アクセスFSA 第243号

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井林内閣府副大臣(金融担当)インタビュー

井林 辰憲

井林 辰憲(いばやし たつのり)

生年月日 昭和51年7月18日
出身地 東京都
選挙区 静岡県第2区
趣味 野球、水泳
 

第2次岸田第2次改造内閣の発足に伴い、本年9月15日に就任した井林 辰憲 内閣府副大臣(金融担当)にお話を伺いました。

―はじめに、御経歴と御決意をお聞かせください。

私は元々国土交通省の職員として働いていましたが、一念発起し政治の道に入り、国会議員として11年目の今年、金融担当副大臣を拝命しました。
 議員として当初は、大学時代に環境工学科専攻だったことや国土交通省出身ということで、国土交通行政を担当してきました。しかし、日本全体のことを考えるためには、やはり金融や経済を勉強しなければいけないという思いを抱き、衆議院財務金融委員会や自民党・財金部会に在籍するようになりました。
 今般、金融担当副大臣を拝命したわけですが、今まで勉強してきたことを活かし、また特に今、資産運用立国や貯蓄から投資といった時代のなか、この国がより良くなるように金融担当としてしっかり担っていきたいと考えています。

―これまでの金融行政との関わりと、その中での問題意識、そして今後取り組まれていきたいことについて教えてください。

金融というのは、人の生活を豊かにすることが基本

金融は、非常に範囲が広く、また国際的で専門的な分野が大変多いと思っています。
 ただその金融の原点というのは、資産運用立国や資産所得倍増プランにも言えることですが、人の生活を豊かにすることが基本だと思います。よって、その金融に携わる人など特定の人だけが利益を上げればいいということではなく、やはり実体経済を良くすることで、多くの人に裨益させるということが何よりも大事だと考えています。
 問題意識としては、例えば、金融機関のATMの不具合については考えるところがあります。私が副大臣になってまもなく、全銀ネットのシステム障害に伴い、ATMを通じた一部振込みができなくなる事象が発生しました。金融機関の収益構造から見ると、今の時代は大手行のみならず、農協や地域金融機関も含めて、支店を統廃合しATMを減らしてきている状況です。しかし、キャッシュレスの時代と言いながら、それでもやはりATMの停止はこれほど世の中に影響を及ぼすということを目の当たりにし、依然としてATMの重要性について感じました。しかしながら、金融行政の中でそうしたことの重要性という話が出てこない、少なくとも今までの様々な審議会とか委員会では一切出てきてないと感じます。この点については、問題意識を持って取り組んでいきたいと思っています。

―専門的な議論のみに陥るのではなく、金融が社会全体にどう影響を与えるかという視点が、金融行政や議論の場で更に求められるということでしょうか。

この国の社会経済を豊かにするためにはどうしたら良いのだろうと考えて制度を設計していくのが、金融庁の仕事

例えば暗号資産、資金決済法の話をとってみても、暗号資産という技術があって、そこでビジネスをしている人たちがいる、それを法律制度として追認し、その利用者を保護するようになっています。なぜ保護して追認していくのか、やはりそれは、暗号資産等によりこの国の社会経済を豊かにするためには、どうしたら良いのだろうと考えて制度を設計していくものであり、それが金融庁や金融行政の仕事であると思っています。
 一方的に禁止するとか、今あるからとりあえず追認して何とか認めていこうということではなく、暗号資産のような新しい技術が出てきた時に、どうしたらこの国はこの制度を使って豊かになれるのだろうかということを念頭に置いた制度設計や法律の説明をしていかなければ、多くの人たちに理解してもらうことは難しいものと考えています。

写真:インタビューの様子
写真:インタビューの様子

―金融担当以外にも内閣府の筆頭副大臣として多くの業務を担当されていますが、意識・工夫されていることについて教えてください。

時代が変わってくれば、さらに金融庁に与えられるミッションは変わる

兼務によって、金融担当の副大臣が経済財政全体の取りまとめをするということの意義を噛み締めながら、全体の経済論の議論について担当させてもらっています。やはり経済財政の中で金融の占める分野、特に金融庁の担当している分野が非常に大きいものと思っています。
 内閣府副大臣としての様々な業務に関しては、鈴木大臣のほか、新藤大臣のもとでも務めているわけですが、内閣府は時の政権課題を必ずやらなければならない立場でもあり、私自身も宿命があると思いながら、切り分けながら行っています。
 金融行政が、内閣府において担当する経済財政の中にあることに関しては、やはり金融というものが社会経済活動の中心にあるということなのではないでしょうか。金融監督庁として金融機関に厳格に対応してきた時代を経て、現在は、新しい資本主義や資産運用立国、「貯蓄から投資へ」といったことが、経済社会の重要な課題として、金融庁に与えられているミッションとなっています。しっかりやっていかなければいけないですし、また時代が変われば、さらに金融庁に与えられるミッションも変わるでしょう。今後も、金融というものが、ある程度社会経済の中で重要な地位を占め続けると私は思っています。

