【金融便利帳】


 このコーナーは、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々な疑問について、わかりやすく解説するものです。
 今月のキーワードは「監督指針と事務ガイドライン」です。
   
監督指針と事務ガイドライン

 「事務ガイドライン」とは、平成10年6月の金融監督庁の発足を前に取りまとめられた、行政部内の職員向けの手引書のことです。当時、旧大蔵省は、ルールに基づく透明かつ公正な金融行政への転換の一環として、金融関係通達等を全面的に見直し、大幅な廃止及び省令・告示化などを行い、行政の透明性の向上を図りました。その一環として、行政の統一的な運営を図るための法令解釈、行政部内の手続き及び金融機関の財務の健全性や業務の適切性等の着眼点等につき、「事務ガイドライン」が策定され、一般に公表されました。
 一方、「監督指針」とは、基本的に、より多面的な評価に基づく総合的な監督体系の構築のため、監督事務の基本的考え方、監督上の評価項目、事務処理上の留意点について、従来の事務ガイドラインの内容を踏まえて体系的に整理し、必要な情報を極力集約したオールインワン型の行政部内の職員向けの手引書のことです。つまり、事務ガイドラインを発展的に解消し、新たに策定したものが監督指針ということができます。事務ガイドライン策定後、業態ごとの特性に即したより適切な監督業務の遂行のため、より多面的な評価に基づく総合的な監督体系の構築が必要とする見方が強まり、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針の策定を皮切りに、業態ごとの監督指針の策定が進みました。


.中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針の策定
   平成15年3月27日に公表された、金融審議会金融分科会第二部会報告「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」において、(1)中小・地域金融機関の業務は、営業地域が限定されており、特定の地域、業種に密着した営業展開を行っていること等の基本的特性を有していること、(2)中小・地域金融機関は、市場によるチェックが行われにくく、相対的にガバナンスが弱くなる可能性があること等から、それまでの事務ガイドラインにおいて規定されている領域にとどまらず、コーポレートガバナンスや経営の質、地域社会や取引先企業へのコミットメント(地域貢献)が収益力や財務の健全性に与える影響等の観点も取り入れた、より多面的な評価に基づく総合的な監督体系を構築する方向で検討することが必要とされました。
   これを踏まえ、中小企業の再生と地域経済の活性化を図り、あわせて中小・地域金融機関の不良債権問題を解決することを目的として策定された「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」(平成15年3月)の中で、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の策定が明記されました。これを受けて、中小・地域金融機関の監督事務に関し、その基本的考え方、監督上の評価項目、事務処理上の留意点について、従来の事務ガイドラインの内容を踏まえて体系的に整理した「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(平成16年5月)が策定、公表されました。
 なお、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針の策定に伴い、事務ガイドライン(第一分冊:預金取扱い金融機関関係)の中の、中小・地域金融機関の関連項目については削除されました。


.主要行等向けの総合的な監督指針の策定
   一方、主要行については、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針策定当時、PDF金融再生プログラム(平成14年10月)等に基づき、不良債権比率を平成17年3月末までに平成14年3月期(8.4%)の半分程度に低下させるという目標に向けた取組みを推進しているところでしたので、主要行向けの総合的な監督指針については、不良債権問題が正常化した段階で策定することが適当とされました。
 その後、平成17年3月期の主要行の不良債権比率は2.9%となり、主要行の不良債権問題が正常化したこと等を受け、「主要行等向けの総合的な監督指針」(平成17年10月)が策定、公表されました。これは、世界最高水準の金融サービスを提供し、我が国経済の発展と国民生活の向上に寄与することが期待されていると考えられる主要行等について、そのために必要な高度なリスク管理や適切な経営管理(ガバナンス)等に着眼点をおき、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針等の意義を踏まえつつ、その業務の特性や行政における過去の経験等を踏まえた、総合的な監督体系の確立を図る目的で策定されたものです。
 なお、主要行等向けの総合的な監督指針の策定に伴い、事務ガイドライン(第一分冊:預金取扱い金融機関関係)は、廃止されました。


.その他の業態等における監督指針の策定
   その他の業態についても、それぞれの業態の特性に則したより適切な監督業務の遂行のため、監督事務に関し、その基本的考え方、監督上の評価項目、事務処理上の留意点等について、従来の事務ガイドラインの内容も踏まえ、体系的に整備した監督指針が次々と策定されました(平成17年6月:金融先物取引業者向けの総合的な監督指針、平成17年7月:証券会社向けの総合的な監督指針、平成17年8月:保険会社向けの総合的な監督指針、平成18年3月:少額短期保険業者向けの監督指針)。なお、各業態の監督指針の策定の際に、事務ガイドラインの関連部分は廃止されています。
 また、法改正による新たな留意事項の追加や金融業界における新たな潮流に対応する上での監督上の着眼点の明確化のため、事務ガイドラインの枠組みを越えた監督指針の策定も進みました(平成16年12月:信託会社等に関する総合的な監督指針、平成17年6月:金融コングロマリット監督指針)。
 


