金融庁広報誌
アクセスFSA
No.275


Contents


会議等

「インパクトコンソーシアム in person 2026」の開催
6月19日開催

2026年6月19日、文部科学省講堂において「インパクトコンソーシアム in person 2026 ~インパクトの裾野拡大、その次の一歩~」が開催されました。本イベントは、金融庁が後援する一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)が主催する「Social Impact Day(6月17日~19日)」の最終日に、インパクトコンソーシアムとSIMIとの共催により実施されたものです。

一定の投資収益の確保を図りつつ、社会・環境的効果(インパクト)の実現を企図する、「インパクト投資」の推進は政府の重要政策の一つと位置付けられています。インパクトの創出と事業性の発揮を支援する投融資を有力な手法・市場として確立し、社会性と経済性を両立させようとする事業を推進していくため、金融庁と経済産業省が事務局となり、投資家、金融機関、企業、NPO、自治体等の幅広い関係者が参画し対話や協働を図る官民連携の場として、2023年11月に「インパクトコンソーシアム」が立ち上げられました。テーマ別に設けた4つの分科会では、投資時に活用できる指標・データの整備や、特に投資実務が定まっていないとされる上場企業へのインパクト投資手法のポイントの整理、地域の取組事例に基づいた実践的知見の共有、インパクトスタートアップと自治体の連携促進等、市場の形成・拡大に向けた議論を積み上げてきました。

設立以降、2期にわたり活動が展開され、会員数は法人・個人合わせて2026年5月末時点で470を超える規模へと着実に拡大しています。本イベントは、第3期を見据え、これまでの取組成果を広く社会に発信するとともに、「インパクトの裾野拡大と案件組成の加速」という今後の方向性を示すことを目的として開催されました。当日は、岩田和親内閣府副大臣(金融担当)、山田賢司経済産業副大臣による挨拶が行われ、インパクト投資の一層の推進に向けた意欲と期待が示されました。

写真:基調スピーチを行う岩田内閣府副大臣(金融担当)

写真:基調スピーチを行う山田経済産業副大臣

第一部のパネルディスカッションでは、民間・政府それぞれの視点から、インパクト投資の現状や課題をめぐり、活発な議論が行われました。民間セッションでは、「民間資金が変える未来 ~インパクト投資の新潮流と市場の広がり~」と題して、READYFOR株式会社代表取締役の米良はるか氏のモデレーションのもと、アセットマネジャー、ベンチャーキャピタル、地域金融機関、支援機関といった多様なプレイヤーが登壇し、各々の強みを活かしながら資金をどのように組み合わせていくかについて、実践的な示唆に富む議論が展開されました。続く行政セッションでは、「インパクトファイナンスの加速 ~政府のコミットメントとイノベーションへの期待~」と題して、株式会社Ridilover代表取締役の安部敏樹氏のモデレーションのもと、環境省、国土交通省、農林水産省、中小企業庁の各担当者が登壇し、地域課題の解決やイノベーション創出に向けた行政の役割や取組の方向性について議論が展開されました。

第二部では、第2期における各分科会の取組成果について、各分科会の代表者から報告が行われました。具体的には、データ・指標分科会では、インパクト目標・指標を検討する際に参考となる「インパクト指標集」や「事例集」の整理、市場調査・形成分科会では、インパクト評価・開示に関する事例研究を通じた、インパクトと企業価値を接続する上での実務的な課題の整理、地域・実践分科会では、地域でのインパクト投資事例のファイナンス・スキームのポイント等を盛り込んだ事例集の作成、官民連携促進分科会では、自治体とインパクトスタートアップとの連携を促進するための「実践ガイド」の更なる活用に向けた改訂等、分科会ごとに多様かつ実践的な成果が報告されました。

写真:民間セッションの様子

写真:第二部・第2期成果報告の様子

写真:交流会の様子

 

第二部終了後には、民間事業者及び金融機関による展示スペースにおいて交流の場が設けられ、官民・民民の連携を通じた具体的な案件形成やビジネスマッチングの可能性をさらに広げる、有意義な機会となりました。オンラインを含め300名を超える参加者を迎え、展示ブースも37法人・組織からの出展を得て、盛況のうちに閉会となりました。当イベントが、インパクト投資のさらなる機運醸成と裾野拡大を後押しするとともに、今後の具体的な案件形成や連携の深化へと着実につながっていくことが期待されます。


