アクセスFSA 第224号

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Contents

 


中小企業等の金融の円滑化に関する意見交換会
~ 金融機関による事業者への資金繰り支援の要請 ~

 令和4年3月7日、金融庁は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響が2年という長期にわたっているほか、ウクライナ情勢、原油価格の上昇等の影響も懸念される中、様々な事業者が大変厳しい状況に置かれていることや、年度末に向けて、運転資金等の需要が高まることを踏まえ、中小企業等の金融の円滑化について、鈴木大臣をはじめとする政府当局者と官民の金融関係団体等の代表者との意見交換会を開催しました

意見交換会で発言する鈴木大臣
(写真:意見交換会で発言する鈴木大臣)

 同意見交換会においては、冒頭、鈴木大臣から官民の金融関係団体等の代表者に対して、オミクロン株による感染拡大に加え、ウクライナ情勢、原油価格の上昇等の影響も懸念され、依然として様々な事業者が大変厳しい状況に置かれている中で、改めて、事業者の資金繰り支援に万全を期していただくようお願いを申し上げました。

 さらに、鈴木大臣から、来年度は、増大する債務に苦しむ事業者の再生支援等も、一層重要な課題であることから、全国銀行協会が中心になってとりまとめた、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)や経済産業省とともに発表した「中小企業活性化パッケージ」を有効に活用した上で、厳しい経営環境にある事業者支援にしっかりと取り組んでいただくよう合わせてお願いを申し上げました。

 出席した官民の金融関係団体等の代表者からは、

・オミクロン株の流行によるコロナの長期化のみならず資源価格の高騰やウクライナ情勢等も踏まえ、資金繰り支援に最優先に取り組んでいく、

・長引くコロナ影響により、債務の過剰感が増している事業者に対してガイドラインも活用しながら、事業再生等をしっかりと支援していく、

といった声が聞かれました。

 また、官民の金融関係団体等に対し、上記事項等について、関係大臣連名の書面で要請しました。合わせて、今後、ガイドラインの浸透・定着、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを図るために、株式会社地域経済活性化支援機構及び独立行政法人中小企業基盤整備機構の協力も重要と考えられることから、両機構に対しても書面で協力を要請し、両要請文を公表の上、要請内容の周知徹底を図りました。


<意見交換会参加金融関係団体等>
全国銀行協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、
信託協会、全国労働金庫協会、農林中央金庫、日本政策金融公庫、全国信用保証協会連合会、
沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、日本政策投資銀行、住宅金融支援機構

 

意見交換会に出席した黄川田副大臣(左)と宗清大臣政務官(右)
(写真:意見交換会に出席した黄川田副大臣(左)と宗清大臣政務官(右))

 


 「年度末における事業者に対する金融の円滑化について及び事業者等に対する金融の円滑化について等」は、https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20220307.htmlをご参照ください。


「Regional Banking Summit(Re:ing/SUM)」
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「日経地方創生フォーラム」

◆はじめに

 金融庁では、様々な分野の多様なバックグラウンドを持つ有識者と地域金融機関による議論を通じ、地域金融機関の持続可能なビジネスモデルや地域経済活性化に資するアイデア・方策の創出につながることを目的としたイベント「Regional Banking Summit (Re:ing/SUM)」を開催しています。

 本年度も日本経済新聞社との共催により、2月11日(金曜)から2月26日(土曜)までの各週末にオンライン配信にて開催しました※1。特に今回は、実際の会場で開催した際に生まれる参加者同士の交流と同様の効果を狙い、オンライン上の仮想空間で視聴者相互にコミュニケーションが図れる仕組み(バーチャルネットワーキングスペース)も提供しました。

 各コンテンツでは、多彩な有識者と多くの地域金融機関の役職員の方々に登壇いただき、「事業者支援」や、「経営人材マッチング」のほか、これからますます重要性が高まる「SDGs」、「超高齢社会の金融サービス」をはじめとした幅広いテーマについて、時に堅実に、時に大胆かつ創造力豊かに様々な意見を交換し、議論いただきました。

 本稿では、各コンテンツの概要をご紹介します。

◆概要

●開会挨拶 

 開会挨拶の中で、鈴木大臣から、新型コロナウイルスの影響で傷ついた日本経済の立て直しには多方面からの支援が必要、地域金融機関には「金融」の仲介だけでなく、「人材」の仲介、さらには「情報」の仲介といった、事業者の真のニーズに沿った機能の発揮を期待したいといった旨のメッセージがありました。

挨拶する鈴木大臣

●パネルディスカッション

【カテゴリー:地域銀行のビジネスモデル】

  • 顧客と地域に付加価値をもたらすような金融仲介の実現に向けた組織運営のあり方

 北國FG・杖村社長、名古屋銀行・藤原頭取、金融庁・新発田銀行第二課長との間で、銀行経営における将来像とその実現に向けた取組みや課題、経営の舵取りにあたってのポイント、当局とのあり方などについて率直な意見交換・議論が交わされました。

  • 大企業からの新しい人の流れ~人材マッチングで地域の未来を拓く~

 人材マッチングに取り組む地域金融機関、大企業から外部への「越境」やキャリア支援、中小企業の人材確保に取り組んでいる方々が登壇し、キャリアの多様化により大企業から中小企業への新しい人の流れが生まれつつある中、人材マッチングプレーヤーとしての地域金融機関への期待などについて議論されました。

  • 経営改善支援に取り組める金融機関の組織・営業体制における運用上の工夫~米国実務との比較~

 事業再生・改善に携わる方が登壇し、日米の金融実務の比較を踏まえながら、日本の金融機関と取引先企業が共に成長し、ノウハウ等を組織的に継承していくための人材確保や育成の重要性等が議論されました。

