アクセスFSA 第244号

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Contents

事業者支援の促進及び金融の円滑化に関する意見交換会の開催

本年11月27日、金融庁は、鈴木金融担当大臣、井林内閣府副大臣及び神田内閣府大臣政務官等の政府当局者と、金融関係団体等の代表者が出席する「事業者支援の促進及び金融の円滑化に関する意見交換会」を開催しました。そして、同日、政府として、金融関係団体等に対し、経営改善・事業再生支援の徹底等に関する要請文を発出しました

本意見交換会では、鈴木金融担当大臣より、金融関係団体等に対し、資金需要の高まる年末・年度末に向けて事業者への円滑な資金供給を行うことに加え、足もとで民間金融機関による実質無利子・無担保融資の返済が本格化する中、事業者支援の在り方も、コロナ禍において資金繰り支援に注力した段階から、一歩先を見据えて、事業者の実情に応じた経営改善・事業再生支援に取り組む新しい段階へ移行していく必要があること等を伝えました。

意見交換会で発言する鈴木金融担当大臣の写真
写真:意見交換会で発言する鈴木金融担当大臣
意見交換会で発言する井林内閣府副大臣の写真
写真:意見交換会で発言する井林内閣府副大臣
写真:意見交換会で発言する神田内閣府大臣政務官
写真:意見交換会で発言する神田内閣府大臣政務官

また、同日に公表した「中小・地域金融機 関向けの総合的な監督指針」等の改正案も同様の趣旨である旨説明しました。

金融関係団体等からは、これまで同様、物価高騰等の影響で厳しい状況にある事業者への資金繰り支援を行うとともに、早期の事業再構築を一層推進するため、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の運用改善や活用促進を行っていく等の発言がありました。

<意見交換会参加金融関係団体等>
・全国銀行協会
・全国地方銀行協会
・第二地方銀行協会
・全国信用金庫協会
・全国信用組合中央協会
・信託協会
・全国労働金庫協会
・農林中央金庫
・日本政策金融公庫
・沖縄振興開発金融公庫
・商工組合中央金庫
・日本政策投資銀行
・全国信用保証協会連合会
・住宅金融支援機構


 「事業者支援の促進及び金融の円滑化について」(11月27日公表)
 https://www.fsa.go.jp/news/r5/ginkou/20231127.html


2023年保険監督者国際機構(IAIS)年次総会及び年次コンファレンスの開催

総合政策局総務課国際室      

課長補佐 田島 遼一

課長補佐 宇佐 祐樹

係長   南部 航貴

本年11月6日から10日にかけて、保険監督者国際機構(以下「IAIS」)の主催により、2023年年次総会及び年次コンファレンスをはじめとする一連の会合が東京にて開催されました。我が国におけるこれらの会合の開催は、IAISのメンバーとなって以来初めてのことでした。本稿では、民間参加者も交えた議論の場である年次コンファレンスを中心に、1週間にわたり開催された各会合の概要をご紹介します。

1.各委員会等会合及び年次総会の概要

6日から8日にかけて、IAISの各委員会等の会合が開催されました。このうち、8日に開催された執行委員会は、IAISの実質的な議論や意思決定を行う最上位の会議体となっています。

9日午前には、IAISの全てのメンバーが参加する会議である年次総会が開催されました。なお、本会合の際に、当庁の有泉秀金融国際審議官が新たに執行委員会議長に就任しました※1

2.年次コンファレンスの概要※2

9日午後から10日にかけて開催された年次コンファレンスには、世界各国から監督当局・民間保険会社等、あわせて400名を超える参加がありました。

■ 開会挨拶及びキーノートスピーチ

9日のコンファレンス冒頭には、開会挨拶として、岸田内閣総理大臣によるスピーチ及び鈴木金融担当大臣から寄せられたビデオメッセージの放映がありました。岸田内閣総理大臣からは、グローバルに共通する社会課題に取り組んでいくうえでの保険や保険会社の役割への期待、監督当局による実効的な規制・監督の枠組みの意義、公的セクターと民間セクターの協調の重要性等が述べられました※3