レビキャリ「事例共有会」開催 ~全国各地の人材支援の取組を共有~
6月22日開催

レビキャリ「事例共有会」を開催

写真:経営マッチング事例集vol.3

本年6月22日、金融庁と株式会社地域経済活性化支援機構は、レビキャリの「事例共有会」を開催しました。

全国10社の地域金融機関の人材担当者が金融庁共用第一特別会議室に集まり、レビキャリを活用した人材支援の取組状況を発表いただきました。オンラインでも同時中継し、全国160以上の地域金融機関が参加しました。

全国各地の特徴的な取組を発表・共有

写真:挨拶する伊藤長官

レビキャリは、地域企業の経営課題に対し、地域金融機関による人材仲介で解決していく取組です。今回の事例共有会では、マッチングを実現した事例の紹介とともに、人材部門の取組体制、収益状況、営業店との連携、行政機関との連携枠組みなど、各社の様々な特徴的な取組が発表され、とても学びの多い会となりました。

【成約事例紹介】

  • 株式会社北海道共創パートナーズ
  • TRYパートナーズ株式会社
  • 株式会社常陽銀行
  • 株式会社東和銀行
  • 静岡焼津マネジメント株式会社
  • 株式会社池田泉州銀行
  • 株式会社鳥取銀行
  • 株式会社伊予銀行
  • 株式会社FFGビジネスコンサルティング
  • 肥銀オフィスビジネス株式会社

写真:成約事例を発表いただいた10社のみなさん、株式会社地域活性化支援機構、金融庁


  • 事例共有会で発表された事例を含め、地域経済活性化機構が作成した「経営マッチング事例集」にレビキャリのマッチング事例が取りまとめられています。


全国信用金庫大会 ~片山財務大臣兼金融担当大臣の挨拶~
6月24日開催

本年6月24日、「全国信用金庫大会」が開催され(主催:全国信用金庫協会、共催:信金中央金庫)、片山大臣が、以下のとおり挨拶を行いました。

はじめに

財務大臣兼金融担当大臣の片山さつきでございます。

本日は、全国信用金庫大会にお招きいただき、誠にありがとうございます。

本大会の開催を心よりお慶び申し上げますとともに、開催に当たり、一言ご挨拶申し上げます。

信用金庫の皆様におかれては、日頃より、資金繰り支援にとどまらず様々な面から地域の事業者を支え、地域経済の成長をリードされており、改めて敬意を表します。

写真:挨拶する片山大臣(提供)全国信用金庫協会

写真:会場の様子(提供)全国信用金庫協会

中東情勢について

今般の中東情勢を受け、3月27日には官民金融機関と関係省庁を集めた意見交換会を緊急開催し、コロナ禍での実質無利子・無担保融資、いわゆるゼロゼロ融資も含めた既往債務の条件変更や借換え等についても、事業者に寄り添った迅速かつ柔軟な対応を徹底するよう、貴協会を含む、官民金融機関の代表者に対して私から直接働きかけを行うとともに、関係大臣連名による緊急要請を発出させていただきました。

その上で、「日本政策金融公庫のセーフティネット貸付の金利を0.4%引き下げる」ことや、セーフティネット保証5号の対象に「業況が厳しい業種を追加する」ことなどにより、事業者の資金繰りをしっかりと支えてまいります。

また、政府といたしましては、国民生活と経済活動を守り抜くために、燃料油価格の激変緩和措置として、令和7年度予備費等を活用して緊急的な対応を行うなど、様々な取組を進めてまいりました。

引き続き、中東情勢が不透明である中で、今後の物価動向や経済に与える影響を注視しつつ、国民の皆様の暮らしや経済活動に支障が生じないよう適切に判断し、必要に応じてタイムリーに対応するため、「リスクの最小化」の観点から、資金面で万全の備えを取るべく、令和8年度補正予算を編成し、国会の御審議を経て、成立いたしました。

皆様におかれましては、地域経済の要(かなめ)として、引き続き、金融仲介機能を十分に発揮し、個々の事業者に寄り添ったきめ細やかな支援を徹底していただくことを強く期待しております。

