アクセスFSA 第245号

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令和6年能登半島地震関連情報

1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」により亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心からお見舞いを申し上げます。

金融庁では、ウェブサイト上に「令和6年能登半島地震関連情報」ページを開設し、被災者の皆さまに役立つ情報を提供しています。

〈日本語版〉

https://www.fsa.go.jp/ordinary/earthquake202401/press.html

〈英語版〉

https://www.fsa.go.jp/en/ordinary/earthquake202401/press.html

現在提供中の情報について、以下のとおり一部ご案内します。

■ 令和6年能登半島地震金融庁相談ダイヤル

金融庁では、令和6年能登半島地震発生に際し、被災者の皆様が金融機関のどの窓口に問合せをすればいいのかということのご照会、あるいは、金融機関とのお取引に関するご相談等を受け付けるため、「令和6年能登半島地震金融庁相談ダイヤル」を開設しました。

当ダイヤルはフリーダイヤルですので、金融機関とのお取引に関してご心配なことがある場合には、お気軽にご相談ください。

0120-156811(フリーダイヤル)
【受付時間】平日10時~17時
※IP電話からは03-5251-6813に おかけください。

■ 被災地の金融機関の状況

被災地の金融機関の状況(休業中の店舗等)の一覧について、随時更新し掲載しています。

■ 住宅ローンなどを利用されている被災者の皆様へ

今般の災害で住宅ローンなどの返済にお困りの被災者(個人)の皆様に対応するため、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を活用することにより、住宅ローンなどの免除・減額を申し出ることができます。

詳しくは、ローン借入先の金融機関等にお問い合わせください。

■ 生命保険及び損害保険を契約されている被災された皆さまへ

災害救助法が適用された地域で、家屋等の損壊等により保険会社との保険契約に関する手掛かりを失ったお客様についての契約照会を受け付けます。

生命保険について

・生命保険協会

災害時受付専用連絡先(生命保険相談所)

0120-001731(フリーダイヤル)

【受付時間】平日(除く祝日・年末年始) 9時~17時
損害保険について

・日本損害保険協会

自然災害等損保契約照会センター

0120-501331(フリーダイヤル)

【受付時間】平日 9時15分~17時

※現在、土・日曜日、祝日・休日も受付中(1月12日時点)

・外国損害保険協会

自然災害等損保契約照会センター

03-5425-7850

【受付時間】平日(除く祝日・年末年始) 9時~17時

今後も随時情報を更新して参りますので、是非ご活用ください。


※ 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインについて」(東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関)http://www.dgl.or.jp/新しいウィンドウで開きます


インパクトコンソーシアム設立発起会合の開催

1.開催概要

気候変動や少子高齢化等の環境・社会課題の重要性が増す中で、課題解決を図る事業等への支援は喫緊の課題となっています。特に、環境・社会的効果(「インパクト」)の創出を、経済・社会の成長・持続可能性の向上に結び付ける好循環の実現が重要であり、産官学金等による幅広い連携が期待されています。

そのような背景の下、インパクト実現を図る多様な取組を支援するほか、インパクトの創出を図る投融資を有力な手法・市場として確立し、事業を推進していく観点から、幅広い関係者が協働・対話を行う場として、「インパクトコンソーシアム」(以下「コンソーシアム」)の設立が発起されることとなり、昨年11月28日に設立発起会合が開催されました。

設立発起会合には、発起人、関連団体、関係省庁(内閣官房・金融庁・経済産業省・環境省)が参集し、オンラインで同時配信されました。

2.開会挨拶及び設立発起表明

冒頭では、神田内閣府大臣政務官が開会挨拶を行い、新しい技術やアイディアで課題解決のインパクトを創出する企業の力や、そうした技術・ビジネスモデルの革新を促す金融の力、そして、特に地域における企業と行政との連携の重要性について言及の上、「官民の多様な関係者が連携し、インパクトについての積極的な対話と事例・課題・手法の検討・共有を行うことができる場を設立発起いただいたことは、社会変革と持続的な経済成長を促していく上で、非常に有益」とコンソーシアムに対する期待を述べました。

発起人による設立発起表明では、水口高崎経済大学学長より、「コンソーシアムでの活動を通して、経済・社会の行動の中で、インパクトを考慮することが当然となり、規範や価値観になって根付いていくようにすることが重要」との言葉とともに、コンソーシアムへの参加の呼びかけがありました。