各委員会等会合及び年次総会の概要
記念撮影:左からVictoria Saporta IAIS執行委員会前議長、岸田内閣総理大臣、有泉 金融国際審議官(IAIS執行委員会新議長)、Jonathan Dixon IAIS事務局長
写真:記念撮影 
左からVictoria Saporta IAIS執行委員会前議長、岸田内閣総理大臣、有泉
金融国際審議官(IAIS執行委員会新議長)、Jonathan Dixon IAIS事務局長
写真:鈴木金融担当大臣によるビデオメッセージ
写真:鈴木金融担当大臣によるビデオメッセージ

また、鈴木金融担当大臣からは、保険に関わるステークホルダーが、様々な地域や役割に基づく知見を持ち寄り、共通の課題に立ち向かうために議論を深めることへの期待が述べられました※4

また、10日のキーノートスピーチでは、コロンビア大学の本田桂子客員教授によるスピーチが行われました。気候変動が保険セクターに与える影響に言及したうえで、「データの利活用」、「アフォーダビリティ(保険料の適切性)」、「消費者教育」といったテーマに関して、監督当局及び保険会社がさらなる議論を行うことを期待する旨が述べられました。

■ パネルディスカッション及びラウンド テーブルセッション 

9日の開会挨拶に続けて行われた“IAIS Executive Committee Town Hall”において、執行委議長・副議長、各委員会議長、事務局長からIAISにおける直近の主要なテーマが共有され、その後パネルディスカッション、及びラウンドテーブルセッションが実施されました。

9日に行われた自然災害に係るプロテクションギャップ※5に関するセッションでは、6日にIAISが公表した報告書※6に基づき、自然災害の激甚化が続く中、プロテクションギャップに対して保険監督当局の取り得るアクションや官民連携等に係る考え方について議論されました。また、保険セクターを取り巻くリスクに関するセッションでは、世界的なマクロ経済環境の保険セクターへの影響や、生命保険セクターの構造的な変化について議論されました。また、両セッションの合間には、Financial Times紙のGillian Tett氏を交えたトークセッションも行われ、サイバーリスクや気候変動をはじめとした保険セクターを取り巻くトレンドについて議論されました。

10日に行われた顧客本位の取組みに関するセッションでは、多様な顧客属性や消費者ニーズを踏まえた顧客への説明や保険サービス提供のあり方について議論されました。気候関連リスクに関するセッションでは、開示の重要性やデータの質に関する課題や対応、グリーンウォッシングのリスクへの対応等について議論されました。最後に行われた国際資本基準(ICS)に関するセッションでは、IAISにおける作業の現状や各法域におけるICSの実施に関する検討状況のアップデートが行われました。

また、パネルディスカッションに加え、参加者が自身の関心に沿ったテーマ(消費者が直面する新たなリスク、プロテクションギャップ、IAISの中期戦略等)を選び、議論を行うラウンドテーブルセッションも開催されました。当該セッションでは監督当局・民間保険会社をはじめとする参加者が円卓を囲み、それぞれのテーマについて双方向に意見交換を行いました。

3.総括

上記の各会合に加え、IAISメンバー間のコミュニケーションの深化を目的としたソーシャルイベントや、金融庁主催のサイドイベント※7等も実施され、1週間にわたる一連のイベントは盛況のうちに終了しました。金融庁は、保険規制・監督のあり方に関する国際的な議論に引き続き積極的に貢献してまいります。

写真:パネルディスカッションの様子
写真:パネルディスカッションの様子
写真:ラウンドテーブルセッションの様子
写真:ラウンドテーブルセッションの様子

※1 「保険監督者国際機構(IAIS)執行委員会議長就任について」(10月20日公表)
  https://www.fsa.go.jp/inter/iai/20231020/20231020.html

※2 年次コンファレンスの各セッションの模様や登壇者等の詳細については、IAISのウェブサイトをご覧ください。 
  https://www.iaisweb.org/news-and-events/2023tokyo/新しいウィンドウで開きます

※3 岸田内閣総理大臣挨拶掲載ページ
  https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202311/09iais.html新しいウィンドウで開きます