―政治家としての一面もお聞きかせください。国土交通省を退官され、政治の道に進まれたきっかけは何だったのでしょうか。

きっかけは地元川根への思いと、大きく立派なものを造りたいという純粋な夢

まず国土交通省に入った理由の一つに、地元である川根(静岡県川根本町)への強い思いがあります。将来的に帰りたいという思いがあり、大学時代から田舎での人生を意識していました。また地元に大きな長島ダムができたのですが、立派なダムを見て、純粋に自分も一つ凄いものを造ってみたいと思い、大学で環境工学を学び、国土交通省に入りました。
 国土交通省を退官して政治に進んだきっかけですが、当時の国土交通省は、「コンクリートから人へ」というフレーズや、予算削減といったコスト構造改革があり、大きなものを造りたいという夢とは裏腹に、公務員の職務に閉塞感を感じてしまっていました。そうした中で、いつか帰りたいと思っていた川根の選挙区における自民党の公募を知り、政治に進んだのが原点です。また当時、国土交通省では公共事業バッシングもあり、自身の仕事が世間から認められていないような雰囲気も感じてしまい、そういう中でチャンスと思って転身しました。
 公務員の職務を悲観的に捉えている訳ではなく、今も役所の方々は信念やミッションがあって様々な仕事に取り組んでおり、もちろん金融庁の職員も金融庁に与えられたミッションに果敢に取り組んでいる。そうした中で、やはり政治家としてはしっかりと公務員の思いを伸ばすような議論の進め方をしないといけないと思っています。

―政治家として意識されてきたこと、心に留めていらっしゃることについて教えてください。

誰でも頑張れば、望む教育を受けられ、望む生活を送れ、働くことができる、そういう社会を作っていきたい

正直なところ、経済財政全体の話をする際、中山間地域の議論が取り残され気味だと感じてしまいます。このことは、金融分野を担っていく上で意識していこうと思っています。
 その上で政治家として私の中で二つの思いがあります。一つは、田舎にいた私の祖母の話です。祖母は祖父の亡き後一人で家を守っていたのですが、私が高校時代に田舎に帰って勉強していた時、泣きながら「辰憲がいずれ戻ってきてくれ、おばあちゃんここで頑張るから」と私に話をしてきました。田舎で必死に働き家を守ってきた世代が、涙ながらに孫に戻ってきてほしいと頼まなければならない、そういう社会であってはいけないと感じました。職業や住居選択の自由はありますが、中山間地域に限らず根本的な問題として今も意識していることです。
 もう一つは、資産運用立国の議論の場で、生活に苦しい人々を年金等の面からサポートできないかという検討が始まりました。実は私は小学一年生の時に給食費が免除の家庭だったのですが、そういう家庭環境に生まれ育ちながら、父も母も一生懸命働いてくれたおかげで、大学まで卒業させてもらい、今はこうして政治家をやらせてもらっているわけです。私のように給食費免除の家の子だったり、生活に苦労をしている人たちでも、頑張れば望む教育を受けたり、望む生活を送れたり、働くことができる。そういう社会を作っていきたいと思っていて、そうしたことのためにも金融や経済財政政策というのはあるべきだと思っています。

金融は社会インフラであり、経済の血液である

中山間地域の議論に関しては、人口減少や過疎により金融機関の撤退が進み、中山間地域に住む人は融資一つにしろ様々なハンデを負っていると感じています。店舗撤退は経済合理性にかなっている話ではありますが、それが果たして正しいやり方かどうかなのかは、考えていかないといけません。例えば交通機関で言えば、赤字路線で鉄道が撤退したとしても、代わりにバスで何とかしようと工夫している例もあります。社会インフラの維持提供という面では、金融も同じであり、そのような面にもう少し心を砕いてもいいのではないかと私は思っています。
 金融は社会インフラであり、経済の血液と言われているのですから、金融機関の無い街は問題にならないのかなど、金融行政としても考えていく時期だと思います。そのためにはまずは収益がなければいけない話で、もしくは収益を補填する仕組みを作っていかなければならず、それをどうやっていくのかということは、非常に大きな問題と感じています。

写真:インタビューの様子
写真:インタビューの様子

(インタビュアー:広報室長 矢野 翔平)


