アクセスFSA 第230号

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鈴木大臣とファベール国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)議長との面会

今般、2021年に設立された国際的なサステナビリティ基準設定主体である国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の初代議長を務めるエマニュエル・ファベール氏が、議長就任後初めて来日し、本年10月27日に鈴木大臣との面会を行いました。

1.経緯

国際会計基準(IFRS)財団は2021年11月、気候変動をはじめとするサステナビリティ開示に係る国際的な基準設定主体であるISSBを設立しました。ISSBでは現在、気候変動に関する国際的な開示基準の策定が進められており、2023年の可能な限り早い時期に最終化される見込みです。加えて、ISSBでは、気候変動の次の基準開発のテーマについて、これから本格的な議論を行う予定です。

ISSBによる基準策定に対する日本からの参画については、2021年8月、IFRS財団に対して資金拠出及び人材面の貢献の意向を表明するため、官民共同でIFRS財団評議員会議長宛に書簡※1を送付し、同年11月には鈴木大臣から同議長宛に書簡※2を送付しました。さらに、令和3年度補正予算においてISSBの初期運営費用として約1.1億円を計上し、IFRS財団に拠出しました。

これらを受け、東京にあるIFRS財団のアジア・オセアニア(AO)オフィスが、ISSBの拠点としても活用されることが決定しました。また、本年9月、ISSBのメンバーとして日本から小森博司理事が就任されました。

写真:鈴木大臣(左)とファベールISSB議長(右)
写真:鈴木大臣(左)とファベールISSB議長(右)

加えて、ISSBが策定する基準と各法域のサステナビリティ開示に関する取組みとの互換性を強化するため、ISSBにより本年4月に設立された各法域作業グループ(Jurisdictional Working Group)※3に、日本から金融庁及びサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が参加しています。

2.面会の概要

鈴木大臣より、日本の取組みとして、有価証券報告書において気候変動や人的資本を含めたサステナビリティ情報を提供するための記載欄を新設することを紹介したほか、ISSBの今後の取組みの方針等について意見交換を行いました。


※1   2021年9月6日公表 「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)への資金拠出に関するIFRS財団評議員

  会議長へのレター発出について」は、https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20210906/20210906.htmlをご参照ください。

※2 2021年12月27日公表 「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)に関するIFRS財団評議員会議長への

  レター発出について」は、https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20211227/20211227.htmlをご参照ください。

※3 主要地域(日本、米国、欧州、英国、中国)の当局及びサステナビリティ基準設定主体が参加。


中小企業の金融の円滑化等に関する意見交換会

本年11月28日、金融庁は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)や世界的な物価高騰等の影響により、依然として厳しい資金繰り状況に直面している事業者が多いことや、年末・年度末に向けて、運転資金等の需要が高まることを踏まえ、中小企業の金融の円滑化等について、鈴木大臣、西村経済産業大臣をはじめとする政府当局者と官民の金融関係団体等の代表者との意見交換会を開催しました

写真:意見交換会で発言する鈴木大臣
写真:意見交換会で発言する鈴木大臣

同意見交換会においては、鈴木大臣から官民の金融関係団体等の代表者に対して、コロナに加え、物価高騰の影響も重なる中で、金融機関等による事業者支援への尽力について謝辞を述べるとともに、資金繰り支援等の事業者支援に全力で取り組んでいただくようお願いを致しました。

また、これまで同様、資金繰り支援に最優先で取り組んでいくといった声や、本源的な収益力回復に向けた事業再構築に資するアドバイスの提供により、事業者の経営課題解決を全力で支援していくといった声、事業再生・事業再構築、収益力の改善に向けた支援のほか、取引先のDX・GX推進にも積極的に支援していくといった声が聞かれました。

<意見交換会参加金融関係団体等>
全国銀行協会、全国地方銀行協会、 第二地方銀行協会、信託協会、 全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、全国労働金庫協会、農林中央金庫、 日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、日本政策投資銀行、 全国信用保証協会連合会、住宅金融支援機構

 さらに、同日付にて、事業者の業況を積極的に把握し、資金繰り相談に丁寧に対応するなど、事業者のニーズに応じたきめ細かな支援を引き続き徹底すること、債務返済猶予や債務減免等の金融支援を伴う場合を含めた事業者の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援に努めること、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けて、「経営者保証に関するガイドライン」の一層の浸透・定着に努めること等を書面で要請するとともに、当該要請文を公表し、要請内容の周知徹底を図りました。