※4 鈴木大臣挨拶掲載ページ
  https://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/index_kouen.html

※5 一般的に「自然災害による経済損失と保険による補償額の差」と解釈されている。

※6 https://www.iaisweb.org/2023/11/iais-outlines-actions-for-insurance-supervisors-in-addressing-
natural-catastrophe-protection-gaps/新しいウィンドウで開きます

※7 当庁サイドイベントの登壇者やテーマ等の詳細については、当庁プレスリリースを参照ください。
  https://www.fsa.go.jp/inter/iai/20231117/20231117.html


金融商品取引法等の一部を改正する法律等の概要

企画市場局市場課      

課長補佐 簀戸 峻 

課長補佐 和氣 宏昭

係長   矢部 沙織

企画市場局企業開示課      

課長補佐 小澤 裕史

係長   山本 竜也

本年11月20日、前通常国会から継続審査となっていた金融庁関係の2つの法律(金融商品取引法等の一部を改正する法律、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律)が成立しました※1

金融サービスの顧客等の利便向上や保護を図るとともに、資本市場を効率化・活性化させることを目的としたこれらの法律の主な改正事項と施行に向けた取組状況は以下のとおりです。

■ 金融リテラシーの向上

これまでも政府や関係団体において金融経済教育に関する取組みが実施されてきましたが、金融経済教育を受けたと認識している人は約7%に留まっているという調査結果に加え、投資詐欺などの被害事案も引き続き散見し、近時はSNSを通じた投資勧誘のトラブルも発生していることなどに示されているように、金融経済教育が未だ国民に広く行き届いていない状況にあるとの指摘がありました。

また、政府や関係団体等による金融経済教育に関する取組みが十分に調整されていないほか、教育の実施主体が民間の金融関係団体や金融機関では、受け手に敬遠されるとの指摘もあったところです。そこで、官民の様々な主体による活動の重複を解消しつつ、それぞれ蓄積してきたノウハウを集結させ、国全体として、中立的立場から金融経済教育の機会を提供するため、「金融経済教育推進機構」を設立します。

同機構において、家計管理、生活設計、適切な金融商品の利用選択等の幅広い分野における金融経済教育に取り組んでいくとともに、顧客の立場に立ったアドバイザーによる良質なアドバイスを気軽に受けられる環境を整備します。

金融庁としても、同機構の令和6年春の設立と同年夏の本格稼働に向け、11月24日に設立準備室を設置しました。関係団体とも連携し、金融リテラシーの向上のための取組みを進めていきます。

■ 四半期開示の見直し

企業開示において、中長期的な企業価値に関連する非財務情報の重要性が増大しており、これまでもサステナビリティ情報等の開示の充実を図ってきました。そうした中、四半期開示については、金融商品取引法に基づく四半期報告書と取引所規則に基づく四半期決算短信には重複がみられるとの指摘があることを踏まえ、企業開示の効率化の観点から、法令上の四半期報告書を廃止します。

四半期決算短信に「一本化」した後も、投資家にとって必要な情報が提供されることが重要であるため、東京証券取引所において、四半期決算短信の開示内容や会計不正が起きた場合の監査人によるレビューの義務付けの要件等について、投資家や企業の意見を踏まえながら検討を行い、11月22日にその検討結果を踏まえて取りまとめた「四半期開示の見直しに関する実務の方針」※2が公表されたところです。

金融庁としても、我が国の企業開示の後退と受け止められないよう、内外の投資家や企業の意見を伺いながら、東京証券取引所等とよく連携するとともに、令和6年4月1日の施行に向けて必要な環境整備を進めていきます。

■ 顧客本位の業務運営の確保、デジタル化への対応

顧客本位の業務運営については、これまで「顧客本位の業務運営に関する原則」により金融事業者の主体的な取組みを促してきましたが、原則を採択しない事業者も多いなど取組みは道半ばの状況でした。そこで、金融事業者等に共通する義務として、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を遂行すべきである旨を法定し、顧客本位の業務運営の一層の定着・底上げと横断化を図ります。

