アクセスFSA 第242号

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新副大臣・新政務官の就任

本年9月13日、岸田総理による内閣改造が行われ、金融担当大臣として鈴木 俊一大臣が再任となりました。また、9月15日の臨時閣議において、副大臣及び大臣政務官が決定し、金融担当として井林 辰憲(いばやし たつのり)内閣府副大臣、神田 潤一(かんだ じゅんいち)大臣政務官が就任しました。
 9月19日、井林内閣府副大臣及び神田大臣政務官は、金融庁に初登庁し、金融庁職員に対し訓示を行うとともに、藤丸 敏 前内閣府副大臣、鈴木 英敬 前大臣政務官からそれぞれ引継ぎを受けました。

訓示式
 
写真:井林内閣府副大臣の訓示の模様
写真:井林内閣府副大臣の訓示の模様
写真:神田大臣政務官の訓示の模様
写真:神田大臣政務官の訓示の模様
事務引継式

写真:井林内閣府副大臣(左)と藤丸 前内閣府副大臣(右)の引継ぎの模様
写真:井林内閣府副大臣(左)と藤丸 前内閣府副大臣(右)の引継ぎの模様
写真:神田大臣政務官(右)と鈴木 前大臣政務官(左)の引継ぎの模様
写真:神田大臣政務官(右)と鈴木 前大臣政務官(左)の引継ぎの模様

令和5年全国証券大会
~井林内閣府副大臣の挨拶~

本年9月25日、日本証券業協会、全国証券取引所協議会、投資信託協会による「令和5年全国証券大会」が開催され、井林内閣府副大臣が以下のように挨拶を行いました。

写真:井林内閣府副大臣による挨拶の模様
写真:井林内閣府副大臣による挨拶の模様

1.はじめに

本日は、全国証券大会にお招きいただき、厚く御礼申し上げます。
 先般発足しました第二次岸田第二次改造内閣において、金融担当の内閣府副大臣を拝命しました、井林辰憲でございます。
 私はこれまで、衆議院財務金融委員会理事や自由民主党財務金融部会長を務めさせていただくとともに、自由民主党金融調査会にも所属するなど、金融に縁の深い役職も務めてまいりました。皆様方には、日本の金融・経済に係る施策に多大なるご協力を頂いておりますが、引き続きどうぞよろしくお願い致します。

2.貯蓄から投資へ

先ほど岸田総理からもありましたとおり、政府は、本年を「資産所得倍増元年」とし、「貯蓄から投資へ」のシフトを進めるための重要な一年と位置付けています。
 ご存じのとおり、現在、わが国における家計金融資産の半分以上は現預金で保有されており、米国や英国と比較して、株式や投資信託の保有割合が低い水準に留まっています。その結果、20年間の家計の金融資産の推移を見ると、米国が3.3倍、英国が2.3倍に伸びている一方、わが国では1.4倍にとどまっており、運用リターンの差が大きく影響しています。
 このため、わが国の家計が投資しやすい環境を整備し、家計に眠る現預金を投資につなげ、勤労所得に加え、金融資産所得も増やしていくことが重要です。
 貯蓄から投資へのシフトを促し、家計の安定的な資産形成を後押ししていくためには、昨年11月に策定した「資産所得倍増プラン」に盛り込まれているように、
・NISA制度の恒久化・抜本的拡充や、
・金融機関による顧客本位の業務運営の確保、
・国民の金融リテラシー向上に向けた金融経済教育の拡充、
といった取組が重要と考えています。
 まず、家計の投資行動の変化を促すため、来年1月より、NISAを抜本的に拡充します。NISAは、家計の資産形成の入口として定着しつつありますが、この新しいNISAにより、新たに投資を行う層がさらに広がることが期待されており、新制度の円滑な導入と普及に努めてまいります。
 一方、わが国の家計の投資先として、海外企業ばかりが選ばれてしまうと、日本企業の成長、ひいてはわが国の経済成長にはつながらないのではないでしょうか。私は、経済再生担当も兼務する副大臣という立場として、日本企業の企業価値が向上し、より魅力的な投資先になることも極めて重要だと考えております。