神田大臣政務官(金融担当)インタビュー

神田 潤一

神田 潤一(かんだ じゅんいち)

生年月日 昭和45年9月27日
出身地 青森県
選挙区 青森県第2区
趣味 ジョギング
 

第2次岸田第2次改造内閣の発足に伴い、本年9月15日に就任した神田 潤一 内閣府大臣政務官(金融担当)にお話を伺いました。

―はじめに、これまでの御経歴についてお伺いします。

大学卒業後、日本銀行に就職し、約20年間勤めました。日銀では考査の仕事が長く、メガバンクや大手証券、外資系証券等を担当しました。そのほか、システム情報局で日銀ネットや内部システムの企画なども担当しました。
 そうした経歴もあり、2015年8月から2017年6月末まで、金融庁の信用制度参事官室に決済高度化とフィンテックの担当企画官として2年間出向しました。この時代は新しいデジタル技術やインターネットにより、金融の決済やサービスがどんどん進化していった頃で、それらに対して金融行政は規制の面からどのように向き合っていくのか、あるいは新しく立ち上がってくるビジネスをどのように後押ししていくのかといった、イノベーションと規制のバランスが大変難しい時期でもありました。金融庁にとっても過渡期的な時期だったと思いますが、この分野が日本の金融の可能性をどんどん開いていくことになるのではないかと感じ、私にとっては非常に面白かったです。
 その後、2017年8月末に日銀を辞め、2017年9月からフィンテック企業のマネーフォワードに転職しました。マネーフォワードでは、金融機関とフィンテック企業との協業やオープンAPIと言われる分野を担当しました。
 そして2021年の夏、大島理森先生(元衆議院議長)から、引退するので後継をやってほしいとのお話を受け、衆議院議員選挙に出馬しました。

―金融担当政務官としての御決意をお聞かせください。

金融は様々な物事を成し遂げていくために大きな力を発揮する、そうした金融の持っている可能性を高めていきたい

私のキャリアとしては、金融に携わっている時期が長く、生命保険会社に出向していた時もありました。その意味では、日銀考査で民間の金融機関を直接見て、生保職員として勤め、中央銀行、金融庁、さらに民間のフィンテック企業で働いてきたことで、いろいろな立場から金融を見てきたことになりますが、そうした経験のなかで、金融には非常に大きな力があると思うようになりました。例えば経済を前に進めていくとか、人生を豊かにしていくとか、様々なことを成し遂げていくために、金融は非常に大きな力を発揮するものであり、様々な物事を動かす時のテコになると思っています。
 特に今の日本は、経済面でも金融面でも様々な課題が出てきていますが、その様々な課題に、金融が働きかける場面は非常に多く、その金融の持っている可能性というのをしっかりと高めていくというのが大事であると考えています。ただ一方で、金融危機など、金融は社会に非常に大きな混乱をもたらすこともあり、そのベースになっている信用をしっかりと維持していくことが基本だと考えています。決済の面も同様で、大きな社会的、経済的な混乱を引き起こすという難しい面と、社会的、経済的に非常に重要な機能も併せ持っています。社会のベースになっているという守りの部分と、社会を大きく動かしていくという攻めの部分とのバランスが求められ、これまでの様々なキャリアにおける経験から、その局面によってどのようにバランスをとっていけばいいのか考えながらやっていきたいと思っています。

写真:インタビューの様子
写真:インタビューの様子

―様々な事業者の声に金融庁は応えていると感じていますか。

金融庁が日本の金融を変えていくイニシアティブを上手くとってきたい

私は行政のあり方、特に金融庁のあり方というのは、時代によって変わってくると思っています。特に金融危機の時代はかなり保守的に手堅く、民間企業とのコミュニケーションもかなり厳しいものが求められておりました。一方、私が金融庁に出向した頃は、金融機関のリスク管理の高度化が進みつつ、デジタル技術などにより新しいサービスも登場してきて、特に新しい分野については、机上で議論していても、なかなか分からないものでした。
 この時は、民間の方々の最新の動きに、コミュニケーションをとりながら触れ、新しい情報をどんどん取り入れていれていき、柔軟な発想により必要に応じて規制という形に落とし込んでいくといったきめ細かなコミュニケーションが求められていた時代でした。
 私も試行錯誤しながらでしたが、それから現在まで、金融庁職員は比較的、民間の人たちと交流しながら、最先端の動きをキャッチアップできているのではないかと思います。そういった金融庁のスタンスを見て民間の金融機関も、デジタルやインターネットの分野に関する取り組みを強めてきましたし、新しい動きというのを積極的に取り入れようという姿勢も出てきています。そういう意味で金融庁が日本の金融を変えていくイニシアティブを非常に上手くとってきたのではないかと評価しています。