写真:意見交換会に出席した藤丸副大臣(左)と鈴木政務官(右)

写真:意見交換会に出席した藤丸副大臣(左)と鈴木政務官(右)


 詳しくは、本年11月28日公表 「中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化について」をご参照ください。https://www.fsa.go.jp/news/r4/20221128/20221128.html


長谷川 証券取引等監視委員会委員長 退任インタビュー

証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」)は、市場の公正性・透明性を確保し、投資者保護を実現するために、内閣総理大臣から任命された委員長及び委員2名で構成される合議制の機関として、平成4年に設置されました。
 本年12月12日をもって任期満了を迎える長谷川 充弘委員長に、これまで2期6年間の取組みや所感等を聞きました。

写真:長谷川証券取引等監視委員会委員長

長谷川 充弘(はせがわ みつひろ) 証券取引等監視委員会委員長

 昭和28年11月生まれ。 名古屋地方検察庁検事正、広島高等検察庁検事長を経て、平成28年12月より現職(令和元年12月に再任)。

- 退任に当たってのご所感をお聞かせください。

証券監視委では、調査・検査を積極的に実施し、株式のインサイダー取引、相場操縦等の不公正取引、有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金勧告を行い、重大悪質事案を刑事告発する一方で、多様な金融商品取引業者の法令違反について行政処分勧告等を行う活動を展開してきました。これまで相応の成果を上げて、市場の公正性・透明性の確保に貢献してきたと思います。私は、2期6年にわたって証券監視委の活動に参画し、私なりに達成感・充実感を得ることができました。これも証券監視委の両委員・事務局、金融庁、関係機関の皆様のおかげであると、感謝しております。

私は、平成の初めころ、戦後最大の経済事件と呼ばれるイトマン事件の捜査に加わりました。その発端、背景には反市場勢力の仕手戦に伴う地獄のような資金繰りがあったと知り、証券市場には無法者が跋扈していると憂慮したのを覚えています。平成4年に証券監視委が発足したわけでありますが、証券監視委は、犯則調査の刑事告発により、一罰百戒の無法者退治を展開し、その後、課徴金制度の導入、権限拡充に伴い、幅広い法令違反を課徴金勧告するようになりました。また、問題ある業者に対する行政処分勧告も行ってまいりました。

その成果として、日本の証券市場の公正性・透明性を世界に誇れるようになってきたと思います。証券監視委発足前の病理現象を知っているだけに、そのような歴史に参画できたことにつき、感慨深いものがございます。

- 証券監視委の印象について、委員長就任前と就任後で、ギャップを感じたことがありましたら、お聞かせください。

私の場合、重大悪質な事案の刑事告発をお受けするという検察の幹部の立場で、証券監視委の特別調査課の犯則調査に接し、それにつき相応に精通していると思っていましたが、こちらに参りまして、証券監視委は、課徴金の調査・勧告、証券検査・行政処分勧告等により、非常に高度化・複雑化しつつある分野でも大きな成果を上げている、その高い能力を有している組織だと感銘を受けました。

証券監視委は、金融証券分野の行政・調査・検査のエキスパートを中心に、公認会計士、裁判官・検察官・弁護士の出身の法律家、国税、税関、警察、公正取引委員会からの出向者、金融証券の民間会社の出身者、デジタルの専門家等、様々な出身母体の人たちが結集する組織であり、多様な知識、経験、ノウハウが相互補完しつつ、相乗効果を発揮していることを知りました。そのことに瞠目した次第でございます。類稀なる優れたダイバーシティ組織であると認識いたしました。

証券監視委の組織と事案処理の流れ
証券監視委の組織と事案処理の流れ

- 2期6年の中で特に印象に残った事案について、お聞かせください。

役員報酬の1億円以上の個別開示制度というものが比較的新しく設けられましたけれども、大手自動車会社の世界的に著名な会長の報酬が有価証券報告書に過少に記載されるという違反がありました。刑事告発後、その会長が国外に逃亡した点は残念ではありますが、会社は罰金を科せられ、開示検査を経て多額の課徴金も課せられました。役員報酬の個別開示は、コーポレートガバナンスの状況に関する極めて重要な企業情報です。その不正が、初めて明らかになり、刑事告発、課徴金となったことは、歴史に残る有意義なものであったと思います。