ディスカッションの様子

【カテゴリー:金融教育・金融リテラシー】

  • 超高齢社会の金融サービス

 高齢者の金融を含めた生活支援に取り組んでいる方が登壇し、超高齢社会において求められる金融サービスのあり方、老後に向けた早めの準備を促す必要性、地域金融が福祉や異業種の事業者と連携を図る意義、IT活用の可能性などについて議論されました。

  • 金融リテラシー向上の意義と地域連携について

 金融教育関係者が登壇し、子どものうちから金融教育を行っていくことの重要性、高校で金融教育が拡充されることの意義、教育や行政、金融機関等が連携して金融教育を行う必要性、金融リテラシーの向上が人々の生活にもたらす意義について議論されました。

  • 子どもの貧困問題解消に向けて 地域金融機関が出来る7つのこと〔前半〕

 子どもの貧困問題に取り組んでいるNPO等が登壇し、こどもの貧困に関する現状や、地域金融が貧困問題の解決に参画する意義・有効性、地域金融機関とNPOとのコミュニケーションの重要性などについて議論されました。

  • 子どもの貧困問題解消に向けて 地域金融機関が出来る7つのこと〔後半〕

 子どもの貧困問題に先進的に取り組む金融機関や業界団体の方が登壇し、具体的な取組内容の紹介に加え、他の金融機関が新たに取組みを進めるにあたってのポイント(金融機関が持つ強みの理解や、金融機関側が対応できるとより望ましい点)などについて議論されました。

【カテゴリー:組織運営・活性化】

  • 地方創生に向けた共通価値の創造~地域金融機関と自治体との新たな連携のカタチ

 地域課題の解決に向けて密接に連携して取り組んでいる地域金融機関と自治体の方が登壇し、地域経済エコシステムの形成を阻む壁と、その壁を乗り越える具体策について、人材・資金・モチベーション維持等の多角的な視点から議論されました。

  • 地域銀行の魅力発信委員会~組織活性化に向けたアンダー35の主張

 「副業・兼業」の枠組みを採用する地域銀行とその効果を知る有識者が登壇し、当該枠組みが、行員のスキル・キャリアアップを通じたモチベーションの向上、こうしたひとりひとりが組織にもたらす貢献度合いと組織全体への影響の観点から、どのようことを期待するか、どのような有意義な効果を生じ得るかといった点について議論されました。

  • 社外取締役の役割発揮に向けて

 金融機関などで社外取締役としての豊富な経験も持つ有識者が登壇し、社外取締役として、足下から将来に向け重要となっていく役割や、こうした役割を的確に発揮する上で必要な組織・執行側との関係性のあり方などについて、意見交換・議論を交わしました。

【カテゴリー:SDGs・ベンチャー】

  • 地域とSDGs~アパレル産業に学ぶ

 SDGsの観点から地域活性化に取り組んでいる方が登壇し、アパレル産業における具体的な取り組みとともに、地域金融が企業と取り組むリサイクルの実例や、事業にどのようにSDGsを落とし込むか、加えて企業戦略としてのSDGsについて議論されました。

  • 地域の脱炭素産業エネルギーシステム構築に向けて

 脱炭素化に取り組んでいる方が登壇し、産業集積地域の脱炭素化を促進するにあたり地方銀行が担う役割、そのための自治体との連携や必要な人材の確保、組織内での共通認識の醸成といった課題について議論されました。

  • ベンチャー育成を通じた日本企業・経済の活性化と地域金融機関との連携

 ベンチャーの育成に取り組んでいる方が登壇し、地域金融機関と国や地方自治体・ベンチャー企業・大学との連携のあり方や、ベンチャー企業支援における地域金融機関の役割について議論されました。

【カテゴリー:事業者支援】

  • ノウハウ共有とAIの可能性

 事業者支援に取り組む地域銀行や信用保証協会と人工知能(AI)分野の有識者等が登壇し、個別の事業者支援に関して現場で具体的な知見やノウハウを共有することの重要性やAI等を活用した事業者支援の効果的・効率的実施の可能性等について議論されました。

  • 地域経済と事業再生の現場から

 事業再生の第一線でご活躍の方が登壇し、個別事業者の支援に加えて地場産業など面的な支援についても地域金融機関が主体的に取組んでいくことや、地域愛や人間愛を貫き通せるような人材育成等の重要性について議論されました。

  • まとめ(事業者支援)

 新発田銀行第二課長が登壇し、事業者支援の目的である事業者の再生、地域の再生を達成するため、金融機関の現場職員個人の事業者支援能力の向上だけでなく、組織を超えたネットワークの構築、AIや高度な再生手法等の「手段」の上手な活用が重要とした上で、金融庁でも、地域金融機関や地域の支援機関が、事業者支援のノウハウ・知見を地域・組織・業態を超えて共有していく取組みの後押しをしていきたい、と指摘しました。

●閉会挨拶

 宗清大臣政務官から、地域金融機関が、地域の経済や産業を支えるためにどのような役割を果たしていけるのか、本イベントが一助となり、お金に限らず人や情報など多方面からの事業者支援の促進、SDGsなどの社会的課題やイノベーションの創出に関心を持つ方同士がつながり、そこからさまざまなアイデアが生まれ成果につながっていくことを期待したいといった旨のメッセージがありました。
 
挨拶する宗清政務官

【令和4年Re:ing/SUMのタイムテーブル※2

 
タイムテーブルタイムテーブル2  

※ 画像をクリックすると拡大できます。
 

 


※1 本イベントのアーカイブ配信を、金融庁ホームページ・日経チャンネル(以下URL)より一定期間視聴いただけます。
金融庁HP:https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20220125/20220125.html
日経CH:https://channel.nikkei.co.jp/reingsum2022/#新しいウィンドウで開きます