 各監督指針及び事務ガイドラインの内容については、金融庁ホームページの「所管の法令・ガイドライン等」内の「事務ガイドライン・監督指針」にアクセスして下さい。


【金融ここが聞きたい!】


 このコーナーは、大臣の記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっとたくさんご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。
 
Q:会計を巡る事件が相次いでいることについての考えと、監査法人に対する金融庁の対応を聞かせください。


:監査をやられる方というのは、自分の職業としてやられるという側面のほかに、やはり大きな社会的責任を持った業務に取組むというのが、私は特徴であると思っております。これは、公認会計士或いは監査法人だけではなく、その他の例えば弁護士の方々なども、やはり大きな社会的な責任を持っているという職業分野であると思っております。そういう意味では、一連の監査人の不祥事が続いたということは、極めて遺憾なことであり、こういうものにどう対処していくのかということは、当該の色々なことに関係した方々の処分に止まらず、やはり監査法人のあり方、或いは監査人のあり方等々を含めまして、どこかできちんと検討し、対策をとっていかなければならないと思っております。まだ正式に、どこの場面できちんと議論するかは決まっておりませんが、既に金融審議会等もございますので、そことちょっと御相談をして、今後、監査全般にわたってきちんとした対応をとれるように、至急に行動したいと思っております。
【平成18年3月31日(金) 閣議後会見】
 
Q:日本会計士協会が会計士の不祥事に対する対策を発表しました。協会では、官による規制ではなく自主規制によって対応することが望ましいと言っていますが、お考えをお聞かせください。


:弁護士会の歴史を調べられたらいいと思いますが、弁護士法という法律があって、それぞれの弁護士会に登録をして初めて弁護士という業務を開始できるという、登録制であって、弁護士会というのは極めて自治的な、官の介入を許さない、しかし自主的に自分達を律していこうという団体になっています。
 公認会計士の皆様方の登録制というのは、それ自体、弁護士会的なところまでは到底行っておりませんけれども、構成員自ら、自分たちの判断で運営していこうと。そして、倫理規定等を設けて不祥事等を少なくしていこうというその努力は私は高く評価したいと思っております。
 監査する人を監査しなければいけないというのは情けない話でございますけれども、そういう仕組みを公認会計士の皆さんが自ら作られたということは、その運営、取り運びをこれから温かく見守っていかなければならないと思っております。
【平成18年4月7日(金) 閣議後会見】
 
Q: 金融庁の懇談会で貸金業について中間整理がまとめられますが、特にグレーゾーン金利の扱いについて、大臣のお考えと、今後の対応についてお聞かせください。


:実は先週末、法務省の民事局長と色々話をして、今週に入ってから金融庁の事務方と法務省の間で、出資法、利息制限法をどう取り扱っていくのかということを協議しましょうと申し上げました。向こうもぜひそうしたいと仰っていました。
 ただ法務省の中で、出資法というのは実は刑事局所管の法律ですので、刑事局とも話をしていきたいと思っております。と申しますのは、立法したときの意図というのは、もちろん立法意思はあるわけですが、最高裁の判例というのは、それを徐々に修正していると考えざるを得ないと私は思っておりまして、仮に最高裁がそういう判例を通じて一定のものの考え方を示した以上、行政府、また特に立法府は、それにどう対応していくかということを真剣に考える責任と義務があると私は考えております。
【平成18年4月18日(火) 閣議後会見】


【お知らせ】


〇 大臣・副大臣・政務官への質問募集中

 本号では休載させていただきましたが、アクセスFSAでは、読者の皆様から寄せられた金融を巡る大臣・副大臣・政務官へのご質問に、大臣・副大臣・政務官が直接お答えする【大臣に質問!】【副大臣に質問!】【政務官に質問!】のコーナーを設けております。「金融庁のやっている金融行政って、よくわからないんだけれど、大臣・副大臣・政務官にこんなことを、是非、直接聞いてみたい!」というご質問がございましたら、金融庁ホームページの「ご意見箱」にお寄せください。その際、ご意見箱の件名の欄には、必ず「大臣に質問」「副大臣に質問」「政務官に質問」とご記入ください。また、本文の欄にご質問の内容をご記入下さい。ご意見箱のコーナーには、「45行以内」とありますが、「大臣に質問」、「副大臣に質問」、「政務官に質問」の場合には、ご質問の趣旨を明確にさせていただくために、恐縮ですが100字以内に収めていただきますようお願いいたします。お寄せいただきましたご質問の中から1問選定させていただき、「アクセスFSA」において大臣・副大臣・政務官の回答を掲載させていただきます。