地域金融力強化プランについて

また地域に目を向けますと、人口減少や高齢化など、我が国が直面する環境変化も相まって、地域が抱える課題は複雑化しております。

これらの課題に応え、地域経済を盛り上げていくためには、地域金融機関の皆様が「地域金融力」を最大限に発揮していただくことが不可欠であることから、昨年12月、「地域金融力強化プラン」を公表し、今国会において成立した改正金融機能強化法による資本参加制度や資金交付制度の期限延長・拡充等をはじめ、様々な取組を進めております。

皆様におかれましては、長年にわたる密接なコミュニケーションの中で、事業者をはじめとする地域の関係者との間で強い信頼関係を築き上げられてこられたと承知しております。こうした地域との強い結びつきを活かし、「地域金融力強化プラン」に掲げられた各種施策も活用いただきながら、地域企業の価値向上や地域課題の解決、そして地域経済の発展に引き続き貢献いただきたいと思います。

「資産運用立国」の更なる推進

「地域金融力」の強化と並ぶもう1つの大きな政策課題は、「資産運用立国」の推進です。先程、総理も言及されておりましたが、これまでの「資産運用立国」の取組を更に発展させた新たな金融戦略を策定します。

私が分科会長を務める「新戦略策定のための資産運用立国推進分科会」において、4月下旬に骨子案をお示しし、現在、様々な方からのご意見を頂戴しながら、最終的な調整を進めているところです。その中でも、地域金融力の強化は、重要なテーマとして位置付ける予定です。

おわりに

全国254の信用金庫で、約10万人の職員の方々が、日々汗を流し、地域を支えていただいております。

日本経済は構造的な課題に直面していますが、皆様一人ひとりのきめ細やかな支援の積み重ねが、必ずや地域の発展へと繋がり、日本全体を盛り上げ、未来を切り開いていくことに繋がると確信しています。

結びに、信用金庫業界の今後の更なる発展と、本日ご出席の皆様のご健勝をお祈りいたしまして、私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。


政策解説

2025事務年度 データ分析・利活用プロジェクト報告会・表彰について

総合政策局マクロ・データ分析監理官室

1.はじめに

金融庁では、幅広い職員がデータ分析に関心を高め、金融行政におけるデータ活用を推進できるよう、様々な取組を推進しています(データ分析・利活用プロジェクト)。その一環として、マクロ・データ分析監理官室では、データ分析の取組を推奨するため、庁内の分析事例を公募し、優れた分析を表彰する制度を設けています。

2025事務年度は、従来の計量経済学等を活用したデータ分析に加え、AIやデジタルツール等を活用した業務の効率化・高度化に資するデータ分析の取組も対象としました。

まず、庁内の各課室からデータ分析や業務改善の取組事例等を募集し、応募案件について、全職員がオンラインで参加できる発表会を開催しました。発表会では、各分析担当者・チームが取組内容や成果をプレゼンし、厳正な審査を経て、評価が高かった案件については、当庁幹部やアカデミア関係者(研究センター、参事、顧問等)に向けた最終発表を実施しました。

本稿では、最終発表の結果選定された長官賞、総括審議官(総審)賞、Chief Data Officer(CDO)賞それぞれの受賞案件の概要と、受賞者の声をインタビュー形式でご紹介します。また、これらの3つの賞以外の新人賞、技術賞、業務効率化・高度化賞についてもご紹介します。

(1)長官賞、総括審議官(総審)賞及びChief Data Officer(CDO)賞
①長官賞
「地域銀行の住宅ローンに関する分析」(総合政策局リスク分析総括課マクロ・データ分析監理官室 松本光右 課長補佐)
  • ― 分析の概要やポイントについて教えてください。

    共同データプラットフォームによる貸出明細の収集開始により、地域銀行については個人向け貸出についても債権単位での分析が可能になりました。国内の個人向け貸出の大宗を占める住宅ローンについては、足元で不動産価格の高騰や市場金利の上昇などによって市場環境が変化していることを踏まえて行った分析です。分析の結果、住宅ローンに関して以下の点が確認できました(参考資料1参照)。

