、米国住宅市場の調整局面入りに伴うサブプライム・ローンの延滞率の上昇により、以下の3つの不確実性が顕現化した、と指摘しています。

  • (1)証券化により原資産のリスクが分散した結果、リスクの所在や規模の特定が困難となった(リスク所在の不確実性)

  • (2)サブプライム・ローン関連商品の格付けの急速な引下げにより証券化商品の格付全体への信頼が失われ、市場の価格形成機能が低下し、市場の規模や流動性が急激に縮小した(価格形成の不確実性)

  • (3)証券化商品に対する投資活動において見られた短期調達・長期運用というマチュリティのミスマッチに内在する流動性リスクが顕在化した(流動性の不確実性)

また、こうした不確実性の背景として証券化市場の各関係当事者(借り手、貸し手、証券化商品の組成者、格付会社、証券化商品の販売者、投資家)の問題点を分析するとともに、今後、証券化市場の関係当事者間の情報伝達の確保、金融機関や投資家によるリスク管理、格付会社のビジネスモデルや情報開示、証券化商品の価格評価、コンデュイット(導管体)等の連結・非連結の会計処理、といった広範囲な諸論点を国際会議や国際機関においてグローバルな視点から議論していくことが期待されるとしています。

更に、サブプライム・ローン問題による我が国の金融システムへの直接の影響はこれまでのところ限定的であるとしつつ、報告書は、この問題は我が国の金融行政の在り方や証券化市場の今後の発展のためにいくつかの教訓を残したと考えられるとして、我が国において必要な施策として以下の諸点について具体的な提言を行っています。

  • (1)監督当局における市場動向の把握、モニタリングの強化

  • (2)監督当局間の国際的な連携の強化

  • (3)証券化によるリスク移転を前提としたビジネスモデル(originate-to-distributeモデル)の問題への対応

  • (4)証券化商品の原債権の追跡可能性(トレーサビリティー)の確保

  • (5)十分なデータによる統計処理を前提とした証券化

  • (6)プリンシプルの提示とベスト・プラクティスの模索

  • (7)格付会社に対する適切な対応

  • (8)証券化商品の価格評価・会計処理に関する国際的な議論への参画


貸金業者向けの総合的な監督指針について

昨年12月20日に貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(以下、改正貸金業法という。)が公布されました。

改正貸金業法は、多重債務問題の解決と貸金業の健全化に資する措置を包括的に規定したものであり、個々の規制が強化されたのみならず、貸金業者に対し「業務の適切な運営を確保するための措置」が義務づけられ、業務改善命令が規定されるなど、資金需要者等の利益の保護を図るために十分な態勢の確保を求めることとしております。

こうした法律の規定内容を踏まえ、現在の行為規制中心の貸金業監督事務ガイドラインに替えて、監督事務の基本的な考え方、評価項目、事務処理上の留意点を体系的に整理して、より多面的な評価に基づく監督を行うことを目的に本監督指針を策定いたしました。

本監督指針は平成19年8月にパプリックコメントの手続きに付した後、11月7日に決定・公表し、12月19日から施行する予定です。

概要は以下のとおりです。

  • 1. 基本的考え方

    • 貸金業監督の目的

      登録制度、業務規制、自主規制団体の認可等を通じ、資金需要者等の利益の保護を図るとともに、健全な競争により市場メカニズムが機能する貸金市場の構築を促す。

    • 貸金業監督の基本的な枠組み

      • (1) 監督当局である国及び都道府県が連携し、利用者からの苦情等、監督情報の共有と集約を図る。

      • (2) 無登録業者及び悪質登録業者の徹底排除のため、警察当局との連携、協力を図る。

      • (3) 貸金業協会との連携及び役割分担、並びに非協会員への厳正な監督を通じ、全業者の業務の健全性を確保する。

    • 貸金業監督部局の基本的役割

      利用者からの苦情等も含め、継続的に監督情報の収集・分析を行い、業務の健全性や適切性に係る問題の発見に努めるとともに、自主的な問題改善の取組みを早期に促すことや、必要に応じ行政処分等の監督上の措置を行うことで、問題が深刻化する以前に改善のための働きかけを行っていく。

