アクセスFSA 第196号

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Contents  

神田 憲次 内閣府大臣政務官(金融担当) ロングインタビュー

インタビューの概要
  • 税理士として会社再生案件への関与が原点
  • 日本をお金の苦しみで命を落とすことがない国に
  • 金融機関と顧客の関係は、「長年連れ添った夫婦」が理想
  • 休みは地元=東京間の新幹線の中のみ!
     

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神田 憲次
内閣府大臣政務官(金融担当)
  昭和38年2月生まれ。税理士として顧客やその取引先の苦労を近くで見てきた経験から中小企業の支援が不十分であることを痛感し、「制度をつくる側に回らねば」と平成24年12月に出馬し当選。座右の銘は「真剣味」。

――― 9月に政務官に就任されて2ヶ月経ちましたが、今の率直なお気持ちを教えて下さい。

 まず、台風15号、19号等の一連の災害により大変な被害が出ています。被災された方々、亡くなられた方々に心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。平成23年の東日本大震災以降、毎年のように天災により大きな被害が発生し、多くの方が亡くなられていることは本当に悲しいことで、これは国政に携わる一議員としてなんとか解決していかなければならない問題だと強く思っています。こうした災害で1人も命を落とすことが無いような国にしなければならないなといつも思います。

 9月13日に首相官邸で任命式があって、初めて政務官という行政府の立場に立たせていただいて、担務の広さと忙しさを感じながら、一生懸命、与えられた役割を果たすために毎日過ごしています。


――― 政務官にとっての政治家としての原点、政治の世界を目指されたきっかけを教えて下さい。

 税理士として会社の再生案件に関与させていただいた中で、お金の苦しみで命を絶つということがない社会環境を作っていかなければならないと感じたことが、政治家を目指したきっかけです。

 私が税理士になった時は、ちょうどバブルがはじけて大手金融機関が破綻するなど、経済が戦後の成長から下降線を描きだした時代でした。税理士になって3年目の頃、従業員30人ほどで、既に資金繰りで青色吐息になってしまっていて、いつ潰れてもおかしくない建設会社を担当することになりました。その建設会社の社長にお会いし、決算書類を見ながら話し込みました。社長が涙ながらに話すのを見て、社長や従業員、その背後におられるご家族も含めると100名以上になるわけですが、税理士になりたての自分がどこまで出来るかわからないけれど、出来ることなら助けてあげたいと思い、悩みに悩んだ挙句、個人的に資金を用立てて、倒産を回避しました。これが全てのスタートなんです。

 その後、この会社を立て直すべく、月1回、会計・税務の内容を見るというのを3年ぐらい続けました。社長と一緒に歩いて債権者に一定の債権をカットしてもらい、売上についても一緒に営業努力をして、なんとか3年目には落ち着くようになったんです。ところが、ちょっと調子が良くなると、社長がまた大風呂敷を広げはじめてしまい、何度指摘しても聞き入れてもらえず、そうであれば面倒を見ることはできないということで、一度はその社長と縁が切れました。それから8ヶ月ぐらい経ったところで、また会社が苦しくなって、助けを求めてこられたんですが、2度目は残念ながら会社の業績を復調させることはできず、最終的にこの会社は潰れてしまいました。

 この案件に携わったのがきっかけで、年に数件、経営にお困りの様々な中小企業の案件が私の税理士事務所に持ち込まれるようになりました。どの案件も、決算書を見るだけでもうだめと判断するのではなく、お話をいただいたら必ずその地に赴いて、きちんと話をして引き受けるかどうか決めるようにしました。地方の中小企業では、翌日までに必要なほんの僅かな資金、明日を迎える1万円とか10万円というお金が調達できないことがあります。そういう会社が、当時はそこかしこにたくさんあったのだと思います。お金が足らないためにせっかく積み上げてきた会社を畳まなければいけない。そして、結果として従業員の生活を奪うような状況になってしまう。更には、社長がお金の苦しみで自ら命を絶ってしまうという現場にも遭遇しました。社長が命を絶つと、残されたご家族や従業員は大黒柱を失い、大変なご苦労をされることになります。そのような事態に陥った事例を目の当たりにした経験から、お金の苦しみで命を絶たなくてもいい社会というものを実現したいなと強く思うようになりました。そういう社会の実現のためには、やはり政治の世界に足を踏み入れる必要があるということを感じ、平成24年12月に選挙に出馬にすることになりました。


