証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第86号) 平成28年12月20日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

<目次>

1.長谷川証券取引等監視委員会委員長からのメッセージ

2.新着情報

3.市場へのメッセージ

株式会社SQIジャパン外2社に対する勧告等について

アセットクリエーション株式会社外2社に対する勧告等について

最近の取引調査に基づく勧告について

最近の内外のプロ投資家等における取引調査に基づく勧告について


1.長谷川証券取引等監視委員会委員長からのメッセージ


このたび、証券取引等監視委員会委員長に就任いたしました。改めて、その責任の重さを痛感し、身が引き締まる思いでございます。

証券取引等監視委員会は、市場の公正性・透明性の確保や投資者の保護を図り、もって経済の健全な発展に寄与することを使命としており、来年には、平成4年の発足時から数えて25周年を迎えることとなります。

少子高齢化で様々な課題を抱えた日本の経済成長にとって、投資の活発化の阻害要因となり得る市場の不公正を排除・防止し、透明性を高めることは極めて重要であり、市場監視を行う証券取引等監視委員会の役割も変革・増大しているところであると認識しております。

また、近年は証券取引や金融商品等の多様化・複雑化・グローバル化が進み、我が国市場を巡る状況は大きく変化しております。具体的には、IT技術の発展に伴いアルゴリズム取引などの新しい手法が増加し、インサイダー取引に関する重要事実も多様化しているほか、上場企業の開示規制違反に関しては、日本を代表するグローバル企業で発覚した大規模な不適正会計事案や、グローバル化に対応した企業の海外子会社の管理態勢の不備等に起因する事例などもみられます。

このような状況に対応するため、マクロ経済情報の収集・分析を踏まえたフォワードルッキングな観点からの市場監視の強化、事案の多様化・複雑化・巧妙化に対応するための検査・調査手法の一層の向上、また、従来型の問題企業の摘発に加えて大規模上場会社における開示の適正性等の検証を実施していく必要があります。

金融商品取引業者等に対する検査においては、多様な業態、顧客及び複雑化・多様化する金融商品・取引それぞれの特性を踏まえ、リスク感度を一層高め、情報の収集・分析能力を強化することが課題と考えております。

加えて、クロスボーダー取引による違反行為に対しては、海外当局と連携して対応するとともに、内外プロ投資家による不公正取引にも引き続き厳正に対処していく必要があります。

証券取引等監視委員会としては、関係当局や自主規制機関等との連携を密にしつつ、より実効性のある効率的な市場監視を行い、公正・透明で信頼される市場の構築や投資者保護の確保に向け、国民の皆様の信頼に応えてまいる所存ですので、ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

平成28年12月 証券取引等監視委員会委員長 長谷川充弘


2.新着情報



3.市場へのメッセージ


株式会社SQIジャパン外2社に対する勧告等について

関東財務局が実施した株式会社SQIジャパン(以下「SQ社」といいます。)、株式会社CELL(以下「CE社」といいます。)及び株式会社AMオンライン(以下「AM社」といいます。)に対する検査の結果、これら3社(いずれも投資助言・代理業者)において重大な問題が認められたことから、SQ社及びCE社については平成28年11月25日、AM社については同年12月6日、証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、金融庁長官に対して行政処分を行うよう勧告しました。

【事案の概要等】

SQ社外2社は、投資顧問契約の勧誘に関して、仕手筋に関する情報やインサイダー情報等を入手した旨を謳っていましたが、実際にはそのような入手の事実はなく虚偽の内容を告げていました。さらに、AM社及びCE社は、投資顧問契約の勧誘に関して、「目標株価2倍は確定済み」など確実に利益が得られるかのような断定的判断を提供していました。

このほかにも、SQ社及びAM社は、投資助言業者を口コミ等によるランキング形式で紹介している複数のウェブサイトに広告を掲載し、これらのサイトにおいて、両社は上位にランキングされていました。しかしながら、これは広告会社との契約により、両社が必ず上位にランキングされる仕組みとなっており、口コミ等による評価ではないことが確認され、投資者を著しく誤認させる表示、いわゆる誇大広告を行っていたものです。

SQ社外2社に対しては、平成28年12月2日及び13日、関東財務局から(1)業務停止命令(1月)、(2)業務改善命令の行政処分が発出されています。

投資助言業者を含む金融商品取引業者は、法律により「必ず儲かる」、「値上がり確実」などの断定的な判断を提供して取引を勧誘することは禁止されています。こうした“謳い文句”を掲げる業者とは取引を控えるなど、取引に際しては慎重な検討が必要です。


アセットクリエーション株式会社外2社に対する勧告等について

関東財務局が実施したアセットクリエーション株式会社(以下「アセット社」といいます。)、A・Jアセットクリエーション株式会社(以下「AJ社」といいます。)及びイー・アセットマネジメント株式会社(以下「E社」といいます。)に対する検査の結果、これら3社(いずれも適格機関投資家等特例業務届出者)において重大な問題が認められたことから、平成28年12月2日、証券監視委は、金融庁長官に対して行政処分を行うよう勧告しました。

