アクセスFSA 第67号(2008年6月)

【トピックス】

我が国の預金取扱金融機関のサブプライム関連商品及び証券化商品等の保有額等について

平成20年6月6日(金)、金融庁では、昨年9月末12月末に引き続き、我が国の預金取扱金融機関について、本年3月末時点のサブプライム関連商品等の保有額、評価損益・実現損益を取りまとめ、公表を行いました。

サブプライム関連商品等の保有状況については、本年3月末時点において、我が国の預金取扱金融機関全体で保有額が約1兆190億円、評価損・実現損の合計は▲約8,500億円となっています。

また、今回の公表に際しては、先般(4月11日)公表された金融安定化フォーラム(FSF)報告書における先進的な開示事例を踏まえ、サブプライムローンとは直接関係しない証券化商品等(債務担保証券(CDO)、住宅ローン担保証券(RMBS)、商業用不動産担保証券(CMBS)、レバレッジドローン等)についても、その保有額等を取りまとめ、公表を行いました。

証券化商品等の保有状況については、我が国の預金取扱金融機関全体で保有額が約22兆7,930億円、評価損・実現損合計で▲約2兆4,360億円となっています。

従って、サブプライム関連商品以外の証券化商品について、▲約1兆5,860億円の損失が生じており、サブプライムローン問題は様々な証券化商品の市場に影響を与えていると考えられます。

こうした状況をかんがみると、サブプライムローン問題を契機とするグローバルな市場の混乱は、我が国の金融機関に相当程度の影響を与えているものと考えられます。

しかしながら、

  • (1)(1社の損失が3兆円から4兆円にものぼっている)欧米の巨大複合金融機関と比較すると、我が国の金融機関に対する影響は、相対的に限定されており、

  • (2)損失額が期間利益の範囲内であり、当期利益を確保している、

等から、現時点において、サブプライムローン問題が我が国の金融システムに深刻な影響を与える状況にはないと考えられます。

金融庁では、これまでも、世界に先駆けて、サブプライム関連商品等について、我が国預金取扱金融機関全体の保有状況を統一した基準の下に開示することで、サブプライムローン問題が我が国預金取扱金融機関に与える影響を示してきました。

こうした取組みは、サブプライムローン問題が我が国金融システムに与える影響に対する正確な理解、グローバルな金融市場の混乱が続く中での不透明感の除去に資するものであると考えています。

今般、当庁が公表した内容は、金融安定化フォーラム(FSF)報告書における先進的開示事例や各金融機関の開示の状況を踏まえ、当局としても、これまでの情報発信の取組みを更に一歩進めたものであり、引き続き、金融システムの現状や金融行政の考え方に容易にアクセスできる環境の整備を進めていきたいと考えています。

我が国の預金取扱金融機関のサブプライム関連商品の保有額等について
FSF報告書における先進的開示事例を踏まえた我が国の預金取扱金融機関の証券化商品等の保有額等について

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から、「我が国の預金取扱金融機関のサブプライム関連商品及び証券化商品等の保有額等について」(平成20年6月6日)にアクセスしてください。


「多重債務問題改善プログラム」のフォローアップ報告と「多重債務者相談強化キャンペーン」について

  • 1. 「多重債務問題改善プログラム」のフォローアップ報告について

    深刻な社会問題となっている多重債務問題を解決するため、内閣に設けられた多重債務者対策本部において、昨年4月20日に「多重債務問題改善プログラム」が策定されました。

    本プログラムは、多重債務問題を解決するために直ちに取り組むべき具体的な施策をまとめたもので、

    • (1)丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う相談窓口の整備・強化

    • (2)借りられなくなった人に対する顔の見えるセーフティネット貸付けの提供

    • (3)多重債務者発生予防のための金融経済教育の強化

    • (4)ヤミ金の撲滅に向けた取締りの強化

    を柱としています。

    また、本プログラムにおいては、各年度において各施策の進捗状況のフォローアップを行うこと等が定められています。

    (「多重債務問題改善プログラム」から抜粋)

    「本対策本部において、少なくとも改正貸金業法完全施行までの間、各年度において、各施策の進捗状況のフォローアップを行い、本プログラムの着実な実施を確保するとともに、必要な施策について検討する。その際、必要に応じて有識者会議を開催する。