――― そういった思いで政治家になられた政務官が、力を入れて取り組まれてきた政策課題はどういったものなのでしょうか。

 日本という国は、いろいろな意味での自由がきちんと保証された、世界から羨ましがられる、憧れを抱かれる国だと思います。私はバックパッカーみたいな旅が好きで、様々な地へ赴きました。その経験をもとに、日本を再度見つめ直してみると、この国は小さな島国だけれど、とってもいい国だなと思います。しかも、この小さな島国のGDPが世界で3番目なんです。将来にわたってこのプレゼンスを失うことのないような国であってほしいと思っています。

 また、真面目に働いて、お金を稼いで生活をするというサイクルが、ごくごく普通にできる国であるべきだと思っています。不幸にも身体に障がいをお持ちの方もいらっしゃいますので、そういった社会的弱者の方については、国としてしっかりと支えていかなければならないと思います。

 一方で、先ほどお話しした、お金のために命を落とすことがないような国作りをどう実現していくのかというのは、言葉で言うほど簡単ではなく、未だ明確な回答・解は見いだせていません。
 
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(写真:インタビューの様子)

 これまでも様々な努力をしてきましたし、セーフティネットを更に充実させるなど最大限の取組みを行っていかなければなりませんが、今後も自身の政治家としての大事な柱にしたいと思っています。

 また、毎年気になるのは、我が国の自殺者数の推移です。経済環境が悪かった時期には自殺者が3万人を超えていた時もありましたが、アベノミクスが奏功し経済が好転してきていることもあり、今は2万人ぐらいまで減少してきています。これを1人でも少なくする政策を実現したいと強く思っています。


――― 日本をより良い国にするために、現状、金融機関に求められていることは何でしょうか。

 金融が果たす役割というのは、よく経済における血液と例えられますが、大変重要です。特に資源の無い我が国にとっては、更にその重要性が増します。それはメガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合、どんな金融機関であっても、営業をしているそれぞれの地域の経済で血液としての役割を果たしていることに、なんら変わりはありません。つまり、取引先が金融機関の適正な指導によって生き返ることもある一方、金融機関がきちんとしたビジネスモデルを持っていないと、取引先が無くなるというようなことも起こり得ます。そうした現実の厳しい面を、税理士をしていた頃のあのバブル後の経済で、身をもって経験しました。
 
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(写真:インタビューの様子)

 また、フィンテック企業の登場をはじめとして、日本の金融業界に大きな変革の波が来ています。更に、この国が世界でプレゼンスを維持していくためには、経済が成長し続けなければなりません。そのために金融が果たすべき役割というのは、10年、20年前に比べると、はるかに大きな位置を占めていると思います。
 
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(写真:インタビューの様子)


――― 金融機関が、顧客である中小企業の方々に、よりよいアドバイスやサービスを提供できるようになるためには、何が重要だとお考えでしょうか。

 金融機関がきちんと経営者と正対し、真面目に収益を上げることについて一緒に考えるという関係性があれば、その顧客である中小企業は、例えスピードはカメのようにゆっくりかもしれませんが、確実に成長できると思います。これまでの金融機関はどうしても担保至上主義で、企業の将来性・成長性に投資するということではなく、会社や経営者が所有する不動産等といった、過去の結果である保有資産を見て融資をしていたと感じます。少子高齢化や、中小企業の廃業が多いという今の状況の中で、中小企業に一生懸命仕事をしていただいて、成長していただくということが重要なわけですから、その企業を育てるための金融機関であって欲しいと願うわけです。

 そこで、自分自身の税理士としての経験も踏まえ、ぜひとも金融機関にお願いしたいのは、数字をきちんと見ていただきたいということ、数字を徹底的に分析してその会社の特質・可能性をきちんと理解していただきたいということ、さらには、経営者や従業員の様子をきちんと見守っていただきたいということです。

会社の成長において血液の役割を果たすのが金融だとすると、その金融の役割は会社の成長に絶対必要なものですから、金融機関がちゃんと経営者と向き合って、どこまでもとことん向き合って、苦しい時であってもお互い腹を割って話ができることが極めて大事だと思っています。