※2 タイムテーブルは日経イベント&セミナーにも掲載しています。https://events.nikkei.co.jp/45038/新しいウィンドウで開きます


「FIN/SUM2022」
~鈴木大臣及び黄川田副大臣の挨拶~

 金融庁と日本経済新聞社は、国内最大級のフィンテックカンファレンスである「FIN/SUM 2022」を、3月29〜31日の3日間にわたって開催しました。

「FIN/SUM 2022」の模様
(写真:「FIN/SUM 2022」の模様)

 今回も、感染症対策に万全を期す観点から、参加者同士が「3密」(密閉空間、密集場所、密接場面)を回避するための措置を講じるとともに、オンライン会議システムを用いたリモート参加およびライブ視聴をおこなうなど、ハイブリッド形式で開催されました。

 2日目となる30日には、金融庁主催のシンポジウムを開催しました。「Scaling Finance for Sustainable Growth」をテーマに、金融が気候変動等の社会課題の解決に寄与し、経済の持続的成長に資するものとして進化いくことが必要であるとの認識の下で、「金融・決済インフラの未来」、「拡大する分散型金融への対応」、「責任ある行動が導くデジタライゼーション」、「日本における新たな金融サービスの現状と展望」、「ブロックチェーン時代のAML/CFT」、「世界に開かれた国際金融センターの実現」、「クライメートテックの現状と未来」の7セッションについて、学術界や技術コミュニティ、事業者、金融当局や中央銀行等の専門家を招聘し、多様な視点からディスカッションを行いました。

 こちらでは、シンポジウムでの鈴木大臣による開会挨拶及び黄川田副大臣による閉会挨拶をご紹介します。


【鈴木大臣 開会挨拶】

写真:開会の挨拶をする鈴木大臣
(写真:開会の挨拶をする鈴木大臣)

 金融担当大臣の鈴木俊一でございます。

 本日はフィンサム(FIN/SUM)2022にご参加頂きまして、誠に有難うございます。金融庁シンポジウムの開催に当たり、主催者としてご挨拶申し上げます。

 社会全体のデジタル化が加速する中、ブロックチェーンやAIといった革新的技術を活用した、多様な金融商品・サービスの提供が進みつつあります。従来の金融機関のみならず、スタートアップ企業や、非金融事業を営まれていた事業者など、様々なプレイヤーの方々が金融分野におけるイノベーションにチャレンジしていく動きを、大いに歓迎しております。

 なぜなら、こうした新たな金融サービスが、少子高齢化、気候変動、地方創生、中小企業の成長支援といった、我が国および国際社会が抱える社会課題の解決や、経済の持続的成長に貢献する可能性を有しているからです。

 フィンテックによる社会課題解決への貢献の事例として、例えば欧州や米国では、主に若い世代をターゲットとして、商品製造時に排出した二酸化炭素を推定し、アプリ上で表示・比較するような機能を提供するサービスが拡大しています。持続可能な社会の構築に向けて重要なことは、一人一人が責任ある行動をとることです。テクノロジーの活用を通じて、人々の行動変容を促すような金融サービスが発展・普及することは、大変望ましいことだと思います。

 また、プラットフォーマーにより金融サービスが提供され、デジタル資産やキャッシュレス決済手段が普及するなど、デジタル化に対応した新たな金融サービスが拡大する中で、金融庁としても、新たな成長のエンジンを金融面からサポートするためのイノベーション支援を行っていくことが不可欠です。

 それと同時に、利用者保護や金融システムの安定、金融犯罪の抑止といった環境整備も適切に行っていく必要があります。「規制はイノベーションの障害だ」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、国民が安心して利用できないサービスに持続可能性や発展は望めないと思います。規制当局者やビジネス関係者、エンジニアなどの間で、考え方に違いがあるかもしれませんが、関係者間でよく対話し、協調関係を築くことで、適切な規制環境のもとイノベーションを後押しし、未来に向けて価値を創造していくことができると信じています。

 更に、日本がビジネスを行う場としての魅力を向上させるために、国際金融センターを目指して人材・企業・資金を呼び込んでいくことも重要です。金融庁ではこれまで、関係省庁と連携し、行政の英語対応、規制・税制に係る措置、ビジネス環境や生活面の課題の改善などの様々な取組みを進めてまいりました。今後、さらに海外の資産運用業者等の誘致に努めていくほか、世界・アジアにおける持続可能な社会の構築に向けた投融資の活性化に貢献すべく、「グリーン国際金融センター」を含めたサステナブルファイナンス推進のための環境整備を強力に推進してまいります。

 いずれの論点にも共通するのは、社会課題解決と経済の持続的成長に向けて、金融当局も含めた金融のエコシステムが更に拡大・成長していく必要があるということです。そこで、本シンポジウムのテーマを「スケーリング・ファイナンス・フォー・サステナブル・グロース」(Scaling Finance for Sustainable Growth)としました。本日ご参加・ご視聴頂いている皆様には、ぜひともその担い手になって頂きたいと考えています。

 最後になりますが、ご登壇者の皆様には御礼を申し上げるとともに、共催者として、本カンファレンスの開催にご尽力いただいた日本経済新聞社にも感謝を申し上げます。本日の議論が実り多きものとなり、皆様のビジネスにおけるイノベーションの実現に貢献するものとなることを祈念しております。ご清聴ありがとうございました。

(以上)

【黄川田副大臣 開会挨拶】

写真:閉会の挨拶をする黄川田副大臣
(写真:閉会の挨拶をする黄川田副大臣)

 内閣府副大臣の黄川田仁志です。フィンサム(FIN/SUM)2022・金融庁シンポジウムの閉会に当たり、主催者としてご挨拶申し上げます。本日は、今回で6回目の開催となるフィンサムにご参加いただき、誠にありがとうございました。また、開催にご尽力いただいた共催者の日本経済新聞社にも感謝申し上げます。