写真:発起人及び参加者等
写真:発起人及び参加者等
写真:開会挨拶をする神田内閣府大臣政務官
写真:開会挨拶をする神田内閣府大臣政務官
写真:設立発起を表明する水口高崎経済大学学長
写真:設立発起を表明する水口高崎経済大学学長

3.海外の関連団体からのビデオメッセージ

また、インパクト投資等の発信・推進を行う代表的なグローバルネットワークであるPrinciples for Responsible Investment (責任投資原則)、The Global Steering Group for Impact Investment、Global Impact Investing Networkの各代表からビデオメッセージが届き、財務的リターンと社会・環境へのインパクトの双方を実現し、持続可能な社会を構築していくにあたり、コンソーシアム等を通じた官民連携による日本のリーダーシップの発揮や海外ネットワークとの連携への期待を述べました。

なお、コンソーシアムの概要及び当日の配信動画については、特設サイトからご覧いただけます

次第
1.開会挨拶
2.設立発起表明
3.概要説明
4.祝辞
5.発起人・発起人代理挨拶
6.海外からのメッセージ
7.Closing Remarks
8.閉会挨拶

※ 特設サイト「インパクトコンソーシアムのご案内」

https://goodway.co.jp/fip/htdocs/event/20231128_impact/新しいウィンドウで開きます


栗田長官とマーク・カーニーGFANZ共同議長の面談

写真:栗田長官(左)とマーク・カーニーGFANZ共同議長(右)
写真:栗田長官(左)とマーク・カーニーGFANZ共同議長(右)

昨年11月29日、栗田長官はマーク・カーニーGFANZ共同議長(気候変動対策・ファイナンスに関する国連事務総長特使)と金融庁において面談しました。アラブ首長国連邦で開催されたCOP28への参加に先立ち、カーニー共同議長が来日したことで実現したものです。

面談では、サステナブル・ファイナンスの推進に係る幅広い事項について議論を行いました。特に、アジアGXコンソーシアム等の、アジアや世界の脱炭素に向けた金融面での取組みや、GFANZとの連携、GFANZ日本支部の活動状況等に加え、トランジションファイナンスの重要性ついて意見交換を行いました。


※ 同日に行われた、岸田総理とカーニー氏との面会については、首相官邸ホームページをご覧ください。

https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202311/29hyokei.html新しいウィンドウで開きます


第7回日韓金融協議の開催

2023年12月19日から20日にかけ、韓国・ソウルにて、第7回日韓金融協議が開催されました。今回の協議には、金融庁と韓国金融委員会(FSC)及び金融監督院(FSS)の3当局が参加し、2016年6月の東京開催以来、約7年ぶりとなりました。

今回の訪韓で、栗田照久長官は、キム・ジュヒョンFSC委員長及びイ・ボクヒョンFSS院長と、それぞれ面談を行いました。栗田長官は、日韓金融協議の再開に歓迎の意を表するとともに、今回の協議が、日韓共通の機会や課題に効果的に対処するための重要なプラットフォームとなり、サステナブルファイナンスや金融サービスにおけるイノベーションといった分野における3当局のさらなる対話と情報交換が促進されることに期待を示しました。

今回の協議において、日韓3当局は、両国を取り巻くグローバル経済・金融情勢や、両国における金融行政上の重要課題について、率直かつ建設的な対話を行いました。

さらに、2014年に3当局間で交わした「金融監督分野の協力に関する覚書」(MoC)の改定版に署名を行いました。本改定は、金融サービスにおけるイノベーションやサステナブルファイナンスなどの新しい課題に対応するため、監督上の協力範囲を広げることを目的としています。

なお、金融庁とFSC・FSSは、日韓金融協議について共同でプレスリリースを行いました。詳細につきましては、金融庁ウェブサイトをご覧ください。

https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20231220/20231220.html

写真:第7回日韓金融協議の模様
写真:第7回日韓金融協議の模様
写真:第7回日韓金融協議の模様
写真:第7回日韓金融協議の模様

第2回「日英金融規制フォーラム」の開催

日英包括的経済連携協定(CEPA、令和3 年1月発効)に基づき、金融庁は英国当局と金融分野に関する年次協議を開催しています。

昨年においては、11月27日に金融庁と英国財務省(HMT)、イングランド銀行(BOE)、金融行為規制機構(FCA)との間で第2回「日英金融規制フォーラム」を実施しました(日英財務省間で実施された第5回「日英財務協議」と一部合同開催)。