    なお、各自治体の対応状況については、定期的にアンケートを実施して確認する。」

    プログラム策定後約1年間における各施策の進捗状況をフォローアップするため、本年5月13日に第7回多重債務者対策本部有識者会議を開催しました。

    有識者会議においては、事務局から「多重債務問題改善プログラムの実施状況について」が報告されました。主な実施状況は以下のとおりです。

    • (1)丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う相談窓口の整備・強化

      • 地方自治体における相談窓口の整備状況に係るアンケート結果

        • 47全ての都道府県において、常設の相談窓口及び「多重債務者対策本部(又は協議会)」(都道府県庁の関係部署、警察、弁護士会・司法書士会等から構成)を設置済み
        • 市区町村においては、1,515市区町村(調査対象は全1,823市区町村)で相談窓口を設置済み

            (注)平成19年2月12日時点で、1,830の市区町村のうち、多重債務者向けの相談窓口が整備されているのは386市区町村

      • 自治体における取組みのバックアップ等を目的として、平成20年度から全国の財務局等に合計43名の相談員を配置し、多重債務者向けの相談業務を開始

      • 自治体職員向けに、相談時の心構えや相談手順等を分かりやすく解説したPDF「多重債務者相談マニュアル」を策定・配布(平成19年7月、20年3月)

      • 相談窓口の整備を促進すること等を目的として、「全国一斉多重債務者相談ウィーク」を実施(平成19年12月10日~16日)

    • (2)借りられなくなった人に対する顔の見えるセーフティネット貸付けの提供

      • 岩手県において、生協組織を利用し、丁寧な事情聴取を前提とした「顔の見える融資」を実施。福岡県、熊本県でも類似の取組みを開始

    • (3)多重債務者発生予防のための金融経済教育の強化

      • 全国の高等学校に多重債務を防止するための啓発リーフレットを配布(平成19年9月)

      • 現在、高等学校の家庭科の学習指導要領に多重債務問題を盛り込む方向で検討中

    • (4)ヤミ金の撲滅に向けた取締りの強化

      • 平成19年中のヤミ金検挙数:484件(平成18年:323件)

    有識者会議においては、プログラムの実施状況について、総じて施策の着実な進展が見られるとの評価をいただいた一方、相談窓口についてのより効果的な広報の実施や、新しい手口のヤミ金への対応に努めるべき、等の様々なご意見をいただきました。こうしたご意見を基に、フォローアップ結果に対する報告書「「多重債務問題改善プログラムの実施状況について」に関する報告」がとりまとめられました。

    「多重債務問題改善プログラムの実施状況について」及び「「多重債務問題改善プログラムの実施状況について」に関する報告」は、多重債務者対策本部へ報告され、6月10日に了承されました。

    今回のフォローアップ結果や有識者会議でいただいた御指摘も踏まえ、今後とも、関係者一体となって、プログラムの実施をより一層推進していきます。

  • 2. 「多重債務者相談強化キャンペーン」について

    また、同日(6月10日)、多重債務者対策本部長により、今年度の「多重債務者相談強化キャンペーン」の実施が決定されました(閣議後大臣記者会見・冒頭発言(平成20年6月10日)参照)

    「多重債務者相談強化キャンペーン」は、昨年12月10日から16日に実施した「全国一斉多重債務者相談ウィーク」の全国一斉実施方式を改め、本年9月1日から12月31日のキャンペーン期間中に、自治体の自主的な判断において、多重債務者向け無料相談会を実施するものです。

    なお、多重債務者対策本部、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会の3者共催となります。

    決定文と実施要領はこちらをご覧ください。


平成20年3月期有価証券報告書に係る重点審査の実施について

  • 1. 重点審査の概要

    有価証券報告書の重点審査について、有価証券報告書提出会社(以下「提出会社」といいます。)の協力の下、提出会社が作成した「有価証券報告書の調査票」(以下「調査票」といいます。)を各財務局及び福岡財務支局並びに沖縄総合事務局(以下「財務局等」といいます。)に提出していただき、提出された調査票等を基に財務局等において記載内容等に係る審査を実施してきています。

    調査票自体は金融庁で公表していますが、調査票の審査項目は、毎年異なっており、その年に話題となった開示項目や法令改正等により新たに記載することとされた開示項目を選定し、それらの開示項目に記載漏れがある場合、適切に記載されていない場合等には、提出会社に訂正を求めるなど、適正な開示が行われるよう対応してきているところです。

  • 2. 平成20年3月期有価証券報告書に係る重点審査について

    • (1)審査項目

      コーポレート・ガバナンスの状況等及び開示対象特別目的会社に係る注記について

      • (注1)調査票についての回答の際に「記載していない」、「一部について記載している」等とした場合は、有価証券報告書の記載内容として不十分である可能性がありますので、留意願います。

      • (注2)開示対象特別目的会社に係る注記については、平成19年3月29日に企業会計基準委員会より公表された「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第15号)を参照してください。