    • 貸出期間の長期化や実行金額の高額化
    • 貸出期間の長い債権でデフォルト率が高くなっている状況
    • 洪水に対する気候関連リスク(物理的リスク)は、業態間のリスクの差異、異なる実行年度間のリスクの差異は小さい一方、地域間のリスクの差異は大きいこと
    [参考資料1]
    地域銀行の住宅ローンに関する分析
  • ― 長官賞を受賞されたお気持ちを一言お願いします。

    この度は栄誉ある長官賞をいただき大変光栄に存じます。この度受賞に至ったのは、偏にデータ分析の活用に資する高粒度なデータを維持・管理するための基盤の整備やデータの品質を守り高めていく日々の活動があってこそであり、こうした活動に従事している全ての職員の皆様に心より感謝申し上げます。私自身も、今後とも長官賞受賞に恥じぬよう分析能力の向上に努めてまいります。

②総括審議官(総審)賞
「地域銀行による人材支援と企業の経営人材不足に関する分析」(総合政策局リスク分析総括課マクロ・データ分析監理官室 奥寺大介 係長)
  • ― 分析の概要やポイントについて教えてください。

    取引先企業の経営人材の確保を支援するための体制整備や取組が進んでいる地域銀行を推定し、そうした銀行をメインバンクとする企業において、経営人材の充足状況にどのような差異がみられるかについて分析を行いました。

    その結果、本分析で「経営人材支援に特色がみられる銀行」と推定(定義)した銀行をメインバンクとしている企業では、そうではない企業と比べて、経営人材に対する不足感が緩和されている傾向が確認されました。取引金融機関数別にみると、特に、1行取引の企業は、2行以上と取引がある企業と比べ、メインバンクが「経営人材支援に特色がみられる銀行」である場合、そうではない場合に対し、経営人材の不足感が緩和されている傾向の差が相対的に大きく、統計的にも有意な違いが確認されました([参考資料2]図表1、2)。これらの結果から、地域銀行による人材支援の取組状況が、企業の経営人材へのアクセスのしやすさに関係している可能性が示唆されました。

    [参考資料2]

    (図表1)経営人材不足かつ採用無の企業の割合

    (図表2)経営人材不足かつ採用無の企業の割合(取引金融機関数別)

  • ― 総審賞を受賞されたお気持ちを一言お願いします。

    分析を進めるに当たり、実務面から貴重なご助言・ご協力をいただいた地域金融企画室及び人材マッチング推進室の皆さま、日頃から支えていただいたマクロ・データ分析監理官室の皆さま、そして庁外有識者の皆さまに、心より御礼申し上げます。今回の分析が、金融機関において法人向けソリューションや人材支援に関する体制を検討される際の一助となれば幸いです。今後も、人材支援や事業者支援をはじめとする金融機関の取組に着目し、その役割の定量的な把握に継続して取り組むとともに、金融仲介機能に対する理解を一層深めてまいります。

③Chief Data Officer(CDO)賞
「想定問答検索アプリの開発・活用について」(総合政策局リスク分析総括課マクロ・データ分析監理官室 梶原耕太郎 調整官、川井大輔 課長補佐)
  • ― 取組の概要を教えてください。

    本件は、デジタルツールを活用した業務効率化の事例としてエントリーしたものです。昨年、LANサービスのGSS移行に伴って利用可能となったPower Platformを活用し、想定問答検索アプリを開発しました。開発に当たっては、行政文書管理の観点を含めた適切な運用方法を検討し、官房部門の関係課室と調整しながら開発を進めました。

    本アプリでは、任意の単語や委員会開催日等の検索条件を入力することで、該当する想定問答を迅速に表示できます。これにより、過去の資料の検索の効率化を図るとともに今後作成する文書・資料の精度の向上を図ることを含め、業務の効率化・高度化を目指しています。

  • ― CDO賞を受賞されたお気持ちを一言お願いします。

    この度は、データ分析室のメンバーで開発した「想定問答検索アプリ」に対し、栄誉ある賞を賜り、誠にありがとうございます。データ分析室には、AIやデジタルツールに精通した人材が在籍しており、その知見を生かして本アプリを開発しました。多くの職員の皆様にご活用いただいていることに加え、このような評価をいただけたことを大変光栄に思います。今後も庁内のデジタルリテラシー向上とデジタル技術の活用推進に積極的に取り組んでまいります。