写真:全国証券大会の模様
写真:全国証券大会の模様

日本企業の企業価値が向上すれば、家計の資金がより一層国内企業の成長投資に向かい、それが家計の金融資産所得という形で還元される、すなわち、「成長と資産所得の好循環」が実現します。この新しいNISAがその一助になることを期待しております。
 このためにも、コーポレートガバナンス改革の実効性を高めることにより、投資先としての日本企業の魅力も高めていくことが必要です。これらの施策を精力的に推進していくことで、我が国企業・経済の持続的な成長につなげていきたいと思います。
 このように日本の金融資本市場を活性化し、我が国企業・経済の持続的な成長につなげていくためには、良質で適切な金融商品・金融サービスが幅広く国民に行き渡るようにすることも不可欠です。
 金融商品の販売等に携わる皆さまにおかれては、良い商品を提供する企業が市場で選ばれるという原則に立ち返り、顧客本位の業務運営の取組を深化させていただくようお願い申し上げます。
 顧客それぞれのライフプランや資金ニーズを踏まえて、中長期目線での資産形成を後押しし、商品販売時のみならずアフターフォローもしっかりと行うことで、顧客の利益の最大化を図っていただきたいと考えております。
 これにより、顧客が信頼と安心のもとで金融サービスを利用できる環境が生まれ、皆様の強固な収益基盤にもつながるという好循環を実現していただきたいと思います。
 金融経済教育については、これまでの取組を更に推進するため、関連法案の早期の成立・施行を前提に、本年中の「金融経済教育機構」の設立と本格稼働に向けて準備を進めてまいります。この機構では、皆様をはじめとする様々な主体が蓄積してきたノウハウを結集し、効果的で効率的な金融経済教育を戦略的に実施していきたいと考えておりますので、皆様のご協力をお願い申し上げます。

3.資産運用立国

次に、国民の安定的な資産形成の実現に向けて、家計の資産を預かる資産運用業の高度化もまた、極めて重要な政策課題と位置付けています。
 日本の資産運用業は、投資信託や年金・保険の資金など、約800兆円の資金を運用しており、家計の資金を国内の成長投資につなげ、その恩恵を家計に及ぼす好循環を生み出すうえで、その役割は非常に大きいと認識しています。
 そのためには、人材を確保・育成し、専門性を高めるなど、運用力の向上に向けた取組を強化する必要があります。
 わが国の資産運用業の高度化、健全な市場の発展を目指すためには、資産運用会社の新規参入を活発化させることで、顧客本位のより良い金融商品やサービスの提供を競い合い、良い商品・サービスを提供する事業者が顧客から選択されていく、というメカニズムを実現することが重要です。
 今後、ビジネス慣行や参入障壁の是正を通じ、資産運用会社の新規参入支援を抜本的に強化していきたいと考えています。こうした取組を含めて、資産運用立国の実現に向けた具体的なプランを年内に策定することとしており、皆様をはじめ様々な方の意見を拝聴しながら、検討を進めていきたいと考えています。

写真:井林内閣府副大臣による挨拶の模様
写真:井林内閣府副大臣による挨拶の模様

4.最後に

今後も皆様と連携し、官民一体となって、「貯蓄から投資へ」のシフトを大きく前進させることで、家計の安定的な資産形成と日本経済の更なる発展に貢献していくことについて、総理自らが登壇しましたとおり政府全体の決意であることをお伝えし、私の挨拶とさせていただきます。
 ご清聴、ありがとうございました。

(以上)

全国証券大会は、Japan Weeks中に開催されたイベントです。

Japan weeksのバナー

※ 海外の投資家や資産運用会社等を集中的に日本に招致し、国際金融センターの実現に向けた日本政府の関連施策や、日本の金融資本市場としての魅力等を情報発信するため、本年9月25日から10月6日をJapan Weeksとして、サステナブルファイナンス、貯蓄から投資への促進、資産運用立国等に関する各種イベントを、関係者と協力しつつ開催するもの。特設ページはこちら新しいウィンドウで開きます