      • (注3)審査項目の詳細は、金融庁ウェブサイトの「市場の信頼性確保」から「平成20年3月期有価証券報告書に係る重点審査について」にアクセスしてください。

    • (2)調査対象会社

      有価証券報告書提出会社(事業年度の末日が、平成20年3月31日から平成21年3月30日までの提出会社を対象とします。)

    • (3)調査票の提出先及び提出期限

      • 提出先  有価証券報告書提出先の財務局等

      • 提出期限 有価証券報告書提出期限の翌月15日まで

      • (注4)財務局等への提出方法は、各財務局等のウェブサイトをご覧ください。

  • 3. 終わりに

    有価証券報告書については、毎年異なった開示項目について重点審査を実施してきていますが、重点審査項目は、有価証券報告書の記載事項のごく一部に過ぎません。

    また、同報告書には、投資者保護を図るため、投資判断に有用な情報を記載することとされており、こうした観点から法令改正が行われています。

    したがって、有価証券報告書作成・提出に当たっては、最新の有価証券報告書の「記載上の注意」等を確認の上、適切に開示を行うようお願いします。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から、「平成20年3月期有価証券報告書に係る重点審査の実施について」(平成20年6月3日)にアクセスしてください。


主要行等の平成19年度決算について≪速報ベース≫

主要行等の平成19年度決算発表を受けて、金融庁では、各行の発表した計数等を集計し、平成20年5月20日(火)に公表しました。

以下、主要行等の平成19年度決算の概要について説明します。

  • 1. 収益の状況

    銀行の本業の儲けを表す実質業務純益は平成20年3月期3.3兆円となり、平成19年3月期対比0.2兆円の減少となりました。これは、利ざやの改善、貸出残高の増加はあったものの限定的であり、市況悪化により手数料収入は減少、他方、将来を睨んだ前向きな支出による経費が増加したことによるものと考えられます。

    当期純利益は平成20年3月期1.5兆円となり、平成19年3月期対比1.1兆円の減益となりました。これは、ノンバンク関連の損失が前年比減少しましたが、サブプライム関連等の損失や、株式の減損、与信関係費用が増加したことなどが影響したものと考えられます。

  • 2. 財務の健全性の状況

    不良債権比率は、平成20年3月期1.4%となり、平成19年3月期対比0.1ポイントの低下となり、引き続き低水準となりました。

    自己資本比率については、平成19年3月期よりバーゼルIIに基づき算出されており、12.3%となりました。平成19年3月期対比1.0ポイント減少しましたが、これは、株式含み益の減少等によるものです。

このように、サブプライム関連の損失等により利益が減少しましたが、不良債権比率が低水準で安定していることや、自己資本の状況等を踏まえれば、主要行等の財務は引き続き健全と考えられます。

主要行等の平成20年3月期決算状況(単体)<速報ベース>

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「主要行等の平成19年度決算について《速報ベース》」(平成20年5月20日)にアクセスしてください。

1. みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三井住友銀行、りそな銀行、中央三井信託銀行、住友信託銀行、新生銀行及びあおぞら銀行を主要行等といいます。


地域銀行の平成19年度(平成20年3月期)決算について

地域銀行の平成19年度決算発表を受けて、金融庁では、各行の発表した計数等を集計し、5月30日(金)に公表しました。

以下、地域銀行の平成19年度決算の概要について説明します。

  • 1. 損益の状況

    実質業務純益は、国債等債券関係損益の悪化などを要因として、平成19年3月期に比べ2,034億円減少して17,994億円となりました。

    当期純利益は、不良債権処分損は減少したものの、実質業務純益の減少などにより、平成19年3月期に比べ1,655億円減少して6,401億円となりました。

    損益の状況
  • 2.  自己資本比率の状況

    自己資本比率は、平成19年3月期対比ほぼ横ばいの10.3%となりました。

     自己資本比率の状況
  • 3.  不良債権の状況

    不良債権比率は3.7%で、ピーク時(平成14年9月期8.3%)の半分以下の水準となっています。

    不良債権の状況
(注1) 20年3月期の集計対象は110行(地方銀行64行、第二地方銀行45行及び埼玉りそな銀行)
19年3月期の集計対象は111行(地方銀行64行、第二地方銀行46行及び埼玉りそな銀行)
18年3月期の集計対象は112行(地方銀行64行、第二地方銀行47行及び埼玉りそな銀行)
(注2) 計数は単体ベース。ただし、不良債権の計数には、再生専門子会社分を含む。
(注3) 5月30日現在の計数。ただし、今後業績修正等により変更の可能性がある。
(注4) 19年3月期及び18年3月期の計数については、業績修正を行った銀行があるため、過去の当庁公表数値と異なる。

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