―金融担当以外にも内閣府の政務官として多くの業務を担当されていますが、意識・工夫されていることについて教えてください。 

縦割りにならないコミュニケーションをとっていきたい

内閣府の担当ということで、新藤大臣のラインと鈴木大臣のラインと両方を担務してさせていただくことは、私にとっては非常にありがたいと思っています。今までの私のキャリアもそうですが、金融、経済、税制、財政は、縦割りではなく非常に密接に絡み合っているもので、それらがどのように影響し合っているのかを意識しながら、一体として取り組んでいかなければならないと考えています。
 そういう意味では、金融だけ、経済だけ、財政だけというようなことではなく、一体的に捉えながら仕事をしていくことができる形で内閣府大臣政務官としての担当をいただいたのは、私にとっては非常に取り組みやすく、考えやすいと思っています。更に言うと、私の中ではデジタルの分野も含めて考えるべきとの思いもあり、現在の担当の上に、そうした点も意識して連携しながらやっていければと思っています。
 非常に幅広い担当ではありますし、私の政務官室も金融庁と内閣府の方にそれぞれありますが、できるだけ役所の皆さんとのコミュニケーションも縦割りにならないように、むしろお互いの仕事をある程度意識しながらやって頂けるように、私自身意識していきたいと考えています。

―金融を中心としたキャリアを歩まれた後、政治に進まれたきっかけや原点を教えてください。 

日本の経済、社会全体の課題を解決しなければ日本の活力が衰えていく、そうした課題を政治が解決しなければならない

政治家を常に意識していたわけではなく、大学では経済を勉強し、金融の面から日本経済全体に貢献できればという思いで日銀に進み、やりがいのある仕事を数々やらせていただきました。特にリーマンショックの時は、主要な金融機関のいずれかの資金繰りがショートになった途端に世界恐慌が起こるのではないかという、毎日相当な緊張感の中で、半年ほど金融危機の外資系金融機関の資金繰りをモニタリングしながら、日銀から毎日2兆円の特別貸出しをするといった業務を経験し、日本経済に何らかの貢献ができたのではと感じていました。
 一方で、東日本大震災や、アベノミクスと大規模な金融緩和、デフレと言われる時代を経験しながら、個別金融機関や企業が一生懸命各地方で取り組んでいる中で、大きな経済の動きや政策が変わらない限り、日本経済、日本社会全体の大きな課題が解決されないのではないかと思うことが多くなりました。金融庁に出向し政策に携わったり、民間企業で新しいサービスを作る仕事をしたりするなど、いろいろな経験をしていく中で、そうした気持ちがどんどん強くなっていきました。それぞれのことは少しずつ進むけれども、日本の経済、社会全体を覆う大きな課題を解決しないことには、日本経済や社会の活力が段々と衰えていくということに、如何ともしがたいという気持ちになり、やはり政治がそういった課題を解決しなければならない時代なのではないかと思っていたところ、高校の先輩でもある大島先生から後継者にとお声をかけていただき、政治家になることを決断しました。

政治自体も変えていく一人になっていきたい

政治が色々な制度や社会の仕組みを変えていくと言いましたが、そのためには政治自体も変わっていかなければならないと思います。旧態依然とした意思決定の仕方を政治が行っていることで、新しく大きな決断になかなか進んでいけないという現実があるとすれば、そこは政治自体がやはり変わっていかなければならない面が非常に強くなっていると思います。
 ただ、私は今、政治も過渡期だと思っており、変化の芽というのは政治の中にも出てきていると思います。私の周りの先輩方、同期の政治家の方々の考えや話を聞いていても、これから政治が変わっていくという大きな力を感じますので、私はその中で、政治自体も変えていく一人になっていきたいと思っています。

―政治家として意識されてきたこと、心に留めていらっしゃることについて教えてください。 

地方の可能性を高めていくことで、日本経済はまだまだ成長していける

大きく二つあります。一つは私自身青森県出身で、18歳まで青森県で育ち、それから東京に出てきました。やはり日本の地方には大きな可能性があり、まだまだその可能性が発揮されてないと思っています。地方の可能性を高めていくことで、日本経済はまだまだ成長していけるのではないかと思っています。
 そのためには、地域金融機関や地方の主要な企業、あるいはその地方の自治体や出先機関の方々の活躍は、本当に大きな力になると思っています。地方の活力を高めていく、地方の可能性を開放していくことが、私の政策を考えていく視点です。