また、証券会社等の顧客交付書面、審判手続、日銀出資証券のデジタル化対応やソーシャルレンディングやトークン化された不動産特定共同事業契約に基づく権利についての顧客保護のための法律上の規定の整備等を行っています。これらの円滑な施行に向け、関係者と連携しつつ取組みを進めていきます。

ポンチ絵:金融商品取引法等の一部を改正する法律の概要
ポンチ絵:情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律の概要

※1 国会提出法案(第211回国会)
  https://www.fsa.go.jp/common/diet/index.html

※2 「四半期開示の見直しに関する実務の方針」(11月22日公表)
  https://www.jpx.co.jp/news/1023/20231122-01.html新しいウィンドウで開きます


「金融機関の内部監査の高度化」に向けたプログレスレポート(中間報告)の概要

総合政策局リスク分析総括課リスク管理検査室      

課長補佐 長野 泰明

総合政策局リスク分析総括課大手銀行モニタリング室      

課長補佐 朝倉 真人

1.はじめに

金融庁は、令和元年6月に、金融機関の内部監査に関するモニタリング結果等を踏まえ、「金融機関の内部監査の高度化に向けた現状と課題」※1(以下「現状と課題」)として整理・取りまとめた文書を公表しました。この中で、金融機関が持続可能なビジネスモデルを構築することにより、業務の適切性や財務の健全性を確保し、金融システムの安定に寄与していくためには、ガバナンスが有効に機能していることが重要であり、そのためには、内部監査部門がその使命を適切に果たすことが必要であるとしました。

具体的には、「現状と課題」では、内部監査部門がリスクベースかつフォワードルッキングな観点から、組織活動の有効性等について評価するとともに、環境変化に応じて、内部監査を高度化していくことを求めています。また、内部監査の水準(成熟度)について、段階別評価ができることを示しており、「事務不備監査」(第一段階)、「リスクベース監査」(第二段階)、「経営監査」(第三段階)、「信頼されるアドバイザー」(第四段階)の四つの段階が存在することを示しています。

こうした内部監査の高度化は、金融環境の変化に伴うリスクの多様化・複雑化やグループ・グローバル化が進展する中で、全ての金融機関において重要度が高まっています。

金融庁は、「現状と課題」公表後も金融機関に対し、内部監査の高度化に向けたモニタリングを重ねており、大手銀行グループについては、通年検査の一環で内部監査部門のトップと内部監査の高度化に向けた取組状況や課題について対話しています。

金融庁は、本年10月、上記モニタリングを踏まえ、大手銀行グループにおける内部監査の取組状況及び課題認識を整理し、『「金融機関の内部監査の高度化」に向けたプログレスレポート(中間報告)』※2(以下「本レポート」)として取りまとめ、大手銀行グループはもとより、それ以外の金融機関においても、内部監査を高度化する際の一助となることを期待し公表したところです。

業態を問わず広く金融機関に理解を得やすいように、具体的な事例を多く例示するとともに、平易な表現とするなど工夫しております。

2.モニタリング結果(全体評価)

大手銀行グループに対するモニタリングでは、総じて「現状と課題」公表後も内部監査の高度化に向けて積極的に取り組んでいることが確認できました。なお、内部監査の水準に関する自己評価には、大手銀行グループ間で一定の差が見られました【図表1】。

【図表1】大手銀行グループにおける内部監査の水準に関する自己評価

【図表1】大手銀行グループにおける内部監査の水準に関する自己評価

大手銀行グループに対するモニタリングを踏まえると、金融機関が、取り巻く環境や業務状況に的確に対応した実効性ある内部監査を通じて業務の適切性や財務の健全性を確保し、企業価値を向上させるためには、以下3つの観点が必要と考えます。

  • a 経営陣や監査委員・監査役等が、内部監査の重要性・有用性を強く認識し、積極的に支援すること

  • b 内部監査部門が、環境の変化に応じて内部監査を高度化していくこと、かつ、監査基盤を強化すること

  • c 経営陣や監査委員・監査役、内部監査部門が、被監査部門に対して内部監査への理解・浸透やリスクオーナーシップの醸成を図ること

今回の大手銀行グループに対するモニタリングでは、経営陣や監査委員・監査役が、内部監査の重要性・有用性を理解していると考えられる取組事例や、内部監査部門に対して内部監査の一層の高度化を期待していることが確認できました。また、内部監査部門は、内部監査の高度化のほか、被監査部門に対する内部監査への理解・浸透やリスクオーナーシップの醸成を図っていることが確認できました【図表2】。