また、新型コロナウイルスの猛威が内外の様々な活動に著しい影響を与えている最中、その治療法を開発すると標榜する会社の関連のインサイダー取引と、その資金調達に関する第三者割当増資の資金手当についての虚偽の適時開示、IRを偽計という法的判断で刑事告発いたしました。これは、いわゆる「ハコ企業」が、市場から詐術を用いて資金調達をするという不公正ファイナンスの一種であり、証券監視委が情報収集、摘発に注力していた分野であっただけに、大きな意義があったと思っています。

大手証券会社による安定操作という相場操縦の刑事告発が、社会的に大きな衝撃を与えたと思いますが、この事案につきましては、その会社のブロックオファー取引というスキームに空売りを誘発するリスクがあったことが違反を招いたという側面があり、その特殊性にご留意いただきたいと思います。証券会社は、市場のゲートキーパーとして売買審査を的確に行う責任を有しており、日本の多くの証券会社では売買審査の強化、法令遵守に努めてきたと承知しています。また、告発対象会社では、並行して実施された証券検査に基づく行政処分勧告、業務改善命令等を受け、売買審査態勢の強化、法令遵守態勢の改善に努められていることに期待しています。

- 委員長在任中に特に注力された取組みについてお聞かせください。

この委員会がダイバーシティ組織であることは、先ほど申し上げましたが、その効用を高めていくために、多様なバックグラウンドの人たちが、それぞれの専門性に誇りを持つとともに、他の専門性を尊重し、お互いに学び合うことに意識的に取り組みました。例えば、適正かつ多角的に収集した証拠を総合判断して、適切に事実認定した上で的確な法律判断を行うという機能の強化について、取引の高度で専門的な特質を知り尽くした調査官・検査官と、法分野の経験豊富な法律家とのコラボが円滑に機能して専門性の相互補完が向上するように促してまいりました。

また、証券監視委は法執行機関として、ルールベースを重視するわけでありますが、それだけでなく、その業務の過程と成果が日本の市場と経済にどのように影響をもたらすかをプリンシプルベースでも検討し、実質的に意味のある仕事をしていくことを唱えてまいりました。これは金融庁の方針から私なりに学んだものであります。

写真:インタビューの様子
インタビューの様子

そして、証券監視委のミッションたる資本市場の公正性・透明性への信頼性を高めていくには、市場関係者の自己規律の強化を促す、法令違反の未然防止、再発防止に有益な情報発信が重要と考え、その点にも注力してまいりました。私自身も、開示不正の未然防止のため、講演会で発言してきました。どのようなことを申し上げたかというと、「経営が厳しいとき、有価証券報告書の数字を良く見せかける巧妙なトリックで問題を先送りすることが少なくないわけですが、不正隠蔽のバトンリレーを繰り返し、その過程で虚偽の数字が雪だるま式に膨らんでいき、その問題が発覚したときには、責任を負うべき人が過去の人となり、最後の担当者が厳しい責任追及を受けることになります。そのようなことが起きないように、問題解決を先送りしないで次世代に対する責任を果たしていくことが重要であります。」と語ってきました。これは、私の検察時代の捜査体験での複雑な思いを踏まえたものでもあります。

- 最後に、証券監視委の次期体制に向けて一言、お聞かせください。

資本市場のグローバル化、デジタライゼーション、金融商品の高度化・複雑化が著しく進展していますが、それだけでなく、法令違反の証拠を残さないようにするための様々な隠蔽工作も進化しています。これまでの調査・検査のノウハウの蓄積を踏まえつつも、対応策の更なる強化、そのための英知の結集、工夫が重要と思います。デジタル面でのツールの強化も必要ですが、それだけで問題が解決するわけではありません。ダイバーシティ組織の効用を活かしつつ、調査・検査に精通する人たちのアナログな経験値、ノウハウも継承して向上させていくことが重要であると思います。