(2)その他の表彰

長官賞、総審賞及びCDO賞のほか、以下の賞がそれぞれのプロジェクトに対して授与されました。

表彰区分 プロジェクト名 受賞者
新人賞 「顧客本位の業務運営の実践状況を表す指標」と「持続可能なリテールビジネスの構築に繋がる指標」との相関に関する定量的分析 コンダクト企画室
野口検査官、山田検査官、野田課長補佐、宮下課長補佐
新人賞 ORSAレポートの自然言語処理による解析 保険モニタリング室
小澤課長補佐、江頭係長、福井係長、金高係員
新人賞 金利上昇局面における地域銀行の課題対応に関する実態調査 地域金融企画室
中村課長補佐、渡邊課長補佐、田中係員、厚地課長補佐、松尾係長、岩島係長、小松係長、湯目検査官
技術賞 地方銀行の貸出明細データ等とマクロ経済指標を用いた予兆分析の試行 マクロ・データ分析監理官室
松本課長補佐、青山係員、本多係員
業務効率・高度化賞 金利変動に対するデフォルト率分析 マクロ・データ分析監理官室
久保情報分析専門官

2.おわりに

受賞者紹介:写真前列左から順に川井さん・梶原さん(CDO賞)、松本さん(長官賞)、奥寺さん(総審賞)

データ分析・利活用プロジェクトは、2025事務年度で開始から6年目を迎えました。これまで、金融行政上の課題の発見や解決にデータ分析を活かしたいという思いを持つ職員によって、多様な分析や取組が実施されてきました。その中には、レポートとして公表されたものや、業務の高度化・効率化に大きく貢献したものなど、具体的な成果につながった事例も多くみられます。こうした積み重ねを通じて、庁内のデータ活用や分析力は着実に向上しています。

マクロ・データ分析監理官室では、今後も職員によるデータ分析の取組を積極的に後押しし、知識の習得やスキル向上を支援していきます。こうした活動を通じて、職員全体のデータ分析力の一層の向上を図るとともに、金融行政のさらなる進化・深化に向けた取組を推進していきます。


特別企画

連載企画:金融庁職員が語る!金融行政の実務
~資産運用立国編②~

金融庁の組織や実務について、幹部職員や担当職員との対談を通してわかりやすく紹介します。今月号は、先月号に引き続き、家計、金融商品の販売会社、資産運用会社、アセットオーナー、企業等のインベストメントチェーンを構成する各主体に向けた様々な施策を実施し、日本経済の成長と国民の豊かさの向上を目指す「資産運用立国」の取組みについて掘り下げていきます。

<対談企画の参加者>

服部 孝洋
東京大学金融教育研究センター特任准教授
八幡 道典
金融庁総合政策局審議官
中村 香織
金融庁企画市場局市場課市場企画室長
宮内 文
金融庁監督局資産運用課資産運用企画室課長補佐

資産運用サービスの高度化に向けたプログレスレポート

服部

今回、宮内さんが一番若手ですが、そもそも宮内さんはどういう理由で金融庁に入られたのですか。

宮内

まず金融・経済に関心を持つようになったのには、金融機関に勤務していた父の影響があります。学生時代、父からよく金融・経済に関するニュースを解説してもらうことがありましたが、日本企業の国際的な競争力の低下が課題として指摘される中で、漠然と金融・経済に関心を持つようになりました。

最終的に金融庁に入った理由については、民間企業では、自社の利益を優先して判断・行動しなければならない場面があると思います。それ自体は企業が成長していく上で必要なことだと考えていますが、自分としては、極端な例でいえばリーマンショックのような金融危機時も含めて、日本の企業や経済、市場全体にとって必要なことは何かということを常に考えて行動することが求められる、金融庁のミッションに魅力を感じ、金融庁に入りました。

服部

現在、資産運用課ではどういう役割を果たしていますか。

宮内

資産運用課では、資産運用企画室の総括補佐として、資産運用サービスの高度化に向けたプログレスレポートの執筆に携わっています。また、企画市場局市場課や内閣官房日本成長戦略本部事務局を併任しており、金融庁や政府全体の資産運用立国の施策のとりまとめも担当しています。

服部

プログレスレポートを改めて読んできたのですが、プログレスレポート自体、現在では資産運用業界において注目が高いアウトプットになっていると思います。日経新聞など大手メディアも定期的に取り上げている印象です。