一方、内部監査部門が認識している監査態勢・監査基盤(監査人材)等に関する課題も確認できました【図表3】。

【図表2】「現状と課題」公表後の取組状況

【図表2】「現状と課題」公表後の取組状況

【図表3】大手銀行グループが認識している課題等

【図表3】大手銀行グループが認識している課題等

3.今後のモニタリングの主な論点と方向性

本レポートでは、前述した3つの観点を踏まえ、以下のとおり、今後のモニタリングの主な論点を明示しています。

【論点1】

経営陣や監査委員・監査役による内部監査部門への支援

主体:経営陣や監査委員・監査役

  • ①内部監査の在り方の検討
  • ②内部監査の高度化支援
  • ③内部監査機能の活用に関する取組状況

【論点2】

内部監査部門の監査態勢高度化・監査基盤強化

主体:内部監査部門

〔監査態勢高度化〕

  • ①経営陣や監査委員・監査役との意見・情報交換
  • ②独立性の確保
  • ③リスクの洗い出し・絞り込み
  • ④リスク変化への機動的対応
  • ⑤監査深度(真因分析含む)
  • ⑥IT・データ分析の活用
  • ⑦継続的な監査品質の向上
  • ⑧グループ・グローバルでの態勢整備の取組状況
  • 〔監査基盤強化〕
  • ①人材確保・育成の取組状況
  • ②監査システムの導入状況
  • 〔コソーシング〕
  • ①活用方針
  • ②最終評価に関する責任
  • ③知見やノウハウの吸収に関する取組状況

【論点3】

被監査部門に対する内部監査への理解・浸透やリスクオーナーシップ醸成

主体:経営陣や監査委員・監査役、内部監査部門

  • ①被監査部門に対する内部監査への理解・浸透
  • ②被監査部門のリスクオーナーシップの評価や醸成、被監査部門とのコミュニケーションに関する取組状況

金融庁では、今後、大手銀行グループはもとより、地域銀行、証券会社、保険会社、その他の金融業態に対して、主な論点※3に基づく深度あるモニタリングを通じて内部監査の高度化を促していく方針です。

併せて、金融行政の効率性を高めるため、各金融機関の内部監査の水準に応じてモニタリングの対象領域や深度を決定していく方針です。

また、金融庁は、今後、金融機関へのモニタリングや内部監査に関する国際的な動向も踏まえて、グループ・グローバルベースの内部監査の一層の高度化を促す観点も含め、「現状と課題」の更新(段階別評価の見直し要否を含む)の必要性等を検討のうえ、最終報告として取りまとめたいと考えています。


ぜひ本レポートに関してご意見等をお寄せください。今後の最終報告に向け参考とさせていただきます。

【お問い合わせ先】

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局リスク分析総括課リスク管理検査室

(内線:2378、5439)


※1 https://www.fsa.go.jp/news/30/20190628_naibukannsa.html (令和元年6月28日公表)

※2 https://www.fsa.go.jp/news/r5/ginkou/20231024/20231024.html (10月24日公表)

※3 「本レポート」や「現状と課題」で示した論点や着眼項目を、形式的なチェックリストとして用いることはない。


「金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習(Delta Wall Ⅷ)」の実施

金融庁では、今年で8回目となる金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習「Delta Wall Ⅷ」を、10月19日から26日にかけて開催しました。

1.金融分野のサイバーセキュリティを巡る状況

世界各国において、大規模なサイバー攻撃が発生しており、攻撃手法は一層高度化・複雑化しています。我が国においても、サイバー攻撃による業務妨害、重要情報の窃取、金銭被害等が発生している状況であり、金融分野への影響が懸念されています。 