 今回のテーマは、「スケーリング・ファイナンス・フォー・サステナブル・グロース(Scaling Finance for Sustainable Growth)」でした。すなわち持続的成長に向けて、現在そして未来の金融がどうあるべきかについて、当局関係者に加え、金融機関、フィンテック企業、研究者など、多方面でご活躍されている様々な立場の方々にご議論いただきました。

 ここで金融サービスの歴史を振り返りますと、お金を預ける時や預金を引き出す時には、通帳と印鑑を持って銀行窓口まで行かなければならない時代がありました。その後、ATMの登場により、休日でもお金を銀行から出し入れすることができるようになりました。

 最近では、インターネットバンキングを使って、オンラインで、決済・送金することはもちろん、利用者が金融業以外の企業から商品・サービスを購入・利用する際に、金融機関を意識することなく、金融サービスを受けることも可能となっています。例えば、一見すると金融業を行っていない事業者が提供するアプリで商品購入だけでなく、送金や資産運用、アプリの利用実績等を用いた与信などの金融サービスを利用できるものがあります。こうしたいわゆるエンベデッド・ファイナンス(Embedded Finance)は、金融機関やフィンテック企業だけでなく、非金融企業がそれぞれの強みを活かし、手を組むことによって実現しています。このほかにも、ブロックチェーン技術を活用した暗号資産や分散型金融といった新しい領域のサービスも生まれています。

 日本でATMが初めて利用されたのは50年以上前ですが、50年前に今の状況を予想できていた人は誰もいないでしょう。そして、今から50年後において、金融サービスがどのように進化しているのかを予想することも、また困難であります。しかし、一つ分かっていることは、金融サービスがどのように進化しようとも、社会全体にとって価値あるサービスを展開するべきである、ということです。そうした観点から、新型コロナ感染症による非対面ニーズや、気候変動問題を踏まえた環境対策を行うニーズといった足許で起こっている様々な社会問題に応える金融サービスが登場してきていることについて、大変心強く感じております。こうした歩みを加速するためには、金融のデジタル化の進展が欠かせず、関係者が責任を持って積極的に推進していく必要があります。

 最後になりますが、日本の金融が価値を生み出し、経済の持続的成長に貢献していくためには、当局・民間、金融・非金融を問わず、協働していくことが重要だと考えます。今回のフィンサムが皆様にとってこうした協働の一助となることを祈念いたしまして、本日の閉会の言葉とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

(以上)

 


持続可能な地域経済社会の活性化に向けた金融庁と
環境省との連携チームの取組み

監督局総務課地域金融支援室 主査 住本 史也

本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。)

 金融庁と環境省は、持続可能な地域経済社会の活性化に向けて、両省庁の知見やノウハウを持ち寄り、協働で取り組むことを目的に、令和3年3月31日、「持続可能な地域経済社会の活性化に向けた連携チーム※1(以下、「金融庁と環境省との連携チーム」という)」を発足し、これまで全国各地から寄せられる課題に対して、両省庁が連携しながら取組みを続けてきました。

 このたび、金融庁と環境省との連携チームがかかわってきた取組みの紹介を通じて、各地域の取組みの情報発信強化やネットワーク形成につながるよう、令和4年3月2日、「持続可能な地域経済社会の活性化に向けた金融庁と環境省との連携チームオンラインイベント」を開催しました。

写真:金融庁と環境省との連携チームオンラインイベント開催の様子
(写真:金融庁と環境省との連携チームオンラインイベント開催の様子)

 

≪3月2日開催 オンラインイベントの登壇者等一覧≫
3月2日開催オンラインイベントの登壇者等一覧

 まず、四国環境パートナーシップオフィス・常川真由美氏から、ローカルSDGs四国(以下、「LS四国」という) ※2の取組みをご紹介いただきました。

 LS四国では、ローカルSDGs(地域循環共生圏)に資する取組みを生み出し、創造していくプラットフォームとして、課題の収集・取組みの情報発信、ローカルSDGsの視点をもった創り手の発掘・育成に取り組むほか、各種分科会では、四国の資源を活用した再生可能エネルギーの導入の調査・検討、国内外の防災や災害支援の方法を学びながら在住外国人向けの防災・減災教育プログラムづくりを行う多文化共生型の減災社会づくりなどの議論が展開されています。

 令和3年11月・12月には、協力機関である四国財務局、金融庁及び環境省と連携し、持続可能な森林とその生業にかかわる諸課題を把握・共有し、自治体や金融機関、林業従事者等の新たなネットワーク形成、課題解決に向けた展開を目的に、「四国の森林活用ダイアログ」を開催しました。

 このダイアログを通じて、林業従事者と金融機関、林業の現場における業務の省力化に取り組む企業等のマッチングが生まれており、LS四国では、今後も、地域の課題を把握しながら、地域内外の関係者のネットワーク形成を支援しつつ、課題解決につながるよう取り組んでいくと説明されました。

 次に、のと共栄信用金庫・入口翔氏から、石川県七尾市でのローカルSDGsプロジェクトの取組みをご紹介いただきました。

 石川県七尾市では、平成26年1月、七尾商工会議所、のと共栄信用金庫、日本政策金融公庫及び七尾市の4者で創業支援を行うことを目的に、ななお創業支援業務連携・協力に関する協定書を締結しており、これまでの経済界を中心としたプラットフォームを契機に、令和3年10月、産学官金9組織連携チームによる、七尾市における産学官金連携SDGs・ESG促進のための七尾SDGsコンソーシアム「ななおSDGsスイッチ」が設立されました。

 この「ななおSDGsスイッチ」では、七尾市におけるローカルSDGsを強力に推し進めることを目的に、市民や事業者を対象としたSDGs意識調査アンケート、市内の教育現場(小中高)でのSDGsやソーシャルビジネスに関する出前授業、あらゆる主体が地域の現状を一緒に学ぶ「能登SDGs市民大学」の開講、中小企業のためのSDGs相談窓口の開設等、さまざまな取組みを行ってきました。