2023事務年度 金融行政方針

 

総合政策局総合政策課 課長補佐 長谷川 典史

係長   横山 祐希 

係員   須藤 翔琉 

金融行政方針の公表に当たって

金融庁は、本年8月29日に2023事務年度の金融行政方針を公表しました。これは、金融行政が何を目指すか明確にするとともに、その実現に向け、いかなる方針で金融行政を行っていくかをお示しするものです。これにより、金融行政の透明性が一層高まり、当局と金融サービス利用者、金融機関、市場関係者などの間で認識の共有が図られ、建設的な対話を通じて、より良い金融行政の実現に繋がることを目指しています。
 金融庁では、金融行政方針へのご意見を随時受け付けております。今後の参考として活用させていただきますので、ウェブサイト受付窓口(https://www.fsa.go.jp/opinion/新しいウィンドウで開きます)までご意見をお寄せください。
 2023事務年度の金融行政方針の策定に当たっては、2022事務年度で認識していた主要な行政課題にくわえて、全国の財務局の職員等から寄せられた金融行政に係る意見等も踏まえ、幹部レベルでの議論を積み重ねて検討するなど、多くの職員の参画を得ました。こうした取組を通じて、職員が主体的に政策を企画・立案・実行する庁風を築いていくとともに、財務局とのさらなる連携・協働に努めていきます。

2023事務年度の重点課題

2023事務年度の金融行政方針は、Ⅰ.経済や国民生活の安定を支え、その後の成長へと繋ぐ、Ⅱ.社会課題解決と経済成長を両立させる金融システムを構築する、Ⅲ.金融システムの安定・信頼を確保する、Ⅳ.金融行政を絶えず進化・深化させる、の4つの重要課題を柱としています。
 第一に、我が国の経済活動や国民生活が、社会経済情勢の変化の中でも安定し、その後への成長へと繋がるように、金融面から支えます。
 第二に、「成長と資産所得の好循環」の実現に向け取り組むとともに、気候変動問題やデジタル化の進展への対応など、様々な社会課題の解決を経済成長と両立させる金融システムを構築していきます。
 第三に、金融機関が健全性を維持しつつ、法令等の遵守を徹底し、顧客本位の業務運営を行い、また金融仲介機能等を十分に発揮できるよう、深度あるモニタリングを実施します。
 第四に、データ活用や国内外に対する政策発信力の強化、職員の能力・資質の向上など、金融行政を絶えず進化・深化させていきます。

2023事務年度 金融行政方針の表紙

Ⅰ.経済や国民生活の安定を支え、その後の成長へと繋ぐ

第一の柱として、新型コロナ感染症の感染拡大から3年が経過し、社会経済活動の正常化が進む一方で、原材料・エネルギー価格等の高騰や円安、人手不足の影響等により、厳しい環境に置かれた事業者が数多く存在しています。また、官民の金融機関において実施した実質無利子・無担保融資の返済が本格化している中、特に地域金融機関においては、地域産業や事業者を下支えし、地域経済の回復・成長に貢献することが重要です。このため、金融庁は、金融機関が、資金繰り支援にとどまらず、資本性劣後ローンやREVIC等のファンド等を活用しながら、事業者の実情に応じた経営改善支援や事業再生支援を徹底するよう促していきます。
 こうした観点から、事業者支援に関する重点的なヒアリングを通じて金融機関の取組状況を確認し、把握した課題等について継続的に対話を行っていくほか、金融機関の事業者支援能力の向上に向け、事業再生支援に関する知見・ノウハウの地域金融機関への展開や経営人材のマッチングの促進等に取り組みます。くわえて、事業者の持続的な成長を促す融資慣行の形成に向け、「経営者保証改革プログラム」の推進や事業全体に対する担保権の早期制度化に取り組みます。こうした取組を通じて、我が国経済の力強い回復を支え、その後の成長へと繋いでいきます。