【事案の概要】

アセット社外2社は適格機関投資家等特例業務として、いわゆるプロ向けファンドの取得勧誘と運用を行っていました。当該3社はアセット社が元々E社の1支店であるなど人的につながりがあり、それぞれが運用するファンドの投資先が同じなど、共通点がありました。

アセット社及びAJ社は、適格機関投資家からの出資がないままファンドの運用を続けており、無登録で投資運用業等を行っている状況にあり、また、各社ともファンド資産を出資対象事業以外の使途で使用するなど投資者保護上問題のある業務運営も行っていました。

なお、平成28年12月8日、アセット社及びAJ社に対しては(1)業務廃止命令、(2)業務改善命令、E社に対しては業務改善命令の行政処分が関東財務局から発出されています。

特例業務届出者は、基本的にはいわゆるプロ投資家を相手に業務を行う者です。金融商品取引法の改正により、プロ投資家以外の出資者の範囲が見直され、平成28年3月1日以降は、一般個人の出資は原則として禁止となっています。


最近の取引調査に基づく勧告について

証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。

  • H28.12.2
ワタベウェディング株式会社との契約締結者からの情報受領者によるインサイダー取引
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20161202-1.htm

【事案の概要】

課徴金納付命令対象者(乙)は、ワタベウェディング株式会社(以下「ワタベ」といいます。)と業務委託契約を締結していたA社の役員甲から、同人が同社とワタベとの業務委託契約の履行に関し知った、ワタベの業務執行を決定する機関が、株式会社千趣会及び株式会社ディアーズ・ブレインと業務上の提携を行うことについての決定をした旨の重要事実(以下「本件重要事実」といいます。)の伝達を受けながら、本件重要事実の公表前にワタベ株式を買い付けたものです。

【事案の特色等】

本事案は、本件重要事実に関わった上場会社等の役職員や契約締結者等の会社関係者よりも外側の者である第三者によるインサイダー取引事案です。そのような第三者に対して未公表の重要事実を伝達する際は、特段の注意を要することを改めて認識していただきたいと思います。

平成27年度の勧告事案を振り返ってみますと、インサイダー取引における違反行為者の割合は、会社関係者等よりも、会社関係者等から重要事実等の伝達を受けた者(第一次情報受領者)の方が、2倍以上と多くなっています(詳しくは、平成28年7月28日公表「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」をご参照ください。)。

http://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/torichou/20160728.htm

本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。


最近の内外のプロ投資家等における取引調査に基づく勧告について

証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。

  • H28.12.6
モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社による株式会社西武ホールディングス株式に係る相場操縦
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20161206-2.htm

【事案の概要】

本件は、モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社のトレーディング業務等に従事していた者において、同社の業務に関し、株式会社西武ホールディングス株式(以下「(株)西武HD株式」といいます。)につき、同株式の売買を誘引する目的をもって、平成27年9月24日から同年10月6日まで及び同年10月13日から同年10月19日までの間、合計14取引日にわたり、東京証券取引所において、買い付ける意思がないのに、最良買い気配値付近に多数の買い注文を発注するなどの方法により、同株式合計41万6,500株を買い付けるとともに、同株式合計925万8,000株の買付けの申込みを行い、もって、自己の計算において、同株式の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、同市場における同株式の相場を変動させるべき一連の売買及び申込みをしたものです。

本件のトレーダーは、当時、2,122,708株の買いポジションを有していた(株)西武HD株式の株価が下落を続けたことにより発生することとなった多額の評価損の圧縮等を図るため、以下のような手法で相場操縦を行ったものです。

  • (1)売り注文を発注後に、買い付ける意思のない多数の買い注文(買い見せ玉)を発注する(見せ玉の板占有率(8本値)で最高 約80.0% 平均26.3%、買い注文の約定率は約4.3%(9,674,500株発注(うち416,500株約定)。

  • (2)他の投資家のアルゴリズム買い注文などを誘引し、先に発注していた売り注文と対当させて売り抜ける(売り注文の約定率は約59.2%(3,808,100株発注(うち2,255,700株約定))。

  • (3)売抜けに成功した場合及び売抜けに成功しなかった場合においても、数秒後に買い見せ玉を取り消す(買い注文の発注件数は19,335件(平均500株/件))。

【本事案の特徴】

  • (1)証券会社の自己売買取引において行われた行為。

  • (2)買い付ける意思のない買い注文の発注と取消しを繰り返すいわゆる「買い見せ玉」を用いることで買い優勢の状況を作り出し、他の投資者の買い注文を誘引することにより、(株)西武HD株式を高値で売却。

  • (3)日本取引所自主規制法人より提供された情報も参考として、実態解明を行ったもの。

証券監視委では、内外のプロ投資家等による不公正な疑いのある取引についても、積極的に調査を行うこととしており、問題が認められた場合には、関係部局とも連携しながら厳正に対応してまいりたいと考えております。


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