証券監視委が市場を汚す輩から恐れられ、自己規律に努める投資家や健全な業者からは支持、信頼される存在として更なる発展を遂げていくことが必要です。委員長・両委員と事務局がそれぞれの持ち味を活かして、力を合わせて協働していくことが重要であると思います。また、耳をすまして、市場の声をよく聞きながら、自主規制機関や捜査当局等の関係機関との連携を一層強化させていくことが肝要であるとも思っております。関係各位におかれましても、引き続き証券監視委の活動にご理解、ご支援をお願いする次第であります。6年間ありがとうございました。

(インタビュアー:総務課市場監視調整官 福留 宰)


インタビューは、感染対策に留意しつつ、換気を行いながら十分な距離を取って実施しました。


コーポレートガバナンス改革
~「ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラム」の設置~

企画市場局企業開示課 課長補佐 松井 章
 

1.コーポレートガバナンス改革の取組み

金融庁は、これまで、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて、スチュワードシップ・コード※1やコーポレートガバナンス・コード※2の策定・改訂等を行い、コーポレートガバナンス改革の取組みを進めてきました。

こうした取組みを通じ、例えば、本年7月時点において、プライム市場上場企業の9割超が取締役のうち3分の1以上の独立社外取締役を選任し、プライム市場上場企業の8割超が指名委員会や報酬委員会(任意のものを含む)を設置するなどの進展が見られています。

今後は、こうした形式面での対応にとどまらず、取締役会の一層の機能発揮、投資家と企業との建設的な対話の実効性向上等により、中長期的な企業価値向上といった改革の趣旨に沿った実質的な対応が進むことが期待されます。

こうした観点から、現在、投資家と企業におけるコーポレートガバナンス改革の取組状況のフォローアップを行うほか、改革の実質化に向けた環境整備の一環として、投資家と企業との対話の促進のため、重要提案行為の規律のあり方など、大量保有報告制度※3等について検討課題の整理を行っています。

図:コープレートガバナンス改革の深化に向けた取組み

2.ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラムについて

前述のとおり、コーポレートガバナンス改革は企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上、ひいては経済全体の発展に寄与するものであり、我が国にとって重要な政策の一つです。

本年9月22日(現地時間)に行われた、ニューヨーク証券取引所における岸田総理の講演においては、「とても大切な政策の一つは、コーポレートガバナンス改革だ。(中略)近々、世界中の投資家から意見を聞く場を設けるなど、日本のコーポレートガバナンス改革を加速化し、更に強化する。」との発言がございました。

本発言も踏まえ、コーポレートガバナンス改革の実質化に向けて、金融庁において、海外投資家を含むステークホルダーから幅広く意見をいただくための「ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラム」を設置いたしました。

第1回目のフォーラムは本年9月27日に、アジアを中心とする機関投資家の団体であるACGA(Asian Corporate Governance Association)と、第2回目のフォーラムは本年10月3日に、英国を中心とする機関投資家の団体であるICGN(International Corporate Governance Network)と、それぞれ開催し、日本のコーポレートガバナンスの進展や、今後の課題について意見交換を行いました。また、第3回目のフォーラムとして、米国の投資家と意見交換を行う場を設ける予定です。

フォーラムでいただいた意見等を踏まえ、今後、来春を目途に、コーポレートガバナンス改革を推し進めるための方策(アクション・プログラム)を取りまとめ、改革のより一層の実質化に向けた取組みを進めてまいります。

(※)「ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラム」については以下のウェブサイトをご参照ください。

https://www.fsa.go.jp/singi/japan_corporate_governance_forum/index.html


※1 スチュワードシップ・コードとは、機関投資家(年金基金やその委託を受けた運用機関等)に対して、企業との対話を行い、中長期的視点から投資先企業の持続的成長を促すことを求める行動原則。
PDFhttps://www.fsa.go.jp/news/r1/singi/20200324/01.pdf

※2 コーポレートガバナンス・コードとは、上場企業に対して、幅広いステークホルダー(株主、従業員、顧客、取引先、地域社会等)と適切に協働しつつ、実効的な経営戦略の下、中長期的な収益力の改善を図ることを求める行動原則。
PDFhttps://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf新しいウィンドウで開きます