Ⅱ.社会課題解決と経済成長を両立させる金融システムを構築する

第二の柱として、持続的な経済成長に向け、家計に眠る預貯金を投資へと繋げることで、成長の果実が資産所得として広く国民に還元され、国民の資産形成と更なる投資や消費に繋がる「成長と資産所得の好循環」を実現していきます。例えば、資産運用業の高度化やアセットオーナーの機能強化など、資産運用立国の実現に向けた取組を推進するとともに、国内外への積極的な情報発信を行います。あわせて、新しいNISA制度の普及・活用促進、金融経済教育の充実等を柱とする資産所得倍増プランを推進します。
 また、社会経済の構造が急速に変化する中で、気候変動問題への対応や、ダイバーシティの促進、デジタル社会の実現、スタートアップ支援など、様々な社会課題の解決が求められており、こうした社会課題の解決が新たな市場創造に繋がるよう金融面での環境整備を進め、社会課題解決と経済成長の両立を目指します。例えば、スタートアップの資金調達の円滑化に向け、株式投資型クラウドファンディングの環境整備や、私設取引システム(PTS)の認可要件の緩和等を検討していきます。また、コーポレートガバナンス改革の実質化や企業情報の開示の充実に向けて、大量保有株式報告制度の見直しや非財務情報の充実、四半期開示の見直し等を推進します。さらに、企業のサステナビリティ開示の充実やGXに向けた産業と金融の対話の促進、インパクト投資の推進等を通じて、サスティナブルファイナンスを推進していきます。くわえて、デジタル社会の実現に向け、フィンテック事業者の参入促進やデジタルマネー・暗号資産等に関する環境整備に取り組んでいきます。

Ⅲ.金融システムの安定・信頼を確保する

第三の柱として、金融機関を取り巻く環境が変化する中で、金融機関が健全性を維持しつつ、金融仲介機能を十分に発揮するため、金融庁としては、金融経済情勢や世界情勢を的確に把握するとともに、データ分析や金融機関との対話等を通じて、金融機関に対する深度あるモニタリングを実施していきます。
例えば、国内外の金融政策・金利動向を含め、グローバルな金融経済情勢等の動向を注視し、その動向が金融システムの安定に与える影響について分析を行っていきます。また、金融機関の持続可能なビジネスモデルの構築に向け、ガバナンス、各種リスク管理態勢等、内部監査等についてモニタリングを行い、経営基盤の強化を促していきます。さらに、利用者利便の観点から金融機関に法令等の遵守の徹底を求めるほか、顧客本位の業務運営の確保に向け、高リスクの金融商品の取扱いを含め、顧客の最善の利益に資する金融商品の組成・販売・管理等に関する態勢整備を促していきます。くわえて、マネロン対策等やサイバーセキュリティ、経済安全保障、システムリスク管理について、世界情勢等を踏まえた対応を促していきます。

Ⅳ.金融行政を絶えず進化・深化させる

第四の柱として、金融行政を絶えず進化・深化させていく観点から、データ活用の高度化や財務局との更なる連携・協働の推進、国内外への政策発信力の強化など、金融行政の更なる高度化に取り組むとともに、全ての職員の能力を最大限発揮できるようにすることで、金融行政を担う組織としての力を最大化することに繋げていきます。例えば、金融機関の経営状況や金融システム全体の強靭性・脆弱性を的確に把握する観点から、データ活用の高度化による多面的な実態把握を行うとともに、金融機関との対話等を通じたモニタリングに活かしていきます。くわえて、金融行政への関心が高まり、理解が深まるよう、国内外への政策発信力を強化し、金融庁の取組を適切に発信していきます。さらに、各職員の希望する分野に応じた育成プログラムを提供し、職員の専門性を高めるなど、職員の能力・資質の向上を図っていきます。また、職員の主体性・自主性を重視し、自由闊達に議論できる職場環境の構築を目指すとともに、全ての職員が能力を最大限発揮できるよう、いきいきと働ける環境の整備を進めます。

写真:井林内閣府副大臣による挨拶の模様
2023事務年度 金融行政方針の概要

令和5事務年度 証券モニタリング基本方針

 