    • 貸金業者の監督に当たっての基本的考え方

      • (1) 検査部局との適切な連携

        • 監督部局と検査部局が、それぞれの独立性を尊重しつつ、適切な連携を図る。
      • (2) 貸金業者にかかる情報の積極的な収集

        • 資金需要者等からの苦情等を含め、貸金業者の経営に関する情報を的確に把握・分析する。
      • (3) 貸金業者の自主的な努力の尊重

        • 私企業であるか資金業者の自己責任原則に則った経営判断について、法令等に基づき検証し、問題が認められた場合は改善を促していく。
      • (4) 貸金業協会との連携及び非協会員に対する厳正な監督

        • 協会員に対して効率的で実効性ある監督を行うためには、法律に基づく監督責任は監督当局にあることに留意しつつ、貸金業協会との間で適切な役割分担と緊密な連携を図る。
        • 非協会員である貸金業者については、当局が貸金業協会の自主規制規則の水準に則した適切な社内規則等の制定を命ずるとともに、業務実態の把握に努め、その業務の厳正な監督に当たる。
      • (5) 効率的・効果的な監督事務の確保

        • 現在行っている監督事務の必要性や方法等について常に点検を行い、必要に応じて改善を図る。
  • 2. 監督に当たっての評価項目

    • 法令等遵守態勢等

      • 業績評価や人事考課等でのコンプライアンスの重視。
    • 禁止行為等

      • 資金需要者等に虚偽を告げることや不確実な事項について断定的判断の提供禁止など、禁止行為についての社内規則等の整備及び社内研修等による周知徹底。
    • 勧誘及び契約締結時の説明態勢

      • 説明責任等に関する社内規則等の整備及び社内研修等による周知徹底。
      • 適正な勧誘が履行される態勢の構築。
      • 保証人となろうとする者が、十分な時間的余裕を持ってあらかじめ保証契約の内容及びこれに伴う危険性について十分理解した上で契約を締結するための態勢整備。
    • 過剰貸付けの禁止(総量規制を円滑に施行するための措置)

      • 適正な与信審査が確保される態勢整備。
      • 顧客の借入意思確認等。
    • 広告規制

      • 貸金業協会に加入していない業者から提出された広告に係る資料については、貸金業協会の自主規制基準等を勘案した検証。
    • 帳簿の閲覧、謄写

      • 本人確認の方法及び閲覧、謄写の方法に関し、正当な理由なく過度の負担を課す場合は、閲覧、謄写の拒否に該当するおそれ
  • 3. 貸金業者に係る事務処理上の留意点

    • 行政処分を行う際の留意点

      • 業務改善命令、停止命令等の処分を検討する際には、行為の重大性・悪質性、行為の背景となった経営管理態勢及び業務運営態勢の適切性を勘案すること。

貸金業者向けの総合的な監督指針の概要


貸金業法等改正に係る政令・内閣府令について

近年深刻さを増している多重債務問題の解決のために、

  • (1)上限金利の引き下げ

  • (2)返済能力を超える借入れを防ぐ総量規制の導入

  • (3)貸金業者の業務の適正化のための参入規制・行為規制の強化

等を内容とする「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(平成18年法律第115号。以下「改正法」という。)が、平成18年12月20日に公布されました。

この改正法を受けて、「貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令」等の関係政令・内閣府令を整備し、平成19年11月7日に公布されました。

以下、上記の改正法の柱に沿って、関係政令・内閣府令について解説します。

  • 1. 施行スケジュール

    改正法は、下記のとおり4段階の施行となっており、関係政令・内閣府令も、完全施行までの規定がすべて整備されています。これは、貸金業者や信用情報機関等の関係者がシステム整備等の施行に向けた準備を適切に進められるようにするためです。