そして、麻生大臣が常々おっしゃっている金融育成庁としての金融庁も、そうした金融機関や中小企業へのサポートを行政として十分に行っていくことが重要だと思っています。そのためにも、重要な金融分野をきちんと舵取りできるよう、能力(人材)や様々なリソースを強化していくことも必要だと思います。

 
――― 金融機関が顧客と信頼関係を築くために、“心理的安全性”の醸成も含めて、具体的にどのような取組みを行えば上手くいくとお考えでしょうか。

 参考になるのは、夫婦の関係みたいなものかもしれません。「長年連れ添った」という表現がありますが、夫婦の関係というのは、秘密の部分や恥ずかしい部分とかというのをお互いに共有し合えた時に、互いが互いをフォローし合うことが可能になると思います。金融機関と経営者との関係もそれに似ていると思います。お金を貸している方が強者、借りている方が弱者、目上と目下というような関係はだめだと思います。金融機関の方には是非そうした皮膚感覚を持ってもらいたい。経営者が金融機関の担当者に、会社の苦しい部分、困っている部分、長年抱えている悩みを話せる関係性があれば、その金融機関と会社は互いに同じレールの上を、同じモチベーションで、同じ目的を持って前に進むことができ、結果として金融機関も一定の収益を上げることにつながると思います。

 今、金融に大きな変革が起きている中で、特に地方金融機関には、新しいビジネスモデルは何かということが厳しく突きつけられています。先日ラグビーワールドカップが終わったばかりですが、ラグビーには「One for all, all for one」という言葉があります。苦しい状況の中でも、金融機関の方には中小企業の経営者とそういう心持ちで、互いにスクラムを組める関係性を築いていただければ素晴らしいなと思っています。


――― 最後に、ご趣味やプライベートでのリラックス方法を教え下さい。

 もともと車の運転が好きで、仲間たちとレーシングチームを立ち上げ、各地を転戦していました。しかし最近は、車を運転することはほとんどなくなっています。その代わり、気の置けない仲間たちと、例え仕事の話題であっても楽しくコミュニケーションを取っていれば、あまりフラストレーションはたまりません。

 政治家として、国家のため、国民の皆様のために仕事をしているわけですから、ほぼ休みはなく、休むところは、名古屋と東京の往復の新幹線の中ということになるでしょうか(笑)。この立場があるから大きな仕事もできるわけですから、一生懸命頑張ろうという思いで仕事をやらせていただいています。今、自分にこの環境を与えてくれた、また自分を支えてくれている皆様に感謝の思いでいっぱいです。
 
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神田政務官が所属していたレーシングチームの車。車種は「トヨタ86」。
※ ドライバーは神田政務官ではありません。
 
 (インタビュアー:広報室長 和田 良隆)
  
 

ステーブルコインを巡る国際的な議論:G20、G7、FSB

総合政策局総務課国際室 課長補佐  高梨 佑太
企画係長 永野 あきほ

 (※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。)

1.ステーブルコインについて
 いわゆるステーブルコインという用語については、広く受け入れられた定義があるわけではありませんが、他の資産や複数の資産の組み合わせに対する価値の安定を図るよう設計された電子的な記録などが考えられます。
 本年夏以降、一部のステーブルコインの取組みについては、広く国際的に支払いや価値の保存に使われる可能性があること、その場合、マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策や金融システムの安定への影響を含め様々な規制・監督及び政策上の課題をもたらしうることが指摘されるようになり、国際的な議論が高まっています。
 こうした動きを受け、氷見野金融国際審議官は、9月に金融庁が主催した「暗号資産に関する第2回監督監視ラウンドテーブル」の開会挨拶において、米Facebook社やその協力企業・団体が新たなステーブルコインとして提案しているリブラを目覚まし時計(Alarm Clock)に例えながら、「リブラの鳴らすベルは、規制当局や中央銀行に対し、リブラのもたらす課題やリスクについて、スヌーズボタンを押して議論を先送りするのではなく、目を覚まし、真正面から取組むよう促している」と指摘し、金融技術革新等が既存の銀行や現金、規制当局にもたらす避けられない変革のプロセスを破壊的なものとならないように制御していく必要があるとしています(原題 ”Libra as an Alarm Clock” )。