 そのうち、能登SDGs市民大学では、金融庁と環境省との連携チームも一部講義の企画・運営、講師等の紹介等でかかわりました。学生から高齢者までの幅広い世代、民間企業や自治体等のさまざまな属性の方々が一緒になって七尾市の未来のシナリオを考えるワークショップを実施することで、「能登の里山里海の魅力を発信し、観光客の増加につなげるためにも、この昔ながらのまち並みを残していきたい」「市民大学で得た内容を事業化に向けて取り組みたい」といった企業の声も聞かれました。

 令和4年度は、令和3年度の取組みを土台にして、地域住民の手による地域の未来ビジョンの策定(令和4年度策定予定)に取り組み、引き続き、歩みを止めずに取組みを推進していくことを宣言されました。
 

写真:能登SDGs市民大学開講の様子
(写真:能登SDGs市民大学開講の様子)
 

 最後に、米子信用金庫・國須多加志氏から、再生可能エネルギーの普及による脱炭素社会の実現と地域経済の持続可能性向上に向けた取組みについて説明いただきました。

 鳥取県西部に位置する米子市・境港市では、その経済活動をみると、経常収支の赤字幅のうちエネルギー収支の赤字が約4割程度を占めており、域内での再生可能エネルギーの導入・普及及び効率的な利用によって、地域からのエネルギー代金の流出を抑えるほか、地域内への資金流入も期待できることから、米子信用金庫が、環境省「ESG地域金融促進事業」の採択を受けて、建物の屋根等を活用した第三者所有の太陽光パネル発電事業(PPA)によるエネルギーの地産地消モデルの構築に向けた取組みを進めております。

 令和3年度においては、地域の自治体や事業者、支援団体と連携し、市場環境の調査、導入リスクの検討、スキームの構築等を実施しており、今後は、行政や他の地域金融機関、各事業者等と連携しながら、鳥取県西部から鳥取県内全域へ発展させることを目指すと説明されました。

 そのほか、各省庁担当者に情報提供として、本イベントの目的とする持続可能な地域づくりのためのネットワーク形成、環境施策に親和性のある施策を説明いただき、参加者も交えた意見交換を実施しました。

 本イベントの参加者からは、「他の地域の取組みを聞くことで、多くの気づきが得られたので、今後の取組みに活かしていきたい」「参加者同士の対話を通じて、同じ取組みを行っている方とつながりを持てた」といった声が聞かれました。

 今後も、金融庁と環境省との連携チームでは、地域経済エコシステムの形成や地域課題の解決を通じた地域経済の活性化、地域資源の活用を通じた持続可能な地域社会づくり「地域循環共生圏」に有効な取組みについて、連携しながら後押ししていきます。

 


※1 持続可能な地域経済社会の活性化に向けた連携チームの詳細は、https://www.fsa.go.jp/news/r2/20210330/20210322.htmlをご参照ください。

※2 ローカルSDGs四国(LS四国):四国の地域課題を解決し、持続可能な地域づくりを進める「地域循環共生圏=ローカルSDGs」の達成に向けた取組みを推進するプラットフォーム。四国各地で魅力ある地域を創るために、産学官民金等の多様な関係者が学びあい、支え合う場などを提供。詳細は、ローカルSDGs四国のウェブサイト https://ls459.net/ をご参照ください。


監査上の主要な検討事項(KAM)の特徴的な事例と記載のポイント

企画市場局企業開示課 課長補佐    鹿子木 慎亮
                           企業会計専門官 船木  博文
                           係長        吉田  圭吾

本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。)

1.はじめに

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 金融庁では、「監査上の主要な検討事項(KAM)」の実務の定着と浸透を図ることを目的として、学識経験者、投資家・アナリスト、企業、監査法人などをお招きして「KAMに関する勉強会」を開催し、KAMの記載内容や記載の傾向等について、様々なご意見をいただきました。

 そこでご議論いただいた特徴的な事例や記載にあたってのポイントを取りまとめ、本年3月、「監査上の主要な検討事項 KAM)の特徴的な事例と記載のポイント」として公表しています※。本稿では、公表資料の主な内容をご紹介します。

 なお、本稿中の意見にわたる部分については、筆者らの個人的見解であることをあらかじめ申し添えます。

2.KAMの概要

 「監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters:KAM)」とは、「当年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項」のことをいいます。

 監査報告書におけるKAMの記載は、監査人が実施した監査の透明性を向上させ、監査報告書の情報価値を高めることにその意義があり、KAMを契機として利用者と経営者の対話がより促進されること等が期待されます。

 欧米を中心とした諸外国では、すでに同様の制度が先行して導入されており、我が国でも、平成30年7月に公表された「監査基準の改訂に関する意見書」により導入が決定し、令和3年3月期から監査報告書への記載が求められています。

 適用初年度においては、企業とのコミュニケーションを踏まえた監査人による創意工夫のもと、様々なKAMの記載が見られています。

3.公表資料の主な内容

 公表資料は、(1)「KAMに関する勉強会」メンバーの主なコメント、(2)傾向分析、(3)特徴的な事例及び(4)検討が必要と考えられる事例の大きく4つから構成されます。ここからは、各項目の主な内容についてご紹介したいと思います。

(1)「KAMに関する勉強会」メンバーの主なコメント

 はじめに、勉強会メンバーから寄せられたコメントを「KAMの意義」「KAMの記載内容」「開示とKAMの関係」「KAMの個数」の4つのテーマに分けて掲載しています。

 まず、「KAMの意義」については、「KAMが利用者の意思決定にどう貢献できるか、また、どのように利用され得るかという観点から監査人は考える必要がある」、「投資家が懸念する会計上の取扱いや企業へ頻繁に質問する事項等について、先手を打って積極的に開示する姿勢が重要」などの声がありました。