    ここで、まず改正法の施行スケジュール(4段階)について説明します。

    • 第1段階施行日

      公布(平成18年12月20日)から1月を経過した日(平成19年1月20日(第1段階施行日))に、無登録営業の罰則の引上げ等や超高金利罪の新設が施行されました。

    • 本体施行日

      公布から1年以内で政令で定める日(本体施行日。施行日政令において平成19年12月19日(水)と規定)に、取立規制の強化、業務改善命令導入、新貸金業協会設立等が施行されます。

    • 第3段階施行日

      本体施行日から1年半以内で政令で定める日(第3段階施行日)に、貸金業務取扱主任者の試験開始、指定信用情報機関制度の指定の開始、財産的基礎要件としての純資産額の2,000万円への引上げ等が施行されます。

    • 完全施行日

      本体施行日から2年半以内で政令で定める日(完全施行日)に、みなし弁済制度の廃止や出資法上限金利の引下げ等の金利体系の適正化、過剰貸付けの抑制のための総量規制の導入、財産的基礎要件としての純資産額の5,000万円への引上げ、貸金業務取扱主任者の必置化、事前書面交付義務導入等が施行されます。

      改正法の第1段階施行日は、上述のとおり既に施行されており、今般公布された改正政令第1条・改正府令第1条が本体施行日に、改正政令第2条・改正府令第2条が第3段階施行日に、改正政令第3条・改正府令第3条が完全施行日に施行されることになります。

      また、利息制限法施行令・出資法施行令は、完全施行日に施行されることになります。

  • 2. 具体的内容

    • (1) 貸金業の適正化

      • 貸金業の参入条件の厳格化

        • 貸金業者の最低純資産額

          改正法においては、貸金業者の最低純資産額を政令で定めることとし、その額はそれぞれ2,000万円(第3段階施行日)、5,000万円(完全施行日)を下回ってはならない、と定められています(貸金業法第6条第1項第14号・第3項)

          政令では、その額を第3段階施行日以後は2,000万円、完全施行日以後は5,000万円と定めています(貸金業法施行令(昭和58年政令181号)第3条の2)

          なお、本規制により、いわゆるNPOバンクが貸付けを行うことが困難となる可能性があることから、内閣府令において、(1)非営利、(2)低金利(7.5%以下)、(3)貸付内容等の情報開示、(4)貸出目的の公益性、(5)純資産額500万円以上、等の要件を満たす場合には、例外として最低純資産額の基準を実質的に改正前の基準(法人500万円)に据え置くこととしました(貸金業法施行規則(昭和58年大蔵省令40号)第5条の3第2号)

        • 貸金業務取扱主任者

          改正法において、法令遵守のための助言・指導を行う貸金業務取扱主任者について、資格試験を導入し、合格者を営業所等ごとに内閣府令で定める数だけ配置することとされました(貸金業法第12条の3第1項)。これを受けて、内閣府令では、合格者を営業所等ごとに、従業者50人に対して1人以上配置することを義務づけています(貸金業法施行規則第10条の8)

      • 貸金業協会

        改正法において、新貸金業協会の設置に必要となる加入貸金業者の割合は政令で定めることとされています(貸金業法第37条第2項)。政令では、その割合を本体施行日以後は15%、完全施行日以後は50%と定めています(貸金業法施行令第4条)

      • 行為規制の強化

        • 書面交付

          • i いわゆるリボルビング契約等に係る規定の整備

            改正法においては、これまで特段の定めがされていなかった、いわゆるリボルビング契約を含め、枠方式の貸付けを「極度方式基本契約」と定義し(貸金業法第2条第7項)、極度方式基本契約と個々の極度方式貸付け(極度方式基本契約に基づく貸付け)に係る書面交付義務の規定を整備しました(貸金業法第17条第1項・第2項等)。