2.ステーブルコインを巡る国際的な議論:G20、G7、FSB
 先に述べたリブラの構想の公表(6月18日)をきっかけとして、G20・G7や金融安定理事会(FSB)などの国際的な場において、ステーブルコインをめぐる様々な議論が行われています。
 G7財務大臣・中央銀行総裁会議においては、6月21日、議長国であるフランスのフランソワ・ヴィルロワ・ド・ガロー中央銀行総裁により、ステーブルコインに関する諸課題を整理する作業部会(G7作業部会)の設置が発表されました。続く6月28日・29日のG20大阪サミットにおいては、成果文書である大阪首脳宣言において、暗号資産に関し、注意深く進展を監視し、生じつつあるリスクにも警戒を続けること、FSBその他の基準設定主体に必要な対応の助言を求めることに合意しました。この要請を受け、FSBでは金融安定に係る論点が、金融活動作業部会(FATF)ではマネー・ローンダリング/テロ資金供与リスクに係る論点が議論されることとなりました。
 7月17日・18日にフランス・シャンティイで行われたG7財務大臣・中央銀行総裁会議では、議長総括文書において、「規制・政策上の懸念・課題は、サービス開始前に対処される必要がある」とのメッセージを発出しました。同時に公表されたG7作業部会の議長アップデートにおいて、ステーブルコインのリスクとして、金融政策への影響、金融システムの安定、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策等が指摘されると同時に、ステーブルコインは既存の決済システムを改善する必要性を明らかにしたとも指摘されました。
 その後、10月17日には、ワシントンD.C.にて行われたIMF・世銀総会に合わせて、G7財務大臣・中央銀行総裁会議より、議長声明とG7作業部会の最終報告書が公表されました。この最終報告書においては、ステーブルコインが提示する様々な規制・監督及び政策上の課題やリスクについての包括的な分析が示されるとともに、当局において既存の決済システムの改善に向けて具体的なロードマップを作成することの必要性も指摘されています。
 こうした動きも踏まえ、同月17日・18日に行われたG20財務大臣・中央銀行総裁会議は、FSB・FATFから提出された報告を歓迎するとともに、G20メンバー国間の合意内容としてプレスリリースを発出しました。プレスリリースにおいては、グローバル・ステーブルコイン及びその他の類似の取組みが生じさせる政策・規制上の深刻なリスクは、サービス開始前に吟味され、適切に対処される必要がある、というメッセージを発信しています。
 

3.今後の取組みについて
 10月にG20が公表したプレスリリースでは、FSB及びFATFから更なる報告が2020年に提出されることを期待することとされており、今後も作業が続けられる予定となっています。同時に、国際通貨基金(IMF)に対しては、各国の通貨公権を含むマクロ経済上の論点についての検討が新たに要請されております。
 日本は、これまでもG20・G7及びFSBなどにおけるステーブルコインに関する国際的な議論に積極的に参画してきました。今後も引き続き、金融技術革新がもたらしうる機会の側面にも着目しつつ、ステーブルコインがもたらすリスクや課題について、G20・G7及びFSBなどにおける国際的な議論に貢献していきたいと考えています。
 
 本年9月6日開催「暗号資産に関する第2回監督監視ラウンドテーブル -国際協調の新しい段階に向けて-」
https://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/201909/20190909.pdf

 

ゲーム事業者の皆さん!
資金決済法に基づく届出を忘れていませんか?

監督局総務課 金融会社室長 岸本 学
総合政策局フィンテックモニタリング室 資金決済係長 古川 朝美

(※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。)

  金融庁では、10月28日、国内外のゲーム事業者向けに、資金決済に関する法律(以下、「資金決済法」といいます。)の周知・注意喚起のため、「ゲーム事業者は資金決済法に基づく届出が必要です!」というリーフレット※1を公表しました。本稿では、このリーフレット公表の背景及びその概要等について紹介します。

リーフレット公表の背景
 スマートフォンのアプリケーションゲーム(以下、「アプリゲーム」といいます。)は、電車内や街中でプレイしている人をたくさん見かけるなど、私たちの日常に溶け込んでおり、今、このアクセスFSAを読んでくださっている方のスマートフォンにも、何らかのアプリゲームがダウンロードされているのではないかと思います。実際、金融庁の職員でも、パズルゲーム、ダンジョン攻略型のゲーム、GPS機能を用いて行く先々で戦闘やアイテム入手をするようなゲームなど、多様なアプリゲームをダウンロードしている人が珍しくなく、ゲームプレイについても、基本プレイのほか、フレンドとのチャットやプレゼント交換、季節のイベント、チーム対抗戦や集団戦闘など、様々な内容を楽しんでいるとのことでした。