今回のフォーラムでは暗号資産・ステーブルコイン、フィンテック、サステナブルファイナンス、ノンバンク金融仲介(NBFI)、資産運用、銀行、保険の分野における、各当局の取組と両国間の国際的な協力について議論を行いました。

また、会合後に議論の内容について共同声明を公表しました。

https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20231127/20231127.html

次回は本年中にロンドンにて次回フォーラムを実施する見込みであり、金融庁として引き続きこのような二国間協議の場を通じて各国当局との連携強化に取り組んでいきます。

写真:金融庁、財務省、HMT、BOE、FCAの代表者で記念撮影
写真:金融庁、財務省、HMT、BOE、FCAの代表者で記念撮影
   当庁有泉金融国際審議官(右から3番目)、三好国際総括官(右端)

「保険業該当性に関するQ&A」の公表

(前)監督局保険課         

 課長補佐 安田 栄哲 

 監督局保険課       

 係長 水谷 百合香

監督局保険課損害保険・少額短期保険監督室      

課長補佐 佐藤 諒一

課長補佐 渡辺 香織

1.はじめに

昨年11月30日、金融庁は、保険業該当性について基本的な考え方を示した「保険業該当性に関するQ&A」(以下「本Q&A」)を公表しました※1。

本稿では、本Q&Aの公表の趣旨と概要について紹介します。

2.公表の趣旨

保険業を行うには保険業の免許又は少額短期保険業の登録が必要であるところ、これまで金融庁では保険業該当性について照会を受けてきました。

保険業該当性の照会は、主にノーアクションレター制度により受けていますが、当該制度は、事業者が実施しようとする事業や取引の個別具体的な事実関係を前提として、当該事業や取引の保険業該当性を回答するものです。

また、「少額短期保険業者向けの監督指針」 ※2 (以下「少短指針」)において、保険業該当性に関する記載がありますが、一般的・体系的に保険業該当性の解釈等を示したものはありませんでした。

このため、保険行政の透明性を高めつつ、事業者における新規サービスの事前検討の指標となるよう、保険業該当性の基本的な考えを示した本Q&Aを作成、公表しました。

3.Q&Aの概要

本Q&Aでは、「総論」、「法による整理」、「少短指針に基づく整理」のそれぞれに関する考え方を示しています。また、保険業該当性における基本的な事項に関する質問に「★」マークを付し、初めて保険業該当性を検討する場合に参考とすべき事項を明示しています。以下のとおり、本Q&Aの一部を紹介します。

■ 総論

(問1)★ 保険業該当性の検討が必要になるのはどのような場合でしょうか。 

提供を検討しているサービスそのものの対価として金銭を受領するか否かにかかわらず、商品の対価や提供を検討しているサービス以外のサービスの対価等も含め、ユーザーから何らかの金銭を受領し、一定の事象が発生した場合に金銭の給付や修理を行う等の補償サービスを提供しようとする場合には、当該サービスが保険業に該当するか否かを検討する必要があります。

(問2)★ 保険業該当性についてどのように検討すべきでしょうか。

まず保険業法(以下「法」)による整理を検討し、法による整理で判断できない場合には少短指針に基づく整理を検討します。

検討順序を図示すると、次頁の図のとおりですが、各項目の詳細については、問4以降に記載しています。

■ 法による整理

(問4)★法令において保険業はどのように定義されているのでしょうか。

法第2条第1項柱書には、保険業について、「人の生存又は死亡に関し一定額の保険金を支払うことを約し保険料を収受する保険、一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約し保険料を収受する保険その他の保険で、第3条第4項各号又は第5項各号に掲げるものの引受けを行う事業をいう。」と定められています (ただし、同項には適用除外が定められており、詳細については問7を参照してください。) 。

■ 少短指針に基づく整理

(問12)★少短指針Ⅴ⑴(注2)本文となお書の関係性を教えてください。

少短指針Ⅴ⑴(注2)は、「役務的なサービスを提供する」場合について、保険業に該当しない基準を定めています。

このうち、少短指針Ⅴ⑴ (注2)本文は、①当該サービスの内容、②当該サービスの提供主体・方法、③従来から当該サービスが保険取引と異なるものとして認知されているか、④保険業法の規制の趣旨等を総合的に勘案し、保険業該当性を判断するものです。