 次に、「KAMの記載内容」については、「特定の見積り項目のみではなく、内部統制、システム、訴訟等の示唆に富んだ様々なKAMが見られた」、「監査人が何をリスクとして捉えているかという点は、利用者にとっても非常に新鮮な情報であった」など、初年度のKAMを評価するコメントが寄せられました。一方で、2年目以降に向けた期待や課題として、現時点では記載が見られていない手続の結果(Outcome)や監査人の見解(Findings、Observation)に関する記載を期待する声や、前年度とほぼ同じ内容が記載されることを懸念する声もありました。

 続いて、「開示とKAMの関係」については、「注記の充実がKAMの充実にも繋がるといったサイクルが期待される」、「注記が充実しKAMも定着すれば、監査人独自の選定理由や対応・結果といった情報の個別具体化がKAMで図られるべきである」などのコメントが寄せられました。

 最後に、「KAMの個数」については、令和3年3月期の1社あたりのKAMの平均個数(連結財務諸表)は1.3個という結果でしたが、「KAMの個数が直ちに問題となるのではなく、より重要なのは利用者が関心を持っている内容がKAMに含まれているかどうか」、といった声があった一方、「監査役等と協議した中で、絞ったとしても1個というのは少ない印象。今後、個数を含め記載内容が拡充することを期待している」といった声もありました。最後に、「KAMの個数」については、令和3年3月期の1社あたりのKAMの平均個数(連結財務諸表)は1.3個という結果でしたが、「KAMの個数が直ちに問題となるのではなく、より重要なのは利用者が関心を持っている内容がKAMに含まれているかどうか」、といった声があった一方、「監査役等と協議した中で、絞ったとしても1個というのは少ない印象。今後、個数を含め記載内容が拡充することを期待している」といった声もありました。

(2)傾向分析

 次に、適用初年度における記載の傾向について、「類似度分析」と「KAMの個数」のデータを掲載しています。

 「類似度分析」では、レーベンシュタイン距離による文字列類似度分析という手法を用いて、2つの分析を実施しています。

 1つ目は、「早期適用会社の記載内容の変化」の分析です。これは、令和2年3月期までの早期適用会社を対象に、2期間におけるKAMの文字列の類似度を分析したものです。

 この分析では、企業ごとに類似度のばらつきが見られ、また、類似度の高い企業と低い企業が一部の監査法人で占められるなど、一定の偏りが見られる結果となりました。

 2つ目は、「各監査法人における記載内容の類似度比較」の分析です。これは、特定の項目におけるKAMについて、監査法人ごとの文字列の類似度を分析したものです。

 この分析では、監査法人ごとに類似度にややばらつきが見られ、一部の監査法人が相対的に高い結果となりました。

 「KAMの個数」については、適用初年度におけるKAMの個数について、業種別、売上規模別、会計基準別のデータをそれぞれ掲載しています。

(3)特徴的な事例

 続いて、適用初年度のKAMの事例の中から、今後の実務において参考になると考えられる特徴的な事例を4つの項目に分けて、20事例ほど掲載しています。

 「全般」の項目では、「KAMの選定過程を具体的に記載している事例」や、「前年度からのKAM対象項目の変化について記載している事例」等を掲載しています。

 「監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由」の項目では、「業種固有の特徴や見積りの複雑性について丁寧に記載している事例」や、「事業別に異なる収益認識の特徴を具体的に記載している事例」等を掲載しています。

 「監査上の対応」の項目では、「事業計画における重要な仮定を具体的に記載している事例」や、「監査上の許容範囲を独自に策定し、当該範囲内にあるか否かの検証も含めて記載している事例」等を掲載しています。

 「その他(開示とKAMの関連、早期開示)」の項目では、「重要な経営戦略等とKAMの項目が密接に関連している事例」や、「会社法監査報告書にKAMを記載している事例」等を掲載しています。

(4)検討が必要と考えられる事例

 最後に、検討が必要と考えられる事例として、「KAMの内容や決定理由、監査手続等が不明瞭な事例」、「注記情報との整合性の面で検討が必要と考えられる事例(注記が不足している可能性があるケース」、「注記情報との整合性の面で検討が必要と考えられる事例(注記が無いケース」及び「KAMを記載していない事例」の4事例を掲載しています。

4.おわりに

 公表資料を参考に、今後、更なるKAMの記載の充実化が図られるとともに、利用者と経営者の対話がより促進されることを期待しています。

(参考)KAM選定過程の具体例
(参考)KAM選定過程の具体例

 


 令和4年3月4日公表「監査上の主要な検討事項(KAM)の特徴的な事例と記載のポイント」については、https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20220304-2/20220304-2.html
右からご参照ください ⇒ QRコードになります。
 


グローバルマネーウィーク(GMW)での金融庁の取組み

 みなさま、3月下旬のイベントといえば、何を想像されますか?卒業式、お花見、春のセンバツ…いろいろあるかと思いますが、これからはそこに「グローバルマネーウィーク(GMW)」もぜひ加えていただきたいと思います。

 GMWは、2012年から始まった子供・若者に対する金融教育・金融包摂の推進のための国際的な啓発週間で、例年3月20日頃の1週間で開催されます。2020年からは、OECDに事務局を置く「金融教育に関する国際ネットワーク(INFE)」の主催となり、昨年のGMW2021では、世界で2億人以上の方が金融に触れていただいたというビッグイベントになります。本年は、3月21日から27日までの一週間、世界各国の様々な団体が、子供・若者向けの金融教育を推進するイベントを行いました。日本では、金融庁と日本銀行が窓口となっています。