 こういった各アプリゲームは、世界中から企業が参加しているApp StoreやGoogle Playなど(いわゆる「プラットフォーム」)を経由して配信されているため、日本のゲーム事業者のみならず、海外のゲーム事業者のアプリゲームも存在します。また、ゲーム事業者が国内か海外かを問わず、国内で広くプレイされていると思われるアプリゲームは、「基本プレイ無料かつアイテム課金あり」というもので、これは、無料で配布されるアイテム(ログインボーナスや目標達成時の景品など)のみでは、上手くゲーム攻略できない場合や、より有利にゲームを進めたい場合に、ユーザーがアイテム等に課金を行うタイプのものです。
 今回、リーフレットで周知をした資金決済法は、金銭を払って購入するポイントやプリペイドカードである「前払式支払手段」を規制対象としています。前払式支払手段には、例えば、Suicaや Amazonギフト券などがありますが、上記のような「課金アイテム」も、前払式支払手段に該当する事例が多く見られるところです。
ゲーム事業者は、アプリゲームの課金アイテムが前払式支払手段に該当する場合には、資金決済法の一定の基準※2に該当すると、同法に基づき、各財務(支)局あての届出が必要となります。また、ゲーム事業者がこの届出対象事業者となった場合には、資金決済法により、ゲーム事業者は、課金アイテムについての利用者への情報提供、毎年3月末及び9月末時点において未使用となっている課金アイテム相当額の2分の1以上の額の保全、監督当局への報告書の提出、ゲーム配信終了の際に未使用となっている課金アイテムについての利用者への払戻し等、様々な規制の適用があり、利用者(ユーザー)の保護が図られることとなっています。
 当局では、日常的にモニタリングを行い、資金決済法上の無届出の懸念がある事業者に対しては、届出要否の確認等を行っており、日本の利用者を対象にアプリゲームを配信している場合には、そのゲーム事業者が国内事業者であるか海外事業者であるかにかかわらず、同様の対応を行っています。
 このように各ゲーム事業者に確認等を行う中で、特に、海外のゲーム事業者の一部には、そもそも資金決済法をご存知ない、又は、法律があることは知っているが自社が規制対象となることを認識していなかったといった事業者がいることが分かりました。
 このような海外のゲーム事業者の認識等を踏まえ、今般、課金のあるゲームアプリを配信するゲーム事業者向けに、資金決済法の周知・注意喚起のためのリーフレットを作成したところです。

リーフレットの概要
 リーフレットの作成については、資金決済法の条文の単なる転記は避け、Q&A方式で、資金決済法の対象となる行為は何か、資金決済法の適用対象となった場合はどのような法規制の遵守が必要となるか、法規制の対象とならない場合はあるのか等について、分かりやすく解説することを試みました。このように、なるべく平易な表現としつつも、ゲーム事業者にとって必要な情報の詳細は、注記で記載する(例:A3の注記内容:算定対象範囲や有償・無償の区分)など、記載内容については、様々な工夫を行ったところです。
 また、リーフレットの記載言語については、海外のゲーム事業者にも周知・注意喚起の必要性があるため、日本語のみならず、ゲーム業界の関連団体の知見も得て、英訳の併記も行いました。
この英訳作業の中では、定訳のない語句、例えば「ガチャチケット」(A1の図の※の記載)を、どう訳すかという疑問が生じました。そもそも、「ガチャチケット」は、日本の実際の街角にある「ガチャガチャ」(300円程度を入れると景品の入った丸いプラスチックボールがランダムで排出されるものが一般的)と同様、アプリゲーム内において、ランダムにアイテムが出る「ガチャ」を引くことの出来るアプリゲーム内のチケットです。
 公表したリーフレットでは、「ガチャチケット」を「Loot box/Gacha tickets」と表現していますが、当初は「Electronic Lottery ticket」を併記するという案もありました。しかし、「Electronic Lottery ticket」の指すアイテムの対象範囲が、「ガチャチケット」の範囲より広いケースがあるとの指摘があり、結果、この語句の記載は行わないこととしました。