日銀であると、それこそ金融システムレポートや日銀レビュー、各種論文など、リサーチが充実していますが、霞が関の場合、担当している政策や法改正が多かったり、国会対応等もあるため、そこまでリサーチにリソースを避けていないという印象をずっと持ってきました。そのような中、プログレスレポートは、毎年違うコンテンツにしつつ、また、100ページ近い内容を作っているという意味で珍しいアウトプットではと感じています。

かつてリリースしたプログレスレポートもみてきたのですが、当初はスライドでスタートしていて、徐々に拡大していっていますよね。その点も興味深いと思いました。

宮内

写真:宮内補佐

プログレスレポートの変遷について、まず担当部署という観点では、一番最初の2020年のプログレスレポートは、総合政策局総合政策課が担当していました。その後しばらくは、2020年7月に総合政策課に設置された資産運用高度化室が、当時資産運用会社を監督していた証券課内のチームと連携しながら執筆していました。2025年以降のプログレスレポートは、証券課から独立した、資産運用サービスを提供する様々な金融機関へのモニタリングを行う資産運用企画室が主に担当しています。先程お話にあった通り、一般の投資家の方にも詳細な情報を提供するためにレポート形式としたり、金融機関にとっても参考となるような事例やデータを提供したりするなど、様々な工夫を行ってきています。

服部

資産運用課には資産運用会社の監督に加え、リサーチの機能があり、その具体的なアウトプットはプログレスレポートと整理してよいでしょうか。法律などを改正する機能は企画市場局市場課にあるということですよね。

宮内

はい、そのような理解で大丈夫です。モニタリングを通じて把握した課題が、制度改正によって対応すべきものであれば、資産運用課と市場課で連携しつつ、市場課が制度改正を担うことになります。実務的な課題であれば、金融機関に対する監督上の着眼点等を示した監督指針の改正や業界団体の規則改正等を通じて、対応することになります。

プログレスレポートのテーマ

服部

プログレスレポートは毎年基本的に公表しているようですが、特徴をどのように捉えていますか。

宮内

その時々において重要なテーマが取り上げられていますが、コアとなっている問題意識は最初のプログレスレポートから共通していると思います。資産運用会社が、オルタナティブ投資や海外ビジネスの強化といった自社の強みの確立等を通じて、いかに運用力を高め、収益基盤を確立していくか、また、プロダクトガバナンス等を通じていかに顧客の最善の利益を勘案した業務運営を行っていくかは、息の長い取組であり、一朝一夕で目指すべき姿に到達できるものではありません。このため、こうしたテーマについては、「プログレス」レポートの名の通り、継続的にモニタリングを行っており、その時々によって、どのような切り口でどのように深掘りするかに違いがあります。

図表1 資産運用業高度化プログレスレポート2020のテーマ

図表2 資産運用業高度化プログレスレポート2022のテーマ

服部

例えば、2025年のプログレスレポートで深堀りしたものというとどういうものがありますか。

宮内

2025年のプログレスレポートでは、資産運用業のテーマを例にとると、大手資産運用会社の現状と、資産運用サービスの質の向上や収益基盤の確立に向けて各社が考える今後強化すべきポイントについて分析・実態把握を行っています。グローバル資産の受託残高や営業利益が増加する中で、インハウス運用と外部委託運用をどう使い分けていくのか、海外ビジネスをどのように位置づけていくのかといった点が各社の経営戦略上、重要なポイントとなっています。こうした中、各社が自らの立ち位置を把握した上で、現在のビジネスモデルの妥当性、他社との差別化、更なる成長のために取り組むべき課題、その解決のための方策などについて検討できるよう、業界全体・各社のデータ等を提供しています。

図表3 資産運用サービスの高度化に向けたプログレスレポート2025(抜粋)

利益構造と各社の強化ポイント
服部

具体的に、そういうテーマはどうやって立ち上がっていきますか。

宮内

資産運用サービスを提供する様々な金融機関への横断的なモニタリングを行うという資産運用企画室の立場を活かし、様々な業態の金融機関へのヒアリングの中で得た気づきを踏まえて、チーム内で議論をして決めています。ヒアリングでは、資産運用サービスの高度化や資産運用立国の実現に向けて、金融庁がモニタリングすべきと考える業界横断的な課題について意見を伺うこともあります。こうしたプロセスを経て、過去のプログレスレポートで取り上げたテーマの中でフォローアップすべきもののほか、資産運用を巡る状況変化等を踏まえた新しいテーマを取り上げることもあります。