証券取引等監視委員会事務局証券検査課 課長補佐 早川 志乃

企画係長 岩元 弘考

証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、本年8月1日に、「令和5事務年度証券モニタリング基本方針」を公表しました。本稿では、その概要を紹介します。
 証券監視委では、延べ8千を超える、証券会社や投資運用業者をはじめとした金融商品取引業者等(以下「金商業者等」といいます。)に対し、効果的・効率的な証券モニタリングを実施するため、経営管理(ガバナンス)の有効性、取扱金融商品や取引等のビジネスの特性、リスク管理の適切性や財務の状況等を的確に把握し、金商業者等が抱えるリスクの特性に応じて検査先を選定しています。
 証券モニタリングを実施するにあたっては、金商業者等を取り巻く環境、金商業者等を取り巻く規制の枠組み等の変更、昨事務年度の証券モニタリングを通じて判明した事項を踏まえつつ、金融庁の「金融行政方針」等も念頭に置きながら、金融庁関連部局等と連携していきます。

【証券モニタリング対象業者数の推移(各年度末時点)】

図表:証券モニタリング対象業者数の推移(各年度末時点)

1.業態横断的な検証事項

業態横断的な検証事項として、次の5つを掲げています。

  • ①適合性原則を踏まえた適正な投資勧誘等に重点を置いた内部管理態勢の構築や、顧客本位の業務運営を踏まえた販売状況(例えば、仕組債に限らず、複雑又はリスクが高い商品の販売)
  • ②デジタル化の進展等を踏まえたビジネスモデルの変化と、それに対応した内部管理態勢の構築
  • ③サイバーセキュリティ対策の十分性(インターネット取引における不正アクセス対策を含む)やデジタル化の進展に伴うシステムリスク管理(システム開発・運用管理や外部委託先の管理を含む)の対応状況
  • ④マネー・ローンダリング対策、テロ資金供与対策に係る内部管理態勢の定着状況
  • ⑤内部監査の結果及び自主規制機関の監査等で指摘された事項に係る改善策及び再発防止策の取組状況

上記のほか、「資産所得倍増プラン」や資産運用業等の抜本的な改革等の金商業者等を取り巻く環境を踏まえた具体的な取組やその環境の変化等に応じて、機動的にその他の事項の検証についても取り組みます。

2.規模・業態別の主な検証事項

規模・業態別の主な検証事項の一部を紹介します。

  • ●大手証券会社グループ:国内外の業務展開を支えるガバナンスやリスク管理態勢の整備状況、不公正取引等の検知・防止のための態勢整備を始めとした内部管理態勢の整備状況等。3メガバンクグループの証券会社に対しては、銀証連携ビジネスの推進を踏まえた顧客情報管理態勢等の整備状況
  • ●外国証券会社:バックオフィス業務の海外 委託の進展等に対応した内部管理態勢やシ ステムリスク管理態勢の整備状況等
  • ●ネット系証券会社:金融商品仲介業者を活用した対面営業の拡大等のビジネスモデルを踏まえた外部委託先の管理態勢や、委託手数料無料化等の動きもある中、新規口座開設数の急増や取引量に応じた実効的な売買管理態勢を始めとした内部管理態勢の整備状況等
  • ●準大手証券・地域証券会社等:適合性原則への対応も含めた投資者保護の観点からの不適切な勧誘行為等、主要株主や経営体制が変更された証券会社に対しては、ビジネスモデルやガバナンスの観点から内部管理態勢
  • ●FX業者:広告規制、販売・勧誘規制に対する適正な内部管理態勢の整備状況等
  • ●投資運用業者:運用の実態把握、運用管理態勢(外部委託運用に対するものを含む)、利益相反管理態勢の整備状況等
  • ●投資助言・代理業者:顧客に誤解を生じさせる広告手法、虚偽の説明による勧誘等
  • ●第二種金融商品取引業者、適格機関投資家等特例業務届出者:高利回りを掲げたファンドや出資対象事業の実在性等
  • ●金融商品仲介業者:投資勧誘等の適正性、所属金融商品取引業者による管理態勢の十分性
  • ●無登録業者:裁判所への違反行為の禁止命令等の申立てに係る調査権限の積極的な活用、無登録業者の名称・代表者名・法令違反行為等の公表等を含めた情報発信の強化等