            これにより、極度方式基本契約締結時及び個々の極度方式貸付け時に、書面を交付することとなりますが、両書面の記載事項として、原則として、旧法下の記載事項と同等の内容に加え、

            • 貸付けの利率が利息制限法の制限金利を超えるときは、超える部分について支払う義務を負わない旨(本体施行日から完全施行日までの経過期間中)
            • トータルの元利負担額(完全施行日以降)
              が規定されています。また、貸付けの利率が利息制限法の制限金利以下の場合には、極度方式貸付け時に交付すべき書面において、
            • 「返済の方法及び返済を受ける場所」等、一部の事項について、極度方式基本契約締結時に交付すべき書面に記載された事項と重複する事項の記載の省略が可能となるほか、
            • 「各回の返済期日及び返済金額」の記載を「次回の返済期日及び返済金額」の記載で代替することが可能となる
              など、一定の簡素化が図られています(貸金業法施行規則第13条第1項・第3項)
          • ii マンスリーステートメント方式の導入

            改正法において、いわゆるリボルビング契約等の極度方式基本契約に関し、貸付けの利率が利息制限法の制限金利以下の場合には、相手方の承諾を条件に、「一定期間における貸付け及び弁済その他の取引の状況を記載した書面」(いわゆるマンスリーステートメント)を交付することにより、極度方式基本契約に基づく個々の極度方式貸付け時に交付すべき書面及び弁済時に交付すべき受取証書の記載事項が軽減される制度が導入されました(貸金業法第17条第6項・第18条第3項)

            これを受けて、内閣府令においては、マンスリーステートメントの詳細が規定されており、基本的に、個々の極度方式貸付け時に交付すべき書面(貸金業法第17条第1項)及び弁済時に交付すべき受取証書(貸金業法第18条第1項)の記載事項と同等のものを、一定期間(1月以内)まとめて記載することとされています(貸金業法施行規則第13条第16項・第15条第4項)

            また、マンスリーステートメント方式を採ることの承諾について、既存のリボルビング契約に限り、貸金業者からの通知に異議がなければ承諾があったものとみなす経過措置が設けられています(改正政令附則第4条・第5条)

          • iii 書面交付の電子化

            改正法において、貸付けの利率が利息制限法の制限金利以下の場合には、相手方の承諾を条件に、事前書面、契約締結時に交付すべき書面、受取証書、マンスリーステートメントについて、電磁的方法により提供することが可能となりました(貸金業法第16条の2第4項・第17条第7項・第18条第4項)

            これを受けて、内閣府令において、電磁的方法の詳細が定められており、一定の要件の下で、携帯電話を利用することも可能とされています(貸金業法施行規則第1条の2)

          • iv 契約締結前の書面の交付の義務づけ

            従来より、保証人に対しては保証契約締結前に書面の交付が義務づけられていましたが、改正法において、完全施行日から、保証人のみならず、借り手本人に対しても、契約締結前に書面を交付することが義務づけられました(貸金業法第16条の2)

            これを受けて、内閣府令において、この事前書面に記載すべき事項の詳細が定められています(貸金業法施行規則第12条の2)

          • v 重要事項変更の場合の書面の再交付の義務づけ

            改正法においては、契約締結時に交付すべき書面について、当該書面に記載した事項のうち、「重要なものとして内閣府令で定めるもの」を変更した場合には、書面を再交付しなければならないことが明記されました(貸金業法第17条第1項後段・第2項後段・第3項後段・第4項後段・第5項後段)

            内閣府令では、この「重要なものとして内閣府令で定めるもの」として、(1)極度額、(2)貸付けの利率、(3)返済の方式、(4)担保の内容、等を定めています。ただし、貸付けの利率の引下げ等借り手に有利な変更を行う場合は除かれています(貸金業法施行規則第13条第2項・第4項・第7項・第10項・第12項)。また、極度額については、その減額や元の額を上回らない額までの復活は、書面の再交付義務がかからないこととされています(貸金業法施行規則第13条第5項・第13項)

