前回、マキマキさんは一応必要な貯蓄額は満たしている、ということでしたが、その貯蓄額の中身はどうでしょうか?
マキマキさんの今の資産状況は、すべて無リスク資産ですよね?
(ズッキ、はっきり言うな〜このおっちゃん!)
そうです。それで、今のままではまずいのではないかと思っているところです。
前回つらおさんもおっしゃっていましたけど、自分の収入と支出を計算すると、持てるリスク資産の量が分かってきます。例えば、今、ネットバンキングでは、自分の銀行口座のデータをExcel形式で出せるところもあるんですよ。それで直近2〜3年の取引内容を見ていけば、今家計がどんな感じで回っているかが分かります。
例えば、独立したり、リタイアするときには大事な考え方になります。副業幾ら、配当金幾ら、家賃収入幾ら、というインカムと支出とのバランスということになります。独立まで視野に入れなくても、収入と支出のバランスを見極めて生活防衛資金を決めていくと良いですよ。
独立ならば、3年程度、働きながらならば3か月から半年程度が生活防衛資金として目安になるかと思います。人によりますけどね。
……?
難しいですよね…。
リスク資産は相場によって減るかもしれないので、例えば一か月後に必要なお金をリスク資産に入れていて、いざ使う時に減ってしまっていたら困りますよね。だから、当面使わないお金はどれくらいですか、という観点から逆算できるのではないか、ということですね。
家が壊れたとか、車が故障したとか、いざという時の出費も含めて、いくら損しても大丈夫か、という額がリスク資産の額だと考えればいいと思います。
例えば、今2つの家にそれぞれ1000万円の貯金があるとしても、一つの家は安定した仕事に就いていて、夫婦共働きで、キャッシュフローが安定している。別にこの家では今1000万円が無くなってもすぐには困らない。もう一方の家は仕事もいつクビになるかわからない。1000万円は虎の子で、なくなると明日の生活が回らない。全然違いますよね。
どれくらい先まで想定して考えたらいいんでしょうか?
当面ですね。例えば3年後に子供の学費がかかるとか、2年後に車を買い替えようと思っているとか、皆さん様々あると思うので。
なくなっちゃ困るお金はよけて、その残りをどうするかってことなんですよね。一つの考え方としては、そのお金をリスク資産として運用した場合、半分、あるいは1/3に減っても、絶対金額として耐えられる金額なのかどうか。耐えきれないとしたらそれは多すぎるし、それくらい稼ぎなおせると思うならOK、ということですかね。もう一つは、老後まで絶対手を付けない、と思える金額が一つの目安じゃないかな、と思います。
当面使わないお金は、下がっても投資を続けていれば上がるかもしれない。でも、今使いたいお金は引き出すと損が確定してしまうんですよね。
あの…。素朴な疑問なのですが、リスク資産を全く持ったことのない人が投資を始めるときって、例えば今の計算方法で1000万円まで投資できます、ということになれば、その1000万円を全額投資に回して、どんな商品にするか、とか先のことを考えたほうが良いのでしょうか?それとも、投資は初めてだし2〜300万から、少しずつ投資していったほうが良いのでしょうか?
いい質問ですねえ〜!マキマキさん。
そうね。
(一同 笑い)
個人的には、はじめは少なめから始めたほうが良いと思います。時々、人によっては1000万円できるなら1000万円したほうが良いという人もいますけど、理論上は稼げる、得すると言っても、やっぱり理論と感情は違いますから。経験がない人は、投資をしてみたけどやっぱり生理的に嫌とか、精神衛生上きついとかがあると思うので、まずはお試しでやってみて、徐々に慣れてみるといいと思います。
そういう意味ではつみたてNISAって制度設計がうまくされていますよね。年間40万という少額で、しかも金融庁が商品を選んでくれているわけですから。それに投資して市場を見ていくと、ああ、こういう風に相場って動いて上下していくんだ、という風に徐々にお付き合いができますよね。
よくあるのが、株とかFXって、ちょっと勝ち始めると、張りたくなるんですよ。一つの銘柄に大量につぎ込んだりとか、なぜかみんなやっちゃうんですよね。負けのストーリーが描けなくなっちゃうみたいで。上手い人は良いですが、普通の人はそれで大体負けます。
補足すると、FXだと少額の練習っていうのはあんまりおすすめしないですね。それで、一年間練習してうまく行っちゃうと、俺天才!とか勘違いして、家も売って借金してお金を全部つぎ込んで、1億稼げばすぐリタイアできるじゃん、と思って調子に乗っちゃうこともあるので。だけど、今やっている投資信託を積立てていきましょう!という買い方は、基本的に調子乗っちゃう、という場面はあまりないから、練習にはいいんじゃないかなと思います。
私の個人的な経験としては、自分のリスク許容度をちゃんと理解するのには、10年はかかりました。最初の若いうちは収入も入ってくるのでイケイケでつぎ込めるんですが、そのうち株価が暴落したりとか、景気が悪くなると仕事そのものの給料が下がってしまうことも当然あり得るし、その時、自分がどのように感じるかは非常に重要だと思います。投資しはじめはそれがわからないので、やはりそろりそろりと始めるのが良いのではと思います。今、マキマキさんのリスク許容度は0%ですよね?
(一同 笑い)
そういう人が、急にリスク許容度80%になれるかというと、なかなかなれないようにも思えますが、人間は時としてイケる、と思ったりもするわけですね。資産が少ないうちに株価の暴落などが起きれば考え直すタイミングもありますけど、大きくなってからそういう目に遭ってしまうと、「騙された!」という気持ちにもなったりするわけです。やっぱり人間は、理論通りには行かないところもありますし、パートナーの方や家庭環境も考慮しながら、少しずつ始めるのがいいんじゃないかと思います。
その意味では、つみたてNISAは最適の制度ですね。宣伝になってしまいますけど、私の著書の中でも、とにかくつみたてNISAを始めればいいんじゃないかと言っています(笑)スターターキットとして非常に優れていると思います。
ポイントは、「1回暴落を経験するまで自分のリスク許容度はわからない」ということだと思います。それまでは机上の空論でいくら難しく考えても仕方がないので、ある程度投資金額を決めて少しずつ始めていけばいいと思います。その時に、損しうる金額を、自分で机上の計算ではこれだけ損が出ても大丈夫だろうと思っている額より低めに設定しておくんです。仮に500万まで損して大丈夫、と思ったとしたら300万までにしておいて、外でちょこちょこ貯めておくとかね。それでいざ暴落が来たときに、初めて自分はこんなに損をしているのか、と分かる。無理して投資して大損する必要はないですから、多少稼ぎ損ねても、余裕を見てやるべきだと思います。
もう一つ私の経験談をいうと、暴落をこれまで3回ほど、バブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマンショックと経験していますが、暴落した時に買い増しする余力があってよかったな、と今にして思うときがあります。当時から積立て投資をしていたんですけど、下がったときに購入額を増やしたんですね。それが結果的にプラスに作用しました。下がったときにさらに買い増すお金がない、という状態は精神衛生上よくないかなと思います。
使わないお金でも、ある程度損が膨らんでいると、不安になってきて辞めちゃう人がいますよね。
株は波になっていますから、一番もったいないパターンですね。
あと一歩が踏み込めない人は、まずは積立てから始めたほうが良いということですね。次回は、リスク資産と無リスク資産について詳しく学んでみましょう!(続く)