※3 大量保有報告制度とは、株券等に係る大量保有の状況を投資者に迅速に開示するための制度。上場会社が発行する株券等の保有割合が5%超となった者は「大量保有報告書」の提出が義務付けられている。
 本制度における「重要提案行為」とは、投資先企業の株主総会において、又はその「役員」に対し、発行者の事業活動に重大な変更を加え、又は重大な影響を及ぼす行為として、政令に列挙する一定の事項を提案する行為。機関投資家については、開示の事務負担の観点から、大量保有報告書等の提出期限等が特例制度として緩和されているところ、「重要提案行為等」を行うことを保有の目的とする場合には、当該特例制度の適用はない。こうした「重要提案行為」の範囲が不明確であることが投資家と企業との建設的な対話の支障になっているとの指摘がある。


「金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習
(Delta Wall Ⅶ)」の実施

金融庁では、今年で7回目となる「金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習(Delta Wall Ⅶ)」を、本年10月18日から27日にかけて開催しました

1.金融分野のサイバーセキュリティを巡る状況

世界各国において、大規模なサイバー攻撃が発生しており、攻撃手法は一層高度化・複雑化しています。我が国においても、サイバー攻撃による業務妨害、重要情報の窃取、金銭被害等が発生している状況であり、金融分野への影響が懸念されています。

こうしたサイバー攻撃の脅威は、金融システムの安定に影響を及ぼしかねない大きなリスクとなっており、金融業界全体のインシデント対応能力の更なる向上が不可欠となっております。

2.昨年までの演習の概要

昨年までに6回演習を実施し、2016年度は77先、2017年度は101先、2018年度は105先、2019年度は121先、2020年度は114先、2021年度は150先の金融機関が参加しました。これまでの演習を通じて、多くの金融機関がコンティンジェンシープラン、対応マニュアル等の規程類の見直しや社内外の情報連携強化に向けた対応を実施し、インシデント対応態勢を改善しているところです。

3.今年の演習(Delta Wall Ⅶ)の概要

今年の演習(Delta Wall Ⅶ)は、金融機関の演習参加率を向上させる観点から、証券会社や資金移動業者などの参加枠を拡大し、他の業態をあわせて過去最多の合計160先が参加しました。また、演習には財務局等も参加し、金融機関からの連絡に対応しました。

演習シナリオでは、最新のサイバー攻撃の脅威動向を踏まえ、顧客情報の漏えい・Webサイトの異常発生、ネットワーク機器の異常を端緒とした業務システム等の停止、情報漏えいを端緒とした暗号資産流出などといった事象を想定しました。また、銀行業態についてはインシデント対応能力のより一層の高度化を図る観点から、事前にシナリオを開示しないブラインド方式で実施しました。その他の業態については事前にシナリオ骨子を開示し、実施しました。

演習では、技術的対応を含めた攻撃内容の調査や、初動対応、顧客対応、復旧対応等の業務継続体制を確認しました。

なお、銀行業態では演習での気づきを業務に活かせるよう、演習後1ヵ月以内に振り返り研修を開催し、演習での対応例や対応に苦慮した点・改善点などについて参加者間で意見交換を行うことで、インシデント能力の向上を図っています。

写真:演習の様子
写真:演習の様子

4.演習結果の評価とフィードバックについて

本演習では、参加金融機関がPDCAサイクルを回し、対応能力を向上させることができるよう、具体的な改善策や優良事例を示すなど、事後評価に力点を置いています。また、参加金融機関が演習において対応できなかった項目の自己分析結果を提出し、課題を明確化することで演習効果を高めております。

そして、演習結果については、参加金融機関に個別にフィードバックするだけではなく業界全体にも還元することにより、金融業界全体のサイバーセキュリティ対策の向上を図っています。


信用金庫とお取引いただいているお客さまへ
-マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策にご協力ください-

信用金庫とお取引いただいているお客さまへ -マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策にご協力ください-

金融庁の人気者 つみたてワニーサ

アクセスFSA 2022年9月号で始めた不定期コーナー「FSAプラス」の第2回です。
 初回は「金融庁のシンボルマーク」について紹介しましたが、今回は「つみたてワニーサ」(通称:ワニーサ)です。