          • vi 文字の大きさ

            資金需要者等への情報提供が適切に行われるようにするため、内閣府令において、事前書面(貸金業法第16条の2)・生命保険契約に係る同意前の書面(貸金業法第16条の3)・契約締結時に交付すべき書面(貸金業法第17条)・受取証書(貸金業法第18条)・マンスリーステートメント本体(マンスリーステートメントにより簡素化する書面を除く。)(貸金業法第17条第6項・第18条3項)・公正証書の説明書面(貸金業法第20条第3項)・催告書面(貸金業法第21条)について、記載事項を8ポイント以上の大きさの文字を用いて明瞭かつ正確に記載しなければならないこととされています(貸金業法施行規則第12条の2第8項・第12条の3第2項・第13条第15項及び第16項・第15条第3項及び第4項・第18条第2項・第19条第4項)

        • 生命保険契約締結に当たり自殺を保険事故とすることの禁止

          改正法において、「住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約」を除き、貸金業者が借り手等を被保険者とする生命保険契約を締結するときは、自殺を保険事故とすることが禁止されました(貸金業法第12条の7)

          内閣府令においては、自殺を保険事故とすることの禁止規定の例外として、リフォームローンを含む住宅ローン及びそのつなぎ資金の貸付けを規定しています。

    • (2) 過剰貸付けの抑制

      • 指定信用情報機関制度

        • 指定の要件

          改正法において、総借入残高を年収の3分の1以下とする総量規制の導入に必要なインフラの整備として、貸金業者が借り手の他社分を含めた総借入残高を確実に把握できるようにするため、指定信用情報機関制度が創設されました(貸金業法第3章の2)

          この指定信用情報機関は、信用情報の規模及び財産的基礎が一定以上であることが要件とされています(貸金業法第41条の13第1項第5号、第41条の13第1項第6号)

          内閣府令では、信用情報の規模として(1)加入貸金業者数100者以上、かつ、(2)貸付残高の合計額が5兆円以上(貸金業法施行規則第28条)、財産的基礎要件として、純資産額が5億円以上であることと定めています(貸金業法施行規則第29条)

        • 個人信用情報

          改正法において、過剰貸付けの抑制を実効的なものとするため、貸金業者は指定信用情報機関に個人信用情報として以下の事項を提供することが義務づけられています(貸金業法第41条の35)

          • (1)顧客を識別することができる事項として内閣府令で定めるもの(第1号)

          • (2)契約年月日(第2号)

          • (3)貸付けの金額(第3号)

          • (4)前三号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項(第4号)

            内閣府令では、「顧客を識別することができる事項」の具体的内容として、(1)氏名、(2)住所、(3)生年月日、(4)電話番号、(5)勤務先の商号又は名称、(6)運転免許証、健康保健証、パスポート等の記号番号、等を定めています(貸金業法施行規則第30条の13第1項)

            また、「前三号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項」として、(1)貸付けの残高、(2)支払の遅延の有無、(3)総量規制を超える貸付けが可能な契約に該当する場合には、その旨、を定めています(貸金業法施行規則第30条の13第2項)

      • 総量規制の導入

        • 総量規制の適用除外・例外

          改正法においては、「住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約」(以下「適用除外」という。)を除き、総借入残高が年収の3分の1を超える貸付けを原則として禁止しつつ、例外的に、「顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約として内閣府令で定めるもの」(以下「例外」という。)に限り、年収の3分の1を超える貸付けを行うことを可能としました(貸金業法第13条の2第2項)

          内閣府令において、「適用除外」として(1)不動産購入のための貸付け(そのためのつなぎ融資を含む。)、(2)自動車購入時の自動車担保貸付け、(3)高額療養費の貸付け、等を定めています(貸金業法施行規則第10条の21)

          また、「例外」として、

          • (1)有価証券担保貸付け(第1号)