こうしたサイバー攻撃の脅威は、金融システムの安定に影響を及ぼしかねない大きなリスクとなっており、金融業界全体のインシデント対応能力の更なる向上が不可欠となっております。

2.今年の演習(Delta Wall Ⅷ)の概要

今年の演習(Delta Wall Ⅷ)は、昨年度対象外としていた保険会社を対象としつつ、重要インフラ事業者の参加率向上の観点から、他の業態をあわせて過去最多の合計165先が参加しました。また、演習には財務局等も参加し、金融機関からの連絡に対応しました。

演習シナリオでは、最新のサイバー攻撃の脅威動向を踏まえ、業務システムの停止等の発生(業界インフラシステムの一部停止含む)、ネットワーク機器の脆弱性を端緒とした業務システムの停止などといった事象を想定しました。また、銀行業態についてはインシデント対応能力のより一層の高度化を図る観点から、事前にシナリオを開示しないブラブラインド方式で実施しました。その他の業態については事前にシナリオ骨子を開示し、実施しました。

また、銀行業態については、これまでの演習の成熟度を踏まえ、重要な業務に影響が波及するようなシナリオで難度を高めつつ、インシデント時の業務の優先度など経営層を含めたディスカッションの内容や十分性を検証しました。

演習では、技術的対応を含めた攻撃内容の調査や、初動対応、顧客対応、復旧対応等の業務継続体制を確認しました。

3.神田内閣府大臣政務官からの挨拶

演習初日の冒頭では、神田内閣府大臣政務官が、「サイバー攻撃の脅威が日に日に増しており、高度化するサイバー攻撃のもとでは、防御だけではなく、攻撃を受けた後の対応や復旧、業務継続体制の確認が不可欠となる。本演習を通じて、金融業界全体のインシデント対応能力の更なる向上を図っていきたい。」と挨拶を行いました。

写真:神田内閣府大臣政務官の挨拶の模様
写真:神田内閣府大臣政務官の挨拶の模様
演習の概要(ポンチ絵)

4.演習結果の評価とフィードバック

本演習では、参加金融機関がPDCAサイクルを回し、インシデント対応能力を更に向上させることができるよう、事後評価に力点を置いており、個別金融機関に対して評価を還元する際に、併せて具体的な改善策や優良事例を示しています。また、参加金融機関が演習において対応できなかった項目の自己分析結果を提出し、何が課題かを明確化することなどにより、演習効果を高める工夫をしています。

また、演習結果については、参加金融機関に個別にフィードバックするだけではなく業界全体にも還元することにより、金融業界全体のサイバーセキュリティ対策の向上を図っています。

写真:演習の模様
写真:演習の模様

「中小企業の事業再生等に関するガイドライン事例集」の公表

令和4年3月、一般社団法人全国銀行協会(以下「全銀協」)を事務局とする、「中小企業の事業再生等に関する研究会」において、中小企業者と金融機関等がお互いの立場をよく理解し、共通の認識の下で、一体となって事業再生等に向けた取組みを進めていくための指針として、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)が取りまとめられました※1

ガイドラインでは、中小企業者の「平時」や「有事」の各段階において、中小企業者・金融機関がそれぞれ果たすべき役割を明確化した上で、より迅速に中小企業者が事業再生等に取り組めるよう、新たな準則型私的整理手続である「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」についても定められています。

ガイドラインの適用開始から1年が経過した中、金融庁では、更なる活用促進に向け、令和4年度に民間金融機関がガイドラインを活用した事例を収集し、その概要をとりまとめた「中小企業の事業再生等に関するガイドライン事例集」を本年10月17日に公表しました※2

本事例集は再生型私的整理手続について債務減免あり、債務減免なしの事例の他、準則型私的整理手続で初めて措置された廃業型私的整理手続の3類型について、それぞれ複数の事例を紹介しています。

これら事例集も参考に、金融機関による事業者の経営改善や、事業再生支援が一層促進されることを期待しています。

【①再生型私的整理手続(債務減免あり)】

【①再生型私的整理手続(債務減免あり)】

【②再生型私的整理手続(債務減免なし)】

【②再生型私的整理手続(債務減免なし)】

【③廃業型私的整理手続】

【③廃業型私的整理手続】

※1 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」及び「中小企業活性化パッケージ」の公表について(令和
4年3月4日公表)
  https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20220304.html