【検査終了件数 (単位:件数)】

図表:検査終了件数 (単位:件数)

3.証券モニタリングの進め方

証券モニタリングの対象業者について、金融庁関連部局等と連携し、金商業者等におけるリスクの特定・評価を行い、リスクベースで検査対象先を選定、以下のような場合を中心に検査を実施します。

  • ①個別の法令違反事項の発生や業務運営態勢に懸念があり、早期に深度ある検証が必要な状況
  • ②リスクの所在が不明確な金融商品を取り扱い、その勧誘実態等の検証が必要な状況
  • ③モニタリングによる情報分析だけでは業務運営等の実態が必ずしも把握できない状況(検査未実施期間が長期化している場合を含む)
  • ④分別管理が適切に行われていないなど、投資者保護上、重大な問題が懸念される状況

検査では、実質的に意味のある検証及び問題点の指摘に努めるほか、単に問題点を指摘し行政処分勧告等を行うにとどまらず、問題の全体像を把握し、発生原因を究明することにより、実効性のある再発防止策につなげていきます。さらに、問題が顕在化していないものの、業務運営態勢等について改善が必要であると認められた場合には、証券監視委の問題意識を検査対象先と共有し、実効性ある内部管理態勢の構築等を促していきます。

4.関係機関との連携・検査結果の情報発信

各財務局等とは、モニタリングや検査の計画策定から緊密に連携し、必要に応じて合同検査も実施します。
 セキュリティトークンについて、金融庁関連部局等と連携しながら、発行・流通の状況も踏まえた情報分析等を行います。
 自主規制機関と引き続き緊密に連携し、タイムリーな情報共有により、証券モニタリングを効果的・効率的に進めます。
 検査を通じて把握した問題点や究明した根本原因等については、必要に応じて、金融庁関連部局等と連携して金商業者等に対してフィードバックを行い、これらの監査関係者及び社外取締役に対しても、検査結果を共有することにより、改善に向けた自主的な取組を促します。
 証券監視委の問題意識等が対外的にも的確に伝わるよう、「証券モニタリング概要・事例集」等により、具体的で分かりやすい情報発信に努めます。なお、本年8月1日に公表しました証券モニタリング概要・事例集より、検査の結果に基づき勧告を行った業者名について、記載することにいたしました。
 


※ 「証券モニタリング」とは、「検査(オンサイト・モニタリング)」と「検査以外で金商業者等に関する情報収集等を幅広く行う活動(オフサイト・モニタリング)」の双方を包含するものです。


多重債務者相談強化キャンペーン2023の実施(9月~12月)

多重債務者対策本部(本部長:金融担当大臣)では、全国の地方公共団体等における多重債務相談体制の強化についてのキャンペーンを毎年度実施しています。
 多重債務者問題は一時に比べ落ち着きをみせておりますが、多額の借入残高を有する層は現在も相当数存在し、継続的に対策を講じていく必要があります。
 このため、本年度も引き続き、多重債務者対策本部、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会及び日本司法支援センター(法テラス)の共催で、「多重債務者相談強化キャンペーン2023」を9月~12月に実施することとしました。
 このキャンペーン期間中は、都道府県、当該都道府県の弁護士会、司法書士会、中小企業団体及び財務局が共同で、消費者及び事業者向けの無料相談会等の取組み(常設の多重債務相談窓口の受付時間の延長や電話による相談の受付けを含む)を行います。
 多重債務相談窓口では、親身になって、まず相談者の抱える現状把握に努め、必要に応じて専門家や専門機関を紹介することなどを通じて、相談者と共に相談者の抱える問題の解決に取り組んでいます。
 ローンが返せない、ヤミ金融から法外な利息でお金を借りた、ギャンブルにのめり込んでしまったなどにより、借金の返済にお困りの方は、お気軽にご相談ください。また、周りにお困りの方がいらっしゃいましたら、当キャンペーンをご紹介いただければ幸いです。
 無料相談会の日程は金融庁ウェブサイト(下記QRコードからもご確認いただけます。)に掲載していますので、ご覧ください。