          • (2)不動産担保貸付け(居宅等を担保とする場合を除く。)(第2号)

          • (3)売却予定不動産の売却代金により返済できる貸付け(第3号)

          • (4)顧客に一方的に有利となる借換え(1月の負担・総返済額がともに減少し、かつ、追加担保・保証がない場合に限る。)(第4号)

          • (5)緊急の医療費(高額療養費を除く。)のための貸付け(第5号)

          • (6)配偶者と合算して年収の3分の1以下の貸付け(配偶者の同意がある場合に限る。)(第6号)

          • (7)個人事業者に対する貸付け(第7号・第8号)定めています(貸金業法施行規則第10条の23)

        • 途上与信

          改正法においては、一定の場合に、借り手の総借入残高が年収の3分の1を超えないか途上与信を行うことが義務づけられました(貸金業法第13条の3)

          内閣府令では、

          • 1月の借入れの合計額が5万円以上、かつ、借入残高が10万円以上の場合には毎月
          • 上記に当たらない場合でも借入残高が10万円以上の場合には3月毎に途上与信を行うことが義務づけられています(貸金業法施行規則第10条の24)

          また、途上与信の結果、総借入残高が年収の3分の1を超えることが判明した場合の貸付けを抑制するための具体的な措置として、(1)極度額の減額、又は、(2)新たな貸付けの停止、が定められています(貸金業法施行規則第10条の29)

    • (3) 金利体系の適正化

      改正法において、みなし弁済制度(貸金業法第43条)を廃止するとともに、出資法の業として行う高金利の罪の刑罰金利を年利20%に引き下げることとされました(出資法第5条)。また、引下げ後の出資法の業として行う高金利の罪の刑罰金利(年利20%)と利息制限法の上限金利(年利15~20%)の間の金利での貸付けについては、行政処分の対象とすることとされました(貸金業法第12条の8)

      さらに、利息制限法(業として貸付けを行う場合に限る。)、出資法及び貸金業法におけるみなし利息の範囲を調整しました。具体的には、「債務者の要請により債権者が行う事務の費用として政令で定めるもの」をみなし利息から除くとともに、契約締結費用又は債務弁済費用のうち、(1)公租公課の支払に充てられるべきもの、(2)強制執行の費用等公の機関が行う手続に関してその機関に支払うべきもの、(3)ATM利用料(政令で定める額の範囲内のものに限る。)、をみなし利息から除くこととされました。

      これを受けて、利息制限法(業として貸付けを行う場合に限る。)、出資法及び貸金業法の各政令においては、「債務者の要請により債権者が行う事務の費用として政令で定めるもの」として、

      • カードの再発行の手数料
      • 法定書面の再発行の手数料
      • 口座再振替に要する費用

      が定められています(利息制限法施行令第1条・出資法施行令第3条・貸金業法施行令第3条の2の2)

      また、利息制限法(業として貸付けを行う場合に限る。)・出資法・貸金業法の各政令において、ATM利用料の上限として、入出金額1万円以下105円・1万円超210円と定められています(利息制限法施行令第2条・出資法施行令第2条・貸金業法施行令第3条の2の3)

      なお、3万円以上の入金において受取書が発行される場合には印紙税が課されますが、この印紙税相当額(及びこれを債務者から債権者に対し役務の提供の対価として支払った場合における消費税・地方消費税相当額)については、「公租公課の支払に充てられるべきもの」(利息制限法第6条第2項第1号・出資法第5条の4第4項第1号イ・貸金業法第12条の8第2項第1号)に該当すると考えられ、ATM利用料とは別途、みなし利息から除かれることになります。


国際会計基準委員会(IASC)財団のガバナンス向上に向けた市場規制当局による取組みについて

2007年11月7日、金融庁は、欧州委員会(EC)、米国証券取引委員会(SEC)及び証券監督者国際機構(IOSCO)と共同で、国際会計基準委員会(IASC)財団の組織の枠組みを強化するための改革案を公表しました。