ワニーサは、2018年1月からスタートした「つみたてNISA」の普及推進のため、一般公募により選ばれたキャラクターで、同年4月21日に公表されました。

つみたてワニーサ

つみたてワニーサ

ある日突然人間界に現れた優しいワニ。ゆっくり慎重派だけど、皆から信頼され愛されている。どっしりと安定感のある背中にはいつも何かを乗せて運んでいて、不思議な尻尾は右肩上がりに成長していく。

 こうした事情もあり、ワニーサの尻尾は常に向かって左側にあります。
 ワニーサの向きは全て同じでも、よろこぶワニーサ、おどろくワニーサ、おかしをたべているワニーサ、スマホをみるワニーサなどなど、バリエーションは豊富に揃っています。

 つみたてNISAの普及促進に向けて、ぬいぐるみやクリアファイルといったワニーサグッズも活用されています。つみたてワニーサは、金融庁エントランスにも置かれているほか、NISA関連のイベントがあるときは現場に出張しています。

 ワニーサは、金融庁が定める使用規定に従って利用いただく限り、どなたでも自由にご活用いただけます
 ちなみに、使用規定では、ワニーサに使われている色も細かく指定されていて、全身の緑色は「ワニーサグリーン」と名付けられています。

つみたてワニーサの色指定

(参考)「ワニーサグリーン」の作り方
 CMYKカラー:C(シアン)70、M(マゼンダ)15、Y(イエロー)100、K(ブラック)0
 RGBカラー :R(レッド)111、G(グリーン)159、B(ブルー)64

 現在、NISAの抜本的拡充・恒久化に向けた議論が行われていますので、今後、ワニーサの活躍の場も益々広がりそうです。

つみたてワニーサの画像

※つみたてワニーサはこちらからダウンロードできます。https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/wa_nisa/index.html


先月の金融庁の主な取組み(令和4年11月1日~11月30日)

金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」(第1回)の開催(11月2日)
金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第2回)の開催(11月2日)
金融審議会「顧客本位タスクフォース」(第3回)の開催(11月7日)
企業会計審議会第23回内部統制部会の開催(11月8日)
令和4年度第2次補正予算(案)の公表(11月8日)
「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」(第8回)の開催(11月10日)
金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」(第2回)の開催(11月11日)
「インパクト投資等に関する検討会」(第2回)の開催(11月11日)
IOSCO(証券監督者国際機構)・APRC(アジア太平洋地域委員会)における監督MMoU(多国間の監督上の情報交換枠組み)への署名(11月11日)
「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第8回)の開催(11月14日)
「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」(第7回)の開催(11月14日)
金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第22回)の開催(11月18日)
金融審議会「顧客本位タスクフォース」(第4回)の開催(11月22日)
「令和4年度金融庁政策評価実施計画」等の策定(11月22日)
金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第3回)の開催(11月25日)
「インパクト投資等に関する検討会」(第3回)の開催(11月25日)
日スイス財務金融協議の開催(11月25日)
合同会社等の社員権の取得勧誘に対する注意喚起(11月28日)
「脱炭素等に向けた金融機関等の取組みに関する検討会」(第2回)の開催(11月30日)


編集後記

 先月は、「金融危機から25年」という特集を目にしたり、当時、当局者として危機対応に当たっておられた方のお話を伺ったりする機会が多くありました。

 25年前、私はまだ高校2年生でしたが、「ジョホールバルの歓喜」という明るいニュースとともに、連日のように報じられていた「破綻」が印象に残っています。

 今、金融行政に携わる職員の一人として、当時、危機対応の最前線で職務を遂行され、危機を乗り越えられた方々には、ただただ敬服するばかりですが、折しも「ドーハの歓喜」と呼ばれる歴史的勝利を2度も目の当たりにして、四半世紀ぶりにサッカーと金融が結びつき、「日本サッカーのレベルが当時より確実に上がっているように、日本の金融行政のレベルも当時より上がっていなければいけない」と自己研鑽の必要性を痛感するに至りました。

 気が付けば、今年も残りわずかです。12月は、例年、その時々の様々な政策課題について、一定の結論が出される節目の月でもあります。アクセスFSAでは、来年も政策の最前線の情報をお届けできるように努めてまいります。

 今月もアクセスFSAをご覧いただき、ありがとうございました。

金融庁広報室長 守屋 貴之
編集・発行:金融庁広報室

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