無料相談会日程のQRコード

加えて、金融庁ホームページでは、「貸付自粛制度」をご案内しています。「貸付自粛制度」は、自らに浪費の習癖があることやギャンブル等依存症により、ご本人やご家族の生活に支障を生じさせる場合などに、ご本人または法定代理人等が、日本貸金業協会または全国銀行個人信用情報センターへ申告することで、資金を新たに借り入れられないようにすることができる制度です。
 なお、本年のキャンペーン実施にあたっては、新型コロナウイルス感染症等の影響を受けた方々に十分な配慮を行います。

【多重債務者相談強化キャンペーンポスター】

多重債務者相談強化キャンペーンポスター

フィッシングの手口によるインターネットバンキングに係る
預金の不正送金にご注意ください!

金融庁では、偽造キャッシュカード、盗難キャッシュカード、盗難通帳、インターネットバンキング及び預金口座と連携させる決済サービス(連携サービス)による預金等の不正払戻し等の被害について、各金融機関からの報告を基に、被害発生状況及び金融機関による補償状況を取りまとめ、定期的に公表※1しています。
 昨年来、メールやショートメッセージサービス(SMS)、メッセージツール等を用いたフィッシングと推察される手口により、インターネットバンキング利用者のID・パスワード等を盗み、預金を不正に送金する事案が多発しています。令和4年8月下旬から9月にかけて被害が急増して以来、落ち着きを見せていましたが、本年2月以降、再度被害が急増しています。8月4日時点において、本年上半期における被害件数は過去最多の2,322件、被害額も約30億円となっています。この被害急増の状況を踏まえて、警察庁と連携し、金融庁ウェブサイト※2や公式X(旧Twitter)等で広く注意喚起を行いました。

被害に遭わないために、下記ポイントについて十分にご注意ください。

「自分は大丈夫」、その油断は禁物です。

フィッシング詐欺被害に遭わないためにご注意いただきたいポイント

  • 心当たりのない SMS 等は開かない。 金融機関が、ID ・ パスワード等を SMS 等で問い合わせることはありません。
  • 金融機関のウェブサイトへのアクセスに際しては、SMS 等に記載された URL からアクセスせず、事前に正しいウェブサイトの URL をブック マーク登録しておき、ブックマークからアクセスする。または、金融機関が提供する公式アプリを利用する。
  • 大量のフィッシングメールが届いている場合は、迷惑メールフィルターの強度を上げて設定する。
  • 金融機関が推奨する多要素認証等の認証方式を利用する。
  • 金融機関の公式サイトでウイルス対策ソフトが無償で提供されている場合は、導入を検討する。
  • パソコンのセキュリティ対策ソフトを最新版にする。
  • インターネットバンキングの利用状況を通知する機能を有効にして、不審な取引(例えば、ログイン、パスワード変更、送金等)に注意する。こまめに口座残高、入出金明細を確認し、身に覚えのない取引を確認した場合は速やかに金融機関に照会する。
注意喚起ポスター

★ご相談・ご質問等は下記の相談窓口までお問い合わせください。

金融庁
金融サービス利用者相談室
電話番号:0570ー016811
※IP電話からは03-5251-6811
受付時間:平日10時00分~17時00分
警察 電話番号:#9110(各都道府県警察相談ダイヤル)
全国銀行協会 相談室 電話番号:0570-017109
※IP電話からは03-5252-3772
受付時間:平日9時00分~17時00分
 

※1  直近の公表内容は、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「偽造キャッシュカード等による被 害発生等の状況について」(本年9月29日公表)にアクセスしてください。

※2 「フィッシングによるものとみられるインターネットバンキングによる預金の不正送金被害が急増しています。」(本年8月8日公表)