周知について
 今回のリーフレットは、金融庁ウェブサイト掲載前に、主催団体の協力を得て、9月12日~13日に開催された東京ゲームショウ※3にて配布をしました。
 その後、10月28日に、金融庁の日本語版ウェブサイトのほか、英語版ウェブサイト(「Announcements」のページ)にも掲載しました。また、他にも、日本資金決済業協会や消費者庁ウェブサイトでも情報掲載されています。
 現在、リーフレットには、日本語と英語が併記されていますが、資金決済法の届出を新規に行う海外ゲーム事業者の中には、中国本社の企業もいくつか見られることから、中国語の追加を予定しています。金融庁では、今後とも、リーフレットの内容を更に広く周知していきたいと考えています。
 

※1 本年10月28日公表「ゲーム事業者は資金決済法に基づく届出が必要です!」(https://www.fsa.go.jp/common/about/pamphlet/2019game.pdf

※2 「一定の基準」とは、毎年3月末又は9月末時点において未使用となっている課金アイテム相当額の合計額が1,000万円を超えるかどうかです。

※3 東京ゲームショウは、一般社団法人コンピューターエンターテインメント協会が主催し、1996年より毎年開催しているコンピューターエンタテイメントの総合展示会であり、今年は、全世界から655の企業・団体が出展(うち、海外から305社、40の国・地域)しています。

 

「ちいきん会」初の地方開催に、最多の380名集結!
~心ある個人の交流から 真の地方創生は始まる~

 地方、特に福島での開催を求める声が多くの方々から寄せられたことを受け、第3回「ちいきん会」が、11月9日に福島市で開催されました。公務員や金融機関、学生のボランティア約40名で構成された事務局が本会の準備・運営に当たりました。

■ 第1部 パネルディスカッション
 「地方創生のために必要なこと」と題して、金融庁・日下地域課題解決支援室長をモデレーターに活発な議論が行われました。

・地域活性化に向けて金融機関の果たすべき役割は大きい。金融庁は上からだけでなく、対話路線で地域金融の活動を応援している。「ちいきん会」での出会いから課題を解決した例は、驚くほどたくさんある。何かをやりたいと思って行動すれば、不思議なことに、同じ思いを持つ仲間が集まる。ぜひ思いを大切にして実行に移して頂きたい。(金融庁・遠藤長官)

・これからは、前例踏襲や固定観念にはまらない生き方が必要。そのためには、他者との交流が必要であり、これまでの預金・融資・為替の3大業務に加えて、コンサルティングが重要になる。様々な問題提起をしつつ、課題解決のお手伝いをしたい。(東邦銀行・北村頭取)

・異業種との出会いは、自己の価値観の幅を広げる。相手の立場に立ち、相手を受け入れることで自らの価値観の幅が広がり、一歩踏み出すことにつながる。(福島県・橘政策監)

・私は、新たなことに取り組むことに抵抗があまりない。好奇心、チャレンジしたいという気持ちがモチベーションになっている。参加者のみなさんには、グローバルな視点をもってほしい。域内という壁を取り払って、いろんなアイデアを出し、海外にPRしていただきたい。(百十四銀行・香西様)


■ 第2部 「ちいきん会」の売り! 共感する仲間との「サークルセッション」
 ステージでは、13名が各3分で課題を提起。その後、提起された人材育成や事業承継などのテーマごとにグループを作って議論を深めました。ここでは、「肩書きを気にせず『自分事』として自由闊達に意見交換を行う」というルールに基づいて議論が行われ、発言を求めて次々と手が挙がりました。

■ 第3部 参加者ピッチと交流会
 交流会に先立ち、1人1分の持ち時間で15名が自分の思いを参加者ピッチとして発表。その後、1人1品を持ち寄っての立食での交流会を行い、官と金、東京と地方との交流が図られました。
地方においても熱意ある公務員・金融機関とつながりたいというニーズをとらえた企画となりました。今後も東京だけでなく、地方での開催を検討していきたいと思います。
 

 