 新型コロナウィルス感染症の影響で、対面での大きなイベント開催は依然として難しい状況ではありますが、金融庁、日本銀行以外にも、金融関連団体、個別金融機関だけでなく、民間で金融教育に取り組まれている団体にもご参画いただきました。金融庁では、日本経済新聞社と連携し、特に若い方に大人気の知識集団QuizKnock(クイズノック)さんとの座談会を特設HPに掲載いただいたほか、BSテレ東での金融教育に関する特集番組に出演しました。また、北海道財務局、近畿財務局においても、日本銀行や金融関連団体と連携し、成年年齢引下げ等をトピックにしたシンポジウムを開催していただきました。その他の団体や個社におかれても、イベントや集中的な周知広報などを実施していただきました。

 このように多くの関係者にご参画いただけた背景としては、2022年4月から高校学習指導要領が改訂され、特に家庭科分野に資産形成が盛り込まれたこと、また同時に成年年齢が18歳に引き下げられ、高校生でも例えばクレジットカードを自分で作ったりできるようになることから、金融教育に関する関心が非常に高まったことがあります。こうした環境変化を念頭に、金融庁や日本銀行、関連団体では、様々な教材開発や情報発信等を行ってまいりましたし、金融庁においても、非常に多くのメディア取材等をいただいており、関心の高さを実感しています。

 しかし、実際に新学習指導要領に基づいた授業が行われるのも、18歳になった方が成年と扱われるのも2022年度以降、まさにこの4月からです。その意味で、これからが正念場であり、この機運をもっと盛り上げていく必要があります。金融教育が日本にもっと定着し、GMWが日本の新たな春の風物詩となることを目指して、金融教育の取組みにさらに力を入れていきたいと思います。

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 特設ページについては、日本経済新聞社ウェブサイト  https://ps.nikkei.com/okanenokyoshitsu/gmw2021/index.html新しいウィンドウで開きますをご参照ください。


日本における保険監督者国際機構(IAIS)2023年年次総会の開催

 今般、保険監督者国際機構(以下、「IAIS」)の2023年の年次総会を、初めて日本において開催することとなりました。ここでは、IAISの組織や活動のほか、年次総会やそれと同時に開催される一連の会合の概要をご紹介します。

1.「保険監督者国際機構(IAIS)」とは?

 保険監督者国際機構(IAIS:International Association of Insurance Supervisors)は、1994年に設立された、保険分野における国際基準策定機関であり、保険契約者保護や金融安定の観点から、保険セクターの監督に係る基準やガイダンスの策定、各国による実施状況の評価等を行っています。

 IAISの事務局はスイス・バーゼルの国際決済銀行(BIS)内にあり、世界の各国・地域の保険監督当局等約200機関(メンバー)で構成されています。我が国は、1998 年よりメンバーとしてIAISに参加し、2008年より執行委員会の(共同)副議長職を務めているほか、当庁職員をIAIS事務局に出向派遣するなど、その活動への積極的な貢献を行っています。

 IAISでは、国際的に活動する保険グループを対象とした国際資本基準(ICS:Insurance Capital Standard)や、保険セクターのシステミックリスクに対する政策枠組み等に関する作業を着実に進めてきました。加えて、気候変動への対応、デジタル化の進展、サイバーリスク等、世界の保険セクターが共通して直面するホットトピックについても、活発な検討を行っています。

2. 具体的に何が開催される?

 IAIS年次総会や、それと同時に開催される一連の会合は、毎年11月頃におよそ一週間にわたって開催され、IAISの一年の中で最大の節目となるイベントとなっています

 年次総会の週の前半には、IAISの各政策テーマを担当する各種委員会や、主要メンバー間でIAISのプロジェクトに関する議論を深める執行委員会の会合が開催されます。続けて開かれる年次総会では、世界中のIAISメンバー約200~300名が一堂に会して重要事項の決定を行います。

 IAIS年次総会の特徴の一つとして、民間関係者も参加する「年次コンファレンス」を同時に開催することが挙げられます。年次コンファレンスには、IAISメンバーのみならず、保険会社等の民間関係者も含めた約400~500名が参加し、世界の保険セクターが直面する課題や注目すべき動向について議論を深める貴重な場となっています。

3.最後に

 今回のIAIS年次総会の開催は、世界第三位の保険市場を有する我が国にとって大変意義深いものと考えています。2023年の会合開催を、世界の保険当局者・民間関係者間での活発な意見交換と、日本の保険行政や保険市場の国際的な存在感の向上のための有意義な機会とすべく、関係者との連携のもと、当庁としても万全の体制で準備に取り組んでいく予定です。

(参考)2019年アブダビ会合の年次コンファレンスの様子
(参考)KAM選定過程の具体例

 


  なお、2020年及び2021年の年次総会は新型コロナウイルスの世界的な流行に伴い、オンライン形式での開催となりましたが、2022年はチリ・サンチアゴでの開催が予定されています。


「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」及び
廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方

「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」について

 令和4年3月4日、一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「中小企業の事業再生等に関する研究会」(金融庁はオブザーバー参加)は、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)を公表しました※1

 ガイドラインは、中小企業者の「平時」や「有事」の各段階において、中小企業・金融機関それぞれが果たすべき役割を明確化し、事業再生等に関する基本的な考え方を示すとともに、より迅速に中小企業が事業再生等に取り組めるよう、新たな準則型私的整理手続である「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」(「再生型私的整理手続」及び「廃業型私的整理手続」)を定めています。

 平成13年に策定された「私的整理に関するガイドライン」と比べ、債務超過解消までの年数に関する要件が緩和されているほか、経営者の退任を必須としないなど、中小企業の実態に即した内容となっています。

 金融庁としては、関係機関と連携しながら、ガイドラインの周知・広報に努めるとともに、金融機関に対して活用を促すことにより、ガイドラインが浸透・定着していくよう努めてまいります。

②廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方について

 令和4年3月4日、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」(金融庁はオブザーバー参加)は、「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」(以下「基本的考え方」という。)を公表しました※2