我々の世代が精一杯頑張り次の世代に襷を渡していく

もう一つは、私には大学生と高校生の子どもがおりますが、やはり子どもたちの世代が我々の世代よりもっと豊かで、充実した人生を送ってほしいという点です。私は駅伝をやっていましたので「襷を渡していく」という言い方を好みますが、我々の世代が精一杯頑張り次の世代に襷を渡していくことで、次の世代がより良い社会、世界の中でチャレンジをしていけるような、20年後30年後そうした社会になるようにと意識しています。

写真:インタビューの様子
写真:インタビューの様子

―朝早くに運動をされていらっしゃいますが、どのように体力づくりをされていらっしゃるのでしょうか。

大学まで陸上競技をやっていて、その間ずっと朝練をしていました。社会人になってからも週に何回か朝ジョギングしたり、体を動かしたりというのをずっと続けています。ジョギングしている方がやはり体調が良いですし、ジョギング中に色々なアイディアが浮かぶこともあります。懸案事項に対していい突破口が見つかったり、久しぶりにあの人に連絡取ってみようと思いついたり、それが結構リラックスにも繋がり、私にとってはとても大事な時間です。

(インタビュアー:広報室長 矢野 翔平)


財務局長会議 
~井林内閣府副大臣・神田大臣政務官の挨拶~

本年10月26日、今事務年度2回目の財務局長会議を開催し、井林内閣府副大臣(金融担当)及び神田内閣府大臣政務官(金融担当)は、財務局長や金融庁幹部が集まる会議室にて挨拶をいたしました。

井林内閣府副大臣 挨拶概要

金融機関は、資金繰り支援にとどまることなく、様々な支援ツールを活用しながら、事業者の実情に応じた経営改善支援や事業再生支援等を先延ばしすることなく実施していく必要がある。各財務局において、金融機関への事業者支援に関する重点的なヒアリングの実施を通じて、具体的な取組状況を確認いただき、ご尽力に感謝。

写真:井林内閣府副大臣の挨拶の模様
写真:井林内閣府副大臣の挨拶の模様

岸田政権は、官民の連携により、社会課題を成長のエンジンに転換する「新しい資本主義」を進めている。その重要な政策課題の一つが「貯蓄から投資へ」のシフトであり、家計の資金を成長投資につなげ、その恩恵を家計に及ぼす「成長と分配の好循環」を生みだしていくことが重要。資産運用立国の実現に向けた施策に関しては、新しい資本主義実現会議に設置された「資産運用立国分科会」で議論を進め、年内に政策プランを策定する方針。財務局においても、管内の金融機関から、資産運用立国に関し、参考となる意見等が聞かれた際には、金融庁に寄せていただきたい。

神田大臣政務官 挨拶概要

顧客本位の業務運営の確保のためには、金融機関において顧客本位重視の健全な企業文化・企業風土が醸成され、顧客の最善の利益追求に向けた経営陣の考え方が営業現場に浸透・定着していくことが重要。また、経営陣が、中長期的な目線で顧客本位のリテールビジネスを考え、持続可能なビジネスモデルの構築に取り組むことも重要。今事務年度も、財務局と連携して金融機関との対話・モニタリングを実施していきたいので、協力願いたい。
 金融庁では、来年3月末を期限にマネロン対応にかかる態勢整備を完了するよう要請してきたところ、進捗に遅れが見られる金融機関には、集中的にモニタリングを行い、期限を意識した着実な対応を促していきたいと考えているので、財務局には引き続き協力願いたい。

写真:神田大臣政務官の挨拶の模様
写真:神田大臣政務官の挨拶の模様


 財務局長会議では、副大臣・政務官からの挨拶のほか、財務局長と金融庁幹部が、金融行政の当面の課題や金融庁の取組み等について意見交換を行いました。こうした課題等について、財務局長と認識を共有するとともに、引き続き金融庁・財務局が一体となって取り組んでいくことを確認しました。


写真:財務局長会議の模様
写真:財務局長会議の模様

 金融庁では、法令に基づき、地域の民間金融機関等の検査・監督に係る権限の一部を全国11の財務省財務(支)局等(沖縄総合事務局を含む)に委任しているところ、金融庁と財務(支)局等との間で十分な連携を図る観点から、3か月に一度、財務(支)局長等及び金融庁幹部が集まり、開催する会議。


栗田長官と韓国金融委員長の面談

写真:写真:キム委員長(左)と栗田長官(右)
写真:キム委員長(左)と栗田長官(右)