少短指針Ⅴ⑴(注2)なお書は、同本文に基づく総合判断をするまでもなく、保険業に該当しない類型を定めたものです。これは、物の製造者は製造物責任、販売者は契約不適合責任等の民事法上の責任を負うため、これらの責任につき、顧客サービスの一環として契約により拡張したとしても社会通念上保険業には該当しないことを明文化したものと考えられます。

したがって、少短指針Ⅴ⑴ (注2)なお書に該当する場合、同本文による総合判断は不要となります。このように、「役務的なサービスを提供する」ときには、まず少短指針Ⅴ⑴(注2)なお書の要件該当性を検討し、少短指針Ⅴ⑴(注2)なお書に該当しない場合には、同本文に基づき総合判断により保険業該当性を検討することになります。


その他の問については、金融庁ウェブサイトに掲載している本Q&Aの本文をご確認ください。

PDFのアイコンの画像です。https://www.fsa.go.jp/common/law/hokenngaitouseiqanda.pdf


保険業該当性に関するQ&A

※1 「保険業該当性に関するQ&A」の公表について(11月30日公表)

 https://www.fsa.go.jp/news/r5/hoken/20231130/20231130.html

※2 「少額短期保険業者向けの監督指針」

 PDFのアイコンの画像です。https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/syougaku.pdf


資産運用立国に関する金融庁の取組

                        総合政策局リスク分析総括課

総括調整官 鈴木 善計

係長 坂上 真樹

係員 田中 惇士

1.基本的な考え方

  •  我が国の家計が保有する金融資産の半分以上は現預金でありますが、米国や英国の家計では、より多くの資金を投資に向けることで、我が国よりも高い伸び率で、金融資産を増やしています。こうした中、政府においては、「成長と分配の好循環」の実現を目指しています。具体的には、我が国において、

・家計が、安定的な資産形成に向け、より多くの資金を貯蓄から投資に向ける、
・その資金が企業の成長投資にまわって企業価値が向上する、

・その恩恵が資産所得という形で家計に還元され、更なる投資や消費に繋がる、

という好循環を実現したいと考えています。

  •  そのためには、インベストメント・チェーンを構成する各主体への働きかけが重要です。

・①家計に対しては、本年1月から開始された新しいNISA(少額投資非課税制度)の普及や春に設立予定の金融経済教育推進機構を通じた金融経済教育の充実など、家計の安定的な資産形成の支援を推進していきます。

・加えて、②金融機関に対しては、家計が安心して金融資産を購入できるよう、顧客本位の業務運営の確保を推進します。

・また、③企業に関しては、魅力ある投資先となる企業が増えるよう、企業の持続的成長と中長期的な企業価値向上に向け、より実効的なコーポレートガバナンスの実現にも取り組んでいきます。

資産運用立国について
  •  加えて、インベストメント・チェーンの残されたピースとして、年金・保険や投資信託等を通じ、家計等の資金の運用を担う立場にある、④資産運用業及び(年金や保険等の)アセットオーナーについて、その運用力の向上、ガバナンスの改善等に取り組んでいきたいと考えています。
  •  このため、昨年12月13日に、新しい資本主義実現会議の分科会において、「資産運用立国実現プラン」を策定・公表しました。このプランの実行を通じて、我が国経済の成長と国民の資産所得の増加に繋げていきたいと考えています。

2.「資産運用立国実現プラン」の概要

  •  プランにおいては、資産運用業とアセットオーナーに関する取組として、以下の5つの柱の取組を進めていくこととされています(具体的な取組みは以下図をご参照ください)。

①資産運用業の改革(既存の資産運用会社の資産運用力の向上やガバナンス改善・体制強化、資産運用業の国内外からの新規参入と競争の促進)