IASC財団は、2008年以降に財団の定款の見直しを行う予定ですが、今回の提案は、IFRSが世界で広く利用されるようになってきていること等を踏まえ、IASC財団のガバナンスやアカウンタビリティの向上に資するために、新たに規制当局から構成される「モニタリング・ボディー」を設立することなどを提案しています。

なお、今回の公表に先立ち、IASC財団は、11月6日、財団のガバナンスを向上させるとともに、対外的なアカウンタビリティを向上させるための提案を公表していますが、この中で、公的機関との公式な関係(formal reporting link)を設立することなどを提案しています。

IFRSを巡っては、我が国においては、我が国の会計基準設定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)が、本年8月、IASBと、2011年までのコンバージェンスの加速化することを内容とする「東京合意」を公表するなど、ASBJを中心として、IFRSとのコンバージェンスを積極的に進められているところです。金融庁としては、引続き、各国当局や、IOSCO等と連携し、IASC財団の定款のレビュー作業に対し、働きかけを行っていく方針です。


  • 1IASC財団は、2001年に設立された民間の非営利団体であり、国際財務報告基準(IFRS)の設定を行う国際会計基準審議会(IASB)や国際財務報告指針の設定を行う国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC)等の母体となる組織です。本部は、英国ロンドンです。

  • 2IASC財団は、5年毎に、定款のレビューを行うこととしており、前回は2003年11月に作業を開始し、2005年6月に終了。


「金融サービス利用者相談室」における相談等の
受付状況等に関する公表について

(期間:平成19年7月1日~9月30日)

概要

相談室に寄せられた利用者からの相談件数や主な相談事例等のポイント等については、四半期毎に公表しています。平成19年7月1日から9月30日までの間における相談等の受付状況及び特徴等は、以下のとおりです。

  • (1)平成19年7月1日から9月30日までの間に、10,459件の相談等(詳細については、PDF「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等に関する公表について(平成19年10月31日)別紙1をご参照ください。)が寄せられています。一日当たりの受付件数は平均169件となっており、19年4月1日から6月30日までの間の実績(196件)と比べ減少しています。

  • (2)分野別の受付件数としては、預金・融資等に関するものが2,659件(25%)、保険商品等に関するものが3,543件(34%)、投資商品等に関するものが2,543件(24%)、貸金等に関するものが1,515件(15%)、金融行政一般・その他が199件(2%)となっています。

  • (3)分野別の特徴等としては、

    • 預金・融資等に関するもののうち、融資業務については、融資の実行・返済についての相談等が、預金業務については、本人確認手続など預入れ時の態勢についての相談等が、その他業務では、為替、両替についての相談等が寄せられています。

    • 保険商品等については、保険金の支払に関するもの、保険金請求時等における保険会社の対応に関するものについての相談等が寄せられています。

    • 投資商品等については、証券会社に関するもの、未公開株に関するもの、ファンドに関するものについての相談等が寄せられています。

    • 貸金等については、一般的な照会・質問に関するもの、個別取引・契約の結果に関するもの、不適正な行為に関するものについての相談等が寄せられています。

  • (4)なお、受け付けた相談等の中には、検査・監督上参考となる情報も寄せられており、利用者全体の保護や利便性向上の観点から、金融機関に対する検査における検証や監督におけるヒアリング等、金融行政を行う上での貴重な情報として活用しています。