※2 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン事例集」の公表について(10月17日公表)
  https://www.fsa.go.jp/news/r5/ginkou/20231017.html


マネロン対策に関する動画の公開

近年、詐欺や麻薬の売買、賭博などの犯罪や不当な取引で得た資金を複数の金融機関で転々とさせ、正当に得た資金に見せかける行為(マネーローンダリング)や、テロの実行支援等を目的としてテロリストに資金を渡す行為(テロ資金供与)等が発生しています。このような行為を放置しておくと、さらなる犯罪行為やテロ行為を助長することになりかねません。また、犯罪組織が正当な経済活動に影響を及ぼすおそれもあり、対策の強化が求められています。

犯罪やテロなどと聞くと、私たちの暮らしの中ではあまり関係がないと思われがちですが、日本では最近、不特定多数の人から現金等をだまし取る特殊詐欺(オレオレ詐欺)が多発しているほか、犯罪に関与する来日外国人グループによるインターネットバンキングの不正アクセスに係る不正送金事犯なども確認されています。これらの事犯においては、架空・他人名義の口座を利用するなど様々な手口を使ってマネーローンダリングが行われています。

このため金融庁は、金融機関におけるマネロン等(マネーローンダリング、テロ資金供与、拡散金融)の対策の推進に力を入れています。その対策の一環として、金融機関では、複雑化・高度化するマネロン等の金融犯罪の手口に対応し、金融犯罪を有効に防止する為、利用者(お客さま)の情報(住所・職業など)や取引の目的などについて定期的に確認を行っています。

金融機関は、こうした利用者情報の定期的な確認を、ハガキを郵送することなどにより行っていますが、一部の利用者から、「回答して大丈夫か」、「何のために回答する必要があるのか」、「マネロンなんて自分には関係ない」などと不安の声も寄せられています。

今般、金融庁は金融機関による利用者情報の更新へご協力をお願いすることに加え、なぜ情報更新が必要なのか(それがマネロン対策にどうつながるのか)について簡潔に解説するための動画を作成し、金融庁ウェブサイト及び金融庁公式YouTubeチャンネル(金融庁チャンネル)上で公開するなど、インターネット広報を実施しました。

金融庁チャンネル
動画:金融庁よりマネロン対策についてのお知らせ
https://www.youtube.com/watch?v=ozLOh8jYkyw新しいウィンドウで開きます
金融庁ウェブサイト
金融庁ウェブサイト「マネロン対策のページ」
https://www.fsa.go.jp/news/30/20180427/20180427.html

犯罪組織やテロ組織は、一般の利用者に紛れて気づかれないように取引を行おうとするため、金融機関を利用する一人一人の情報を金融機関が定期的に確認し、最新の状態に保つことが何よりも重要です。こうした金融機関による利用者の情報更新の取組みを国全体で円滑に進めていくことがマネロン等を防止するために重要であり、そのためには利用者から漏れなく回答頂くことが必要です。ぜひご協力をお願いします!


先月の金融庁の主な取組み(令和5年11月1日~11月30日)


編集後記

朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。サーカディアンリズムを意識して毎朝起床後に近所の散歩をしていますが、最近は遠くの空がうっすらと赤いくらいでLEDの街灯のほうがよっぽど眩しく感じます。「これでもリズムは生まれるはずだ!」という信念で薄着で歩いていると、寒さのおかげで結局目は覚めています。

今月の「お知らせ」では当庁が公開したマネロン対策の動画を紹介をしています。いわゆる「継続的顧客管理」として金融機関には利用者情報の定期的な確認が求められています。信頼され健全な日本の金融システムを保つために、こうした定点チェックへのご協力をよろしくお願い致します。

心なしか、今年の東京の紅葉はいつもより色鮮やかな気がします。季節の移り変わりはあっという間ですが、明年もどうぞよろしくお願いします。

  • 金融庁広報室長 矢野 翔平
  • 編集・発行:金融庁広報室

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