②アセットオーナーシップの改革

③成長資金の供給と運用対象の多様化

④スチュワードシップ活動の実質化

⑤対外情報発信・コミュニケーションの強化

  •  今後とも、内閣官房・厚生労働省をはじめとする関係者とも連携しつつ、資産運用立国の実現に向けた取組を進めてまいります。

詳細は、金融庁ウェブサイトをご覧ください。

https://www.fsa.go.jp/policy/pjlamc/20231214.html

資産運用立国プラン
資産運用立国プラン
資産運用立国プラン

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォース報告書」の概要

企画市場局市場課      

課長補佐 山口 純平

係長   城村 伊織

1.はじめに

日本の2,000兆円を超える家計の資金を投資につなげ、その恩恵を家計に及ぼす「成長と分配の好循環」を推進するため、新しい資本主義実現会議の下に資産運用立国分科会が昨年10月4日に設置され、資産運用業とアセットオーナーシップの改革等を内容とする資産運用立国に関する政策プランについて検討が行われました。

こうした政府全体の取組みとあわせて、金融庁においても金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」の下に「資産運用に関するタスクフォース」が同年10月3日に設置され、資産運用に関する制度的な枠組み等について専門的な検討が行われました。

そして、同年12月12日、本タスクフォースにおける議論を踏まえた「市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォース報告書」※1(以下「報告書」) が取りまとめられました(図1)。あわせて、政府においても報告書で示された施策等が盛り込まれた「資産運用立国実現プラン」(以下「プラン」)が同年12月13日に策定されました※2

次頁では、プランにも関連する報告書の内容を紹介いたします。

【図1】

図1

2.資産運用業の高度化(図2)

大手金融グループにおいては、顧客利益よりも販売促進を優先した金融商品の組成・管理が行われているのではないかとの懸念も指摘されています。こうした指摘等も踏まえ、グループ内での資産運用ビジネスの経営戦略上の位置づけを明確にし、ガバナンス改善等を図るためのプランの策定・公表を行うことが重要との提言がなされました。この他、「顧客本位の業務運営に関する原則」に資産運用会社のプロダクトガバナンスを中心とした記載を追加すべきと提言されました。

また、国内外からの新規参入が活発化することを通じて、業界全体の運用力の向上につながることが期待されています。そのための施策として、(a)ミドル・バックオフィス業務を受託する事業者について任意の登録制を創設し、登録した事業者に対する規制および監督を行うことで業務の品質を確保しつつ、(b)当該登録を受けた事業者へミドル・バックオフィス業務を委託する場合には、投資運用業の登録要件を緩和することが提言されました。

加えて、欧州におけるファンド・マネジメント・カンパニーのように、資産運用業者がファンド運営機能に特化することも許容されるとの考え方のもと、運用権限の全部委託に係る禁止規定の見直しについても提言されました。

この他、新規参入において運用資金(シードマネー)を獲得することが難しいとの指摘もあります。そこで、官民が連携した新興運用業者に対する資金供給の円滑化に関するプログラムを策定することが提言されています。例えば、新興運用業者について単に業歴が短いことのみを理由に排除せず、幅広く資金運用の委託先の選択肢に加えることを金融機関等に要請する等の取組みが考えられます。

なお、投資信託に関する日本独自の慣行である「投資信託の基準価額に係る二重計算」に関して、マテリアリティポリシーについて監督指針に記載すべき等も提言されました。

3.アセットオーナーに関する機能強化

アセットオーナーシップの改革についてはプランにおいて具体的な施策が提示されています。報告書では、当局はアセットオーナーを支える金融機関を適切にモニタリングし、必要に応じて改善を求めるべきであると提言されました。

【図2】

図2

【図3】

図3

4.成長資金の供給と運用対象の多様化の実現(図3)

日本経済の持続的成長のために不可欠なスタートアップ企業等への成長資金の供給が活性化されていくことが重要です。こうした中、広く機関投資家から調達を行う日本のベンチャーキャピタルのガバナンス向上等を図るため、グローバルな実務等を踏まえたベンチャーキャピタル・プリンシプルを策定することが提言されました。

また、日本ではこれまで、投資信託への非上場株式の組入れは行われてきませんでしたが、昨年12月に投資信託協会において自主規制規則の改正が行われました(本年2月施行予定)。その他、報告書では東京証券取引所のベンチャーファンド市場の利用活性化に向けた提言も行われているところ、こうした取組みを通じて、成長資金の供給および投資対象の多様化が促進されていくことが期待されます。

投資型クラウドファンディング(以下「投資型CF」)については、投資型CFで資金調達を行う企業において、必要な開示を行うことを前提に発行総額上限を引き上げること、また、投資家(特定投資家を除く)の投資上限額についても年収や純資産に応じて定めることが提言されました。

