|
||||||||
|
1 |
.はじめに 4月6日、経済対策閣僚会議において、緊急経済対策が決定された。 今回の緊急経済対策は、現下の経済情勢をも踏まえ、わが国経済にとって喫緊の課題である構造問題を取り上げ、その根本的な解決に取り組もうとするものである。こうした観点から、金融再生と産業再生、証券市場の構造改革、都市再生、土地の流動化、雇用の創出とセーフティネット等について、具体的な施策が取りまとめられている。 金融庁の関連する分野では、(a)金融機関の不良債権問題と企業の過剰債務問題の一体的解決、(b)銀行の株式保有の制限、(c)証券市場の構造改革など、幅広い内容が盛り込まれている。そこで、本稿では、金融庁の関連する分野における施策の概要及び金融庁の取組み方針について紹介することとしたい(詳細は、別添の緊急経済対策本文の抜粋を参照)。 |
2 |
.金融機関の不良債権問題と企業の過剰債務問題の一体的解決 今回の緊急経済対策では、金融と産業の一体的な再生のため、不良債権問題への包括的な対応策が取りまとめられている。 具体的には、(a)不良債権の抜本的なオフバランス化(債権放棄などにより金融機関の貸借対照表上の不良債権を落とすこと)、(b)企業再建の円滑化、(c)金融機関の債権放棄等の円滑化、(d)債権の流動化などにつき、各種施策が講じられている。 例えば、不良債権の抜本的なオフバランス化については、主要行に対し、新規に破綻懸念先以下となった債権については3営業年度以内、既に破綻懸念先以下となっている債権については2営業年度以内にオフバランス化すること等を原則としている。企業再建の円滑化については、経営困難企業の再建及びそれに伴う債権放棄に関する原則を確立するため、私的整理における再建計画の策定等に係る調整手続等についてガイドラインが取りまとめられる。 金融機関の不良債権問題と企業の過剰債務問題の一体的解決については、金融庁としても、経済産業省、国土交通省など関係省庁と十分に意見交換を行いながら、検討してきたところであり、今回の緊急経済対策の策定に伴って、不良債権問題と過剰債務問題の解決に向けた環境整備は大きく前進するものと考えられる。金融機関、企業など民間関係者が今回用意された施策を積極的に活用することにより、不良債権問題の抜本的な処理及び産業界の構造改革が大きく進展することを期待したい。 |
3 |
.銀行の株式保有の制限について わが国金融システムの構造改革を推進し、その安定性への信頼を高めていくためには、銀行の保有する株式の価格変動リスクを銀行のリスク管理能力の範囲内に留めることにより、銀行経営の健全性が損なわれないことを担保するため、銀行の株式保有制限の在り方に関する制度整備を行なうこととしている。また、こうした施策に伴う銀行の株式放出が、短期的には株式市場の需給と価格形成に影響し、株価水準によっては、金融システムの安定性や経済全般に好ましくない影響を与える可能性もあることから、一時的なものとして、株式買取りスキームを創設することとされている。 今後、こうした制度整備及びスキームを実施するための具体案を確定し、法的手当てを含めた細目について可及的速やかに成案を得ることとされており、金融庁としても実務的な検討を進めることとしている。 |
4 |
.証券市場の構造改革等 個人投資家による長期安定的な株式保有の促進等証券市場の活性化を図る等の観点から、金融庁関連では、(a)金庫株の解禁に伴う環境整備、(b)証券決済システムの改善、(c)株価指数に連動する現物出資型の上場投資信託(ETF)、が盛り込まれている。 金庫株の解禁に伴う環境整備については、インサイダー取引規制における手当てや株価操縦の防止に関するルールの整備とともに、自己株式の取得・処分に関するディスクロージャーの充実、証券取引等監視委員会の体制強化等について、本通常国会で法改正の動きがあることを踏まえ、必要な検討を行なうとされている。金融庁としても、金庫株解禁に係る不公正取引を厳に排除するため、与党における法案提出に向けた検討等を踏まえつつ、適切に対応していく方針である。 証券決済システムの改善については、CP等のぺーパレス化や決済期間の短縮等を図るものであるが、証券市場の国際競争力を左右する基盤的制度の改革として諸外国においても精力的な取り組みが行われており、わが国においても金融システムの国際競争力の維持・向上を目指す上で緊急の課題である。金融庁では、こうした観点から、CP等について振替制度を創設する等、所要の法整備を図ることとしている。 株価指数に連動する現物出資型の上場投資信託(ETF)については、簡便かつ機動的に小額の投資ができる、株価指数に連動する新たな商品を投資家に対し提供することにより市場の厚みが増すなど、市場活性化に貢献することが期待されると指摘されており、金融庁としても早急に検討していく方針である。 なお、今回の緊急経済対策において、「現下の経済情勢等を踏まえ、個人投資家の市場参加の促進等直接金融市場の活性化、経済構造改革の推進に資する等の観点から、証券・土地関連の税制に係る真に有効かつ適切な措置について、課税の公平等に留意しつつ、早急に検討を行い、結論を得る」とされたことを踏まえ、金融庁としても、株式等譲渡益課税のあり方等について、個人投資家の市場参加の促進等直接金融市場の活性化の観点から早急に検討を進め、適切に対応していく方針である。 |
5 |