服部

宮内さん自身も実際にプログレスレポートを書いていますか。

宮内

現在まさに、100社以上の金融機関に対するヒアリングやアンケート調査の結果を基に、チームで連携して次のプログレスレポートを執筆しています。

資産運用サービスを提供する様々な金融機関へのヒアリング

服部

プログレスレポートを作る上で金融機関へのヒアリングが大切だと思うのですが、金融機関とはどのようなコミュニケーションをしているのでしょうか。

宮内

金融機関からは、ヒアリングやアンケート調査を通じて対話を行う中で、実態を詳細に教えていただくほか、私達の課題認識や仮説に対して率直な意見をいただいています。例えば、資産運用会社のミドル・バックオフィス業務や信託銀行の資産管理業務について、欧米に比べて効率化やデジタル化が十分に進んでいないという指摘があります。2023年のプログレスレポートでも、資産運用業界における業務効率化というテーマが取り上げられており、特に、資産運用会社と信託銀行の双方が計算している投資信託の基準価額については、信託銀行による一者計算の実現に向けて、過去数年にわたって業界での議論や取組が行われてきました。

資産運用会社がより運用に専念し、信託銀行が資産管理業務を拡大・高度化していくという大きな方向性や意義については業界内で共通認識があるものの、実際の取組状況については業態によって異なるほか、同じ業態であっても差異がみられます。例えば、大手の資産運用会社からは、信託銀行により大きな役割を担ってもらって基準価額の一者計算に移行するとともに、運用以外の事務のアウトソースを拡大していきたいという声があります。一方で、信託銀行や事務のアウトソースを受ける専門業者からは、現状の資産運用会社の多様なニーズに応えようとすると、スケールメリットを得ることが難しいといった声も聞かれます。

服部

私は今年、証券決済のことを調べていますが、例えば、照合など複雑化されたルールは顧客ごとに対応した結果という印象もあります。似たようなことが様々なところで起こっているということですね。

宮内

さらに、基準価額の一者計算に移行するためにはシステム改修も必要となる中で、費用対効果が分かりづらいといった声もあります。取組を進めていくうえでは、様々な関係者の合意形成を図っていく必要があります。

対話のツールとしてのプログレスレポート

服部

資産運用課を経験して面白いと感じたのはどういう点でしょうか。

宮内

資産運用サービスを提供する様々な金融機関への横断的なモニタリングを行う立場であるからこそ、先程ご紹介したような業界横断的な課題に対して、中立的・客観的な立場で向き合うことができるのは、面白い部分でもあり、チャレンジングな部分でもあると思います。また、2025年のプログレスレポートのように、各社における今後の検討の参考となるような業界全体・各社のデータ等を提供するというのも、資産運用企画室ならではと感じています。

服部

業界団体で取り組むことができる部分もありますが、例えば、業界団体だと大手の意見が反映されやすいなどの側面もあると思います。

宮内

様々な金融機関から直接意見を聞いたうえで、プログレスレポートを通じてこうした実態・課題があるのではないかというのを示すことが出来たらと考えています。実際に、プログレスレポートについて金融機関の方がどのように受け止めていらっしゃるかをお聞きしたことがあるのですが、プログレスレポートの公表後だけでなく、公表前の私達がヒアリング等をさせていただいている公表前の段階から既に、ヒアリングのテーマに関して自社の取組状況がどうかを分析し、今後の対応について検討されている、というお話をお伺いしました。プログレスレポートはこのように、金融庁と業界の対話のツールであるということを改めて実感したところであり、今後も双方向の対話を大切にしていければと考えています。

(次回へ続く)



お知らせ

金融経済教育全国キャラバン
~ワニーサと学ぶ 未来のためのお金の教室、日本全国ごあいさつの旅! vol.15~



6.20横浜イベントの模様

写真:イベントの様子①
写真:イベントの様子② 写真:イベントの様子③

8.22旭川イベントの開催

  • 日時:令和8年8月22日(土曜) 10時00分 ~ 16時30分(予定)

  • 会場:イオンモール旭川西 (北海道旭川市緑町23丁目2161-3)
    1F センターコート

  • 出演者:レギュラー、バンビーノ、CRAZY COCO、MC:タケト

  • 主な内容

    • ステージショー
      • *ワルーサ襲来!?お金の知識で世界を平和に!?