非上場株式のいわゆるプライマリー取引の観点だけではなく、セカンダリー取引の活性化も重要です。報告書では、プロ投資家(特定投資家)を対象とした非上場有価証券の仲介業務に特化し、原則として有価証券や金銭の預託を受けない場合には、第一種金融商品取引業の登録要件等を緩和することが適当との提言が行われました。加えて、非上場有価証券のみを扱う私設取引システム(PTS)について、取引規模等が限定的な場合は、認可を要さず、第一種金融商品取引業の登録制の下で参入可能とすることが提言されました。

この他、家計の投資環境の改善のため、報告書では、新しいNISA制度におけるつみたて投資枠(月換算10万円)をカバーできるよう、累積投資契約のクレジットカード上限額を引き上げることが適当との提言が行われました。

5.おわりに

以上の他、報告書ではスチュワードシップ活動の実質化や、運用商品の多様化など多岐にわたって提言が行われています。本報告書で示された施策を着実に実行し、インベストメントチェーンを通じた「成長と分配の好循環」を推進していきたいと考えています。


※1 12月12日公表「金融審議会 市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォース報告書」については、https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20231212.htmlをご参照ください。

※2 「資産運用立国実現プラン」(12月13日新しい資本主義実現会議資産運用立国分科会決定)の概要については、本誌P9~P11をご参照ください。


NISA特設サイトのリニューアル

新しいNISA制度がスタート

本年1月よりNISA制度が新しくなりました。これに合わせ、NISA特設サイトの全面的なリニューアルを実施しました。

https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/index.html

金融庁NISAキャラクターである、“つみたてワニーサ”をメインテーマに据え、より親しみやすいデザインと分かりやすさを意識し、資産形成についてこれから検討してみよう、NISAについて勉強してみようといった初心者の方にも優しいウェブサイトとなるよう制作しました。

NISA特設サイト

NISAの活用事例

NISA制度の概要や利用状況調査など、これまでのサイトで公表していた情報に加え、実際のNISAの利用をよりイメージしてもらいやすいよう、NISAの活用事例のページを新しく作成しました。つみたて投資枠、成長投資枠それぞれの特徴に触れながら、7つの活用パターンを掲載しています。

それぞれの活用パターンを参考にしていただきながら、具体的なイメージを持ってもらえればと思います。

NISA特設サイト

今後も様々コンテンツを更新予定!

金融庁が実施しているNISAセミナーやイベントの情報の他、積立投資のシミュレーションや、ライフプランニングが簡単に行えるシミュレーターなど、今後もNISAや資産形成に関する様々なコンテンツを更新、特設サイト内で公開していく予定です。

こうした情報はつみたてワニーサX(旧Twitter)公式アカウントとも連携し展開していく予定ですので、是非お気軽にNISA特設ウェブサイトをご覧ください!

つみたてワニーサ公式Xアカウント

「Japan Fintech Week 2024」及び「FINSUM2024」の開催(3.4~3.8)

Japan Fintech Week 2024

1.Japan Fintech Weekについて

金融庁は、日本のフィンテックの魅力を世界に発信し、フィンテックの更なる発展に向けたビジネス機会を創出するため、「Japan Fintech Week 2024」を初開催します。

本年3月4日(月曜)~8日(金曜)をコアウィークとし、今回で8回目の開催となる「FIN/SUM 2024」(次頁掲載)を中核としつつ、前後週も含めて各種団体が開催する多彩なフィンテック関連イベントを東京で集中的に開催することで、国内外のフィンテック事業関係者が一堂に会す場とすることを目指します。東京都などの自治体や各国大使館、また、BGIN(Blockchain Governance Initiative Network)、Fintech協会、FINOLAB、Elevandi、Plug and Playなどのフィンテック関連団体が、パネルディスカッションやラウンドテーブル、ブース展示、スタートアップピッチ、ネットワーキング等を都内各地で実施予定です。

2.Japan Fintech Week開催予定イベント

当該期間に開催を予定しているイベントは、下記一覧表のとおりです。なおイベントの内容は、今後変更になる可能性がございますので、予めご了承ください。

イベントの詳細については、Japan Fintech Week特設ページをご覧ください。皆様のご参加をお待ちしております!