.おわりに 今後、金融庁としては、わが国の構造調整を進展させ、今後の経済成長の礎とするという緊急経済対策の趣旨を踏まえ、本対策に掲げられた項目の実現に向け、積極的に取り組んでいきたいと考えている。 |
(別添) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
緊急経済対策本文(金融庁関連部分を抜粋) |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1 |
.金融再生と産業再生 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2 |
.証券市場の構造改革 個人投資家による長期安定的な株式保有の促進等証券市場の活性化を図る等の観点から、以下の措置を講ずる。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
5 |
.税制 現下の経済情勢等を踏まえ、個人投資家の市場参加の促進等直接金融市場の活性化、土地の流動化の促進、経済構造改革の推進に資する等の観点から、証券・土地関連の税制に係る真に有効かつ適切な措置について、課税の公平等に留意しつつ、早急に検討を行い、結論を得る。 |
1 |
.金融における新たな流れと金融審議会の検討 |
||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||
2 |
.法案の概要 このような報告を受けて、法律改正を必要とする事項に関する法制化の検討を経て、今般、「銀行法等の一部を改正する法律案」が策定され、去る3月6日に国会に提出されたところである。本法案は、銀行等の主要株主に関するルール整備と新たなビジネス・モデルに対応した規制緩和等の2つの要素から成っているが、その概要は以下の通りである。 |
||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||
3 |
.終わりに 主要株主に関するルールの整備及び新たなビジネス・モデルに伴う規制緩和等の制度整備は、銀行業への新規参入のルールを透明化し、また、金融の新しい動きに対応した規制緩和等を行うものである。この結果、銀行機能を悪用することを意図するなどの不適格な者を排除することにより、銀行業への信認の向上が図られ、銀行等の健全かつ適切な経営を確保しつつ、我が国金融の活性化が図られることとなる。 今後、ますます加速するであろう金融業の変化に対応するため、国会での御審議を経てできるだけ早期の施行が望まれるところである。 |
4月1日に改正、施行されました主要法令等は以下のとおりです。 |
|||
法律の制定・改正 |
|||
1 | .預金保険法の一部改正(これに伴う政令、府令等の一部改正を含む。) | ||
|
|||
2 | .農水産業協同組合貯金保険法及び農林中央金庫と信用事業協同組合連合会との合併に関する法律の一部を改正する法律(これに伴う政令、命令の改正を含む。) | ||
|
|||
3 | .民事再生法等の一部を改正する法律 | ||
|
|||
4 | .書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律(これに伴う政令、府令等を含む。) | ||
|
|||
5 | .金融商品の販売等に関する法律(政令を含む。) | ||
|
|||
6 | .消費者契約法 | ||
|
|||
7 | .商法等の一部を改正する法律 | ||
|
|||
8 | .租税特別措置法 | ||
|
|||
9 | .地方税法 | ||
|
|||
10 | .行政機関の保有する情報の公開に関する法律 | ||
|
政令の改正 |
|||
1 | .金融庁組織令の一部改正 | ||
|
|||
2 | .信用金庫法施行令等の一部改正(農水主管の政令も同様の改正を行う。) | ||
|
|||
3 | .郵政官署における原動機付自転車等責任保険募集の取扱いに関する法律第六条第二項の規定により財務局長又は財務支局長に委任する権限を定める政令 | ||
|
|||
4 | .証券取引法施行令等の一部を改正する政令 | ||
|
|||
5 | .勤労者財産形成促進法施行令一部改正等持家融資等改正関連 | ||
|
府令の改正 |
|||
1 | .証券会社に関する内閣府令等 | ||
|
|||
2 | .証券取引法第161条の2に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令の一部改正 | ||
|
|||
3 | .投資信託及び投資法人に関する法律施行規則の一部改正 | ||
|
|||
4 | .保険業法施行規則の一部改正 | ||
|
|||
5 | .銀行法施行規則の一部を改正する内閣府令等 | ||
|
|||
6 | .信託会社が信託財産として所有する登録社債等の登録方法等に関する命令等 | ||
|
|||
7 | .保険業法施行規則等の一部を改正する内閣府令及び労働金庫法施行規則の一部を改正する命令(農林水産省主管等の規則も同様の改正を行う。) | ||
|
|||
8 | .商法等の一部を改正する法律等の施行に伴う融庁関係内閣府令の整備に関する内閣府令の整備に関する内閣府令 | ||
|
|||
その他訓令・通達等 |
|||
9 | .金融庁における政策評価の実施要領 | ||
|
|||
10 | .事務ガイドライン改正 | ||
|
|