若手の社会人(1年〜3年目)に対する資産形成のアドバイスをしていただくため、金融庁で開催している個人投資家との意見交換会、つみたてNISA Meetup(略してつみップ)にゲストとして何度もご参加いただいている投資ブロガーの虫とり小僧さんにお越し頂き、金融庁若手(入庁1年〜3年目)との座談会を開催しました。その模様をまとめたもので、今回は第9回。複数回に分けて掲載予定です。
※ 参加者のコメントは、個人的見解に基づいて書かれたものであり、当庁の見解、意見等を示すものではありません。
虫とりさんは投資を継続することが大切だと強調していますが、それってそんなに難しいことなんですか?
私はまだ始めたばかりですけど、自動積立てですし、なんか普通に続けられそうな気もするんですが。
事前にしっかり腹落ちさせておかないと、人によっては意外と続かなかったりするんだな、これが。
どういう人だと続けるのが難しいんでしょうか?
リスク性資産の値動き、特に下落に耐えられない人。あとは、積立て投資なんかよりも効率良く儲けたいと思って「ベスト」を模索しちゃう人。主にその2パターンだってばよ!
アニキ、つまり、どういうことだってばよ!?
コラ、男子、真面目にやりなさいっ!(机を叩く)
はい、すいません。。(しょんぼり)
・・それでは、気持ちを切り替えて、と。(軽く咳払い)
値動きに耐えられない人が投資を続けられなくなってしまう、というのはなんとなく分かりますよね?
(一同 うなずく)
儲かるイメージしか持たずに始めてしまった人はもちろん、価格変動を理解していた人でも、実際にそれを体験すると精神的にヤラれてしまうことがあります。
そうならないためには、どうしたらいいのでしょうか?
うーん、性格というか精神的な問題なので、誰にでも当てはまる共通の対策はないような気がします。事前に数値上で把握したリスク許容度と、精神的なそれは異なる人も多いですし。
結局、自分が未来に対してどういう前提を持って投資を始めたのか、というような初心に戻るしかないでしょうね。あとは「慣れ」もあるかな。
未来に対する前提というのは、世界全体で考えれば人口増加や経済成長が今後も続くと思えるか、というようなことですか?
そうです。投資しているリスク性資産が値下がりすることがあっても、また上がってくると思えるかどうか、マーケットや資本主義の未来に楽観的であるか、というようなこと。
株式はそれ自体が成長しようとする本質を持っていますし、国債であれば利子つきで各国が保証している。リートも現物の存在の上に賃料が発生します。需給や景気による上下変動はありつつも、期待リターンはプラスであるという前提を持てるかどうかですね。
歴史を学んで、過去のデータを見たりすることで安心できる人もいるでしょうね。
(出典)金融庁「つみたてNISA Meetup」資料より
あとは、短期的な値動きが将来のための資産形成にどういう意味を持つのか、自分はどれくらいのスパンで投資するつもりだったのか、などを確認するのも大切です。積立て投資の場合、マーケットの低迷期はむしろ仕込みの好機になったりもするので。
(出典)金融庁「つみたてNISA Meetup」資料より
なるほどですね。投資を始める前にそこまで考える人ばかりではなさそうなので、そういうことを考える機会を与えてくれる下落相場も意外と貴重かもしれませんね。
そうそう、そういうポジティブシンキングって大切!!
まあ、感情を無視せずに、その都度立ち止まって考えつつも、自分にとって継続しやすいリスク許容度と投資スタンスに辿りつければいいと思います。
それじゃあ、続けられないパターンのもうひとつのほう、「ベスト」を模索してしまう、というのはどういうことなんですか?
未経験者からすると、上下に値動きのあるリスク性資産への投資ってすんごい勇気のいる行為なのですが、一方、数多ある投資スタンスの中においては、積立て投資による資産形成って、草食系というか、かなり地味なんです。
増えるとしても少しずつだし、しっかりとした成果が出てくるまで10年とか20年かかっちゃうわけです。だから、投資に面白味を求めず、リターンもほどほどでいいや!というような「割り切り」ができていないと、すぐに飽きちゃったり、他の投資方法にチャレンジしたくなる人もいるんですよ。
なるほど……なんとなく分かるような気がします。
おっと、アスカさん、意外と肉食系かも!(笑)
私もそうだったのですが、実際に投資を始めてみると、毎日の値動きは気になるし、新しい商品も気になるし、もっともっと勉強して色々と手間をかけたくなったりするんです。んで、相場の予想なんかをしてみて、それがたまたま当たったりすると、自分には投資の才能があるような気がしてきちゃったりして。
でも、それならそれでいいじゃないですか? 単純な積立て投資を続けるよりも、もっと上手くやれるなら。
もちろん、投資は自己責任だし、好きなようにやればいいと思いますよ。
ただし、タイミングを計ってアクティブに売り買いする人のほとんどが、長期的には市場平均つまりインデックスに負けてしまうこと。何度か上手くできたとしても、それが運なのか実力なのかは分からないこと。その事実を踏まえたうえで、わざわざ投資に時間を使うことをヨシとするなら、ですけどね。
で、実際、上手くいかずに「投資なんてギャンブルだ。二度と手を出すもんか!」って、やめちゃう人がけっこういる。
肝に銘じておきます。(心の声:この人、ホント理屈っぽいなぁ)
「自分だけは、他人よりも少しだけプラスアルファを……」というような欲望を捨てて、ほどほどで満足しつつ、シンプルなことを続けるのも意外と難しいんだと思います。
そういう人間の感情や思考の「クセ」を考えると、国際分散積立て投資を仕組み化してしまうってのは、悪くない選択肢だと思いますよ。そういえば以前、ファイナンシャルジャーナリストの竹川美奈子さんは「自動積立てにしておけば、やめることもできない」なーんて言ってましたね。
なるほど、私は自動積立てのほったらかしでいいや。
ダイエットのための筋トレなんかも、筋肉生成のメカニズムを意識した緻密なトレーニング計画だの、教科書通りの寸分違わぬフォームだの、徹底的な栄養管理だのにこだわりすぎて継続が難しくなるなら、ほどほどの「いい加減さ」でも継続したほうがよっぽど効果があったりしますからね。
(虫とり小僧 大胸筋をピクピク動かすも、誰にも気づかれず)
投資も同じで、細部にこだわって時間をかけたところで、そんなにパフォーマンスが良くなるわけじゃない。下手すりゃ悪くなることだってあります。とにかく、心穏やかに継続できる仕組みを作ってしまうことが大切。
でも、それは人によっては意外と難しい。もちろん、なんのハードルもなく簡単に続けられる人もいますけどね。それぞれの性格や理解の深さによるかもしれません。
(一同 虫とり小僧が執拗に続けている大胸筋ピクピクに気づくも完全スルー)
10数年の投資経験者かつ、多くの個人投資家さんとの接点のあるブロガーさんならではのお話、とても勉強になりました。要するに、つみたてNISAで自動積立てを続けることが大切だってことですね。
ところで、僕はなんとなく口座を作ってしまったのですが、投資を始めるタイミングは考えなくてもいいのでしょうか?
始める前に、どの程度勉強しておけばいいのかも知りたいです。
じゃあ、そのあたりの話は次回にまとめてお話ししましょうか。(大胸筋ピクピク継続中)