https://www.fsa.go.jp/policy/japanfintechweek/2024/index.html

Japan Fintech Week特設ページのQRコード
Japan Fintech Week開催予定イベント一覧
FIN/SUM2024のロゴマークの画像です。

3.FIN/SUM2024について

金融庁は、日本経済新聞社との共催により、フィンテック等に関する国際シンポジウム「FIN/SUM 2024」を「Japan Fintech Week」の中核イベントとして本年3月5日(火曜)~8日(金曜)に開催します。学術界や技術コミュニティ、事業者、金融当局や中央銀行等の専門家を招聘し、Web3.0・デジタル資産、送金・決済、埋込型金融、地方創生、AI、ESG、そして資産運用立国等をテーマに多様な視点からディスカッション等を行う予定です。

詳細については、金融庁ウェブサイトをご覧下さい。

  • 1. 開催日時:令和6年3月5日(火曜)~8日(金曜)

  • 2. 開催場所:丸ビルホール(丸ビル7階)、丸ビルコンファレンススクエア(同8階)
    (東京都千代田区丸の内2-4-1) 他

  • 3. プログラム:参加登録を含めた詳細は、以下の公式サイトをご参照下さい。
    https://finsum.jp/新しいウィンドウで開きます

  • 4.テーマ:「幸福な成長をもたらす金融」

FIN/SUM2024の特設サイト

※FIN/SUM2023年の様子

FIN/SUM2023年の様子
FIN/SUM2023年の様子

※ 「Japan Fintech Week 2024」及び「FIN/SUM2024」の開催について(昨年11月15日公表)

https://www.fsa.go.jp/news/r5/sonota/20231114/japanfintechweek.html


金融サービス利用者相談室に寄せられた最近の相談(令和5年7月~9月)

金融庁では、金融サービス利用者の利便性の向上を図るとともに、寄せられた情報を金融行政に有効活用するため、金融サービス等に関する利用者からの質問・相談・意見等に一元的に対応する金融サービス利用者相談室(以下「相談室」)を開設しています。

相談室に寄せられた利用者からの相談項目・件数等については、四半期毎に公表しており、昨年11月30日には、同年7月から9月までの相談等の受付状況等の公表を行ったところです。

また、令和4年9月より金融行政・金融サービスに関する一般的・定型的なご質問等について自動応答する「AIチャットボット」を設置していますが、これまで利用者の皆様に当該チャットボットをご利用いただいた中で把握できたこと等を踏まえ、昨年11月に質問等の内容の拡充を行っています。

今回は、相談室に寄せられた最近の相談について、簡単にご紹介させていただきます。

預金・融資関係については、金融機関から発送されている金融機関のマネロン対策のためのお客様情報確認についてのお手紙について、「記載方法が分からない」や「回答しなければならないのか」等の相談が寄せられています。また、「高額の出金に際し、本人確認書類や資金使途を証明する書類の提出を求められ、提出できなかったため出金できなかった」との相談が寄せられています。

このほか、「コロナ禍による業況悪化により、返済条件のリスケを求めても応じてくれない」との相談も複数寄せられています。

投資に関しては、「マッチングアプリやSNSで知り合った者から、金融庁に登録のない業者において暗号資産やFX等の投資を勧められ資金を送金したが、その後出金できないばかりか、保証金や税金等の名目で金銭を支払うよう求められた」との相談が多数寄せられています。また、当庁職員を名乗る人物が動画に登場して投資取引を勧誘している(いわゆるフェイク動画)との情報提供や、本年1月に新しいNISAが始まることに伴い、NISAやつみたてNISAに関する相談も寄せられています。

保険に関しては、保険会社等の不正な業務運営に関する相談が多く寄せられています。

その他、金融庁を騙った詐欺に関する相談も寄せられており、注意喚起も兼ねて具体的な事案をご紹介させていただきます。

金融庁公式X(旧Twitter)で注意喚起を行っています!