10月3日、金融庁の栗田長官と、韓国金融委員会の金周顯(キム・ジュヒョン)委員長が、金融庁において面談を行いました。
 面談において、両氏は日韓金融協議を2016年以来約7年ぶりに再開し、日韓の金融当局間で定期的に会うことに合意しました。次回の日韓金融協議は12月19日、20日に韓国のソウルで開催予定です。
 また、日韓の金融分野における共通課題等について知見を共有することの有用性を確認するとともに、両国の金融安定等の観点から協力を深めていく可能性のある分野について議論を行いました。
なお、同面談について、金融庁と韓国金融委員会は共同でプレスリリースを行っております。詳細は、金融庁ウェブサイトをご覧ください。
https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20231003/20231003.html

写真:面談の模様
写真:面談の模様

「地域銀行有価証券運用モニタリングレポート」の概要

総合政策局リスク分析総括課大手銀行モニタリング室

課長補佐 中島 健蔵

1.はじめに

金融庁は、本年9月、有価証券運用のリスクテイク規模が大きい地域銀行に対して実施した重点的なモニタリングの結果を「地域銀行有価証券運用モニタリングレポート」(以下、「本レポート」という。)としてとりまとめ、公表しました。
 本稿では、公表の趣旨とモニタリングにおける主な論点について解説します。

2.公表の趣旨

金融庁では、我が国の金融システム全体の安定性を維持する観点から、総合政策局モニタリング部門が監督局・財務局とも連携し、2021年後半からの2年間で20行程度の有価証券運用のリスクテイク規模が大きい地域銀行を対象に、重点的なモニタリングを実施してきました。
 この間、米欧はじめ海外主要中央銀行が超金融緩和政策を巻き戻し、急激に金利を引き上げる中で、地域銀行全体の有価証券評価益は減少し、債券売却損は増加しました。
 このように、市場環境が大きく変化する中で金融庁が実施したモニタリングにおける主な論点や把握した事例については、対象先以外の金融機関(主に、有価証券運用のリスクテイク規模が大きい先を想定。)においてもリスク管理上の参考になると考えられることから公表したものです。
 なお、金融庁は、これまでも、各業態向けの監督指針・「金融システムの安定を目標とする検査・監督の考え方と進め方(健全性政策基本方針)」、「地域銀行有価証券運用モニタリング中間とりまとめ」などを通じて、市場リスク管理の着眼点等を示してきており、本レポートもその延長線上にあるものです。

グラフ

3.モニタリングにおける主な論点

今回の重点的なモニタリングにおいては、各行の経営環境・規模・特性に留意しつつ、次の点について、モニタリングを進めました


主な論点1:経営体力・リスクコントロール能力に見合ったリスクテイク

将来にわたる健全性維持・金融仲介機能のため、まずは経営陣のリーダーシップの下、自らの経営理念に照らし、有価証券運用の経営戦略上の位置づけを明確化した上で、経営体力やリスクコントロール能力の範囲内でリスクテイクする必要があります。
 ここでは、「有価証券運用でリスクテイクするにあたっては、経営体力・リスクコントロール能力を超えてはならない」という当局のメッセージを強調しています。


主な論点2:リスクテイクに見合った実効的な運用態勢・リスク管理態勢の構築

「主な論点1」の状態を実現するため具体的に誰が何をすればよいかという観点で実務上の論点をまとめています。
 まずは、経営陣が中心となり、 (1)リスクテイク方針の明確化(①望ましいポートフォリオの検討、②リスクテイクに見合った体制整備)を行う必要があります。
 経営陣・2線(リスク管理部門)は、(2)リスク許容度の明確化(①リスク資本の配賦・管理、②損失限度等の設定・管理)を行う必要もあります。
 1線(市場部門)・2線は、(3)投資信託等の管理(①運用資産が内包するリスクの管理、②運用会社が内包するリスクの管理)を行う必要があります。
 2線が中心となり、規模・特性に応じた(4)ストレステストの活用(①市場/統合ストレステスト、②外貨流動性ストレステスト)を推進することも期待されます。
 経営陣・1線は、(5)環境変化に応じた対応(①資本減少リスクへの備え、②期間損益減少リスクへの備え)をとる必要があります。


主な論点3:リスクガバナンスの発揮

「主な論点1」や「主な論点2」が機能するためには、経営陣主導による統制、すなわち、組織全体や未来を見据えた経営の実質的な関与が必要です。
 ここでは、「経営陣が主導してリスクガバナンスを発揮することが重要」という当局のメッセージを強調しています。