市場へのメッセージ ~課徴金納付命令勧告の解説
~課徴金納付命令勧告の解説~

証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、勧告事案等に関する解説記事を「市場へのメッセージ」として証券監視委ウェブサイトに掲載しております。
 ここでは、本年9月21日に掲載した「市場へのメッセージ」の内容についてご紹介します。証券取引等監視委員会のロゴマーク

※「市場へのメッセージ」の全文については、証券監視委ウェブサイトをご参照
ください。
<参考URL>
https://www.fsa.go.jp/sesc/message/20230921.html新しいウィンドウで開きます


株式会社ディー・ディー・エスが提出した虚偽開示書類に係る特定関与行為に対する課徴金納付命令勧告について

証券監視委は、課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)における株式会社ディー・ディー・エス(以下「DDS」といいます。)が提出した虚偽開示書類に係る特定関与行為※1について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたことから、本年8月4日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました。※2

【法令違反の内容】
 DDSは、外国法人に対する売掛金の過大計上等の発覚を免れるため、過大に算定された同外国法人の株式価値を前提とした引受価額で当該株式を引き受け、前記売掛金の全額を現物出資するなどの取引により同外国法人を子会社化するなどの一連の行為を行った上で、これを基礎としたのれん等の過大計上等の不適正な会計処理を行い、「重要な事項につき虚偽の記載」がある有価証券報告書等を提出しました。
 対象者は、 DDSが前記一連の行為を行った際、引受価額が正当な根拠に基づくものであることを装うために利用されることを知りながら、 DDSから前記外国法人の株式価値算定業務の依頼を受け、真実は同外国法人株式には引受価額に相当する価値がなかったにもかかわらず、引受価額以上となるように同外国法人株式の1株当たりの株式価値を過大に算定し、これに基づき、同外国法人に係る株式価値算定書を作成してDDSに提出し、 DDSによる前記一連の行為※3に利用させました。
 対象者が行ったこれらの行為は、本件虚偽開示書類を提出することを容易にすべき行為であって、本件虚偽開示書類の作成に必要な会計処理の基礎となるべき事実の一部を仮装するための一連の行為の一部であることを知りながら、当該仮装するための一連の行為の一部を行ったものであり、金融商品取引法第172条の12第1項及び第2項に規定する「特定関与行為」に該当すると認められます。
 本事例は、「特定関与行為」に対する課徴金納付命令勧告を行った初めての事例です。
 証券監視委は、本事例のような「特定関与行為」を含め、非定型・新類型の事案等についても積極的に対応をしてまいります。


※1 特定関与行為とは、重要な虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出を容易にすべき行為又はその提出を唆す行為を言います。(公認会計士又は監査法人が行う監査証明を除きます。)

※2 本年8月4日公表、「株式会社ディー・ディー・エスが提出した虚偽開示書類に係る特定関与行為に対する課徴金納付命令勧告について」https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2023/2023/20230804-1.html新しいウィンドウで開きます

※3 本年2月9日公表、「株式会社ディー・ディー・エスにおける有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金納付命令の決定について」https://www.fsa.go.jp/news/r4/shouken/20230208-1.html新しいウィンドウで開きます


先月の金融庁の主な取組み(令和5年9月1日~9月30日)


編集後記

秋晴れの爽やかな季節が続いています。「毎朝同じ時間に起きるとよい」説に自らを委ねて朝の空気を感じていますが、気づけば月曜から金曜にかけて少しずつ起床が遅くなっていくパターンがはっきりとデータで見える化されておりました。百聞は一見に如かず(?)、日常の感覚・感性を研いでいくとともに、技術も活用した見える化を通じて、確認と修正の繰り返しに面白みを感じる毎日です。

そうした中で金融行政を金融市場や国民の皆様に適切に発信していく広報活動とはどのようなものか、考えさせられる毎日です。大変ありがたいことに、多くの有識者・諸先輩・そして才能あふれる若い方々との出会いに恵まれ、一つひとつのアイディアに深みが生まれていく気がします。立ち位置を見据えながらの確認と修正の繰り返し、また夜が長くなりそうです。

  • 金融庁広報室長 矢野 翔平
  • 編集・発行:金融庁広報室

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