#金融庁を騙った詐欺にご注意

金融庁公式X(旧Twitter)での注意喚起
金融庁公式X(旧Twitter)での注意喚起

事例1

  •  金融庁の架空部局や職員の実名を騙る者が、不特定多数の人に高額当選金が受領できる旨のメッセージを送り、手数料として、現金や暗号資産を振り込ませる事案が発生しています。
  •  クレジットカードの情報が流出して不正利用されたと偽り、金融庁職員を名乗る者から取引金融機関口座を尋ねられ、金融庁が指定した口座への入金や新規に口座の開設を依頼されたとの相談が寄せられています。
注意喚起

事例2

  •  金融庁から業務委託を受けたと騙る者が個人宅を訪問し、資産状況等のアンケート調査を要請する事案が発生しています。
  •  当該詐称者(事業者)は、個人宅を訪問しアンケート調査を要請して資産状況を聞き出そうとするほか、資産形成の相談や保険の見直し等の勧誘を執拗に行っているとの情報提供がありました。
注意喚起

上記のようなケースに限らず不審に思った場合は安易に個人情報等を伝えたりお金を振り込んだりせず、最寄の警察や金融庁相談室に情報提供・ご相談をお願いします。

金融庁利用者相談室受付方法

相談室の詳細は、金融庁ウェブサイトをご覧ください。

https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/index.html


※ 「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等(期間:昨年7月1日~同年9月30日)

https://www.fsa.go.jp/soudan/2023soudan07-09/2023_07-09.html


市場へのメッセージ
~課徴金納付命令勧告の解説~

証券取引等監視委員会のロゴマーク

証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、勧告事案等に関する解説記事を「市場へのメッセージ」として証券監視委ウェブサイトに掲載しております。

ここでは、昨年11月2日に掲載した「市場へのメッセージ」の内容についてご紹介します。

※「市場へのメッセージ」の全文については、証券監視委ウェブサイトをご参照ください。

<参考URL>

https://www.fsa.go.jp/sesc/message/20231102.html新しいウィンドウで開きます


株式会社ZOZO社員から伝達を受けた海外居住者による内部者取引に対する課徴金納付命令勧告について

証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、昨年9月8日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました。

【事案の概要】

中国居住の課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)は、株式会社ZOZO(以下「ゾゾ」といいます。)の中国子会社の役職員でしたが、ゾゾ社員であった甲から、ヤフー株式会社(現LINEヤフー株式会社)によるゾゾ株式の公開買付けの実施に関する事実の伝達を受けながら、当該事実の公表前に、知人名義の証券口座でゾゾ株式を買い付けていました。

【事案の特色】

本件は、中国証券監督管理委員会(China Securities Regulatory Commission)から支援を受けて調査を進めたほか、日本取引所自主規制法人から提供された情報も参考として、実態解明を行った事案です。

【証券監視委からのメッセージ】

本件は、中国に居住する対象者による知人名義の証券口座を利用したインサイダー取引事案であり、海外居住者であって、他人名義の証券口座を利用しても摘発から逃れることは出来ないことを社会に示すことができたと考えています。

我が国証券市場における海外投資家の取引が増加している中、証券監視委では、海外居住者による不公正取引について、今後とも、海外金融当局や国内の自主規制機関等との連携により調査を実施し、違反行為が認められた場合には、引き続き厳正に対処していきます。

株式会社ZOZO社員から伝達を受けた海外居住者による内部者取引に対する課徴金納付命令勧告に関するポンチ絵

 昨年9月8日公表、「株式会社ZOZO社員から伝達を受けた海外居住者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について」は、https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2023/2023/20230908-1.html新しいウィンドウで開きますをご参照ください。


フィッシングの手口によるインターネットバンキングに係る預金の不正送金にご注意ください!

フィッシングの手口によるインターネットバンキングに係る預金の不正送金にご注意ください!のポスター

先月の金融庁の主な取組(令和5年12月1日~12月31日)


編集後記

本年もよろしくお願いします。

冒頭に掲載のとおり、金融庁では、今般の災害に関する相談ダイヤルを設けるなどして、金融に関する相談を中心にお答えしていくとともに、そうして寄せられた声を踏まえて随時必要な対応を検討しております。ご遠慮なく、お声を寄せていただけますと幸甚です。

また、ウェブサイトに加えて、主要な情報を金融庁公式Xアカウントでも日本語・英語で同時に発信しています。速やかな情報発信を通じ、正しい情報をいち早くお届けしたいと考えていますが、多くの方にお届けするためにも、改めて、私たち金融庁の情報発信力の向上にも努めたいと感じています。

  • 金融庁広報室長 矢野 翔平
  • 編集・発行:金融庁広報室

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