モニタリングにおける主な論点

4.モニタリングにおいて把握した事例

3.に掲げた各論点についてモニタリングを行った結果、これまでのモニタリング対象先においては、総じて、相応の取組が認められています。
 他方で、持続的な健全性を確保する観点や、リスク管理高度化の観点からは、有価証券運用の中長期的方針が不明確、特に2線においてスキル継承も見据えた人材確保・育成が不十分、損失限度等の設定・管理に向けた議論の深度が不足、といった懸念される事例も一部で認められています。
 本レポートでは、こうした懸念される事例のほか、参考となる事例についても、論点ごとに、類型化して示しています。
 金融機関においては、これらも参考に、経営環境・規模・特性を踏まえ、リスクテイクに見合った運用態勢・リスク管理態勢の強化やリスクガバナンスの発揮に向けた創意工夫や高度化に取り組むことを期待します。


 金融庁ウェブサイトにて、本レポートの「主なポイント」や「概要」のほか、全文をご覧いただけます。  
 
https://www.fsa.go.jp/news/r5/ginkou/20230908-02/20230908-02.html


モニタリングにおける主な論点

 「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」においては、「実例を類型化した「事例」の公表によって考え方やプリンシプルを補い、透明性を高めていく」ことや、「特定の課題などについて、重点的にモニタリングを行った場合には、ある程度成果がまとまった段階で、必要に応じその結果と今後の課題や着眼点等を公表する」こととしている。
 金融庁や財務局のモニタリングにおいては、個別金融機関を取り巻く経営環境・規模・特性を踏まえ、リスクガバナンスやリスク管理態勢が全体として実効的に機能しているかという観点が必要であり、金融機関に画一的な対応を求めるものではない。もとより、地域金融機関においては、様々な課題を抱える一方で、経営資源に一定の制約を有する場合が多い。したがって、本レポートに記載された個々の論点はチェックリストのように形式的に用いるものではなく、具体的なリスクの顕現化をもって直ちに態勢の不備を指摘するものでもない。


Japan Weeksの開催(9.25~10.6)

Japan Weeksの画像

1.Japan Weeksの概要

政府は、国際金融センターの実現に向けた取組みを前進させるとともに、今後、資産運用立国の実現に向けた取組みを推進することとしています。こうした取組みの一環として、本年9月25日から10月6日に「Japan Weeks(ジャパン・ウィークス)」を開催しました。
 Japan Weeks期間中は、海外の投資家や資産運用会社等を集中的に日本に招致し、多くのイベントが開催されました。一連のイベントでは、政府関係者から、資産運用立国の実現に向けた施策を表明したほか、日本での資産運用の課題や政府への期待について意見を収集しました。
 具体的には、岸田総理から、例えば、運用対象の多様化の推進や、「アセットオーナー・プリンシプル」の策定など、資産運用立国の実現に向けた新たな施策が表明されました。また、一連のイベントを通じ、海外投資家からは、日本市場の魅力や政策を知る良い機会になったとの評価や、日本への投資を前向きに検討したいといったご発言が聞かれたほか、日本での資産運用の課題や政府への期待として、金融経済教育の充実や、資産運用業の運用力向上及びガバナンス改善・体制強化を進めるべきなど、貴重なご意見を伺うことができました。
 今回のJapan Weeksは、日本市場の魅力や政策を発信するとともに、様々なご意見を収集する有意義な機会となったものと考えております。今後、Japan Weeksで伺ったご意見も参考にしながら、10月4日に新しい資本主義実現会議の下に設置された「資産運用立国分科会」において、年内の政策プラン策定に向けた議論を進めるなど、資産運用立国や国際金融センターの実現に向けて取り組んでまいります。

Japan Weeks特設サイト https://www.fsa.go.jp/internationalfinancialcenter/lp/japanweeks/新しいウィンドウで開きます

2.各イベントの様子

ここでは、岸田総理をはじめ政府関係者が参加したいくつかのイベントについて紹介します。

首相官邸ホームページhttps://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/index.html新しいウィンドウで開きます

金融庁ウェブサイト https://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/index_kouen.html

9月25日 全国証券大会

全国証券大会の写真

写真:岸田総理による来賓挨拶の様子
画像出所:首相官邸ホームページ
参考:岸田総理挨拶(首相官邸ホームページ)新しいウィンドウで開きます井林内閣府副大臣挨拶(金融庁ウェブサイト)

 

10月2日 日経サステナブルフォーラム

日経サステナブルフォーラムの写真

写真:岸田総理による開会挨拶の様子
画像出所:首相官邸ホームページ
参考:岸田総理挨拶(首相官邸ホームページ)新しいウィンドウで開きます

 

10月3日~5日 PRI in Person(PRI年次会議)

PRI in Person(PRI年次会議)の写真

写真:岸田総理による挨拶の様子
画像出所:首相官邸ホームページ
参考:岸田総理挨拶(首相官邸ホームページ)新しいウィンドウで開きます

 