    • 預金取扱金融機関によるリスク性商品等の販売時における顧客への説明態勢及び広告等の不適正な表示に関するもの

    • 預金取扱金融機関における本人確認や説明を求めた際の不適切な顧客対応に関するもの

    • 預金取扱金融機関の個人情報の取扱いに関するもの

    • いわゆる貸し渋り・貸し剥がしに関するもの

    • 生命保険会社の不払い等(保険金等の不適切な不払い、支払漏れ等)に関するもの

    • 保険募集人等の不適正な行為(重要事項の不十分な説明、手続きに関する誤案内、保険料の立替、名義借り等)に関するもの

    • 貸金業者による法令違反のおそれのある行為(取立行為規制違反、取引履歴の不当な開示拒否等)に関するもの

    • 証券会社の高齢者に対する勧誘に関するもの

      また、預金口座の不正利用に関する情報については、金融機関及び警察当局へ149口座の情報提供を行っています。

      さらに、平成19年4月1日から6月30日までの間における情報の活用状況は以下のとおりです。

    • 監督において行った156金融機関に対するヒアリング等に際して、相談室に寄せられた情報を参考としています。

    • 金融庁が着手した13金融機関の検査に際して、相談室に寄せられた情報を参考としています。

  • (5)寄せられた相談等のうち利用者の皆様に注意喚起する必要がある事例等について、「利用者からの相談事例等と相談室からのアドバイス等」として周知しております。今回、新たに追加する「利用者からの相談事例等と相談室からのアドバイス等」の項目・相談等は、以下のとおりです。

    • □預金・融資等
      • 盗難・偽造キャッシュカードに関する相談等
        • キャッシュカードを盗まれました。預貯金者を保護する法律があると聞きましたが、何という名前の法律ですか。また、どうしたらいいでしょうか。
    • □保険商品等
      • 保険金の支払いに関する相談等
        • 加療中であるにもかかわらず、保険会社から一方的に治療費にかかる保険金支払いを打ち切られてしまいました。
    • □投資商品等
      • ファンドに関する相談等
        • 投資事業有限責任組合から出資を勧められていますが、迷っています。注意点があれば教えてください。
    • □貸金等
      • 無登録業者に関する相談等
        • おまとめローンを申し込んだら、「金融庁にあるデータが借入れできない状態になっている。大手貸金業者で20万円借りて郵送すれば、金融庁のデータを解除し貸すことができる。」と言われていますが本当ですか。

  • 1検査・監督上参考となる情報の例


EDINET再構築パイロット・プログラムに係る結果概要の公表について

金融庁では、「有価証券報告書等に関する業務の業務・システム最適化計画」に基づき、XBRLの導入等による開示書類利用者の利便性の向上等を目的としたEDINETの再構築を行っており、平成20年4月より新システムを稼動し、XBRL形式による提出へ移行することを計画しております。

当庁では、新システムへの円滑な移行及びXBRL導入に向けた提出環境の整備に向け、操作手順の確認等を目的としたパイロット・プログラムを本年7月~8月に実施いたしました。約1,200社が参加し、うち約1,000社がXBRLデータ等の提出を行いました。

パイロット・プログラム全般を通じ、大きな混乱や不具合等はありませんでしたが、多数の企業に参加頂いたことによって、多様な実務を把握することが出来、システム及びタクソノミの利便性を高めるための一部修正を行いました。また、操作手順書等ガイドラインについて記載が複雑とのご意見等を受け、より分かりやすい記載とするなど操作手順書等各種ドキュメントについて品質の向上に向けて対応していきたいと考えております。

パイロット・プログラムの実施により、提出者等における新システム及びXBRLに関する理解ならびに環境の整備が進展したものと考えますが、参加企業より頂いたご意見のなかには、XBRL導入初年度の書類作成に係る作業量について、現状の1.5倍程度となるのでは、といったものも見受けられました。今後はいただいたこれらのご意見等を受け、必要な修正を行い、仕様等について順次公開することで、来年4月予定の新システム稼働に向けた提出環境等の整備を図っていきたいと考えております。

  • 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から下記内容についてアクセスしてください。


  • 1XBRL(eXtensible Business Reporting Language):データに属性情報を付すことで高度な利用を可能とする、国際的に標準化された、財務報告等に使用されるコンピュータ言語。

  • 2タクソノミ(Taxonomy):XBRL形式で開示書類を作成するための電子的ひな形。


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