「ちいきん会」のご案内はこちら↓
 ・専用フェイスブックページ
     https://www.facebook.com/groups/549182832217466/
 ・まちひとしごと創生本部事務局「連携・交流ひろば」
   https://www.chihousousei-hiroba.jp/bbs/

 


令和元年公認会計士試験の合格発表について

公認会計士とは
 公認会計士は、会計及び監査の専門家です。企業等の財務情報の信頼性を確保することにより、投資家等の保護を図り、国民経済の健全な発展に寄与することを使命としています。公認会計士の業務は、財務書類の監査にとどまらず、企業等に所属して経営戦略の策定等に関与したり、新規上場支援等のコンサルティング業務を行うなど、活躍の場は広がっています。
 公認会計士・監査審査会(審査会)は、国家試験である公認会計士試験を実施しています。試験は年2回(12月、5月)の短答式試験と年1回(8月)の論文式試験からなります。(公認会計士の業務や試験に関する情報は、審査会ウェブサイトに掲載している試験パンフレットをご覧ください。)
 審査会は、本年11月15日、令和元年公認会計士試験(論文式試験)の合格発表を行いました。願書提出者数は12,532人、合格者数は1,337人であり、平成28年試験以降4年続けて増加しています。
 
区分 令和元年 平成30年
願書提出者数(a) 12,532人 11,742人
論文式受験者数 3,792人 3,678人
合格者数(b) 1,337人 1,305人
合格率(b/a) 10.7% 11.1%
  
合格者の概要
 合格者を5歳毎の年齢層別に見ると、20歳以上25歳未満が769人であり合格者の半数以上を占めています。また、20歳未満の合格者も24人います。最低年齢は18歳です。
 審査会では、全国の大学・高等学校等で、会長・常勤委員等が、公認会計士の社会的役割や活躍領域の拡大、会計監査の意義等をテーマとした講演を行うなど、若年層向けの広報活動に取り組んでいます。引き続き広報活動に取り組みたいと考えています。
 また、女性の合格者数は近年増加しています。合格者に占める女性の割合は23.6%と、昨年より3.2ポイント上昇しており、平成18年試験から現行試験制度となって以来、過去最高となっています。
 

 


 公認会計士試験パンフレット「目指せ、公認会計士!~ 公認会計士試験にチャレンジしてみませんか ~」(https://www.fsa.go.jp/cpaaob/shinsakai/pamphlet/pamphlet2019.pdf


今月の金融庁の主な取組み(2019年11月1日~11月25日)

「顧客本位の業務運営」の取組成果の公表状況について(令和元年9月末時点)(11月6日)
11月8日に「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」(令和元年度第2回)を開催(11月7日)
金融機関の取組みの評価に関する企業アンケート調査(11月8日)
PDF「企業アンケート調査の結果」(11月8日)
令和元年台風第19号等に伴う災害の現状等を踏まえた金融の円滑化等について、関係金融機関に対し要請(11月11日)
金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(第4回)を開催 (11月12日)
11月20日に金融審議会「市場構造専門グループ」(第5回)を開催(11月13日)
LIBORの恒久的な公表停止に備えた対応について更新(11月15日)
「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議」(第5回)を開催(11月15日)
銀行と電子決済等代行業者との間の契約締結等の状況(11月15日)
関東財務局が豚コレラの患畜の確認を踏まえ、金融上の対応について要請(11月18日)
「インターネット・バンキングによる預金の不正送金事案が多発しています。」(11月19日)
金融庁国際政策管理官の保険監督者国際機構(IAIS)執行委員会副議長就任(11月20日)
11月28日に「新現役交流会2.0」を開催(11月22日)
ミャンマー計画財務省に対する保険セクター支援計画(COMPASS)進捗報告書の手交(11月22日)
中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化について金融機関関係団体等に対し要請(11月25日)

 


編集後記
アクセスFSA11月号をご覧いただきありがとうございます。先月の宮下副大臣に続き、今月は神田大臣政務官にお話をお聞きしました。政治家として、国家・国民のために仕事をするんだ、という政務官のもの凄いエネルギーに圧倒され、お話の最中、インタビュアーにもかかわらず不覚にも胸を詰まらせてしまいました。文章で表現しきるのは非常に難しいのですが、読者の皆様に、少しでも感じ取っていただければ幸いです。

金融庁広報室長 和田良隆
編集・発行:金融庁広報室
 

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