      • *学ぼう!お金の知識 みんないっしょに幸せ家族

      • *うんこお金ドリル 生活編(推奨学年:小学1~3年生)

    • ミニ講義プログラム
      • *うんこお金ドリル 経済編(推奨学年:小学4~6年生)

また、当日会場には、協力企業・団体によるお金に関する様々なブースをご用意しています!

ワニーサとなかまたちも来るよ!

うんこ先生

うんこ学園の校長先生。
子どもたちに問題の解き方を分かりやすく教えてくれる。

ワニーサ

金融庁からやってきた金融経済教育推進担当の参事官。
資産形成を応援する制度、NISAの広報担当もしているよ!

とうしくん

ほのぼのとした外見ながら、勉強熱心で今後大きく成長する期待大!

*詳細はイベント公式サイトをご覧ください*
https://wanisa-caravan.fsa.go.jp/event/asahikawa/新しいウィンドウで開きます

~今後のイベントにもぜひご注目ください!~

ワニーサが行く日本全国ごあいさつの旅

前回に引き続き、 ワニー参事官(ワニーサ)が全国の知事や金融関係者のもとへ出向き、金融経済教育のさらなる充実に向けた連携強化をお願いしております!

随時ワニーサ公式Xアカウント(@Wa_nisa_FSA新しいウィンドウで開きます)にて配信中!

三好 伊予銀行頭取を訪問(6月15日配信新しいウィンドウで開きます

中村 愛媛県知事を訪問(6月17日配信新しいウィンドウで開きます

新田 富山県知事を訪問(6月23日配信新しいウィンドウで開きます

齋藤 兵庫県知事を訪問(6月29日配信新しいウィンドウで開きます

これまでたくさんの地域で
金融経済教育推進の活動をしてきたよ!

「金融庁ワニーサの金融経済教育」新しいウィンドウで開きます
Webサイトも見てね!

ワニー参事官の名刺画像

つみたてNISA公式Xアカウント(新しいウィンドウで開きます)

先月の金融庁の主な取組(令和8年6月1日~6月30日)


金融庁職員による寄稿等

金融庁では、当庁施策の紹介や説明を含め、その活動状況等について、各種刊行物等への執筆を行っており、ウェブサイト上で公表しています。本稿でもその一部について掲載いたします。

~最近掲載された寄稿等のご紹介~

その他の寄稿等についても、金融研究センターウェブサイト新しいウィンドウで開きますを是非ご覧ください。


編集後記

アクセスFSAをご覧頂きありがとうございます。今月号では、政策解説として、「データ分析・利活用プロジェクト」の報告会・表彰を取り上げています。金融行政におけるデータ活用の取組について、優れた分析を表彰しています。是非お読みください。
 さて、早いもので、昨年7月に広報室長に着任して1年が経ちました。私が編集後記を担当するのも今回で最後になりそうです。広報業務は、初めて触れる内容も多く、私自身手探りでしたが、広報室では、令和7事務年度において、アクセスFSAのコンテンツの充実(連載形式の対談企画の実施)、ウェブサイトの改善(AI翻訳の導入、デザインの見直し)、会見室の機材更新など、着実に新たな取組を進めることができました。これらの取組の中には、前事務年度から計画を引き継ぎ、実施してきたものもあります。
 政策をわかりやすく発信するといっても、対外発信する内容の性質や訴えかけたい層に応じて望ましい方法・手段は異なりますし、公表内容も、前例に倣っていればよいというものでも当然なく、唯一解があるものでもないので、担当課室と一緒に試行錯誤をしながら、とてもやりがいのある日々を過ごすことが出来ました。令和8事務年度も、広報室とアクセスFSAをどうぞ宜しくお願いいたします。

金融庁広報室長 久米 均
編集・発行:金融庁広報室

サイトマップ

ページの先頭に戻る