〇 新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内


 金融庁ホームページでは、新着情報メール配信サービスを行っております。皆様のメールアドレス等を予めご登録いただきますと、毎月発行される「アクセスFSA」や日々発表される各種報道発表など、新着情報を1日1回、電子メールでご案内いたします。ご登録をご希望の方は、「新着情報メール配信サービス」へどうぞ。


【3月の主な報道発表等】
 
 
1日(水) 保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム「中間論点整理 〜適合性原則を踏まえた保険商品の販売・勧誘のあり方〜」を公表
 
3日(金) 韓国外換銀行在日支店に対する行政処分
  国際コンファレンス開催
 
7日(火) 事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正(案)の公表(パブリック・コメント)
 
9日(木) J.P.モルガン証券会社東京支店に対する行政処分
保険業法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(案)、保険業法施行令の一部を改正する政令(案)及び保険業法施行規則等の一部を改正する内閣府令(案)等(少額短期保険業界関係)に対するパブリック・コメントの結果
第1回情報セキュリティに関する検討会開催
 
10日(金) 情報セキュリティに関する検討会の設置
「保険業法等の一部を改正する法律」の一部施行に伴う保険業法施行令(案)(保険のセーフティネットの見直し関係)に対するパブリック・コメントの結果
証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会及び市場機能支援室の設置
株式会社近畿大阪銀行に対する行政処分(近畿財務局長処分)
株式会社福岡銀行に対する行政処分(福岡財務支局長処分)
第12回貸金業制度等に関する懇談会開催
 
13日(月) 金融機関等から業務の委託を受けた者に対する検査について(案)の公表(パブリック・コメント)
「保険業法等の一部を改正する法律」の一部の施行に伴う内閣府令・財務省令(案)、内閣府令(案)等(保険のセーフティネットの見直し関係)に対するパブリック・コメントの結果
 
14日(火) 届出を行うべきタリバーン関係者等のリストの一部改訂を発出
第20回保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム開催
 
15日(水) 株式等の売買発注管理に係る一斉点検等の結果の公表
信託会社等に関する総合的な監督指針の一部改正(案)の公表(パブリック・コメント)
 
16日(木) 第1回証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会開催
 
22日(水) 第13回貸金行制度等に関する懇談会開催
 
23日(木) 預金保険法施行令の一部を改正する政令(案)及び預金保険法第58条の3第1項に規定する措置に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)に対するパブリック・コメントの結果
 
24日(金) 株式会社あおぞら銀行の普通銀行への転換
株式会社佐賀共栄銀行に対する行政処分(福岡財務支局長処分)
 
27日(月) 第3回証券取引所のあり方等に関する有識者懇談会開催
会社法及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う、証券取引法第百六十一条の二に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)等に対するパブリック・コメントの結果
第2回証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会開催
 
30日(木) 保険会社向けの総合的な監督指針の一部改正(案)の公表(パブリック・コメント)
金融検査評定制度の試行に関するQ&Aの公表
さわかみ投信株式会社に対する行政処分
JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社に対する行政処分
監査法人及び公認会計士の懲戒処分
 
31日(金) 貸金業関係統計資料の更新
金融機関等から業務の委託を受けた者に対する検査について(案)に対するパブリック・コメントの結果
少額短期保険業者向けの監督指針(案)に対するパブリック・コメントの結果
証券取引所のシステム整備のあり方等に関する論点整理(第二次)の公表
バーゼルII第3の柱の告示(案)及び監督指針(案)並びにバーゼルIIにおける適格格付機関の格付と告示上のリスク・ウェイトとの対応関係(マッピング)並びにバーゼルIIに関する『本邦における証券化取引に対する適格格付の公表要件』(案)及びバーゼルIIに関するQ&A等の公表
主要行向けの総合的な監督指針、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針、保険会社向けの総合的な監督指針の一部改正(案)に対するパブリック・コメントの結果
監督指針・事務ガイドラインにおける審査基準・処分基準の公表
金融機関のCSR(企業の社会的責任)事例集の公表
東洋総研株式会社に対する行政処分(東海財務局長処分)
第14回貸金業制度等に関する懇談会開催
   
マークのある項目につきましては、から公表された内容にアクセスできます。

金融庁アクセスFSAアクセスFSA 第41号