10月3日 「金融ニッポン」トップ・シンポジウム

参考:鈴木金融担当大臣挨拶(金融庁ウェブサイト)

10月4日 金融改革フォーラム

参考: 神田内閣府大臣政務官挨拶 (金融庁ウェブサイト)

10月4日 「証券投資の日」トークイベント

「証券投資の日」トークイベントの写真

写真:岸田総理、鈴木金融担当大臣によるビデオメッセージの様子
画像出所:日本証券業協会ホームページ
参考:岸田総理、鈴木金融担当大臣等のビデオメッセージ(日本証券業協会ホームページ:https://www.jsda.or.jp/start/pr/2023toushimessage/新しいウィンドウで開きます

10月6日 グローバル投資家とのラウンドテーブル

記念写真の様子

写真:記念写真の様子
参考:岸田総理挨拶(首相官邸ホームページ)新しいウィンドウで開きます

 
写真:鈴木金融担当大臣による挨拶の様子
写真:鈴木金融担当大臣による挨拶の様子
写真:岸田総理による締めくくり挨拶の様子
写真:岸田総理による締めくくり挨拶の様子

金融経済教育に関するデモ授業動画の公開

成年年齢引き下げに伴い、若年層の金融リテラシーの重要性が高まっています。学習指導要領改訂により高校家庭科の金融経済教育の内容が拡充された一方、教員の方からは「どのように教えたらよいかわからない」と不安の声もお聞きします。
 今回、金融庁の金融経済教育チームが神奈川県立相模原中等教育学校で高校生を対象に授業を実施し、その様子を金融庁ウェブサイト※1及び金融庁公式YouTubeチャンネル(金融庁チャンネル)上で公開しました。

金融庁ウェブサイト「金融経済教育に関するデモ授業」

「みなさん、お金は好きですか?」の問いかけから始まった約100分間にわたる授業は、①はじめに、②家計管理、③使う、④備える、⑤貯める・増やす、⑥借りる、⑦金融トラブル・まとめの7章立てで進めました。
 資産運用については高校生にとっては少し難しい説明も含まれていますが、若い世代にとって身近なお金にまつわる話を盛り込んだほか、随所でお金に関するクイズやシミュレーションを交え、生徒が受け身にならないように工夫をしています。
 「金融経済教育」という言葉から、投資や資産形成をイメージしてしまう方も多いですが、基礎となるのはあくまでライフプランニングや家計管理です。「金融経済教育」と聞いて身構えてしまう教員の方もいらっしゃいますが、難しく考えず、自身の経験からお金の付き合い方について教え、子どもたちに考える機会を与えることが、彼らの将来の自立と豊かな人生につながっていくと考えております。
 金融庁ウェブサイト及び金融庁公式YouTubeチャンネル(金融庁チャンネル)では、男性講師及び女性講師のダイジェスト版やフル版の動画を公開しているほか、再生リストも作成しております。 
 なお、動画で使用している資料※2や、家計管理、ライフプラン、資産形成、借金に関するシミュレーター※3もあわせて公表しておりますので、ご覧ください。

 是非多くの先生方の授業のご準備等にご活用いただければと思います。


※1  「金融経済教育に関するデモ授業」(本年10月27日公表)
  https://www.fsa.go.jp/teach/kyouiku/demonstration.html

※2 「高校向け 金融経済教育指導教材の公表について」(本年8月4日更新)
  https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20220317/20220317.html

※3 金融経済教育 高校授業副教材サイト
  https://www.fsa.go.jp/teach/simulation/


先月の金融庁の主な取組み(令和5年10月1日~10月31日)


編集後記

朝の空気がひんやりしてきました。なかなかグルテンフリーの食パンが手に入らないことからこの夏にホームベーカリーで米粉パン作りに挑戦(?)したのですが、何度やってもうまくふくらまず、失敗が続いていました。説明書をよく読むと、室温が高い場合は水温コントロールが重要とのこと。ところが気温が下がってきた最近、稼働中の機械をのぞき込むと遂にふくらみが!パン選びの悩みから解放されたとともに、近所のパン屋さんの前でいいにおいをかぐと、おいしそうだと思うだけでなく、1年を通じたクオリティコントロールに敬意を払わざるを得ないこの頃です。
 さて、今月号では先日公表した金融経済教育に関するデモ授業動画の紹介をしています。はじめは「長いかな。。?」と思ったのですが、非常に面白い内容であっという間に時間が経ってしまいました。一人でも多くの方に関心を持っていただき、金融経済教育推進の一助になれば嬉しく思います。

  • 金融庁広報室長 矢野 翔平
  • 編集・発行:金融庁広報室

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