 基本的考え方は、中小企業の廃業時に焦点を当て、中小企業の経営規律の確保に配慮しつつ、現行の「経営者保証に関するガイドライン」の趣旨を明確化したものです。

 基本的考え方と「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」が一体的に運用されることで、迅速かつ円滑な私的整理手続に資することが期待されています。

 金融庁としては、関係機関と連携しながら、基本的考え方の周知・広報にも努め、基本的考え方が浸透・定着していくよう努めてまいります。

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※1 ガイドラインの詳細については、全国銀行協会のウェブサイトをご覧ください。
全国銀行協会:https://www.zenginkyo.or.jp/news/2022/n030401/新しいウィンドウで開きます

※2 基本的考え方の詳細については、日本商工会議所及び全国銀行協会のウェブサイトをご覧ください。
日本商工会議所:https://www.jcci.or.jp/news/2022/0304153000.html新しいウィンドウで開きます
全国銀行協会:https://www.zenginkyo.or.jp/news/2022/n030402/新しいウィンドウで開きます

※3 ※1及び※について、金融庁ウェブサイトでもご案内しています。
https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20220304.html
https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20220304-2.html


市場へのメッセージ(課徴金納付命令勧告の解説)

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、勧告事案等に関する解説記事を「市場へのメッセージ」として証券監視委ウェブサイトに掲載しております。
 ここでは、本年3月31日に掲載した「市場へのメッセージ」の内容についてご紹介します。

 ※「市場へのメッセージ」の全文については、証券監視委ウェブサイトをご参照ください。
  参考URL:https://www.fsa.go.jp/sesc/message/20220331-1.html新しいウィンドウで開きます
グレイステクノロジー株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付及び訂正報告書の提出命令勧告について

 証券監視委は、グレイステクノロジー株式会社(以下「当社」といいます。)における金融商品取引法に基づく開示規制の違反について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたことから、令和4年2月22日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付及び訂正報告書の提出命令勧告を行いました

【法令違反の内容】

 当社は、当社が行った不適正な会計処理により、過大な当期純利益等を計上することによって、「重要な事項につき虚偽の記載」がある下記の開示書類を関東財務局長に提出しました。

・平成29年6月第1四半期四半期報告書(平成29年8月10日提出)等、合計15本

【不適正な会計処理】

 当社が行った主な不適正な会計処理の概要は、下記のとおりです。

(1)売上の架空計上
 当社は、平成28年3月期から令和3年3月期までの間、売上計上した一部の案件について、未受注であるにも関わらず、発注書や受領書を、未受注の取引先から詐取又は自ら偽造することにより、受注及び納品の事実を仮
装し、売上の架空計上を行うことにより、売上を過大に計上しました。

(2)売上の前倒し計上
 当社は、平成28年3月期から令和3年6月第1四半期までの間、一部の案件について、実際には納品が未了であるにも関わらず、受領書を受注済みの取引先から詐取又は自ら偽造することにより、納品の事実を仮装し、本来の売上計上日よりも前倒しして、売上を計上しました。

(3)売上原価の前倒し計上及び付け替え
 売上の前倒し計上が行われていた多くの案件については、当該売上の前倒し計上に併せて、売上原価の前倒し計上や、別の売上案件に係る原価を付け替えて計上しており、これにより利益率を調整していました。

 証券監視委は、本事例のような有価証券報告書等における虚偽記載などの開示規制違反に対して、引き続き厳正に対処してまいります。
 

※  本年2月22日公表、「グレイステクノロジー株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金
納付及び訂正報告書の提出命令勧告について」は、
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2022/2022/20220222-1.html新しいウィンドウで開きますをご参照ください。


銀行をご利用のお客さまへ-新型コロナウイルスの感染を防ぐために-

銀行をご利用のお客様へ、新型コロナウイルスの感染を防ぐためのお願いに関するリーフレット(2022年4月)です

 


先月の金融庁の主な取組み(令和4年3月1日~3月31日)

サイバーセキュリティ対策の強化について、金融機関への周知を徹底するため、業界団体等を通じて広く金融機関に注意喚起を実施(3月1日)
「銀行の引当開示の充実に向けて」の公表(3月1日)
うんこドリルのキャラクターを用いた過剰借入・ヤミ金利用に関する注意喚起動画の公表(3月2日)
京都中央信用金庫の産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定(3月10日)
株式会社千葉銀行の産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定(3月14日)
暗号資産交換業者に対し、ウクライナをめぐる現下の国際情勢を踏まえた対応を要請(3月14日)
高校向け金融経済教育指導教材の公表(3月17日)
東北財務局が令和4年福島県沖を震源とする地震にかかる災害等に対する金融上の措置について要請(3月17日)
いわゆる「先払い買取」現金化 への注意喚起を実施(3月23日)
「金融機関における個人情報保護に関するQ&A」 の改正(3月24日)
現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化について(3月25日)
「FinTech実証実験ハブ」支援決定案件の実験結果(3月25日)
東北財務局が高病原性鳥インフルエンザ疑似患畜の確認を踏まえ、金融上の対応について要請(3月25日)
太陽生命保険株式会社の産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定(3月30日)
「火災保険水災料率に関する有識者懇談会」報告書(3月31日)

 


編集後記

 とても野心的な提言が今月号には盛り込まれています。
<野心的な提言>
 “3月下旬のイベントは、卒業式、お花見、春のセンバツ…。
 これからは金融経済教育の国際的なイベントも加えてください”
 (今月号のP8の文言を多少変更)


ここまで言えるのも、
3月17日に公表した高校生向けの金融経済教育の教材が、「大人にも勉強になる」と良い意味で話題になっているからでしょう。

話題の教材はこちらから→  画像

金融庁広報室長 齊藤 貴文
編集・発行:金融庁広報室

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